METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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1日遅れてすいません…。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。
結果はダントツのアーミヤCEOということで、やっぱり愛されてるんですね。

アンケート結果から、票数の多い順で投稿していきます。
お付き合いください。


ロドス 防衛線 戦闘③

ドーベルマンは屋外通路を駆けている。

時折降りかかる矢を、アーツを避けながら、ただひたすらにロドスの先頭を目指して。

その後ろには数人の狙撃オペレーター達が続き、走りながらに眼下のレユニオン達にボウガンを射かけていた。

 

その眼下の光景。

ロドスの側面部目掛けてバイクで突っ込んでくるレユニオン達。

ミルクのように濃い濃霧の中に赤熱を纏い、それを払いながら進む者がいた。

バイク側面に取り付けられたサイドカーに腰掛け、目線は真っ直ぐにロドスに向ける女。

 

タルラ。

 

アーツの光、爆煙の中でも一際存在感を放つレユニオンの首領。

彼女を運ぶバイクもまた、真っ直ぐ突っ込んでくるレユニオン達とは別に、タルラの目線の先を目指して進んでいた。

 

「あいつを止めろ!!」

 

ドーベルマンの指示で、タルラを乗せたバイクにボウガンの矢を浴びせるオペレーター達。

しかしそれらはタルラが無造作に振った腕の動きから生み出された、凄まじい熱波によって、尽くが弾かれ地面に転がった。

 

「ガンナー!狙っているな!?やれッ!!」

 

ロドス側面部のガンタレットが一斉に火を吹いた。

それらもまた、着弾の瞬間に火を撒き散らすことなく、ただ地面に突き刺さる。

ドーベルマンが歯がみし、タルラを鋭い目線で睨みつける。

 

『ま、また…!』

 

「くそ!どこに向かうつもりだ!!」

 

ドーベルマンは、ロドスからの攻撃を全く意に介さずに、ただ視線を一箇所に注いでいるタルラの目線の先を追った。

 

「…セクター1…医療棟…!!」

 

 

ジョン達はセクター間のつなぎ目から、踵を返してセクター1へ走る。

 

「レッド!先行してくれ!」

 

ジョンの指示で廊下の分岐を外れたレッドが、人間離れした動きでダクトの上に駆け上がり、音を立てて構造部分の闇に消えていく。

 

「ドクター!どうしたんですか!?」

 

ジョンの隣を走る前衛オペレーターが、ただならぬ雰囲気にジョンに問いかける。

 

「一体なんだというんです!!」

 

「…あいつが来ている…アーミヤ、感じるか?」

 

「…わ、わかりません!…ドクター、どうしたんですか!?」

 

「…」

 

ジョンは拳を握り、音を立てて歯を食いしばる。

 

「タルラだ…あいつが来ている」

 

ジョンのその言葉に、周りに追従するオペレーター達に戦慄が走る。

 

「タルラ…」

 

アーミヤは瞳の中に暗い影を落とし、着ているジャケットの胸元を握りしめる。

 

「…本当にあいつが来ているのか?」

 

ニアールもまた、眉間に皺を寄せ、険しい表情をジョンに向ける。

 

「…感じるんだ」

 

ジョンのその言葉に、訝しむような顔をするオペレーターが数人。

しかし、救助作戦に参加していたオペレーター達は一様に拳を痛いほどに握りしめる。

 

「ドーベルマン!」

 

ジョンは腕のデバイスに声を投げかける。

すぐに通話先のドーベルマンの叫びにも似た声が帰ってきた。

 

『ドクター!あいつは真っ直ぐセクター1に向かっているぞ!

こっちの武装じゃ止められない!!…ドクター!急いでセクター1の警備オペレーターに退避を……ーーー・・・』

 

「…ドーベルマン!?どうした!おい!!」

 

ジョンは慌ててセクター1の警備にあたるオペレーターとの回線を開くが。

 

「……くそ!!」

 

そこにはノイズが響くのみで一向に繋がる気配のない、通話画面が映る。

 

「…通信ジャマー…!妨害工作員が近くに…ドクター!」

 

アーミヤもまた、デバイスから通信画面を開くが、ジョンのそれと同じような画面が映るのみであった。

 

「…急ぐぞ!ミーシャが危ない!」

 

 

「おーい!誰かいないのかー!!」

 

セクター1医療棟、普段であれば医療スタッフや患者達、オペレーター達で賑わう通路も、赤色灯の明かりに照らされる不気味な空間に変わっていた。

アラーム音の鳴り響く通路を、数人のオペレーターとともに、1ー25リーダーは声を大にして呼びかけて回っている。

 

「…おかしいな、ここが最終防衛ラインのはずなんだが」

 

「誰もいませんね」

 

「…怖い」

 

1ー25リーダーの腕に、震えながら抱きつく感染者の少女。

 

「ああ、ごめんな…しかし、どうなってるんだ?」

 

その時、ユニット1ー25のオペレーター達の歩く通路の先に、暗い通路を照らすライトの光が伸びてくる。

 

「…!誰だッ!?そこに誰かいるのか!?」

 

思わず少女を後ろに隠し、1ー25リーダーは武器を構える。

追従しているオペレーター達もまた、武装を手に廊下の先を睨みつけるが…。

 

「お、おいおい!まて、味方だ!」

 

通路の先で慌ててライトを振り、敵意のないことを示す2人の影。

 

「…ふぃ〜…びびらせるなよな」

 

そこには2人組の重装オペレーターがライトを片手に歩いてくる姿があった。

 

「…はあ、驚かせるなはこちらのセリフだ」

 

1ー25リーダーは武器を収めると、後続のオペレーター達にも武器を下ろすように指示する。

 

「どうしたんだ?お前らはセクター2に向かってるはずだろ?」

 

重装オペレーターの1人がユニット1ー25に近づいてくると、壁に盾と身を預けた。

 

「途中で逃げ遅れた子供を見つけたんだ」

 

重装オペレーターは1ー25リーダーの後ろに隠れる少年少女を見ると、納得したように頷く。

 

「あぁ、なるほどな」

 

「ここが最終防衛ラインだよな?

指揮官…ドクター達はどこに?」

 

「今、艦内での戦闘が縮小しつつあってな、なんでも前線ではケルシー先生が直接、指揮を取ってるとかで戦線が大分前進してるんだ。

ドクターは防衛ラインをセクター2の関節部に集中させてる」

 

「…なるほどな、お前達は?」

 

「居残りさ、ツーマンセルで警備するようにっていう指示でな。

いくらスタンドアローン状態のセクター1でも、その装甲がどんなに丈夫でも…あいつらがどんな手を使ってくるか、わかったもんじゃないからっていう指示でな」

 

「そうだったのか」

 

1ー25リーダーは足元の少年と少女を見る。

 

「ああ、その子達なら、この先にセーフゾーンがあるからそこに預けてったらいい」

 

重装オペレーターはそう言って、先ほど自らが曲がってきた通路の角を指差す。

 

「そこを曲がって真っ直ぐだ」

 

「助かる、ありがとう」

 

「念のため、俺たちもついていってやるよ」

 

重装オペレーター達は壁から盾を拾い上げ、1ー25リーダーの隣に立つ。

 

「いいのか?」

 

「構やしねえって、一回連絡を入れとけば…」

 

重装オペレーターが腕のデバイスを開く。

 

「…は?…これは…」

 

そこにはノイズと砂嵐が映り、金切のような音が発せられている。

 

「おい、それ…!」

 

「…ジャミング!?」

 

1ー25リーダーと重装オペレーターは互いに目を合わせると、即座に非常事態と判断、すぐさま壁に備え付けられたアラーム起動装置に手をやる。

 

その時だった。

突如として重装オペレーター達の背後が、爆ぜた。

1−25リーダーは咄嗟の動きで少女を背中に庇いその場に膝をついた。

重装オペレーターの1人が背中を盾に少年を爆風から守る。

目元を覆った1−25リーダーの腕が音を立てて燃え始める。

あまりの痛みに意識を飛ばしそうになるのを、叫び声を上げてどうにか抑える。

重装オペレーターの背中の装甲もまた、赤熱を帯び始め化学繊維が溶けて床に滴り落ちた。

 

爆風がおさまり、霞む視界の中に1−25リーダーは数人の影を見た。

仮面の兵士達に囲まれながら、ロドスの艦内へと足を進める女。

作戦記録で嫌というほど目にした、レユニオンのリーダー。

 

「…た、ルラ…!?」

 

声を発した瞬間、タルラの目線がゆるりとオペレーター達を捕らえる。

 

「…」

 

一言も発さずに、右手をオペレーター達に向けるタルラ。

1−25リーダーは即座に味方の様子を確認する。

背中に縋り付き、すすり泣く少女。

胸の中に少年を抱いたまま呻き声を上げる重装オペレーター、もう1人は壁に叩きつけられぴくりとも動かない。

後ろにいた仲間は破片を受けたもの、火傷に悶えるもの、武器を構えるものの動きの覚束ない前衛オペレーター。

1−25リーダーは渾身の力を込めて立ち上がり、タルラを睨みつける。

 

タルラはうっすらと口角を上げると、右手にアーツを集中し始めた。

 

「タルラさん、やめてください」

 

その動きを止めるものが、その隣に現れた。

 

「あなたの力は強力すぎる、姉さんが近くにいたら、まとめて灰になってしまう。

…それに、彼らはもう戦えない、無駄ですよ」

 

ガスマスクを付けた兵士は、目の前にいる満身創痍のオペレーター達を見ながらにそうタルラに進言する。

タルラはちらりとガスマスクの兵士を見た後に、ゆっくりと腕を下ろした。

1−25リーダーのふらつく足元に、少女が抱きつく。

潤んだ瞳をタルラに向けて、足を震わせながら睨みつける。

 

「…私が怖いか、同胞達よ」

 

タルラがそこで初めて言葉を発した。

その一言ののち、タルラ達はゆっくりとオペレーター達の横を歩き始めた。

 

「探し物を終えたらすぐに去る」

 

レユニオン兵士の1人、腰に長刀を携えた者がすれ違いざまにそう呟く。

オペレーター達はそれぞれの負傷に悶え、ゆっくりと横をいくタルラ達をただ行かせることしかできなかった。

 

「余計なことは考えないことだ、追えば…今度は殺す」

 

長刀を帯びた兵士は1−25リーダーの肩に手を置き、タルラ達に合流する。

 

「…お前達は…」

 

1−25リーダーは顔を覆うバラクラバを外す。

 

「お前達は!…何が…何がしたいんだよ!!」

 

その叫びに立ち止まることさえなく、タルラ達は通路を進んで行った。

 

 

ミーシャは子供達とシェルターにいた。

最終防衛ラインと定められたセクター1医療棟、そこには民間人患者、大勢の戦闘オペレーターと医療オペレーターが支持を待ち、待機している。

ミーシャと子供達は医療スタッフの1人に見守られながら、一つの移動ベットに腰掛けて、落ち着かなそうに周囲を眺めている。

 

「…だめだ、無線が使えない」

 

「ジャミングの発生源はどこだ、ブリッジはまだ特定できないのか?」

 

「ロドスのニューラルネットも応答しない…どうなってるんだ」

 

戦闘オペレーター達はそれぞれに腕のデバイスに目をやりながら、四方八方に無線通話を試みている。

 

「まさか…ブリッジが」

 

「それはあり得ない!非常時にはどの管制塔も完全に閉鎖される、爆撃されたって被害は出ないはずだ!

まして、あいつらの侵入を許すなんて…」

 

「内部に通信妨害工作員が侵入してるんだろう、それしか考えられない」

 

「…なら、これもすぐにおさまるかな」

 

「そう願いたいものだが…」

 

戦闘オペレーター達が焦燥に身を駆られながらも、どうにか冷静であろうと自身を落ち着かせる中、医療スタッフ達は自らの職務を懸命にこなしていた。

少しでも医療機器から外れれば容態がいつ急変してもおかしくない患者、幼い子供達。

そのすべてに気を配り、忙しなくシェルターの中を走り回る医療スタッフ達。

 

「あの…」

 

ミーシャは医療オペレーターの1人に声をかける。

白い長髪に紅眼、手にはロッドを構えた女性オペレーターはその声に立ち止まり、ミーシャに向き直る。

 

「どうしたミーシャ、具合でも悪くなったのか?」

 

「ワルファリンさん…一体、何が起こってるの?」

 

ワルファリンは周囲を見渡し、確認した上で再度ミーシャに向き直ると、その隣に腰をかけた。

 

「なぁに心配するな、これぐらいの騒動、すぐにおさまる。

それよりも体調は大事ないか?」

 

ワルファリンはミーシャの額に手を当てる。

 

「…熱は治ったな、何か変調があればすぐに言うんだぞ」

 

「ありがとう…でもさっきからこの船…酷く揺れているわ」

 

「…心配ない、妾達がついている。

今はただ安静に努めるんだ、良いな?」

 

「…」

 

ワルファリンはミーシャが頷いたのを確認して立ち上がり、微笑むと再び患者達のベットの群れに向かう。

ミーシャは子供達を近くに抱き寄せると、目を閉じ、足元の揺れが一刻も早くおさまるのを、ただひたすらに祈った。




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ー再生開始



『アーミヤの午後』



ロドス セクター2 訓練棟 フードコート
PM 01;37

オペレーター達で賑わう声

『ドクター、あそこ、あの席が空いていますよ!』

『ああ、わかったからそう急かさないでくれ、コーヒーが溢れる』

食器を置く音

『はー…』

『お疲れ様でした、どうでしたか?』

『ん、訓練見学のことか?…んん…』

『何か分からないことでも?』

『…分からないことだらけだ。
ここは私のいた場所とはあまりにも違いすぎてな』

紙袋の擦れる音

『アーミヤのは…甘口だったな、ほら』

『ありがとうございます!
タコスなんて久しぶりだなー…ハム』

『私もだ…フム…ハグ…』

『…』『…』

咀嚼音

『おいしぃ!』

『……』

『ドクター?』

『…ぅ美味すぎるッ!!』

オペレーター達のざわめき

『…ど、ドクター?』

『鼻に抜けるスパイスの香りと牛肉の脂身の甘さ!爽やかさを演出するトマトの酸味、細切りのキャベツの歯応えもいい!そしてそれを一つに纏め上げるチーズ!
これはメキシコのタコスというよりアメリカのそれに近いな!』

『メキシ…?』

『!』

激しい咀嚼音

『そ、そんな慌てて食べなくても…』

『!』

喉を激しく鳴らす音

『ああ!ドクター!口の!口の端から溢れて!』

『…ッ…はぁ〜……そしてそれを流し込む甘すぎる炭酸飲料……背徳的だ』

『あわわ…』

『ん?どうしたアーミヤ、食べないのか?』

『…た、食べます!食べますよ!』

咀嚼音

『…余程腹が空いてたんだなあ、そんなにがっつかなくてもタコスは逃げないぞ?』

『…!?』

胸を叩く音

『あーほら、飲み物』

喉を鳴らす音

『…はぁ…!ケホケホ!…ど、ドクタ〜…』

『懐かしいなあ、この味…あの菓子、なんと言ったか…』

『…まったくもう』

『おかわりを…』

『もうダメです!暴飲暴食は体に毒ですよ!』

『…それもそうか』

オペレーター達の話し声

『そういえばアーミヤ』

『なんです、ドクター?』

『君のその…頭の耳なんだが』

『耳ですか?』

『前にも一度聞いたんだが、それは本物なんだよな?』

『…そうですよ?』

『触っても?』

『え!?』

『ダメか?』

『…ど、ドクターなら、いいですけど』

椅子の軋む音

『では失礼して』

『……ん』

『ふむ』

『…』

『なるほど』

『…』

『ふむふむ』

『…ど、ドクター?』

『はぁー…』

『ど、ドクター!触りすぎです!』

『おっと!すまんすまん』

『…みんなに見られてるじゃないですか』

『ふむ、ちゃんと血の通った耳のようだな』

『当たり前じゃないですか!もう!』

『はー…』

『な、なんですか?』

『…ちょっと髪をかき上げてくれないか?』

『…こう、ですか?』

『…なるほどなあ』

『ど、どうしたんですか急に…!』

『…ん、いや、なんでもない』

『き、気になりますよ!』

『なに、可愛らしい耳だと思っただけだ』

『…!』

激しく喉を鳴らす音

『君は確か、コータスという種族なんだよな』

『……そうですよ』

『ここには色々な種族の者がいるな。
あの青年は…狐耳、あの子は…猫か、あそこにいるのは…頭が蜥蜴だな』

『…あの人はヴァルポ、あの人はフェリーン…レンジャーさんはサヴラですね』

『さっき会ったアドナキエル…と言ったか、あの青年は少し毛色が違うようだが』

『アドナキエルさんはサンクタです、頭の光輪が特徴ですね』

『…ふぅむ』

椅子の軋む音

『…どうかしましたか?』

『いや…あまりにも違いすぎてな』

『…そんなに違うんですか?』

『ああ、少なくともそんなに可愛らしい耳は生えてない』

『…そうです、か』

『まあ…早いとこ慣れないといかんなぁ』

椅子の軋む音

『ドーベルマンはどういう種族なんだ?』

『ドーベルマンさんはペッローですね』

『…そこはスペイン語なのか』

『え?』

『なんでもない、リスカムは?』

『リスカムさんはヴイーヴルですよ』

『変わったツノを生やしていたが』

『それがヴイーヴルの特徴ですから、ちなみにバニラさんも同じ種族ですよ』

『そうなると…フランカはヴァルポで、ジェシカはフェリーンか』

『あたりです、すごい!』

『ハハハ、なんだかやっていけれそうな気がしてきた』

『じゃあじゃあ!二アールさんはなんだかわかりますか?』

『…二アールか…あの耳は馬のそれだが…』

『クランタって言うんですよ』

『はあー…他には?』

『そうですねー…』



……


………カチッ


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