METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
『スターバック・1。
誘導灯を確認した、これより降下する』
ロドスのオペレーターが振る赤色灯を目指して、医療ヘリが降下を開始する。
着陸したヘリの後部プラットホームから、担架を背負ったオペレーター、そして医療オペレーターが数人、スロープを降りてくる。
先頭に立つ白髪に紅眼、色白の少女が、走り寄ってきたフェリーンの医療オペレーターに問い掛ける。
「容体は!?」
「体温の低下、多臓器不全の疑い及び意識障害も出始めています!」
「…急ぐぞ!すぐに医療ポッドに入れないと危険だ!」
「ワルファリンさん!」
アーミヤが先頭の少女に呼びかける。
「アーミヤ!急に呼び出すものだから驚いたぞ!…ちょっと待て!」
「失礼!1、2でいくぞ!持ち上げますよ!1…2!」
ワルファリンの後ろから担架を持って飛び出してきたオペレーター達が、簡易ベッドに横になるミーシャを持ち上げ、担架に乗せる。
「アーミヤ、詳しい話は後で聞かせてくれ!今はこの子の命が優先だ!」
ワルファリンは手に持つロッドにアーツを集中させ、その光をミーシャにあてる。
「わ、わかりました!」
「よし、運ぶぞ!抗菌剤を用意しておけ!人工呼吸器もだ!」
ワルファリンは担架で運ばれるミーシャのそばに付き添いながらヘリの中へ戻っていく。
アーミヤはその様子を心配そうに見守っている。
「アーミヤ、我々も戻るぞ」
ジョンはアーミヤの肩に手を置く。
「…はい、ドクター」
医療ヘリが上昇した後、哨戒ヘリが数機、アーミヤ達の元へ降下してくる。
降りてきたスロープに足をかけ、ロドスのオペレーターはヘリに搭乗する。
その背後で、龍門の兵士たちを背に、チェンが複雑そうな表情を浮かべていた。
ジョンはヘリに搭乗する前に、チェンの目の前に立った。
「…捨て台詞でも残していくつもりか」
「そのようなものだ。
ミス・チェン、あまり気負いすぎるな」
「…慰めの言葉のつもり?」
「それは違う…勘違いをしないでくれ、私は君のこれまでの実績にケチをつける気はない。
だが…何をそんなに焦っている?」
「貴様には…関係のないことだ」
「君はきっと、そんな人間じゃないだろう」
「何が…私の何がわかるっていうの?」
「ああ、わからないさ。
だが、その顔つきはよく知っている。
鏡を見ると、いつもそこにいる見慣れた顔だ…眉間に深い谷を刻んでな、美容にはよくない」
「…」
「物事の形だけをみるのではない、肝心なのはその中身を知ることだ。
龍門という枠組み、スラムという場所、そこになんの違いがある。
チェン、わかっているだろう、もう彼等はすぐそこまできている」
「…」
チェンはジョンの目を真っ直ぐに見つめる。
「他の誰でもない、君が守るんだこの都市を」
「…私は…!」
「言いたいことはそれだけだ、さっきの非礼を許してくれると助かる!
…ウェイ氏によろしくな」
ジョンはそういうと、哨戒ヘリの方へ走っていってしまう。
アーミヤの手を借りて、ヘリに搭乗するジョン。
チェンは、ジョンに向かって伸びた手を見つめ、空を潰すように握り込むと、飛び立つヘリに目を向けた。
…
スラムの上空を飛ぶヘリの中、ジョンは窓の風景を眺めながらに呟いた。
「鉱石病とは…残酷なものだな」
横に腰掛けていたアーミヤは、その言葉にジョンの方を見る。
「皮肉なものだ、あれほどまでに憎んだ病に、よく似た物と相対することになろうとは」
「ドクター、何か患っていたんですか?」
「…かつての私は、遺伝子をずたずたにされ、子も為せない体だった。
人類が生み出した業、その円環の中に、私もいた」
「…?」
横にいたオペレーターが、訳がわからないという表情を浮かべる。
アーミヤだけが、その言葉に真剣に耳を傾けていた。
「どういう、世界だったんですか?」
「ここよりはまだ少しマシだった…と言いたいが、どっこいどっこいだな」
「それは…どんな…?」
「光だよ、すべてを焼き尽くす光だ」
「光…」
「叡智の光、そう呼ぶ者もいた。
そこが鉱石病とは大きく違うな、私たちは自らの手でソレを作り出してしまった。
ああ…違う…大いに違う」
「…」
「あれは空から落ちてくる天の災害だ。
決して人の意思が介在することのない「天災」……。
貧困や人種ではない…生まれ持った能力でもない…病から来る差別」
窓の外、路地の片隅に倒れ込む数人の男女、そして子供を目にする。
ジョンは手を強く握りしめた。
「一体誰を恨めばいい…誰を責めればいい…誰を悪にすれば…。
そんな意思が、この世界そのものを回している。
どんな気持ちだ…どんな、どんな思いだ……どうしたら…こんな世界が出来上がる…」
ジョンは自問する。
「…何も知らない…知らなすぎる。
…私は、彼女に上から物を言えるような人間じゃない」
「ドクター」
「…」
「落ち着いてください、大丈夫ですから」
アーミヤはジョンの手を両の掌で包み込む。
「…すまない、考え事をするとどうもな、嫌なことばかり浮かんでしまう」
「それは私も…私達も同じです、ドクター」
アーミヤはそう言って微笑む。
周りのオペレーター達もまた、その様子を笑って見ていた。
「ドクターもそんな顔をするんですね」
「何?」
「初めて見ました、いつもはなんでもないって顔をしてらっしゃるので」
横にいるオペレータがそう言って笑う。
「ありがとうございます、でも大丈夫です。
いずれこの病もなくなる、我々は信じています。
例えその道がどんなに長くても、それでも、信じています」
「そうですよ!」「ロドスはいずれやり遂げます!」「絶対に!」
ヘリの中のオペレーター達は、口々に声を上げる。
「だから、そんな顔をしないで」
「そうしたら、あいつらとだって、いつかは…」
オペレーターの1人の言葉に、ヘリの中のオペレーターは全員、窓の外に目を向ける。
「…そうだな、その日はいつか訪れる、それは何年か後かも知れんし…明日かもしれん。
あのおっかないケルシー先生が、顕微鏡の片隅にそれを見つけるかも知れんな」
ジョンのその言葉で、ヘリの中に笑い声が響き渡る。
「その時まで、共に行こう。
私が今ここにいるのも、その礎になるのだと信じて」
…
ロドスのヘリが上空を行くのを、見上げる集団がいた。
「…」
「しくじったな、スカルシュレッダー」
「…クラウンスレイヤー」
「まさか、あいつらがここまでの強硬姿勢を取るとは…タルラのやつはなぜか上機嫌だったが」
「彼女は、ミーシャは龍門の手には渡っていない」
「ああ、だがいずれは奴らに引き渡されることになるだろう」
「…そうは、させない」
「タルラは大規模な作戦を考えている。
…だがその前に、もう一つ大事を起こすようだ、お前にも参加してもらうぞ」
「…」
「了承…と取っていいな?」
「好きにしろ」
「…貴様といい、Wといいタルラのやつがなぜ信用するのかわからん」
…
「…姉さん、今度は、必ず…」