METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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ちょっと閑話

『現在時刻、06:35(マルロク、サンゴ)

上部甲板は開放済み、上空は波一つない凪の空だ。

先発のブーマー、準備はできているか?』

 

エンジン音の響く機内、コックピットではパイロットが世話しない機器チェックを終え、ヘルメットに装着されているスピーカーに耳を傾ける。

管制塔からの無線連絡が終了した直後、鼓膜を突き刺さんばかりに響く金切り音に頭を振りながら、パイロットは副操縦士と共に苦笑いを浮かべる。

 

『ああ、いつでも出れるぞ。

それよりも管制、今日の音響はまた一段と冴えわたってるな』

 

『…おかしいな、ヘルメット内のスピーカーマイクは全てメンテナンスに出したはずなんだが』

 

『そうかい、じゃあ俺達の耳がどうかしちまったのかもな』

 

『ちょっと待て…ああ、クロージャ技師が遠方での作戦行動の為にヘリの受信機に手を加えたようだ。

恐らくそれの影響だろう。

…ちょうど今それを伝えるメッセージが届いた。

そのままでも通信は可能なようだが、どうしてもノイズが気になるようであれば…面倒だがパイロット、無線通信の際はそちらで使用回線を切り替えてくれ。

デバイスに反映させておく』

 

『ああ、ブーマー了解』

 

パイロットはマイクの回線を副操縦士との独立回線に切り替える。

 

『聞いたか?』

 

『まさか洗脳音波とか搭載されてませんよね』

 

『クロージャ技師ならやりかねないな、ブーマーよりセントラル』

 

ブーマーはトグルスイッチをいくつか弾いて動作を確認し、操縦桿に手を添えて管制塔へコールを行った。

 

『オープンデッキ確認、ブーマーは離陸する』

 

『了解、後続が続く、直上に居座るなよ』

 

『…一番槍か、滾るね』

 

ブーマーが操縦桿を操作した直後、ヘリのローターは空気を切り裂く速度を増していく。

赤色灯を両手に持った作業員が大きく上下に腕を振る。

ブーマーが親指を立てて作業員に掲げ、作業員もまた大きくうなずいてそれに応える。

ロドスの開放された甲板から、巨獣の腹から飛び出すかのようにヘリが上空へと羽ばたいていく。

 

 

『了解セントラル、こちらでもブーマーの離陸を確認した。

こちらも続いて離陸する』

 

ジョンはパイロット席に寄りかかり、風防から先発するブーマーのヘリを眺めている。

顎髭をさすり、何やら感慨深そうに息を漏らすジョンにカーペンターは気が付いた。

 

『…おや、ドクターどうされました?』

 

ジョンは耳に着けているヘッドギアから聞こえるカーペンターの声に微笑むと、通話スイッチを押して答える。

 

『いや、この格納庫からの離陸は難しいだろうに、うまいものだと思ってな』

 

『ここのパイロットたちは百戦錬磨ですから、みんなこれくらい慣れたものですよ!』

 

『たのもしいな。

いろいろとロドスに無理を言われてきたんじゃないか?』

 

『うぇ!?

…いや、まあ…』

 

『ははは!

どんなにいい作戦を立てても、それを実行する者と送り届ける者がいなくてはお話にならない。

私はここがどういう組織なのか、まだよくはわからないが。

少なくとも、君たちのような腕の良いパイロットを大事にできる組織なのだということはわかったよ』

 

『…はは、うれしいです。

そうですね、まあ確かに難題は時々言われますが』

 

『アーミヤか?ケルシーか?』

 

『…ど、ドクター』

 

『それとも私かな…?

あまり無責任なことは言いたくないが、いろいろと迷惑をかけていた節はあるようなんだよな…。

ふむ…しかしアーミヤもあの幼さで皆をよくまとめられているが、それにはきっとあのえもいわれぬ威圧感が関係してると思うんだ。

さっきも機内で私が葉巻を口にするとそれはもう魔王のような剣幕で』

 

『ドクター…これ、オープン回線です』

 

カーペンターの言葉にジョンは思わず後ろを振り返る。

ジョンと同じくヘッドセットを付けたアーミヤが満面の笑みでジョンを見ていた。

 

『そ、それではドクター、本機はまもなく離陸しますので、あの…』

 

『…』

 

『あと…本機は禁煙ですので…』

 

アーミヤは張り付いたような笑みを浮かべ、隣の席をポンポンと叩いている。

カーペンターは力の抜けた動きで後ろに戻っていくジョンの気配を察しながら苦笑いを浮かべる。

 

『…ああ、わかった』

 

オープン回線には堰が切れたようにオペレーター達の押し殺した笑いが響きはじめる。

 

『ドクター』

 

しかしそれもまた、アーミヤの小さい言葉でまたなくなった。

 

『ふらふらとしていないで、早く席についてください、危ないですから』

 

『…わかった』

 

『…』

 

『…なあ、アーミヤ』

 

『ん、怒ってませんよ?』

 

『まだ何も言ってないんだが』

 

『別に怒ってませんって、あれくらいのことで』

 

『…怒ってるじゃないか』

 

『何か言いました?』

 

『何も』

 

『葉巻も全部渡してください、まだ持ってますよね』

 

『…だろう』

 

『ドクター?』

 

『…さっき渡しただろう』

 

『持ってますよね?

胸元に、ほら…ほら…!

…なんで腕を組んでるんですか、隠してますね』

 

『持ってない』

 

『確認します、動かないで…ドクター、腕が邪魔です』

 

『持ってない』

 

『確認しますから…腕…う、腕が、邪魔なんです!

なんですかこのすごい力!』

 

『持ってないって』

 

『陰口ばっかり言って!

私、知ってますからね!みんなに私が怖いとか、うるさいとか触れ回ってるでしょう!』

 

『言ってない』

 

『じゃあさっきの会話は何だったんですか!』

 

『…やっぱり怒ってるじゃないか』

 

二人の様子を見ていたオペレーターの一人が、バラクラバの隙間から栄養食を頬張りながらつぶやく。

 

『なあ、これ大事な作戦なんだよな』

 

『そのはずなんだけどなぁ』

 

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