METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
ジョン達は目標であるゲートを目指して路地を走り続ける。
大通りに近づくにつれ、路地を歩く人々も増え始める。
民衆に気を使いながら、それでも最低限の速さで進む。
「一般人が増えてきました!」
「刺激するなよ、彼らの中に紛れるように心がけろ」
ジョンは果物の入ったカゴを運ぶ少女を避けながらに指示を出す。
「きゃあ!」
「すまんお嬢ちゃん!」
ジョンは少女に謝罪をしながらにリストデバイスにホログラムマップを展開する。
「目標まで後わずか、気を引き締めろ」
「ドクター、あれを!!」
後ろを走っていたオペレーターがジョンに後方の様子を伝える。
「市民が…!」
ジョンはオペレーターの言葉に後ろを振り返ると、そこにはこちらに迫ってきていたレユニオン達、そしてそこに向かって殺到する民衆の姿があった。
「どけ!おい、お前ら!」「邪魔をするな!」
「よくも俺たちの家を!」「品物の弁償をしろよ!」「破壊者め!!」
民衆達はレユニオン達に対して明確な怒りを示している。
「あいつら、至る所で乱暴を働いていたようです」
「自業自得だな」「ざまあみろだ」
オペレーター達は吐き捨てるように呟く。
「どけ!同胞に乱暴はしたくない!」
「乱暴はしたくないだと!?誰のせいで俺たちがこんな目に!」
「もとはといえばお前達のせいじゃないか!」
「…何!?」
「とっととここから出ていけ!破壊者め!!」
「これ以上ここに厄介ごとを持ち込むな!」
民衆の1人がレユニオンの兵士に石を投げる。
それに続いて他の市民もそれに続いてものを投げ始める。
「おい、あれ…」「まずくないか!」
「感染者のために戦うと掲げておきながら、肝心の支持は受けていないようだな」
ジョンが立ち止まり、それ続いてオペレーター達も後ろを見やる。
「見過ごせん、奴らが手を出す前に、片付けるぞ」
「「「了解!」」」
オペレーター達が獲物を抜き放ち、民衆の群れをかき分けてレユニオン達の前に立つ。
「き、貴様ら!」「こいつら戻ってきたぞ!」
レユニオン達は今まさに民衆に向けようとしていた武器を引っ込めて後ずさる。
「言ってることとやってることが!食い違ってるんだよ!お前らは!」
前衛オペレーター達は民衆にさがるように手で促す。
「あ、あんたら…」
「下がってくれ!」
「おい手を出すな!この人達は…」
「いいから下がってくれ!このままじゃあんたらを巻き込んじまうんだよ!」
「あ、ああ…!」
前衛オペレーター達がレユニオン達との戦闘を始めたのを確認したのち、ジョンはアーミヤに向き直る。
「アーミヤ、君は残りの者を連れて目標地点へ急げ」
「ど、ドクターは!?」
「あいつらと一緒に合流する、今は先を急げ、早く」
「わ、わかりました!」
ジョンはアーミヤ達が路地の先へ走っていくのを見届けると、前衛オペレーター達の元へと向かう。
「それを貸せ」
ジョンは民衆の波を抜け、隣について来ていた前衛オペレーターから、差し出された武器を手に取ると、オペレーターの1人に振り下ろされようとしていたマチェットを受け止める。
「ど、ドクター!?」
「長物はあまり扱ったことはないんだが」
ジョンはマチェットを弾くと、レユニオン兵士の横っ腹に蹴りを入れる。
「がっ!?」
「手馴しにはちょうどいい」
「な、なんだ!お前は!?」
「なに、ただの指揮官だ、来い、稽古をつけてやる」
ジョンは真横から繰り出される斬撃をすれすれで避けると、振り抜かれた腕を片手で取り、手前に引き込んで足を払う。
続け様に別の兵士から繰り出される突きを体を捻って避け、腕を抱え込んで引き込み、体制が崩れたところを顎に肘を打ち込んだ。
そしてその延長で、足払いを受け、倒れ込んだ兵士の顎を踏み抜く。
「ひ…!?」
「さて、お前らには流しただけの血を見てもらおう」
その隣に、オペレーター達が武器を構えて立つ。
「…援護します!」「ドクター!」
…
『ジャック、CQCの基本を思い出して』
…
「……フン」
「…ドクター?」
「…なんでもない、やるぞ」
…
民衆による断続的な投石の援護もあってか、自分たちの戦闘をさせてもらえなかった彼らは、ジョン達の攻撃を前に逃げ出した。
「ありがとう」
先を急ごうとするジョン達の前に、年配の男性が立つ。
「こちらこそすまない、騒がせたな」
「い、いいえ!最近のあいつらの行動には本当に嫌気がさしていたので、ついこちらもカッとなって」
「…あなた達はここを離れるべきだ」
「…もう、行くあてなんてモノは巡り尽くしました、ここしか無いんです…我々には」
そう言って男性は傍に少年を抱く。
「本当にありがとう、守ってくださって…これからは自重します」
「…ああ、元気で」
ジョンはそういうと、オペレーター達を引き連れて、路地をアーミヤ達の元へと急いだ。
「…」
「革命のためには、血が必要だ。
敵はもちろん、仲間の血もな」
「…ドクター」
「だが、それを履き違えている。
それほどまでに、追い詰められているのか」
「…」
「あいつらが一枚岩でないことはわかっている…だが、なぜこれほどまでに構成員が多い。
あいつらの支持者はどういった連中なんだ…」
ジョンは自問する。
「感染者と非感染者、それほどに単純なのか…本当に…?」
…
アーミヤ達は息を切らしながら、そこにたどり着いた。
「はー…!はー…!」
「!」
ゲートを守備していた龍門の兵士がアーミヤに駆け寄る。
「あなたはロドスの…!隊長!隊長!ロドスが到着しました!
…大丈夫ですか?」
「はー…ええ、大丈夫です。
他の皆さんは?」
「すでに到着されています。
…感染者の子供達もすでに保護されています。
それで、目標の人物は?」
「ここだよー!」
アーミヤと龍門の兵士の上から、エクシアの声が響き渡る。
エクシアは腕にミーシャを抱きながら、建物の屋上から垂らされたロープを使って降りてきた。
「エクシアさん!」
「いやーごめんごめん!思ったより時間がかかっちゃった!」
エクシアはミーシャを下ろすとアーミヤの元へ駆け寄る。
「そっちは大丈夫だった?」
「ええ、他の隊の皆さんが引き付けてくれたので」
「…ネタばらしもなく、たどり着けました」
フードを深く被ったジェシカが、それを外してはにかむ。
「それはよかった!…あれ、ドクターは?」
「追撃を引き付けるために、途中で別れました。
でも大丈夫です、すぐに合流して…」
アーミヤがそう言っている間に、ジョンが路地から姿を現し、その横に立った。
「ほら」
「エクシア、よかった、無事だな」
「ありゃ意外!ロドスは指揮官も戦闘員の1人ってわけね!」
「君も見かけによらず、なかなかタフじゃないか」
ジョンはエクシアが差し出した右の拳に拳をぶつける。
「ミーシャさん!」
アーミヤは少し遠くから、こちらを眺めているミーシャに駆け寄る。
「大丈夫ですか!どこにも…怪我はありませんか?」
「…ええ、大丈夫。少し荒っぽい人たちだったけど、守ってくれたわ」
「そ、そうですか…よかった」
少し遅れてロープを使って降りてきたテキサスが、ミーシャの隣に立って肩に手を置く。
「少し戦闘があってゴタついたが、よくついてきてくれた、勇敢な子だ」
「ありがとうございました、テキサスさん」
「なに、君達があいつらを引き付けてくれたおかげさ」
テキサスは口の端に咥えたチョコレート菓子を動かしながらに笑う。
「それより、この子」
「…」
テキサスはふらつくミーシャの肩を支える。
「…ミーシャさん?」
「ずっと具合が悪そうなんだ、外傷もないし…診てやってくれ」
「…医療オペレーター!こっちに!」
フードをかぶっていた医療オペレーターがそれを取り払いながらアーミヤ達の元へ駆け寄ってくる。
そして診断機器をミーシャにあてると、目を見開いた。
「そんな、さっき診た時にはこんな…」
アーミヤは診断機器の表示を診て口に手を当てる。
「…進行が、早すぎます…これは…どうして」
「どうした?」
様子を見ていたジョンがアーミヤ達のそばに駆け寄ってくる。
「ドクター!ミーシャさんの病状が…出会った頃に比べて凄まじい速度で…悪化を…!」
「…なんだと?」
ジョンはミーシャの隣に立ち、腕をとる。
(ひどく冷たい…)
「ミーシャ、聞こえるか?」
「…大丈夫、聞こえるわ…そんなすぐに…死んだりしないわよ…でしょ?」
「ああ、そうだな」
ジョンはアーミヤに向き直る。
「…いますぐに医療機器に入れないとまずい、だな?」
「ええ、ですが…」
「どうした、何か問題があったのか?」
ジョン達の元へ、チェンが足早に向かってくる。
「チェンさん!ミーシャさんの様子が…!」
「なに!?」
チェンはミーシャの横に跪くとその顔色を見る。
「…これは…」
「
「すぐに医療部に連絡をつける、ここからは我々が…」
「それはちょっと待ってもらおう」
ジョンはチェンの言葉を遮る。
「…またか、今度はなんだ」
「この少女は、ミーシャは我々で身を預かる」
チェンはその言葉に額に青筋を浮き立たせる。
「き、さま…!何様のつもりだ!!」
チェンはジョンのローブの襟を掴みよせる。
「これ以上我々を侮辱するなら、こちらもそれ相応の対応をさせてもらうぞ!!」
「龍門はもう安全とは言いきれん」
「なに!?」
「見ろ」
ジョンは首の動きでゲートの前の人だかりを指す。
民衆の中、その間を縫うように、フードの中に仮面を隠し、こちらを伺う者達がいた。
「…!」
「あれの規模を、龍門はどこまで把握している?」
「…スラムに奴らが潜伏していることなど…既に把握済みだ、取るに足らんと判断して…」
「なるほど、スラムの状況なぞは壁の外と同じか。切り離せば大層な移動都市とは別物と、そう言いたいんだな?
チェン、前にも言ったな。
すでに外だけの問題じゃないんだ、もう内部にまであいつらの手は及んでいる」
「貴様…どこまで…!」
「恐ればかりで周りが見えなくなっているなチェン」
「恐れ…ているだと…私が…?」
「重責か、それによる戒めか、指揮官足らんとするのは立派だが、お前には決定的に足りない物がある」
「…」
「敵を侮るな、敵の行動の全てが自らの手の内をすり抜けてくると思え、それが指揮官の役目だ」
「ふ、ふざけるな!…御高説はそこまでか…!?ならもう…」
「君では話にならんな」
ジョンはリストデバイスの無線機能を立ち上げる。
「…おい、何をして」
「ああ、ミスター・ウェイ」
チェンはジョンの言葉を聞いて耳を疑った。
目を見開き、言葉をなくす。
「職務中?…それはすまない、いつぞやはいい葉巻をありがとう。
…ああ、現在行動中の作戦で、少しトラブルがな」
「…」
「…ん、ああそうだ。
ミス・チェンの指揮下で作戦を行なったが…ああ、無理を言ってホットラインを繋いでおいて幸いだった。
それで…もうゲートの前には到着している…それでだな、目標の少女だが…ああ、容態が思わしくない」
ジョンは懐から葉巻を取り出して咥え、火をつける。
「そりゃあ龍門にも優れた医療設備はあるだろうが…ああ、そうだ…警備に不安がある。
情報を?あの少女が?…ああすまないなミスター、我々はあまりにも知らなすぎた。
ではなおさら、少女を危険に晒すわけにはいかないのでは?
…ああ、そうだ、一時的保護、それで構わない、容態が安定次第そちらに移送する…いいかな…ああ、わかった…悪いがミス・チェンにはそちらから伝えてもらえないか?」
紫煙を吐き出すと、ジョンはチェンに向き直る。
「…ああ、忙しいところをすまない、どこかで埋め合わせを…ああ、ありがとう」
ジョンは無線を切ると、チェンの目を真っ直ぐに見つめる。
「…」
「責任感の強い君のことだ、思うことがあるのだろう。
だが一度よく考えてみるといい、君が守らんとするものはなんだ?龍門か?市民か?矜恃か?
…悪いが、ロドスという連中はさらにその先を見ている」
チェンはただ呆然と、ジョンの後ろ姿を目で追う。
「最善を尽くす、ただ守るために…今言えるのはそれだけだ」