METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
腰にぶら下げた武器を揺らし、金音を鳴らしながら、薄暗い路地を進むもの達がいる。
「レユニオン」、薄汚れた白い装束を身にまとい、その顔は簡易に穴の空けられた仮面で覆われている。
集団は路地の至る所に置かれた木箱やゴミ溜め、浮浪者の簡易住居を破壊しながらに進む。
「くまなく探せ、少女だ」
先頭の男が後ろに続く兵士たちに指示を飛ばしながらに、耳のインカムに神経を集中させる。
『聞け、新たな情報だ。
子供を連れた少女を目撃したという協力者からの情報だ。
廃ビルだ、全隊スラム中心部の廃ビルに集結しろ』
「…お前ら、情報があった。
中心部の廃ビルに向かうぞ」
先頭のレユニオン兵士の言葉に後続の兵士達は頷き、その歩みを早めた直後だった。
「…!?」
彼らの得た情報にあった、廃ビルの方向から、赤い光弾が尾を引いて空を割いている。
「なんだ…あれは」
先頭の男は慌ててインカムで無線連絡網に呼びかける。
「おい!廃ビル方面から上がる光弾が見える!
あれは何かの作戦か!?」
『わからない、なんだあれは!?』『聞いてないぞ!?』『だれだ、あんな目立つものを!』
男の耳に仲間の驚きの声が届く。
「どうする…?」
「…とにかく、廃ビルを目指すぞ!」
先頭の男に率いられたレユニオン達は、狭い路地を廃ビルへと急ぐ。
その間にも、断続的に赤い閃光弾は空に上がり続けた。
…
「隊長!チェン隊長!」
ゲート前の詰所で待機していたチェンの元に、重装の兵士が飛び込んでくる。
「…何事だ、騒がしいぞ!」
「も、申し訳ありません!」
チェンは椅子から立ち上がると、兵士の前に立つ。
「どうした?」
「そ、それが…!」
兵士は詰所の窓から外を指差す。
「スラムの中心部から、赤いフレアが数発打ち上げられています!」
「何…?」
チェンは慌てて、窓のそばに立つ。
「…なんだあれは」
「彼らの…ロドスの作戦でしょうか?」
「…聞いてないぞ、そんなことは…!」
チェンは手首に巻かれたデバイスから、ジョン達に無線通信を試みる。
「…」
『ジョンだ』
「何をしている!?」
『何を…とは?』
「あまり派手に動くな!
スラムで勝手な動きをすると、どうなるかわかっているのか!?
貴様、作戦を破綻させる気か!!」
『それはこちらのセリフだ、チェン』
ジョンの語尾を強めた言葉にチェンは無線越しに思わずたじろぐ。
『ご自慢の近衛局の実力もたかが知れているな、こちらの状況も把握できていない。
その「作戦」とやらを破綻させたくなければ黙っていろ』
「何…!?」
次の瞬間、ロドスとの通信は一方的に遮断される。
「…」
「隊長…我々は?」
「…待機だ!」
「は、ハッ!」
兵士はチェンに睨まれて、慌てて詰所から出ていく。
チェンは詰所の中で1人、机に突かれた拳を握る力を強めながら、窓の外を睨む。
「…一体、なんだというのだ…あの男は…!」
…
廃ビル周辺。
蜘蛛の巣状に広がる路地の全てに、レユニオンの兵士たちが群がっていた。
「スカルシュレッダー、聞こえるか?」
仮面をかぶった一際体格のいい、隊長格の兵士がインカムから無線を送る。
『…見つけたのか?』
「目撃証言のあった廃ビルに展開していた全ての兵士が到着した、これから踏み込む」
『わかった、あの光弾の正体は?』
「それはわからない、だがここから撃ち出されたのは間違いない。
何か企んでいるにしろ、この人数の前では…」
『目標は無傷で保護しろ、わかったな』
「…了解だ」
隊長格の兵士は大きく手を挙げる。
その動きに合わせて、レユニオンの小隊が廃ビルの入り口に殺到する。
その瞬間だった。
「…ギャバッ!?」「ゴアッ!?」
入り口に足を踏み入れた集団が轟音と共に吹き飛んだ。
「な…っ!?」
吹き荒ぶ爆風と砂塵に身をかがめながら、隊長格の兵士は廃ビルの出入り口に目を向ける。
そこにはフードを深くかぶり、スカーフで顔を隠した一団が出入り口を塞ぐ様に立っていた。
「な…!?誰…!?」
声を続ける前に、集団は素早く動き始めた。
まとまった集団が、蜘蛛の子を散らす様に、小さな集団になってそれぞれが別々の路地への入り口に向かう。
「…と、止めろ!こいつらを止めろ!」
隊長格の兵士は周りの兵士に檄を飛ばす。
その命令に従い、小集団それぞれに斬りかかるレユニオン達。
しかし、それは廃ビル中腹階からの猛烈な銃火によって阻まれる。
ボロボロに崩れたレユニオン達の隊形を、小集団は切り裂いていく。
「銃…撃!?」
隊長格の兵士はマズルフラッシュを煌めかせる廃ビルの窓に目をやる。
そこには頭に光輪を浮かべた少女がいた。
「あ、あれは…!?」
隊長格の兵士の兵士は、その少女と目が合うのがわかった。
銃口が向けられる。
緩やかに感じる時間の中で、兵士は少女の口が何かを唱えるのを見た。
直後、兵士の頭に複数の弾丸が撃ち込まれる。
重い音を立てて倒れる兵士の周りから、混乱が伝播する。
もはや枝を振り回す様に武器を構えるしかないレユニオン達の包囲網を、切り裂いていった。
腰を抜かし、廃ビルから飛び出し、路地に消えていく集団をただ見届けるだけだった兵士の中に、立ち上がり声を張り上げる者がいた。
「お、お前ら!追え!あいつらを追え!」
その言葉に、1人、また1人、やがて残った兵士の全てが立ち上がり、それぞれが散った小集団を追いかける。
窓からの銃火に怯え、その場から逃げる様に散らばった兵士もいたが、少女はすでに廃ビルの窓から姿を消していた。
「なんだ!なんなんだ今のは!?」
『…どうした?』
「す、スカルシュレッダー!た、たった今、廃ビルで戦闘が!!隊長がやられた!」
『何…?』
「に、逃げられた!あいつらバラバラに路地に!…そ、それに!」
『なんだ?』
「あいつらの中に小さいのが紛れてた!間違いない、この目で見たんだ!多分、目標の…!」
『龍門の連中か?』
「す、すまない!それも…!」
『…使えない…追え、逃すな』
「あ、ああ!」
レユニオンの兵士は慌てて集団の跡を追う仲間の後を追う。
…
「ご苦労、エクシア。リーダー格は取れたかな?」
ジョンは薄暗い路地をオペレーター達に囲まれて走る。
『それっぽいのは天国にご案内したよ、いえーい』
「ではそのまま、作戦通りに」
『りょうかーい!』
「テキサス」
『なんだ、ドクター』
「そのまま、各部隊のナビゲートを続けてくれ、なるべく目立つ、安全なルートを」
『全く、無理を言う…まあやるだけやってみるさ』
「全小隊、聞け。
存分にかき回し、追わせてやれ。
奴らが自分たちを鬼だと思っている間は、存分に」
ジョンの無線を聞く全オペレーター達の目が、薄暗い路地の中、フードから、スカーフから怪しい光を覗かせる。
「タッチダウンのその時、鬼はどちらか、奴らに思い知らせてやろう」