METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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作戦

「それでは改めて、ドクター。

カジミエーシュの騎士、ニアール…あなたの指揮下に入らせていただく」

 

「よろしく頼む、私はドクター…ジョン、今はこう呼ばれている」

 

「…呼ばれているとは妙な言い回しだなドクター」

 

「…別部隊に合流するたびにドクターのことについて説明せねばならない、面倒だ。

ニアール、ドクターは訳あって今、記憶が不明瞭な状態なんだ」

 

「それは、本当か…?

そうか、だが指揮能力は健在のようだ」

 

「はい、それについて保証します」

 

「アーミヤ…すまなかった。

随分合流が遅れてしまった…」

 

「い、いえ!

こうして合流できたのですから、それにニアールさんは当然のことをしたまでです」

 

「私の保護下にあった37名、加えて戦線に参加した21名の子供達…60名近い避難民か」

 

「それについては私から提案がある」

 

ジョンはリストバンドのホログラムを起動する。

 

「彼等は我々とは別行動を取る」

 

「…それはどういうことだ、ドクター」

 

「部隊から何名か護衛につけたうえで西端の脱出地点に先行してもらう」

 

「数名のオペレーターだけでは、襲われたときにひとたまりも…」

 

「まあ聞け、この先は大通りが二股に分かれているが、どちらも終着点は一緒だ」

 

「西端だな」

 

「我々はこちら、距離の長い方を通って西端を目指す」

 

「…我々が囮になるのか」

 

「そうだ、派手に行軍して奴らの注意をこちらにそらす。

ここは中枢地区からはすでに遠い、敵は数が少なく、中央から追ってきたとしても、広範囲の捜索は行いづらい。彼等が敵に襲撃されるリスクは低くなる」

 

「…ゾロゾロと大勢で移動するよりは、はるかに襲われるリスクは少ないな」

 

「ですがそれでは我々が、ドクターの身を危険に晒すことに!」

 

「そうだ、当初の作戦と矛盾する」

 

「それでもだ、我々は彼等を保護した責任がある」

 

「…」

 

「彼等はどんなことがあっても、ここから避難させる」

 

「…分かり、ました」

 

「そして、彼等の先導役だが…ニアール、君に頼みたい」

 

「私が…?」

 

「君は優れた指揮官だ、避難民を守りつつ、西端近くまでたどり着いた。

その技量を見込んで、頼む」

 

「…ああ、騎士の誓いにかけて、彼等を守ろう」

 

「部隊の選抜は君に任せる」

 

「ああ、わかった」

 

「…危険な行軍だぞドクター。

我々の人数で敵を引きつけつつ撤退するというのは」

 

「やれるさ、やらねばならない」

 

「…やりましょうドクター」「やれますよ!」「おお!」

 

オペレーター達は次々に声を上げる。

 

「士気は高いようだな」

 

ACEはにやりと笑って部下達を見回す。

 

「先ほどのアレを見たら、いやでもやる気になるというものだ」

 

ドーベルマンはため息を吐きつつ頭に手を当てる。

 

「君は違うのか、ドーベルマン」

 

「…そんなわけはないだろう、今にも体が勝手に暴れ出しそうだ」

 

「そうこなくてはな」

 

 

「ドクター、お話があります」

 

「…なんだ、アーミヤ、君も移動の準備をしなさい」

 

「私も戦列に加えてください」

 

「…」

 

「私も戦えます」

 

「…」

 

「戦えるんです」

 

「どうやって?素手で敵を殴り倒すか?」

 

「違います」

 

「ならどうする、その華奢な腕で何ができると?」

 

「…」

 

「先ほどの少女を見たとき、私の中でひどく震えるモノがあった。

それが良心なのか、罪悪なのかはわからないが。

ただ言えるのは、ああいうのはもうごめんだ、ということだけだ。

…君もニアール達とともに、戦線を離れ…」

 

次の瞬間、ジョンの目の前に凄まじいまでの白い閃光が閃いた。

それは横転した車に直撃し、そのまま建物の中ほどまでに車を吹き飛ばした。

ジョンは、アーミヤに向き直り、目を見つめた。

 

「やっと、こちらを向いてくださいましたね」

 

「…それは、一体何をした。

君がやったのか?」

 

「ドクター、これがアーツです。

オリパシーに感染したものが手に入れる超常の力」

 

「…」

 

「…ドクター、覚えてないかもしれませんが、私はこの力で何度もあなたを救いました。

そしてこれからも、あなたのためにこの力を奮います。

…ドクター、私に術士部隊を与えてください」

 

「…」

 

「もう見ているだけは嫌なんです。

与えられるだけの、奪われるだけの存在には戻りたくないんです」

 

「アーミヤ」

 

「…それに、私、一応あなたの上司なんです。

少しくらい頼ってくれたって…」

 

「お嬢ちゃん、あー…その、なんだ。

あれはつまり、君がやったってことだな?」

 

「え、あ…はい」

 

「…うーん…なあ、アーミヤ。

どうやら私はな、少年兵というものが大嫌いだったらしいんだ。

子供が戦う姿を見るとな、どうもこう、嫌悪感に襲われる、自分自身へのな」

 

「…ドクター?」

 

「君の特異な力は理解した…理屈はさっぱりわからないが、理解はした。

だが、それでも、それでもだ…君に戦って欲しくはないんだ。

他でもない、私自身のためにもな」

 

「…」

 

「…だが、どうやら私は、聞く限りだと、その力に何度も救われているらしい。

そうだな、アーミヤ」

 

「はい…」

 

「…なら、これ以上は単なる私のわがままになってしまうな」

 

 

『ボス!俺、大きくなったらボスを守る戦士になる!』

 

『勉強は苦手だよ…ここ、教えてよボス!』

 

『フランク・イエーガーっていう名前、嫌いなんだ…』

 

 

『俺が、あなたを守る…ビッグボス』

 

 

「…私を、助けてくれるか…アーミヤ」

 

「…はい、ドクター」

 

 

「これより作戦行動を開始する」

 

ジョンは腕のリストバンドに語りかける。

その声は、そこにいるすべてのオペレーターの耳に届いている。

 

「諸君もわかっていると思うが、本作戦は当初、指揮官である私の救出作戦だった。

なんとも情けない話だが、記憶が全くと言ってもいいほど不明瞭なのだから、私にはなんら責任はないと思っている、というのは冗談だ笑ってくれ、本当はとても申し訳なく思っている」

 

「ハハハ」「何をおっしゃいますか」

 

「ありがとう、ここまでよくついてきてくれた。

あともう一踏ん張りだ。

…私は諸君らの知る、ドクターという存在とは程遠いのかもしれない。

記憶の不明瞭な私の言葉など、価値がないと一蹴してくれても構わない」

 

ジョンの言葉に、オペレーターの全員が耳を傾ける。

 

「だが遂行してほしい。

私の不確かな記憶の中で一つだけ確信して言えることがある。

それはここがむせ返るほど混沌としてくそったれな状況だということだ。

私は一刻も早く、ここから抜け出したい。諸君を連れてだ。

…約束する、我々は誰1人として欠けることなくここから脱出する、避難民を連れて」

 

アーミヤはジョンの後ろに立ち、その姿を真っ直ぐ見つめる。

 

「諸君、繰り返し告げる。作戦開始だ。

…さっさとここからおさらばして、皆のことを教えてくれ」

 

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