METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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裏方達の出撃

山影から朝日が差し込み、荒野を純白に染め上げていく。

穏やかな風に砂煙を舞い上げる地面を見下ろし、数機のヘリが轟音を発しながら空を駆けて行く様を地上部隊は開放されたゲートから見送っていた。

 

運転席に座るオペレーターがフロントガラス越しにそれを見て唸る。

 

「うーん、やっぱりヘリ部隊は派手でいいねえ。

隊長、急行部隊が出発したぞ」

 

「隊長、我々も」

 

「オーケイ」

 

サベージは腰に刺さった無線機を取り出し、呼びかける。

 

「全員聞いてるよね、私たちはこれからレユニオンの置き土産を叩きに行く。

ヘリ部隊の動きに気づいて、奴らがおうちに慌てて戻る前に、彼らを鉄格子のなかにぶち込むよ」

 

『『『了解』』』

 

「医療部隊のミルラちゃん、聞こえてる?

聞こえてたら何か一言お願いしたいなあ」

 

無線機からの投げかけに、薬瓶を医療オペレーターと確認していた、メガネをかけたヴァルポの少女が慌てふためく。

ミルラの落とした薬瓶を、慌てて近くの前衛オペレーターがキャッチする。

 

「ひゃ、はい!

き、聞こえてますです…!」

 

『外の任務はこれが初めてだっけ?

頼りになる先輩オペレーター達もたくさんいるし、緊張しなくていいからね』

 

「は、はいぃ!」

 

『大丈夫大丈夫、戦闘はそこにいる野郎たちに任せておけばいいからさ』

 

サベージの言葉にミルラの周囲にいる前衛オペレーター達がサムズアップを見せて笑う。

ミルラは緊張の抜けきらない苦笑いを見せてお辞儀すると、無線機に再び向き直る。

 

「み、皆さん、私はこの任務が初仕事ですけど、皆さんの足を引っ張らないようにッ頑張ります!」

 

『よろしく』『がんばれよ』『ヒュー!』

 

無線機からの元気いっぱいの意気込みを聞いたサベージは微笑むと、再び無線機に声を投げかけ始める。

 

「重装部隊のジュナー、行動隊のみんなは元気かなー!」

 

そんな無線機からの呼びかけに筋骨隆々の重装オペレーターに囲まれたヴァルポの女性オペレーターが苦笑いを浮かべて答える。

 

「こちらジュナー…サベージ、久しぶりの任務で浮かれるのもわかるけど。

こういう時は隊長らしく堂々と点呼を取った方がかっこいいと思わない?」

 

重装オペレーターの面々が肩を震わせたり、やれやれと首を振る中、サベージの元気な声が再び無線機から飛んでくる。

 

『あはは、戦場なんて嫌なところに向かうときは、暗ーい無線通信よりこういうパーソナリティ感があった方がいいでしょ!』

 

「そうかもしれないけど、まあいいわ。

重装部隊はとっくに準備完了よ、いつでもどうぞ、隊長」

 

『行動隊も準備はできている』

 

ジュナーはその無感情な声に頬を緩ませる。

声の主、仮面の女性オペレーター、ヤトウ腰に差した刀剣を揺らし、装甲車の運転席の背もたれに体を預け、運転手に指で指示を出す。

 

「我々は車列の先鋒、敵を目視確認次第、その鼻先に突っ込む、それでいいのだな」

 

『うん、でも無理はダメだよ。

相手が飛び道具主体だった場合は…』

 

「後続に道をあけ、重装部隊に華を譲る、だな…委細承知している」

 

ヤトウの後ろ、装甲車の搭乗席には狙撃オペレーターのレンジャー、術師のドゥリン、重装オペレーターのノイルホーン他、複数人の軽装備オペレーター達が待機している。

うとうとと眠りに落ちそうになっているドゥリンの横のオペレーターがわたわたと慌てているさまを、仮面の下でにやにやと笑って見ているノイルホーンに、指際の動きだけで『起こせ』と伝えるヤトウ。

 

「士気の向上も兼ねているのだろうが、あまりはしゃぐのも考え物だぞサベージ」

 

ヤトウの言葉に、サベージははてなを浮かべて首をかしげる。

 

『その通りだ』

 

サベージは短いその言葉にハッとした表情に切り替わると、声のトーンを落として答える。

 

「…ドーベルマンさん、は準備オッケーなかんじですか?」

 

『準備オッケーなかんじですか、とはなんだ。

お前はリーダーたる自覚があるのか』

 

無線機に向かって静かに怒りをぶつけるドーベルマン。

その周囲には軽装備のベテラン戦闘オペレーター達が各々の装備を確認している。

 

「私の部隊が監視…もとい監督として参加しているのを忘れるなよ」

 

『わかってますよ先輩、やだなーもう』

 

「わかっているならさっさと締めて、出発の号令を出せ馬鹿者」

 

『うむむ…これからそうしようと思ってたのに』

 

サベージは苦々しい表情から一転、神妙な面持ちになり、無線機に声を投げかける。

 

「みんな、ロドスを取り巻く環境が変わった…てのはもう理解しているよね」

 

音楽を聴いていた仲間のイヤホンを外し、無線機を指さす前衛オペレーター。

 

「昨晩、沢山の仲間が傷ついた」

 

金属製の注射器を医療キットに丁寧に収め、目に決意を滲ませる医療オペレーター。

 

「大勢の患者さんたちが危険に晒された」

 

ハンドルを強く握りこむ運転手たち。

 

「友達を傷つけられたって人も、いると思う」

 

盾の握り心地を念入りに確認する重装オペレーター達。

 

「この作戦でも、沢山の人が傷つくと思う。

戦うってことはそういうこと、私たちみたいな人間はそれを理解している。

レユニオンと戦うってことはそういうことだって、理解している」

 

サベージの言葉に、車列部隊の面々は総じて拳を握りしめて耳を傾ける。

 

『だけど、納得はしていない』

 

『私たちはロドス、「全ての者の明日を守る」ために手に武器を取っている』

 

『相手が殺しに来るなら、私たちはそれ以上の力をもって相手を救おう』

 

『それが私たちロドスなんだ』

 

 

ジョンは、ヘリの座席でヘッドギアから聞こえてくる無線通信に耳を傾けている。

真剣な面持ちで聞き入るジョンの隣で、アーミヤもまたサベージの言葉を反芻している。

 

 

『帰ってきたドクターに、それを見せてあげよう』

 

『この作戦、私たちはミーシャって子も、レユニオンも含めて救うんだ』

 

『ドクターたちはそれを実現しに行く』

 

『だから、私たちは安心して、安堵して、あと腐れなく、それができるように。

徹底的にレユニオン達をやっつけにいこう』

 

『それで…、みんなでここに帰ってこよう、ロドスに』

 

装甲車のエンジン音が格納庫に響き渡る。

荒野の砂地を噛んだタイヤが、砂煙を巻き上げて進んでいく。

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