METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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読者の皆様、更新が大変遅くなり、本当に申し訳ありません。
約半年の間、なんの報告もなく投稿を停滞させていたことをお詫びします。

正直に言わせていただきますと、最終投稿日である2月の半ば…という時点で察しの良い読者の方はお気づきかと思いますが、作者はウマ娘にドはまりしてしまいました。
ウマ熱も収まり始め、久しぶりに投稿ページを覗くと、約半年も、それも連絡も為しに投稿が途絶えていた作品を、毎日何人もの方が覗きに来ていただいているという事実を知りました。
そして私の投稿を待っているという言葉もいただきました。

「波の激しい奴なんだな」と、以前も申しましたが、作者はこういうやつです。
「絶対にエタらせない」という目標を立てておりましたがこれがまたむずかしい。

ウマ熱は実はまだくすぶっており、白夜極光にも手を出したりしてますが、アークナイツ熱もふつふつと沸き戻ってきた今、進めていきたいと思います。
「少し先の電柱を目標に」という具合に、まずは4章までは進めます。

大分長編になる予定です、皆様と一緒に歩いて行けたら嬉しいです。

…ないと断言したいですが、次はしっかり報告していきます。


格納庫にて

「下がれぇ!スクランブルだぞ!

メカニック以外は発着場から離れろぉッ!」

 

「この医療ポッドは『ブーマー』の持ち分だ、積み込みにかかるぞ、急げ!」

 

防塵バイザーを着けた作業員達がロドス甲板上で慌ただしく走り回る。

無機質な白色灯で照らされる格納庫に、甲高いアラームの音が響き渡る。

 

『上部甲板の展開を開始する、クルーはスタンバイポイントで待機せよ』

 

艦内アナウンスと共に重々しい音を立てて格納庫の天井、ロドスの上部甲板が持ち上がり始める。

開ききった天井からは赤い赤色灯が煌めく縁に彩られた満点の星空が広がり、新たにそれを覆う。

同時に格納されている全ての機体に火が入り始め、格納庫を熱気が充満し始めた。

 

『バッテリーオン』

 

『バッテリーオン確認、ローターブレード角度確認開始』

 

『鉱石エンジン、気化オリジニウム異常警告なし』

 

『ハザードランプ異常なし』

 

『メカニック、テールローターの動きに違和感があるんだが…』

 

『あー…了解、確認します』

 

滑り止めの塗布された合金の甲板に並ぶ鈍く輝く黒鉄色の機体群。

それらは間近に迫る発進に備えて唸り声をあげる。

 

『只今より搭乗を開始する。

フロアランプグリーン、繰り返す、フロアランプはグリーン』

 

アナウンスと同時に鉄の両扉が開け放たれ、そこから物々しい装備を身に包んだロドスのオペレーター達が駆け出していく。

真剣みを帯びた瞳をぎらつかせながら自らの搭乗機に向かう彼らをメカニックたちは緊張感を滲ませながら見送る。

 

「自分の搭乗機体を間違えるなよ!

学生旅行じゃないんだ、バスを乗り間違えましたじゃ済まねえぞ!」

 

バラクラバを外しながら一人の前衛オペレーターが悪戯な笑みを浮かべて、後続の隊員たちに声を投げかける。

彼の後続についている、年季の入った装備を身に纏ったオペレーターたちは呆れ顔で自らの隊長を見る。

自分たちの搭乗する機体に向かって駆けて行く彼らは、アーミヤや副官のリスカム、フランカを連れたジョンの前を横切る。

 

「あの隊は?」

 

ジョンが目の前を駆けて行く部隊を見ながらに問いかけると、アーミヤが微笑みを浮かべて答える。

 

「物資輸送隊の皆さんですね、彼らはその護衛部隊です」

 

「随分と威勢がいいじゃないか」

 

「今回のような事例は別にしても、長距離輸送任務となると何かと物騒ですから」

 

「その護衛も精鋭揃いになると、納得だ。

我々の搭乗機は?」

 

「あ、えーと…。

…あれです!あの大きいやつです!」

 

アーミヤの指さす方向にジョンが視線を向ける。

 

「おいおい」

 

ジョンは思わず自分の目を疑う。

そこには格納庫の一角を堂々と占領する、モスブラックの八枚羽の大型ヘリが鎮座していた。

端から端までで50メートル走ができそうな長躯と、見上げるような体躯。

ローターに至っては格納庫の端から端を我が物顔で占有するような大きさ。

人間を数人束ねたようなエンジンを二基、背中に乗せるように据え付けられたそれは、地鳴りのようなエンジン音を響かせ始める。

両開きの後部ハッチから降りたスロープを、戦闘装備を身に着けたオペレーター達が荷物を揺らしながら搭乗していく。

 

「ロドスが保有するヘリの中でも最重、最大の空飛ぶ頑張り屋さんです。

いつ見ても、おっきいですねぇ」

 

「頑張り屋さん…?

どう見ても軍用の重輸送ヘリのそれだぞ…」

 

「いえいえ、立派な民間バリエーションですよ、たぶん。

クロージャさんがどこからかパーツで仕入れてきて一人で組み立ててしまったんです」

 

「あの変じ…クロージャが?

…人は見かけによらないな、本当に」

 

「…『ドクター』も一枚嚙んでるって話です、あくまで噂ですけどね」

 

アーミヤがこそこそとジョンに耳打ちする。

 

「『私』も関わっているのか…医薬品製造会社が聞いてあきれるな。

…なあ、アーミヤ。

参考までに聞きたいんだが、ロドスは一体どれだけの「輸送機」を保有しているんだ?

此処だけでもヘリが3機…あのデカブツを合わせたら4機あるが」

 

歩きながらに頭に手を当てるジョンの後ろを含み笑いを浮かべながら、リスカムとフランカが後ろに続く。

 

「ええと…」

 

アーミヤはリストデバイスからホログラムを展開し、そこにロドスの管理データを投影する。

ジョンの目の前に投影されたそこには、複数の航空機のデータが画像付きで表示された。

 

「…哨戒ヘリ2機に医療ヘリ3機…重輸送ヘリ1機…ティルトローター機が1機…あ、今任務で行動中の機も合わせたら2機、ですね。

あとドローンが…沢山と、あと…あ、輸送車とか、装甲車とかも数えた方がいいですかドクター?」

 

何故かウキウキと嬉しそうに説明を続けるアーミヤの横で、ジョンは目じりを揉みながら歩みを進める。

 

「もういい…おい、本当にここは薬を作る会社なんだな?

軍用ヘリや装甲車でデリバリーするのか?この世界では。

うっすらと感じてはいたが…この会社は…。

いくら自衛の為とはいえ、立派な軍事企業じゃないか」

 

「デリバリーは間違ってませんが…それ、ケルシー先生が聞いたら怒りますよ」

 

「おいおい間違っていないのか?本当にあれでデリバリーしてるのか?

…頭が痛くなってきた」

 

「いずれは把握していただくデータでしたので、ちょうどよかったです」

 

「…立派な代表だな」

 

にこやかにしているアーミヤの横で頭を抱えるジョン。

そんな彼らの姿に気が付いた、HMDバイザー付きのヘルメットを被ったオペレーターが駆けてくる。

 

「ドクター!」

 

顔を真っ青にしているジョンの前に立ち、爽やかな声と共に手を差し出してくる。

 

「今回のフライト、よろしくお願いします!

パイロットのカーペンターです!」

 

「ああ、君がこのデカブツの…」

 

ジョンが握手に答えると、

 

「はい!

フフフ、このデカブツ…『エセックス』でどこへなりともお連れしますよドクター!」

 

「『エセックス』…か、大空で沈没しないといいがな、はは」

 

明後日の方向を見ながら笑っているジョンを小突きながら、アーミヤがカーペンターに頭を下げる。

 

「この方はロドスの航空輸送部門のロードマスターですよ。

すいません、カーペンターさん…」

 

「いえいえ!ドクターはどうも調子が悪いご様子!

今回は安全運航でお送りしますので、どうかご安心ください!」

 

「…いや、すまない。

…その、記憶障害になってから、まだここでの生活に慣れて無くてな。

よろしく頼む、カーペンター」

 

「はい!では搭乗を!

まもなく出発いたしますので!」

 

カーペンターはそういうと切れのある敬礼をして走っていく。

 

「本当に具合が悪いのでは、ドクター?」

 

リスカムが心配そうにジョンの傍らに立ち、顔を覗き込む。

 

「…いや、ちょっと呆気に取られただけだ、心配するな」

 

そんな様子を見ていたフランカがアーミヤにこっそりと近づき、耳打ちをする。

 

「ちょっとアーミヤちゃん、ドクターはお年寄りなんだから、あんまりこき使っちゃだめよ」

 

「そ、そうですね…はい」

 

囁かれた言葉にアーミヤがうつむき加減に答える。

 

「フランカ」

 

ジョンに声をかけられた驚きからフランカは尻尾をピンと立てて身を震わせる。

 

「心配するな、私なら大丈夫だ。

アーミヤには本当によくしてもらっている。

十分すぎるほど、世話になりっぱなしだ」

 

「べ、別に心配したとかじゃないですけど。

…ごめんねアーミヤちゃん、厭味ったらしく聞こえたなら謝るわ」

 

「い、いえいえ!そんなことはありませんから!」

 

アーミヤがフランカに向かってあたふたとしている所に、部下のオペレーターに指示を飛ばしていた一人の女性が近づいていく。

 

「ばあ!」

 

「ひゃあ!?」

 

銀鼠(ぎんねず)色の髪を大きくなびかせながら、アーミヤに飛びつくウサギ耳を生やした女性オペレーター。

 

「さ、サベージさん!?」

 

「どうしたのアーミヤちゃん、いじめられてるの?」

 

悪戯に笑いをアーミヤの周りにいるオペレーター達に向けるサベージと呼ばれた女性。

フランカやリスカムはどこかばつが悪そうに苦笑いを浮かべる。

 

(あのウサギ耳は…たしかアーミヤと同じ種族の、コータスといったか)

 

やがてその目線はジョンの方へと向き、サベージはひときわ明るい表情を見せる。

 

「…」

 

そしてしばらくジョンのことを眺めた後、どこか思い切った様子で口をひらいた。

 

「「初めまして」ドクター、私はサベージって言います、どうぞよろしくね」

 

(サベージ…今回の作戦で陸上部隊の指揮を任されていたか)

 

「ああ、よろしく頼む」

 

ジョンの差しだした握手にこたえるサベージ。

グローブ越しに伝わる掌の感触。

背中の得物、肉たたきのような突起付きのハンマーを振るうのに何も心配はいらない力強さ。

ジョンが握手からいろいろなことを感じ取っている、そんな様子をアーミヤはどこか複雑そうに眺めている。

その雰囲気にジョンが気づいたその時、サベージは握手している手を大きく振る。

 

「いやー!ちゃんと挨拶したかったんだよ、作戦の前に会えてよかった!」

 

「ん…ああ、そうか。

地上部隊の指揮官だったな、我々よりも先に先行するんだろう?」

 

「そうだよ、ドクターたちがお尻を噛みつかれないように、しっかりとっ捕まえてくるから!

安心していってきてね!」

 

「それは頼もしいな」

 

「ドクター、我々もそろそろ」

 

リスカムがジョンの傍らに立って搭乗を促す。

 

「おお、そうだな。

ではサベージ、お互い無事に戻ろう」

 

「うん、ドクターも気を付けて」

 

リスカムやフランカたちを連れ添って大型ヘリへと向かうジョン。

その後姿を、サベージは少し悲しげな笑みを浮かべて見送る。

 

「サベージさん」

 

「ん?

あれ、アーミヤちゃんは行かなくていいの?」

 

「…」

 

打って変わって明るい表情を浮かべるサベージを前に、アーミヤが言葉を探して目を泳がせていると。

 

「…やっぱり記憶、なくしちゃってるんだねえ」

 

「…サベージさん、ドクターは」

 

「うん、アーミヤちゃん、私なら大丈夫。

ケルシー先生から聞いたときはビックリしたけど、ドクターの顔は昔のまんま、安心しちゃった」

 

アーミヤはサベージの言葉に目を見開き、そして心底ほっとしたように胸をなでおろす。

 

「…そう、ですか。

ドクターは、ドクターの顔は…昔と変わらないんですね。

サベージさんと…私たちと一緒にいたときのまま、なんですね」

 

「…うん?

…ねえ、アーミヤちゃんこそ大丈夫?

私なんかより、アーミヤちゃんの方が心配だよ…だってドクターは…」

 

「…いえ、私も大丈夫です。

うん…サベージさんのおかげで元気が出ました」

 

「ほんと!?

…んやぁ!もう相変わらずかわいいなあ!アーミヤちゃんは!」

 

サベージはアーミヤに抱き着き、頭に鼻を押し付けて激しい呼吸をする。

 

「んひゃああぁ!?」

 

「くんかくんか!

いいにおい!久しぶり!」

 

「さ、サベージさん!?」

 

アーミヤはサベージの胸元で苦しく息をしながらもだえる。

 

「…やっぱりちょっとおおきくなったね。

アーミヤちゃん、帰ってきたら三人でご飯を食べよう、約束ね」

 

頭の上で消え入りそうな声が聞こえた。

アーミヤは目を瞑り、小さい動作で頷いた。

 

「…はい」

 

サベージは最後にアーミヤの頭を優しくなでると、ゆっくりと離れた。

 

「…んじゃあ、お互い一仕事しにいくとしますか!」

 

「…はい!」

 

サベージは大きく伸びをすると、装甲車両の列に並ぶオペレーター達の前へと向かう。

そしてアーミヤもまた、大型ヘリのスロープの前で待つジョンのもとへ駆けて行く。

 

装甲車両のボンネットに腰かけ、腕を組んで待つ男。

サングラスにバラクラバ、黒い頭髪の中に埋もれるウルサス人特有の丸い耳。

 

「どうでした」

 

耳を揺らしながら向かってくるサベージに向かって男は問いかける。

 

「…うーん」

 

サベージは目を閉じ、口元に笑みを浮かべたまま唸る。

 

「うん、確かにあの人だった」

 

「…そうですか。

それは…まあ、いいことなのでしょうね」

 

「ケルシー先生の言うことは本当。

あの人は私に気が付かなかった、表情だけははっきりした人だったから」

 

「では、中身はやはり別人、と?」

 

「そうだろうね」

 

気づけばサベージの周りには、屈強な男が集まり、その言葉に耳を傾けている。

 

「…当分は、しっかり見ていようか。

こればっかりは私にはわからない。

でもいつか、いつか「ドクター」は帰ってくる。

あの人は約束を破らない」

 

サベージは装甲車両に乗り込み、背中に背負っていたハンマーを両腿で挟んで支える。

 

「アーミヤちゃんは、何か知ってるかもだけど」

 

男たちが次々に車両に乗り込み、ヘッドライトが開き始めたロドスのゲートの先、雲越しの月光が照らす荒野に降り注ぐ。

サベージは閉じていた瞼を薄く開き、スロープでアーミヤと葉巻の争奪戦を繰り広げているジョンを見つめる。

 

「私は帰ってきてくれただけでうれしいよ」

 

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