METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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ウルサスの子供達、配信にあたって修正しました
違和感等あればご報告ください


合流

チェルノボーグ西部。

破壊され、略奪され尽くした街並みの中を、数十人の人々が移動していた。

 

「怪我人に手を貸すんだ、1人も見捨てるな!」

 

「狙撃オペレーター、そのまま建物づたいに移動して援護しろ、敵の動勢を見逃すな」

 

『了解、BAGGER2は移動する』

 

「隊長、ニアールさん!」

 

重装オペレーターの1人が、先頭に立つ女性オペレーターに駆け寄っていく。

 

「後方警戒中の狙撃オペレーターが敵の動きを察知しました。

間も無くローカル通信域に入ります」

 

「わかった、重装オペレーターの半数は後方へ回れ!」

 

「…ニアールさん」

 

「わかっている、尾けられているな…私たちは餌だ」

 

「避難民もどんどん増えてきています、このままでは…」

 

「ああ、でも彼等を放ってはおけない」

 

「はい、ですから部隊を切り離して先行させ、もっと早く移動するべきでは」

 

「避難民には負傷者もいる、それに子供も、激しい移動には彼等がついて来れないだろう。

それに少人数では待ち伏せされた時、対応ができない」

 

「…くそッ!

こういう時に市民の避難誘導をするのが軍警察じゃないのか!」

 

「うろたえるな、動揺を彼等に悟られる」

 

「…すいません」

 

「救助部隊、アーミヤ達が気がかりだ…無事だといいが」

 

『ニアールさん、緊急です!!』

 

ニアールの腰の無線機から狙撃オペレーターからの通信が入る。

 

「どうした!」

 

『2ブロック先に敵集団を発見!

道路を塞ぐ形で待ち構えています!

こちらの動きに気付いているのか…』

 

「やむをえない、先鋒オペレーター前へ!

狙撃オペレーターは戦闘になった場合に備えそこで待機!

前衛、重装オペレーター半数を避難民の誘導に残し、残りは私に続け!」

 

『「「了解!」」』

 

「万が一、こちらが劣勢だと判断した場合はかまわん。

我らを残し、誘導隊は戦線を突破しろ、必ず脱出地点に送り届けるんだ」

 

「…了解です隊長」

 

 

「先導していた狙撃オペレーターが敵の集団を発見した。

1ブロック先の大通りに陣取っている」

 

ACEが無線機を片手にジョン達に向き直る。

 

「まるで何かを待ち受けているようだと、どうするドクター」

 

「十中八九、E4の部隊を狙っての布陣だろう。

まだ動くな、動きがあるようなら知らせるように、そう伝えてくれ」

 

「わかった、CROW1聞こえたな…」

 

「やはり、ニアールさんは避難民の誘導を?」

 

「おそらくな、それも10人やそこらじゃないだろう」

 

「…何を考えているんだ」

 

ドーベルマンは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「この作戦はもうほとんど破綻している、それなのに…」

 

「ドーベルマンさん…」

 

「…すまない、私もこんなことは言いたくはない…しかし」

 

「ドーベルマン、君の危惧ももっともだ、速さを求められる撤退戦で避難民を抱えるのはリスクが大きい」

 

ジョンはリストバンドのホログラムを見つめる。

 

「それはきっとE4の隊長もわかっているだろう、だが彼女は避難民の救助を優先している。

隊長の性質もあるのだろうが、私にはもっと別の理由があるように思える」

 

「…」

 

「もう国営放送すら流れていない、ここの雰囲気は明らかに変化しつつある。

…この場所に何が起こってる…いや、何が起ころうとしている」

 

「それは…」

 

『報告です!

行動隊E4の姿を確認しました!

レユニオンの集団、およそ1ブロック先にて移動中!』

 

「ドクター!」

 

「敵の動きは?」

 

『レユニオンも気付いたようです!

移動を開始しました!』

 

「狙撃小隊、攻撃を開始。

続いて前衛オペレーターは前に出ろ、敵の横っ腹を突け」

 

『「「了解!」」』

 

「重装オペレーターは俺に続け、我々も出るぞドーベルマン」

 

「…ああ、ACE後ろは任せる」

 

 

「…前方に敵を確認!」

 

「重装オペレーター、前へ」

 

ニアールの前に盾を持った屈強な男達が整列する。

 

「狙撃オペレーター、戦闘開始とともに援護を始めろ。

…前進!」

 

「了解!前へ!」

 

重装オペレーター達が一歩前に歩みを進めたのと同時に、前方からこちらに向かってくるレユニオン達の横から、窓を突き破って前衛オペレーター達が切りかかっていく。

 

「…なんだ、あれは何が起こっている!」

 

『ニアール隊長!

あれは…あれはロドスです!友軍です!』

 

「何ッ!?」

 

 

 

「な、なんだお前達は!?

どこから…ッギャア!!」

 

『敵が混乱している隙を逃すな、切り崩せ』

 

「ふんっ!!」

 

ドーベルマンの鞭の先のフレイルが唸りを上げてレユニオンの兵士の頭に直撃する。

 

『重装オペレーターは左に展開。

逃げ道を与えるな、ここで殲滅する。

狙撃オペレーター、援護を始めろ』

 

「狙撃オペレーター、左翼の友軍を巻き込むなよ、移動する!」

 

『了解、右側に射線を張ります。攻撃開始!』

 

「ドクター、私は…?」

 

『…アーミヤ、君は待機していろ』

 

「…私だって、戦えるのに」

 

『前衛オペレーター、中央からニアール小隊へ向けて抜けろ。

狙撃オペレーターは敵の動きを牽制しつつ前衛オペレーターの援護を…。

…総員、反対側の建物に注視!』

 

 

「アーミヤ達か!

…小隊前進!戦闘に合流する!

重装オペレーター、前衛を囲みつつ戦線に突っ込むぞ!」

 

「了解!」

 

「…無事だったのか、よかった」

 

「ニアール隊長!右側の路地から…あれは、民間人です!民間人が戦域に!」

 

「何だと!?」

 

 

 

「お姉ちゃん…あの人たち、悪い人達と戦ってるよ」

 

「憲兵隊という感じではないですが…」

 

「…かんけぇねえ、こっちの味方になってくれるってんなら誰でもいい!

野郎ども、助太刀するぞ!」

 

「「おう!!」」

 

「ソニア、無理はしないでくださいね」

 

「わかってらあ…アンナはみんなを頼む」

 

「…はい」

 

 

『…状況変更。

前衛は民間人の救援…いや、援護にまわれ、彼等はすでに戦闘に参加している』

 

「了解!無理しやがる…」

 

前衛オペレーター隊はレユニオンを切り裂きながら、民間人の元へと走る。

 

「ドクター、我々の隊からも数人出すぞ、いいな」

 

『ああ、戦線に穴を開けなければ問題ない。

狙撃オペレーター、流れ弾に注意しろ』

 

「聞いたな、左に位置しているものは路地の民間人を守れ、残りは戦域に入ったもの達を援護しろ」

 

ACEは向かってくるレユニオンの兵士を盾で受け流しながら指示を送る。

 

『いいか、民間人に負傷者が出る前にこの戦闘を終わらせる。

E4指揮官、こちらは…ジョン、ドクタージョンといえば通じるか?

この通信はもう君にも届いているな?』

 

「ああ、こちら行動隊E4指揮官、ニアールだ。

ドクター、あなたの救援に感謝する。

我々も戦闘に加わらせてもらう」

 

『合流できて何よりだ。

君の後方1ブロックに点在しているオペレーターの信号は避難民を保護するものか?』

 

「…その通りだドクター、すまない。

作戦行動に逸脱した行為だ、処罰なら後で…」

 

『そんなことはいい、気にするな。

それよりも、彼等を今のうちにこちらへ誘導しろ、敵の部隊が集結を始めた』

 

「り、了解した!

…感謝するドクター」

 

 

『諸君、状況はどうだ』

 

「こちらE2、小隊はすでに敵のほとんどを無力化した」

 

「E3、もう敵に動けるものはいない、負傷者もいない」

 

「行動隊E4は現時点を持って合流した、皆の救援に感謝する…」

 

「ドクター、民間人グループのリーダーと接触。

ドクターとの通信を求めています」

 

『わかった、繋いでくれ』

 

「おう、あんたがこいつらのリーダーか?」

 

『ああ、そうだ。

私は…ドクターと呼ばれている。

随分と元気のいい声だ、無事そうで何よりだよ。

君の名前は?』

 

「…ソニア。

あんた達がここで何してんのかは分からねえが、助けてやったんだ。

今すぐにその借りを返してくれ、あんたらがあいつらの敵だってんなら頼みがある」

 

『随分と唐突だな、なんだ?』

 

「あたし達を保護してくれ、ガキも大勢いる」

 

『頼まれるまでもない、そのつもりだよソニア。

君たちの人数は?』

 

「ざっと20人、学校の生徒と…拾った連中もいる。

あたしがどうにかここまで引っ張ってきた」

 

『20人か、わかった。

…逃げられたのはそれだけか?』

 

「文句あるか?

本当はもっといたんだが、大人しくしてろっつっても聞かねえから置いて…」

 

『わかった、いいんだ。

…頑張ったんだな、私もすぐにそこにいく、顔を合わせて話をしよう』

 

「はあ…?てめえ何言って…おい!聞こえるか、おい!」

 

「もう切れてるよ、ほら、返しなさい」

 

ソニアと名乗った少女は前衛オペレーターに無線機を投げつける。

 

「ちっ!胸糞悪い!」

 

「お姉ちゃん…」

 

「すいません、彼女はいつもあんな感じなんです」

 

「あ…ああそうか。

…とにかく、君たちは我々の保護下に入る、もう安心していいよ」

 

「ありがとうございます」

 

前衛オペレーターはあたふたしながらも、どうにか子供達を隊の中にとどめている。

 

「…自分たちだけで、あの混乱を生き延びてここまできたんだ。

大したものだな」

 

「ああ…。

…ッ!?…ACE、あの子…」

 

ドーベルマンは髪がひどく乱れ、くたびれた服装の少女を見て目を見開いた。

正しくは、その少女の右手に握られているものを。

 

「…ッ!?

おい、その子を!早く!」

 

「…はっ…!き、君…」

 

「なあに?」

 

隣に立っていた前衛オペレーターが、静かに少女の前に立つ。

 

「…それを、こっちに渡しなさい、ね?」

 

「…ママが、手を離さないでって言ったの…」

 

「ああ、わかってる……わかってるよ」

 

オペレーターは声を震わせながら少女に問いかける。

その手をゆっくりと、少女の右手に持つモノに伸ばしながら。

 

「お嬢ちゃん」

 

ジョンはオペレーターの隣に立ち、しゃがんで少女の目線に合わせ話しかける。

顔を上げる少女を前に、オペレーターは慌てて身を引いた。

 

「おいで」

 

「ママの手を離しちゃダメだって…」

 

少女はジョンの膝に腰かける。

 

「いい子だ」

 

ジョンは優しく、それでいてかたく少女を抱きしめ立ち上がる。

そして少女が手にしていたものを手に取り、近くにいたオペレーターがそれを布に包んで預かる。

 

「ママ…ひぐ…ママぁ…うえぇぇ…」

 

「持ち帰るんだ、いいな」

 

「了解です、ドクター…。

…おい!医療オペレーターを呼べ!保冷パックに入れるんだ!」

 

そして、先ほどから睨みつける少女に向かって向き直る。

 

「君がソニアだね」

 

「…テメェがリーダーか」

 

ソニアと名乗った少女はドクターを下から睨みつける。

その眼窩には隈が浮かび、極度のストレスを感じさせる。

 

「そうだ、よくこの子達を連れてきてくれた」

 

「成り行きだよ、成り行き!

アンナ達を守れりゃそれでよかったんだ!」

 

「ああ」

 

「ああ、くそっ!!

あたしはここいらじゃ一番強いんだ、強いから!

…守らなきゃいけなかった、それだけだ!

ああ、くそ…!どうしてこんな…ッ!

は、初めてあたしは…喧嘩じゃなくて…人を…!」

 

「お姉ちゃん…」

 

ソニアに連れられていた少女が心配そうに駆け寄るが、彼女はその姿に気づいていないようだった。

 

「…頑張ったな」

 

「…うるさい!黙れ!慰めるな!

あたし…あたしは…間違ってないんだ…!

…友達が殺されるところだったんだ…間違ってないんだ…!」

 

「…そうだな、君は間違っていない。

みんなを守ったんだ。

頑張った、頑張ったんだよ…ソニア」

 

「…だ、まれ…」

 

突然、ソニアは糸が切れたかのように倒れた。

周囲にいたオペレーターが慌ててそれを支える。

 

「お姉ちゃん!」「…ソニア!」

 

「医療オペレーター、治療を、急げ!」

 

「は、はい!」

 

その様子を、小隊の全員が見ていた。

1人のオペレーターが口を開いた。

 

「…レユニオン、あいつらは狂ってる」

 

「…」

 

その様子を、アーミヤは1人、遠巻きに眺めていた。

 

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