METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
結果はダントツのBSWということで(他の部隊に関しては少し内容が薄かったか、とも思っておりますが)本編での「相思相殺」編はBSWを主体とした物語で進めていきたいと思います。
図らずもゲーム本編と同じような構成となりますが、チクチクとオリジナル要素を挟んで行きますので、よろしくお願いいたします。
PM10;14
晴天
有視界度19Km
龍門、第5区、ゲート前外部検疫所上空。
ロドス所属の哨戒ヘリ「ハープーンシューター•1」内部。
『誘導灯を確認した、着陸態勢に移る。
後続機は誘導員の指示に従え』
操縦オペレーターの声がインカムから響く。
各ヘリに搭乗しているオペレーター数人が得物の最終確認、ハンドガン、クロスボウの動作確認を行う。
ヘリは全て、龍門の兵士の振る誘導灯に従って、フェンスで囲まれたヘリポートに着陸する。
『ドクター、到着しました。
足元にお気をつけて』
『ありがとう、気をつけてな』
ジョンが軽く会釈すると、操縦オペレーターは親指を立てて答える。
龍門の兵士がヘリのドアを開け、手振りで出るように促す。
盾を持った重装オペレーターが先行し、それに続く形でジョン、アーミヤ、前衛オペレーターと続く。
周囲を見ると、続いて着陸したヘリからも、素早い動きでオペレーター達が降りてくるのが見える。
『HQ、ハープーンシューター•1はVIPを送り届けた、帰投する』
龍門の誘導係の手に持つ誘導灯の動きに従ってハープーンシューターは飛び立つ。
「お待ちしていました!
チェン隊長がお待ちです!」
龍門の兵士が風圧に身を屈めながらゲートへと案内をする。
ジョン達の目の前に、重厚な警備の敷かれたゲートと、その後ろに高くそびえ立つビル群が広がる。
「これが龍門ですよ、ドクター!」
アーミヤが隣を歩きながらにジョンに呟く。
「これが大地を走って移動するというのだから信じられんな!」
遠ざかる風切りの音の中に、ジョン達の耳にスピーカーからの放送が入る。
『龍門からお知らせいたします。
現在、天災の影響で龍門は停泊状態にあり、来航手続きに制限が設けられています。
本日の来航手続きは二時間後に締め切られる予定です。
締め切りと同時に龍門、第5区のゲートは全て閉鎖されます』
ゲートの前には夥しい数の人が家財道具を手に立ちすくんでいた。
「あの行列が全て避難民なのか!?」
前衛オペレーターの1人が龍門の兵士に問いかける。
「ああそうだ!もう猫の手も借りたい状況なんだ、来てくれて嬉しいよ!」
龍門の兵士はそう言ってフェンスを区切っていたバーを持ち上げる。
「この先の検疫所でチェン隊長がお待ちです!」
「案内感謝する!」
ジョンは風圧になびくローブを押さえながらゲートを潜る。
『係員による
未登録の感染者を見かけた際は、お近くの警備員にまで速やかに通報を』
「この数を全て検疫に通すのか…」
重装オペレーターが苦い顔をしながら呟く。
「ドクター」
ジョン達の背後に続くオペレーターの集団、その先頭にリスカムの姿があった。
リスカムはジョンの隣に並び、声をかける。
「重装小隊、合流しました」
「ああ、フランカ達は?」
「後続のオペレーターの誘導にあたっています」
「わかった」
ジョン達は避難民の殺到している検疫所へと足を早める。
…
監視モニターに目を向ける凛とした女性指揮官の元に、龍門の兵士が駆け寄ってくる。
「チェン隊長、彼らが到着しました」
「…」
チェンと呼ばれた女性指揮官は、電灯の光に青く輝く黒髪をなびかせると、検疫所の表に出る。
そこには多くのオペレーター達を引き連れながらこちらに向かってくるジョン達の姿があった。
チェンの姿に気がついたアーミヤが1人、走り寄って頭を下げる。
「お、お待たせしました!」
「…君たちとの面会は10時と聞いている。
当然、我が龍門近衛局の部隊編成もその時間に合わせて構成している。
…今は10時14分だ」
チェンは見た目こそ普通の少女のようであったが、真っ直ぐに向き合うと、その纏わせる張り詰めた雰囲気と、凛とした目つき、そして頭に生やしたツノが目を引いた。
「す、すいません…天災の影響か、途中で乱気流に遭遇を…」
「そちらの天候シュミレーターもたかが知れているというわけだ。
おかげで時間を14分も無駄にした、それだけあれば一部隊を別ゲートに動かすこともできるぞ」
「失礼したチェン警司、遅れてすまない」
アーミヤの隣に並び、フードを外して胸に手を当てるジョンを見て、チェンは鼻を鳴らした。
「…ふん、まあいい。
事情はこちらでも把握していた、だが想定できるあらゆることに備えるべきだぞロドス。
この街の警備に加わろうというのであればな…こっちだ」
チェンは肩で検疫所の詰所の中を指し示す。
ジョン達がそれに従い詰所の中に入ると、チェンは置かれたテーブルの向かいに立っていた。
「時間が惜しい、早速本題に入ろう。
…それであなたが?」
「はい、ロドス指揮顧問のドクタージョンです。
先行している私どものケルシーが事前にお知らせしている通りに…」
「…これでメンバーは揃ったというわけだな、ではこれから私の…」
チェンが姿勢を正し、改めてジョン達に向き合ったのと同時に、龍門の兵士が飛び込んでくる。
「チェン隊長、感染者が…」
「…ちっ…」
チェンは兵士に連れられて外に出ると、渡された無線機に怒鳴るように指揮をする。
「第一中隊!貴様らはいちいち私の指示がなければ動けないのかっ!!
警戒態勢、狙撃中隊は即時所定の配置につけ!!」
チェンの一声で検疫所のゲート両端にある櫓から狙撃兵のボウガンが構えられる。
兵士の詰所からはワラワラと盾を持った兵士が検疫所に流れ込んでいく。
その様子に避難民の間に混乱とどよめきが起こる。
「状況報告!」
『検疫で感染者と判断された数名の避難民が検疫官の静止を振り切り逃走。
取り押さえましたが、周囲の知己の者達が暴れています』
「…知己のもの含め、全員を拘束しろ」
『了解』
検疫所に兵士達が雪崩れ込み、避難民達が慌てて外に飛び出してくる。
「迅速に行動しろ、混乱が伝播する前に収拾をつけるんだ。
野次馬を散らし、拘束が完了したのち、拘束者を全て再検査。
30分後に検疫を再開させる」
チェンが無線機に指示を送りながら詰所に戻ってくる。
「加えて、検疫所の検査エリアを40メートル前方に拡大させろ」
『了解です』
チェンは指示を送り終えたのち、息を細くはくと、再びジョン達に向き直る。
「騒がせた」
「あのようなことが何度も?」
アーミヤが心配そうに問いかける。
「ああ、ゲートの締め切りが近くなるといつもな。
彼らももう野宿はごめんなんだろう。
同情はするが、これが我々の職務だ。
感染者、不穏分子を1人として中に入れるわけにはいかない」
チェンは監視モニターをチラリと見る。
そこには兵士たちに拘束され、何かを叫ぶ避難民の姿が映されていた。
「さて、ロドスの者はドクター、それにアーミヤのみ、私に同行してくれ。
それ以外のものは残って龍門周辺の警備に協力してもらいたい」
「わかった…リスカム、フランカ」
「はい」「はいはーい」
「部隊を任せる、警戒は怠るなよ」
「了解しました」「…なんだか剣呑な雰囲気ねえ」
ジョンの指示を受けたリスカムとフランカは詰所を出て、外で待つオペレーター達に合流する。
「この程度の仕事、任せられんようではお話にならんからな」
「その話をするためにここに来た。
手はかけんさ、保証する」
ジョンは背後でこちらを振り返るリスカムとフランカに目配せする。
「…PC 94172、彼らに任務の分配を。
今夜はさっきのようなことがないように、こき使ってやれ」
「了解です、隊長。それではロドスの皆さん」
書類とタブレットを抱えた兵士がリスカム達に歩み寄っていく。
兵士は書類をリスカム達に配ると、先導するように別の詰所を指差した。
「ブリーフィングを、あちらで」
リスカム達が兵士に連れられていくのを見届けると、ジョン達は目の前にいるチェンに向き直る。
アーミヤが、チェンの様子を見ながらこそこそと耳打ちする。
「…想像よりも、何倍も厳しい方みたいですね」
「…優秀な指揮官だな、公のために身を捨てられるタイプと見える。
…公務員という感じだ、君は苦手か?」
「…いえ、そんなことは」
「それでは君たちは」
チェンは腰に携えた得物の位置を正すと、兵士によって開かれた扉へと歩みを進める。
「…私と来てくれ」
…
チェンに連れられ、いくつかのゲートを超えた先、ジョン達は龍門を臨める外環の出入り口にたどり着く。
「うわあ…!」
アーミヤが思わず声を上げる。
「さすが龍門…こんなに大きなビルが…!」
その様子をチェンはじっと見つめている。
「あ…えっと…」
「…話は聞いた。
ロドスもなかなかやるようだな」
チェンのいう「話」というのが、チェルノボーグの一件であることは察せられた。
「えと…それは…どうも、チェンさん…」
「だが」
チェンが歩き出すのに慌てて続くアーミヤ。
ジョンはその後ろをゆっくりと歩く。
「チェルノボーグの一件以来、生き残った者たちは皆、狂ったようにこの龍門を目指している。
それについてはどうとも思わないのか?」
「…」
アーミヤはその言葉の意図を察したのか、口をつぐんだ。
「奴らも感染者ならば、この龍門にくればどうなるか、わかっているはずだろうに」