METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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廃ビル内にて

ジョン達が廃ビルの根本に到着すると、そこには既にリスカムとフランカ、ジェシカとバニラ、そして、見慣れない少女と駄弁っているエクシアがいた。

 

「ドクター」

 

リスカムがジョンの姿を確認して走り寄ってくる。

 

「待たせた、状況は?」

 

「付近で全部隊が捜索に当たっていたので、問題ありません。

エクシアさんの指示が的確でした。

少女の姿は確認できませんが、何人かの子供が中に入っていくのを、偵察オペレーターが確認しています」

 

「わかった、刺激を避けるため私とアーミヤ、それぞれのリーダー…リスカム、フランカ、ジェシカ、バニラ、前衛オペレーターを3名、選抜は任せる。

…そして案内役の諸君も中に入る。…かまわんかな?」

 

ジョンは知らぬ間にそばに来ていたエクシアと少女に問いかける。

 

「いいよー」

 

エクシアは腕を頭の後ろで組みながら、腰に銃をぶら下げて笑う。

 

「これはまた、可憐なお嬢さんだ。

ジョンだ、よろしく頼む」

 

「テキサス、ボスの命令であなたに協力する、よろしく頼む」

 

テキサスと名乗る少女は口にタバコのようなものをくわえ、ジョンに握手を求める。

ジョンはそれに答えると、周囲に固まるオペレーター達に向き直る。

 

「今名前を呼ばれなかったものは全員、部隊ごとに固まって周囲に散開するように。

どうにもきな臭い、レユニオンは既に民衆の中に紛れているのかもしれん。

何かあったら、すぐに救援に来れるように、準備しておいてくれ」

 

「「「了解」」」

 

「ねーロドスのドクター、探してる少女ってどんな感じだったの?」

 

エクシアがジョンの隣に立って問いかける。

 

「ん?…まあ、普通の少女という感じだったな、だが連れている子供達に対して責任感を匂わせていた。

あれは信用してもらうには少し手間がかかるぞ」

 

「んーん?

…迷える仔羊ってことでオッケーかな?助けるんだよね?」

 

「私はそのつもりでいるよ…龍門の思惑は別にしてな」

 

「…なら私の専売特許だ、喜んで力を貸しちゃうよん」

 

エクシアはそう言って手に持つ得物のチャージングレバーを引く。

 

「そいつは頼もしい限りだ。君の持つデータには助けられた、ここでも頼む…行動開始」

 

ジョンの言葉を皮切りに、オペレーター達はそれぞれに動き始める。

それぞれの武器を確認するもの、車両に乗り込みその場を離れるもの、路地を進んで民衆の中に紛れるもの。

 

「では子熊を迎えに行くとしようか」

 

そして、ジョン達は廃ビルの中に足を踏み入れる。

 

 

「うう…暗いし、狭いです」

 

ジェシカがジョンの隣で声を漏らす。

ジョン達は今、廃ビルの階段を音を立てぬよう、慎重に進んでいた。

 

「ジェシカ、こういう場所でこそ、君のような存在が光るんだ。

自信を持って、先頭に立ちなさい」

 

「は、はいい…」

 

ジェシカはジョンの言葉を受けて、レーザーを放つハンドガンを構えながら先頭を歩き始める。

その後ろを、前衛オペレーターの1人が続く。

随所でレーザーのオンオフを切り替えながら、クリアリングして進むジェシカをジョンは見守る。

 

(暗所での動きも慣れているな…自信のなさはどこから来るのか…)

 

「バニラ、後ろはどうだ?」

 

『後方に動きはありません…酷く静かです』

 

「緊張するな、お前の動きは知っている」

 

『…ありがとうございます』

 

「リスカム」

 

『3階はクリア、合流します』

 

『私も続くわ』

 

「2人とも、後方に合流したら私のところまで来てくれ」

 

『了解しました』

 

『了解…』

 

「なんだフランカ、デートの約束が遅れたから怒っているのか?」

 

『デートっていうか、飲み会ね…全く、扱いづらいったら』

 

「これが終わったらちゃんと連れて行ってやる、部隊の連中で話をまとめておくように」

 

『…そういえば、リスカムも行きたいって言ってたわよね』

 

『フランカ、またあなたは急に…!』

 

『言ってたわよね?』

 

『…』

 

「なんだ、遠慮するな、こうなれば1人増えるも一緒だ」

 

『…なら私の部隊も一緒に』

 

「 …それはちょっと考えものだが…ああ、いや、かまわん、来い来い」

 

「ど、ドクター、それって私も参加していいですか?」

 

ジェシカが階段の奥から、顔を覗かせる。

 

『私も!私も参加したいです!』

 

バニラが無線機越しに名乗りを上げる。

 

「…」

 

「ドクター、お給料の前借り、できますからね。

…もちろん、私も伺いますから」

 

アーミヤが隣で黒い笑顔を浮かべている。

 

「…ああ、わかった、全員で行こう、それでかまわんな?」

 

『「「了解!」」』「やった…!」

 

 

「なんだか楽しそーだね」

 

エクシアは隣のビルの階段をテキサスと登る。

 

「緊張感のない連中だ、あれで作戦中なのか?」

 

「いいなあ、私も参加できないかなー」

 

エクシアはそう言いながら、ジョン達の無線を聞き続ける。

 

「参加したいなーなんてー…」

 

いたずらな笑みを浮かべながら、エクシアは無線機のコールボタンを押し続けている。

 

『…案内人、仕事はしてるのかな?』

 

やがて、ジョンからの無線がエクシアの耳に入る。

 

「もちろんだよ!ただいま君たちのカバーポイントに向かって移動中ー」

 

『…それはそれとしてなんだが、エクシア、君はいい酒場に詳しいか?』

 

「…オットー、これはもっと楽しくなりそうな予感!

もっちろん!いい酒場!知ってるよ!」

 

『ならそこにも「案内」を頼むとしよう、頼んだぞ』

 

「オッケオッケー!

やったー久しぶりのパーティだよテキサス!ボスに話しとかなくちゃ!」

 

「…ロドスのドクター、後悔するなよ」

 

テキサスはステップまじりで階段を登るエクシアをため息まじりに追う。

 

 

廃ビルの中程、薄暗く、天井の崩落した内装の中に少女はいた。

 

「…ふう」

 

息をつき、埃をかぶった椅子に腰掛ける。

その周りに、子供達が集まる。

 

「大丈夫お姉ちゃん?」

 

「うん、平気だよ、君たちは?」

 

「大丈夫、階段、少し疲れちゃったけど」

 

「ごめんね、でもここなら、少しは休んでも大丈夫、だと思うから」

 

少女は立ち上がり、椅子をいくつか引っ張ってくると、子供達を座らせる。

 

「少し埃っぽいけど」

 

「ありがとう、ミーシャお姉ちゃん」

 

子供達は椅子に腰掛け、横に座るミーシャに肩を預ける。

 

「…でも、いつまで歩けばいいのかな」

 

子供の素朴な疑問をのせた一言に、ミーシャは目頭を熱くする。

 

「…大丈夫、今は安心して、休んでいいからね」

 

「…うん」

 

その時だった。

ミーシャが閉じた扉が、ゆっくりと軋みを上げて開け放たれる。

ミーシャと子供達に緊張が走る。

 

「…だれ!?」

 

背中に子供達を隠しながら、ミーシャは扉の奥に叫ぶ。

扉から姿を表したのは、レーザーポインターをつけたハンドガンを手に持った、1人のオペレーターだった。

 

「クリア…ドクター、対象を発見しました」

 

クリアリングを終えたジェシカの後ろをから、ジョンはゆっくりと姿を表す。

 

「こんにちは、先ほどはありがとう。

…ミーシャ、だね?」

 

「あなたは…」

 

ミーシャは立ち上がると、驚きの表情をジョンに向ける。

ジョンの後ろからアーミヤが現れたことで、その表情は多少和らいだ。

 

「…なんで」

 

「ミーシャさん、少しお話をよろしいですか?

…すいません、驚かせるつもりは」

 

アーミヤの後ろから、さらに2人のオペレーターが現る。

 

「ミーシャさん、この2人はリスカムさんと、フランカさんです」

 

「は〜い、どうも〜」

 

「こんにちは」

 

2人は朗らかな表情をミーシャに向ける。

だが、ミーシャは子供達を背に警戒を解かずにいた。

 

「私たちはロドス・アイランド製薬という、感染者のための組織です。

あなたのお力になれればと…話を、聞いていただけますか?」

 

「…話?」

 

「はい…ミーシャさん、あなたが追われているのは知っています。

まずはあなたの安全を確保するために、ここから移動しませんか?

移動中の保護は私達が…」

 

「…一体…何を…」

 

「…ミーシャさん?」

 

「どうせ、私たちを捕まえて、牢屋に入れるつもりなんでしょう!」

 

ミーシャは子供達を庇いながらに続ける。

アーミヤは落ち着かせようと、ゆっくり足を進めるが。

 

「近寄らないで!…それ以上近づいたら、引っ掻いてやるから!私の爪は鋭いのよ!」

 

「お、お姉ちゃん…」

 

「私の後ろにいなさい!」

 

子供達が怯えの表情ジョン達に向ける。

 

「ミーシャさん…」

 

「ぷ…」

 

フランカがもう耐え切れないとばかりに息を吹き出す。

 

「…何が、おかしいの?」

 

「ご、ごめんなさい?

でも、私たちが本当にあなた達を捕まえるつもりなら、こんなに悠長に構えるわけがないと思わない?

きっと、抵抗する暇も与えないわよ」

 

「フランカ…」

 

リスカムがその横で困り顔を浮かべる。

 

「申し訳ありません、アーミヤさん」

 

「いえ…フランカさん、ありがとう」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

フランカはアーミヤに微笑みを返す。

 

「ミーシャさん、私たちは本当に、あなたの力になりたいんです、だから…」

 

「信じられないわ…」

 

ミーシャは顔を伏せて答える。

 

「…ここに来て、助け?…ねえ、信じられると思う?…この子達が、どんな扱いを受けてきたか…。

龍門の感染者に対する扱いを知ってる…?」

 

ミーシャは食いつくようにアーミヤに視線を向ける。

 

「犯罪者の方がまだマシよ…わかる?…人殺しの方が感染者よりもマシな待遇を受けるの!!

あなたは…何を根拠にこの子達を…私を助けるっていうの?」

 

「ミーシャさん…」

 

アーミヤは袖をまくりながら、ミーシャに近づく。

 

「アーミヤ」

 

ジョンの言葉を聞かずに、アーミヤは袖の下の感染者の証である、皮膚に露出した鉱石を見せる。

 

「見てください」

 

「あなた…それは…何をして…それ…その手は…」

 

ミーシャは力なく、アーミヤに近づき、その手をとる。

 

「あなたも、感染者…」

 

「はい、同じです、ミーシャさんと」

 

「…そんな…でも…」

 

ミーシャはアーミヤの後ろにいるジョン達を見る。

 

「ミーシャさん、龍門のスラムには沢山の感染者が隠れています。

…後ろにいる子供達もあなたを信じています」

 

ミーシャはアーミヤのそばから慌てて離れる。

 

「あなたの行動の一つで、その子達の立場も危うくなるんですよ」

 

ミーシャは再び、子供達を庇うように立つ。

 

「…脅すつもり?」

 

「私たちはそのようなことはしません。

でも、そういうことをする人たちはいます、あなたも…それは知っているでしょう?」

 

「…」

 

「私たちは、そのようなことをする人たちから、あなたがたを助けたいんです」

 

「…」

 

「私たちは、その子達を含めてあなたを追手から保護したい。

すでにロドスでは何人もの感染者の子供達を保護しています、その子達も同じようにと」

 

「…私が、あいつらに目をつけられているのを知っているの?」

 

「はい」

 

「ならどうして!…あいつらは凶悪よ、もう誰にも抑えつけられない!

…なぜ、私を保護しようというの…?」

 

「…実は、私たちもよくは知りません。

どうして感染者たち、レユニオンがあなたを狙っているのか…その動きよりも先に龍門の方々が、なぜあなたを確保しようとしているのか…。

でも、我々ロドスの理由は単純です」

 

アーミヤはミーシャに向かって歩き出す。

 

「それは、あなたが感染者だからです。そしてあなたは追われている、彼らに。

これでは、まだ信用に値しませんか?」

 

アーミヤはミーシャの腕をとり、その目を真っ直ぐに見つめる。

 

「ここから離れましょう、あなたのため…何よりその子達のために」

 

ミーシャは後ろにいる子供達に目を向ける。

 

「…」

 

「お願いします …!」

 

「…わかった、わかったから離して……いくわ、一緒に」

 

「…ミーシャさん!」

 

「…どっちにしろ、選択肢はないんでしょ?」

 

そう言ってミーシャはジョン達に目をむける。

 

「わかってるじゃない」

 

「フランカ!」

 

リスカムはフランカの頭をはたく。

 

「…そういうわけでは…ないんですけど」

 

「…いいわよ、わかった…あなた達を、信じるわ」

 

「ありがとう、ございます!ミーシャさん…!」

 

 

 

 

 

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