METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
ミーシャ達は体調を確認するために、ジョン達が呼んだ医療オペレーター数名の簡易検診を受けていた。
フェリーンの医療オペレーターが、同種族である少女の腹部に、エコーのような機械を当てる。
「…内臓に影が…全員、
ですが進行は軽度です、これならロドスの医療機関で十分対処可能でしょう」
医療オペレーターは傍にいるリスカムに診断を告げる。
「病気治るの?」
猫の耳を生やした少女が医療オペレーターに首を傾げて問いかける。
「…一緒に治して行こうね!」
「うん!」
頭をなでる医療オペレーターの手、くすぐったそうに悶える少女。
ジョンは窓辺の壁に身を預けながら、その様子を見ていた。
傍らでは、アーミヤがチェンに対して連絡を取っていた。
「チェンさん、情報の少女、ミーシャさんを確保しました。
加えて、彼女の保護下にあった子供達も」
『了解した。
速やかな対象の移送を求める…それ以外の感染者、子供達に関しては』
「そちらはロドスで保護します、よろしいですね?」
『…ああ、それで構わない。
合流地点を転送した、近衛局が安全を保障する場所だ』
アーミヤはリストバンドから投影される、ホログラムマップに光る光点を見る。
そこはアーミヤ達が出発した場所とは別のゲート。
廃ビルから程近い、中心街に通じるゲートだった。
「確認しました」
『では到着を待つ、くれぐれも迅速に』
「チェンさん、一つ質問が」
『…なんだ?』
「ミーシャさんを保護する理由はなんですか?
なぜ彼女は彼らに狙われているんです」
『…』
少しの沈黙を置いて、チェンとの通信が途絶する。
「切られました…」
「どうにも臭いな」
ジョンは窓辺から離れると、置かれた椅子に腰掛ける。
「ええ…でもこのままここに居続けるのも確かに危険です。
すでに周りの人々には、我々がここに集結しているのを見られてますし…」
「ああ、さっさとここから離れよう、リスカム、フランカ」
ジョンの声に反応したリスカムが、医療オペレーターの側から駆け寄ってくる。
フランカは椅子の足を浮かせてバランスを取るのをやめて、ジョンの後ろに立った。
「ほーんと、いい使いっ走りよね、私たち」
「よほど私たちに事情を説明したくないようです…」
アーミヤはフランカの言葉に肩を落とす。
「アーミヤちゃんのせいじゃないわよ」
「この作戦も事前資料もほとんどない状態で進んでいます。
しかし、あの様子から察するに…ミーシャさんは龍門にとって余程重要な人物のようですね」
リスカムはミーシャに聞かれないように声を小さくして発言する。
「…その割に、私たちへの指示がひどく杜撰ですが」
「まあ、感染者の保護を私たちに任せるあたり、保護してどうするか…なんて情報は与えない方が、都合はいいでしょうね」
「しかしどれほどの重要人物なのかすら教えないというのは…緊急時の判断に支障をきたすリスクがあります。
あまりにも非常識です…」
「さあ、おしゃべりはそこまでだみんな。
彼らの意図はともかく、今は迅速にここから脱出するのが優先だろう」
ジョンはリストデバイスから地図を投影すると、そこに引かれた集合地点への道を表す光線を指でなぞった。
「ルートはいくつかあるが、大通りは避けたい。
まだ日は高いが、人の多い大通りでは不審者を見分けづらいからな」
「…となると」
リスカムはいくつかあるルートの中から、二つのルートをタップする。
その後ろで、ジェシカとバニラが顔を覗かせている。
「…最短はこちらのルート、ですが途中で大通りを横切ります。
もう片方は距離は少しありますが、人通りの少ない路地から出ずに済みますね」
「ふむ、最短のルートがいいと思うが、どう思う?」
「難しいんじゃないかしら」
フランカは最短ルートをタップすると、ズームして詳細な地形を表示する。
「地図じゃわからないけど、ここ…ここの路地ね、大通りを横切る手前の。
ここは居住区の共用道路よ。
私の部隊はここを通ってきたけど、この時間は人で溢れてると思うわ」
「では、距離はあるが人目を避けやすいこちらのルートか…時間のロスは痛いが…」
「その道もどーかなー?」
ジョン達のいるフロアの入り口に、いつの間にかエクシアが体を預けながらに立っていた。
「エクシア、どうやって…」
「隣のビルから飛んできた!女の子、無事確保できたみたいだね!」
エクシアはケラケラと笑いながら、ジョン達に歩み寄る。
「…」
フランカは嫌なものを見たとばかりの目線をエクシアに向ける。
「おんや?どうしたの、不機嫌そうな顔してるよ?」
「…本当、いつもタイミングがいいんだか、悪いんだか」
「え、いや、いいタイミングでしょ!?」
「フランカ、彼女達の協力がなければ、こんなに早くに保護できなかった。
あんまり邪険にするのはどうかと思う」
「…」
フランカは腕を組んで、そっぽを向いてしまう。
「ハハハ、嫌われてるねえ…。
んでも、こういう時こそ、私たち「ペンギン急便」を頼ってくれないとだよ、ロドスのドクター!」
ジョンはエクシアに対して笑みを向けると、ホログラムのマップを囲む輪に招待するように手を向けた。
「では、意見を聞かせてもらおうか」
「んふふ、そうこなくっちゃ!」
…
「ぶっちゃけね、どれも危険なんだよなーこれが」
エクシアはスイスイとホログラムを操作して脱出ルートを確認する。
「いくら龍門全域を管理、警護する近衛局といってもねー、スラムばかりはデスクトップのデータに頼りきりだから。
ドローンでみた俯瞰の景色なんて、なーんも役には立たない…よっと」
エクシアは地図を指でなぞって、その上に新たなルートを作り出す。
「このルートならどう?」
「…少し距離はあるが」
「まあそこはね、でもみんなも移動の最中に頭の上から矢が飛んできたり、石が落ちてきたり、火のついた燃料缶が落ちてきたら嫌でしょ?」
エクシアが軽く口にした内容に、前衛オペレーターの1人が生唾をのむ。
「このルートならまだ安全だよ。
カルテルの持ち家が多いし、余所者はそう簡単に周囲の建物を移動はできない。隠れることも無理かな」
データだけでは判断のつかない情報をジョン達にもたらすエクシア。
「通るだけならカルテルの連中も手は出してこないし、どーよ?」
「…決まりだな」
ジョンは握り拳を掌に打ち付ける。
「ありがとう、素晴らしい案内だ、エクシア」
「レビューには星5でよろしくね!」
エクシアはそう言ってジョンに再びウインクをかます。
「…と言いたいところなんだけどねー、隣のビルからどうも臭い連中を見ちゃったんだー」
「…何?」
「正直ちょっと焦ったよ、あんなに群れてるのは久しぶりに見たからね」
「…レユニオン、ですね。…どれくらいの数ですか?」
「んー、いくらか合唱団を組めるくらいには」
「あいつら、とうとう身を隠すことも、しなくなったってわけね」
フランカが腰の細剣に手を当てる。
「こっちが動けば奴らも気付くだろうね。
スラムにはあいつらに共謀する連中も少なくないから」
「…あの様子では、その様な人々も出てくるでしょうね」
アーミヤは路地でのことを思い出して、顔を俯かせる。
リスカムはその肩を抱くと、エクシアに向き直った。
「エクシアさん、あなたはスラムの敵の分布を全て把握なさっているんですか?」
「そりゃもうばっちりと」
「では敵の動きも?」
「目当ては付けてないにしろ、あいつらなんとなく目星はつけてるんじゃないかな。もちろん、ここにね」
「「「…」」」
オペレーター達の間に沈黙が流れる。
「…半分包囲されている様なものか」
ジョンは手を顎の下で組んで、ホログラムを見つめる。
「周辺部隊の様子は?」
アーミヤはリストデバイスを起動して、オペレーターのパーソナルデータを呼び出す。
「…全員、うまく民衆の中に紛れている様です」
ジョンはその言葉を聞くと、懐から葉巻を取り出して部屋の隅にいき、火をつけて紫煙を頬張る。
そしてゆっくりとそれを吐き出すと、アーミヤ達オペレーターに向き直った。
「…一発、花火でも上げてみるか」
「「「「?」」」」