METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
今週あたりから再び一日1話を目標に更新する予定です!
次話あたりから、後書き部分に無線シリーズ…みたいなのをかけたらなと思っています。
蛇足にならないといいなあ…。
真っ直ぐに伸びる広い物資搬入路、そこでリスカム率いる重装オペレーター達はレユニオンの大部隊と対峙している。
止めどなくロドスに取り付いてくるジェットパック兵士達はヘリポートからの空輸物資搬入路に集結、大部隊となってセクター1へと進行しつつあった。
「…」
レユニオン兵士達は一言も発することなくリスカム達重装オペレーターを仮面の奥から睨みつける。
先頭にリスカムは腕に巻かれたデバイスに口元を近づける。
「ドクター、こちらリスカム…敵集団、現れました」
『規模は?』
「…ヘリポートから続々と増援が来ているので正確には把握できませんね」
『こちらはすでに工作部隊を捕捉している。
そちらは陽動だろうが…現状では十分脅威になり得るな。
どうにかやれそうか?』
「問題ないかと」
『…では任せたぞ、リスカム』
無線が切れたことを確認したのち、リスカムはそのまま腕を振り上げる。
「…前進!」
号令を合図に重装オペレーター達はリスカムを取り囲むように展開し、盾を突き出して隙間のない横隊で通路を進み始める。
レユニオン達もまたその動きに反応し、それぞれが武器を振りかざして走り出した。
その先頭に立つ兵士のマチェットが重装オペレーターの盾に振り下ろされる。
火花を散らして弾かれる刃、その隙を逃さずにオペレーターは兵士の横っ腹をハンマーで殴りつける。
「おらぁ!腹がガラ空きだぞ!!」
「がぼっ!?」
肉の潰れる鈍い音とともに兵士は動かなくなり、真横に音を立てて倒れる。
先頭の兵士に続いてオペレーター達に斬りつける兵士たち、重装オペレーター達とレユニオンとの間に閃光のような火花が咲き乱れる。
「あなた達に、ここは突破できませんよ!!…突撃陣形!」
重装オペレーター達は横隊先頭の中心を空ける、リスカムはその間に立つと火炎瓶を投げようとする兵士に弾丸を撃ち込む。
即座に盾にアーツを集中させ、目を焼く閃光、マグネシウムフラッシュをレユニオン達に浴びせる。
たまらず目を覆ったレユニオン達に、重装オペレーター達が食い込んでいく。
「このままヘリポートまで押し戻しますッ!!」
「「「「応っ!!」」」」
ルークのエンブレムがあしらわれた盾を構えながら、重装オペレーター達は武器で叩きのめし、盾で押し倒しながらに足を進める。
レユニオン兵達の足並みが乱れ、戦闘が後退したタイミングで、再びリスカムは先頭に躍り出た。
「皆さん、私から離れて!」
リスカムの指示を合図に彼女の周囲からオペレーター達は距離を取る。
アーツを集中し始めたリスカムの周囲の塵が帯電し、髪が浮かび上がる。
目を見開いた彼女の瞳に青い光が宿る。
「サンダーストーム!!」
直後、リスカムの盾から空気を焼く極太の稲妻が放たれる。
それは空気を焼きながら龍が食らいつくような動きでレユニオン数人の体に突き刺さる。
高電圧の雷撃にレユニオン兵士達は激しく体を痙攣させ、やがて黒い煙を吐いて倒れ込む。
「…カバー!」
重装オペレーター達は再びリスカムを取り囲むと、雷撃によって生まれた隙を見逃さずにさらに隊列を推し進める。
「…く、くそ!こんなの突破できるわけ…!!」
レユニオン兵士の1人が恐れ慄いて後ずさる。
しかし、その動きは後ろに立っていた大柄の兵士の体に遮られる。
その男は息を大きく吐き出すと、兵士を横に押し除け、大型のスレッジハンマーを両手で握り、リスカム達に迫る。
重装オペレーター達の間に緊張が走る。
「おい…おいおいおい!」「…どうやって入って来たんだよッ!?」
重装オペレーターの叫びに「ブッチャー」はニヤリとマスクの下で笑みを浮かべ、オペレーター達の前に立つ。
「…ぶっ潰してやる」
大男はそう言って大きくスレッジハンマーを振りかぶり、横なぎに重装オペレーター達に向けて振り抜いた。
最前列の重装オペレーター達は息を呑みながら素早い動きで一歩後ろに身を引いた。
直後、盾を擦り火花を上げながらスレッジハンマーがオペレーター達の目の前を通り過ぎていく。
「…ちっ!」
ブッチャーは壁にめり込んだハンマーを引き抜こうと、片足を壁に立てる。
重装オペレーター達は目の前の隙だらけのブッチャーを前にして、動くことができずにいた。
ブッチャーのハンマーの威力に気圧され、下がろうとする彼らの横にリスカムが立つ。
真っ直ぐに視線をブッチャーに向ける彼女の姿勢に、重装オペレーター達は盾を構え直し、より密な集団となって対峙する。
「…次は外さねえ」
ブッチャーは腕に血管を浮かび上がらせ、再びハンマーを振りかぶりながら狙いを定める。
リスカムは背後の存在に、「そこそこ」の信頼を置いていた。
握る盾から再び、マグネシウムフラッシュをブッチャーに浴びせる。
視界は白く塗りつぶされ、彼が当てずっぽうで振り下ろしたハンマーが地面をえぐる。
直後、ブッチャーは胸に強烈な衝撃を感じた。
遅れてくる自らの焼ける匂いと、激痛。
「はぁい、おデブちゃん…あっぶないでしょ」
鈍い音をたてて、細剣がブッチャーの胸板に突き刺さる。
アーツを纏ったそれはアーマーを貫き、肉を焼く音を発しながらゆっくりと進みやがて反対側から頭を出した。
声にならない呻きをあげて、ブッチャーは未だハッキリしない視界の中に、ハンマーに足を掛け、細剣を両手で握るフランカを見た。
「残念、アーマーとか…あんまり意味ないのよね」
フランカは微笑むと一気に細剣を引き抜き、蹴り倒す。
音をたてて倒れるブッチャーを見て、レユニオン達は青い顔を浮かべて後ずさる。
「やっぱり私、前線の方が向いてるわ、そうよね」
細剣を払い、笑うフランカを前にリスカムは複雑そうな表情を浮かべ、息を吐く。
「…いつもそれくらい実力を発揮してくれれば」
「あら、助けてもらったのにお礼はないの?」
「…」
リスカムは無言かつしかめた表情のまま、重装オペレーター達とともにフランカを陣形の中へ入れる。
「あー、無視とかする…ふーん?」
「…わかりました。
褒めて欲しいなら後でたくさんしてあげますから、今は現状の打破に協力してください」
「その子供扱いは毎度むかつくけど…まあ、どんな風に褒めてくれるのかは楽しみね…ほんとの本当に楽しみだわ」
フランカはそう言って、重装オペレーター達の肩を掴んで退かし、先頭を行くリスカムの横に並んで陽炎を纏わせる細剣を横薙ぎに払う。
「あなた達、逃げるなら今のうちよぉ。
今ならまだお尻を刺さないであげるわ」
レユニオン達はそう言って不適に笑うフランカと、再び電気を帯びて髪の毛を逆立て始めたリスカムを前に、一歩、また一歩と後退する。
「まだオイタがしたりないなら、そうね…2000度の熱と電撃で『チン』してあげる」
「そういうわけです、撤退をお勧めしますが?」
…
「リスカム達がホットゾーンを抑えている。
オーキッド、合流できそうか」
『あと3分で現着するわ、このまま何事もなかったらだけど…って、ポプカルは!?』
『姉さぁん!雄叫びをあげながら走ってっちゃったよぉー!!』
『カタパルト!あれほど抑えておきなさいって言ったのに!!』
「…ではよろしく頼む」
ジョンは数名のオペレーターと一緒にセクター1、警備担当者詰め所のモニタールームにいた。
そこにはジョンの他にアーミヤ、ジェシカ、バニラ、レッド。
そして一つに結えられた髪を腰から生えた尻尾と同じように揺らし、ピンと立った耳を忙しなく動かす女性オペレーター。
「な、なあ…ドクター?」
「ん?…どうした、ニアール」
ニアールはモニター画面から振り返るジョンを見て、慌てて姿勢を正す。
「いや、その…こうしてあなたの指揮下で動くのが、なんだかとても、その…久しぶりな気がしてな」
「そうか?
…確かに、あの日からもう数日は経つのか、早いものだな」
「ああ、本当に…あの…あの時は…!」
「…どうかしたのか?」
ジョンが一歩近づいて来た事に動転し、ニアールは片手を振つつ距離をとる。
「…い、いや!なんでもないんだ、気にしないでくれ…」
「そうか…ああ、体の調子は問題ないのか?」
「それに関しては問題ない、万全そのものだ!
いつでも指示をくれて構わないぞ!」
「ああ、その時が来たらよろしく頼む」
そう言って微笑み、モニターに向き直るジョンを前に、ニアールは口をつぐみ、出しかけた右腕をそっと戻す。
その様子を、部下である重装オペレーター達が不思議そうな様子で眺めていた。
「…おい、どうしたんだ、隊長」
「…さあ?ドクターに何か言いたいことがあるんだろうけど」
「………信じられるか、みろよあれ…あの隊長がまるで女の子みたいだぞ」
「…お前それだいぶ失礼だからな、絶対聞かれるなよ」
ニアールの頭の中ではえも言われぬ感情同士がぶつかり合い、かるい混乱状態にあった。
(…な、なぜだ…ちょっと礼を言うだけではないか…それでなぜ…これほどまでに緊張するのだ…!)
ニアールは頬に垂れた髪の毛をいじりながら部屋の中をうろうろし始める。
「ニアールさん?」
挙動不審なニアールにアーミヤが駆け寄り、心配そうに見上げる。
「大丈夫ですか?」
「…すまんアーミヤ、私なら平気だ」
ニアールはそう言ってアーミヤの肩に手を置き、モニターを見るジョンに再度向き直る。
その様子を見て、アーミヤは軽く頬を膨らませると、ジョンの元に走っていき、隣に立った。
「ドクター、私たちはこれからどうするんですか?」
ジョンは声を発さずにアーミヤの視線の高さまで体を屈め、モニターの一つを指差した。
その様子をニアールが複雑そうな表情で見ている。
「アーミヤ、ここを見てくれ…ヘラグの担当エリアなんだが…」
ジョンが指差した先には飛びかかってくるレユニオン兵士達全ての攻撃を、凄まじい速度で繰り出される斬撃によってはじき返す、ヘラグの姿が写っていた。
「…普通の人間の動きではない、彼は強化兵士か何かなのか?」
「キョウカヘイシ…?」
「1人で十分だと言う彼の言葉には嫌に説得力があったが…なるほど納得だ」
ジョンは身を正すと顎に手をやり、興味深そうにヘラグの様子を眺める。
「フォックスと張るんじゃないか、これは…」
「フォックス?…誰ですか?」
「…いや、すまない…古い友人だ」
ジョンはそう言うと寂しげに笑い、アーミヤに向き直った。
「ヘラグ…ロドスの正規オペレーターではないとのことだが、彼は一体何者なんだ?」
アーミヤはジョンに問いかけられると、腕のデバイスを起動してパーソナルデータバンクを呼び出した。
「彼は最近、ロドスで受け入れた協力者の1人です。
元々はチェルノボーグで診療所を管理していました」
「…チェルノボーグ事変で焼け出されたと言うわけか…しかし診療所の医者先生がなぜこれほどの戦闘力を…」
「診療所といっても、ただの町医者さんと言うわけではありません。彼も医者というわけではないみたいです。
感染者を診療する闇診療所「アザゼル」…蔑視や忌避感の強いチェルノボーグで、感染者達を一手に引き受けていた医療団体のリーダー…と見られています」
ジョンもまた、同じようにパーソナルデータを呼び出す。
「子供が主な患者…ふむ」
「…彼の話を聞いた時は、あのケルシー先生の腰が浮かびましたからね」
「あの動乱の中で、よくこれだけの子供を連れ出したものだ」
ジョンがさらに詳しい情報を見ようと手を画面に伸ばした時、それに割って入る形でビデオ通話画面が開いた。
『…お?あれ?繋がってるこれ?もしもーし!』
そこからは白と黒を基調にした髪が見え隠れし、たまに目と口が映るどアップの女性が写っていた。
「…あ、あー…うん?」
ジョンは突然のことに動転しながらも、相手に気づかさせるために声を出す。
『あ、なんか聞こえた。
メイヤー!これであってんのかなー!わっかんないー!』
『だから貸してみって!ほら!』
『う、腕はそっちに曲がらないんだよー!』
画面があっちへこっちへ行き来したあと、凄まじい振動で揺れる。
ジョン達がその動きに酔いそうになっていると、ピタリとその動きが止まった。
『…これで、オッケー!聞こえますー!?こちらメイヤーです!』
揺れに揺れたあと、一気に引いた画面の中に、にこやかに笑う亜麻色髪の女性オペレーターが映る。
『あとエフイーターでぇす!』
画面がひっくり返り、逆さまに映ったオレンジの瞳の女性が映る。
「…君がエフイーターか、急な協力要請で困らなかったかな?」
『あ、もしかしてあなたがドクター?ぜーんぜん!荒事は慣れっこだったから懐かしいよぉ!』
逆さまに映ったまま、ニコニコと笑うエフイーターと、画面の端から顔を出すメイヤーが画面を占領する。
「救助要請のあった区画の管理者は…」
『あ、それ私です!
本当にありがとうございましたー!おかげで研究棟は無傷です!
エフイーターはドクターが送ってくれたんですよね!』
「他にも数名合流させたんだが…」
『あ、あの人たちには』
エフイーターは画面を廊下に向ける、そこにはロープでがんじがらめにされたレユニオン兵士達が黒こげになりながら呻いていた。
そしてその脇には複雑そうに頭を掻いている前衛オペレーター達が映っている。
『彼らを縛るのを手伝ってもらいました!』
『映ってるよー!』
エフイーターの言葉にオペレーター達が慣れない動きで手を振る。
「…」
ジョンは呆れたような、安心したような表情を浮かべて画面を見つめる。
「ここの女性は皆…強いな」
『『えへへー』』
画面の向こうで2人の笑い声がこだまする。
「了解した、ではこれより索敵線を2ブロック押し進める。
君たちはそこに向かう部隊と合流後、セーフゾーンに下がってくれ」
『了解!』『わかりましたー!』
「通信終わり」
ジョンはそう言ってビデオ通話を閉じるとアーミヤに向き直る。
「さて、我々も行くとするか」
その言葉にアーミヤ、そしてモニタールームの全オペレーターが反応する。
その時だった。
『ーー・・クター!!・・・ター!!聞こえるか!!』
「…誰だ?こちらジョン、聞こえているぞ!」
『くそ!ようやく繋がった!!…ぐぅうッ!!』
爆音と金切の音を響かせながら、ドーベルマンの声が無線越しにジョンの耳に届く。
『…くそ!あいつらさらに勢いを増して…!!』
「ドーベルマンか!?どうした、何があった!!」
『1次防衛線は決壊寸前だ!あいつらの勢いが止まらない!!…それに…あいつ…あいつが!!』
その時だった。
「 …!?」
ジョンは背中を氷柱で撫でられたような悪寒を感じて、誰もいない壁へ勢いよく振り向く。
「ドクター…?」
アーミヤが心配そうに見上げるが、ジョンはそれに気づかずに壁を見続ける。
透けて見えそうな存在感が、壁の向こうから、まるでジョンだけを射抜くように発せられていた。
「………来て…いるのか…?」
ジョンの呟きに部屋のオペレーター達が首を傾げてお互いを見る。
その時だった。
『ドクター!…聞こえるかドクター!!』
ドーベルマンの叫び声が無線機から鳴り響く。
「…っ!!どうした!?」
ジョンが慌ててデバイスに問いかける。
『くそ!奴がいる!!すまないドクター!私のミスだ!!』
「…いるんだな!あいつが!!」
『ああ、クソ!!まさかここまでの規模とは…!!伝令の1人でも出せていれば!!』
「ドーベルマン!落ち着け!あいつは今どこにいる!!」
数度の爆音のあと、寒気すら感じるほどの静けさが訪れ、そして…。
『…もう…目の前にいる!!』