METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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霧の襲撃

ロドス上層、荒野を見渡せる屋外通路をドーベルマンに率いられた狙撃中隊が駆けていく。

足元の透ける金網の床を、音を立てながら走るオペレーター達。

各々が配置につくと同時に、手すりに防弾用の鉄板を据え付け、手すりにそれぞれの得物を据え置き、照準を定める。

 

『第1から4班、準備良し!』

 

「了解、探照灯照らせ!」

 

ドーベルマンはオペレーターの報告を受けるのと同時に、ロドスの上部甲板、探照灯の操作主に指示を送る。

指示と同時に暗闇の荒野に白い探照灯の光が降り注いだ。

それは忙しなく動いて、荒野の中の影を探す。

 

『…敵影、ありません』『第3班、確認できず』『第1も同様です』

 

「油断するな、センサー系に不調をきたしている今、奴らがこの機を逃すとは思えん」

 

『…奴らが気付くでしょうか?』

 

オペレーターがセンサー系の異常に関して、レユニオンが気付いているという部分に疑問を示す。

 

「奴らはもはやただの烏合の衆ではない、指揮官がいる。

…憎たらしいほどに敵の急所を把握できるのがな。

こちらのされたくないことを好んで行なってくる連中だ、だから言うのだ…油断するな、わかったな」

 

『『『了解!』』』

 

ドーベルマンはそばにいる部下から双眼鏡を受け取ると、ロドスの右舷側に面している丘を覗いた。

雲の隙間からの月光で、淡く地肌を晒す丘の上に、ドーベルマンは1人の影を見る。

 

「…あれは…」

 

それは淡くオレンジと赤熱のような光を放ち、鈍い眼光をこちらに向けている。

ドーベルマンが倍率を上げようと双眼鏡に片方の手を伸ばした瞬間、それは凄まじい閃光の中に消えた。

 

「…ッ!?」

 

ドーベルマンは目を細める。

それは夥しい数のライトが集合して放つ閃光。

そして耳に響く、地鳴りのようなエンジンの音。

 

「…丘の上!来たぞ!!」

 

ドーベルマンの叫び声にオペレーター達に緊張が走る。

探照灯が丘を照らし、オペレーター達の照準器がそれを捕らえる。

 

「ガンタレット!マニュアル操作には切り替えたか!?」

 

『右舷側ガンタレットは全て人員の配置は完了しています!』

 

「目標、正面丘の上の稜線!無差別、飽和攻撃開始!!」

 

『連絡通路の人員は耳を塞げ!オープンファイア!!』

 

ドーベルマンの指示と共に、右舷側のガンタレットの全てが火を吹いた。

放たれた源石弾頭の砲弾は丘の上の稜線に突き刺さり、丘は爆煙と粉塵に包まれる。

 

しかし。

 

『…ほ、炎が…!!』

 

稜線を覆った炎は、焼き尽くす酸素を失ったうように掻き消えた。

オペレーターの困惑の声が通信網に響く。

 

「止めるな!撃ち続けろ!!」

 

『り、了解!継続して撃ちまくれ!!』

 

「…いるのか、あいつが…!」

 

ドーベルマンの歯が軋みを上げる。

撃ち込まれる砲弾は着弾の衝撃はあれども、源石による爆発は起こらない。

そしてその砲撃の合間を縫うように、オートバイクの集団は丘を駆け下り始める。

2人乗りのバイク、後部に乗った兵士が手に持ったボウガンで、屋外通路にいるオペレーター達に攻撃を仕掛けてくる。

防弾版にはじかれ、火花をあげるボウガンの矢。

 

『だ、ダメだ!全弾不発!信管が…作動しません!!』

 

「不発じゃない!爆炎が全て消されているんだ…!

砲撃の衝撃だけでも効果はある!いいから撃ちまくれ!!」

 

ドーベルマンの指示のもと、ガンタレットの砲撃は継続されるが、砲弾の弾着の衝撃のみでは思うような効果は示せない。

やがてオートバイクの集団は丘を降り始め、先頭が荒野にその足をつけた。

 

「狙撃中隊!砲撃の効果が薄い以上、我々で火線を作るしかない!!」

 

『了解!総員アーツ使用準備!』

 

連絡通路に配置された狙撃オペレーターのボウガンにアーツの光が宿る。

 

「搭乗者ではなくバイクを狙え!!足が早い、撃ち漏らすなよ!!」

 

『だ、第3班より報告!ドーベルマンさん!』

 

「どうした!?」

 

『丘陵の右側から、猛烈な勢いで煙が…いや、あれは霧か!?』

 

ドーベルマンがその報告に慌てて丘に向き直ると、報告の通り丘陵の右側から津波のように霧が押し寄せていた。

 

「…チェルノボーグの…!…ちぃッ!

幹部を全員連れてきたとでも…!?

ガンタレット!稜線への攻撃を中止、目標を荒野へ移行しろ!!」

 

『了解!』

 

ガンタレットからの砲撃が荒野に突き刺さり、通常通り起爆した砲弾はオートバイクの集団の前方で爆発し、それらを覆い隠そうとしていた霧の大部分を吹き飛ばした。

 

「奴らを霧の中に入れるな!

狙撃中隊!目当てを付けずとも構わん!…撃てぇッ!!」

 

即座にオペレーター達はそれぞれの得物のトリガーを引き絞る。

様々な色の閃光とともに、放たれた矢はオートバイクの集団に降りかかる。

数台のバイクが転倒し、後続を巻き込んで炎上するが、その姿はやがて霧の中に消えてしまった。

霧に覆われた荒野は、すでに砲撃の爆炎でさえも包み込み、それが尋常のものではないことは誰の目にも明らかだった。

 

『ダメです!霧が濃すぎる…なんなんだあれは!』

 

「攻撃は継続しろ!奴らの進路を予測するんだ!」

 

狙撃オペレーター達は密度の高い攻撃を霧の中に見舞うが、濃い霧の中ではその効果すら掴めない。

 

『く、くそ!何も見えないぞ!』

 

「慌てるな!耳を澄ませ!あいつらのエンジン音を聞くんだ!

ガンタレット、霧の中を集中して攻撃しろ!」

 

ドーベルマン以下狙撃オペレーター中隊は攻撃しながら耳を研ぎ澄ませるが、丘に挟まれた土地の音の反響がそれを乱す。

 

(音を正確に聴こうにも砲撃をやめる訳にはいかない…!くそ…どうすれば…)

 

やがて霧はドーベルマン達のいる屋外連絡通路も飲み込んだ。

 

 

セクター3、上部甲板ヘリポート、そこには数機の医療ヘリが離陸の時を待っていた。

 

『患者の受け入れはあと1人か!?』

 

ヘリポートの警備にあたっていた前衛オペレーターの1人、その腰の無線機に医療ヘリのパイロットからの無線が入る。

 

「もうすぐだ!あと少しだけ待ってくれ!」

 

『炎で気流が乱れてる!それにあの霧は…早く離陸しないと!』

 

「だから!あと1人だ!すぐ着くから!」

 

ケルシーの命令でセクター1以外のセクターに滞在していた患者の全ては、医療ヘリ数機による上空避難行動が行われていた

直後、ヘリポート入り口の両開きの扉が音を立てて開かれ、そこから担架に乗った少年が運ばれてくる。

複数人の治療オペレータに運ばれる少年は、辺りを見回しながら不安そうに呟いた。

 

「…僕、どこかにいくの?」

 

「大丈夫!ちょっと空の上に行くだけ、すぐに戻ってくるからね!」

 

フェリーンの治療オペレーターが笑顔を向けながらに担架を押す。

 

「来たぞ!」

 

『了解!離陸体制に入る!』

 

医療ヘリのローターの風切りの音が激しさを増す。

その時だった。

 

「て、敵襲!!敵襲!!」

 

霧に飲まれつつあるヘリポートに、警備にあたっていた別のオペレーターの叫び声が響く。

前衛オペレーターがそれに振り返ると、そこにはロドスの側面から飛び出してきた、レユニオンの仮面兵士がいた。

仮面兵士達は背中に重厚なジェットパックを背負い、そこから青い炎を吹き出しながら、勢いよくヘリポートに降り立ってくる。

 

「…奴ら飛んできたのか、地面から上部甲板まで…ッ!?」

 

 

ドーベルマンは目の前の光景に口が塞がらなかった。

その目には屋外通路の面する荒野から、霧を切り裂いて飛び上がるレユニオンの兵士達が映った。

 

「…撃ち落とせ!!」

 

ドーベルマンの一声で、周りの狙撃オペレーター達はジェットパック兵に攻撃を開始する。

 

(バイクの後部座席に乗っている奴らか…!!)

 

見ると屋外通路の真下では、霧の隙間にバイクの操縦者がバイクを乗り捨ててロドスの壁際を先頭に向けて走っていく姿が見えた。

 

「バイクは輸送手段だ!あいつらジェットパック兵を運んでる!!

ガンタレット、壁際に近づかせるな!」

 

 

ヘリポートでは乱戦が起こっていた。

多くの前衛オペレーター達に守られる形で、感染者の少年を乗せた担架は医療ヘリに到着する。

 

「乗れ!早く!」

 

数人のオペレーターに引き上げられ、医療ヘリの後部ランプから少年の乗った担架は格納された。

フェリーンの治療オペレーターがヘリポートに向き直ると、薄い視界の中にオペレーター達の戦闘音だけが響いていた。

 

「あんたも乗れ!脱出しろ!」

 

ヘリを守っていた前衛オペレーターが、治療オペレーターの肩を掴んでヘリの中に押し込む。

 

「わ、私も残ります!」

 

「いいからいくんだ!!」

 

前衛オペレーターはヘリの中に治療オペレーターを突き飛ばすと同時に、手に持った赤色灯を振る。

直後、医療ヘリは霧を切り裂きながら離陸を始めた。

 

『…離陸する…!』

 

「…そんな!待って!」

 

治療オペレーターは後部ランプギリギリまで身を乗り出すと、ヘリを見上げる前衛オペレーターに手を伸ばした。

 

「この乱戦じゃあんたを守れない!大丈夫だ!すぐ戻れる!」

 

前衛オペレーターはそう言い残すと武器を抜き放ち、霧の中に消えていく。

 

「…あぁ……そんな…」

 

上昇するヘリの中で、治療オペレーターは霧に飲まれていくロドスをいつまでも見つめていた。

 

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