METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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空の上では

AM7:12

 

龍門近辺の気候には珍しく、風一つない凪の空。

黄色の砂塵の舞わない乾燥地帯は美しく、それでいて厳しい一面を持ち合わせた自然をヘリの乗員に伝えている。

 

ロドス所有の医療ヘリ「ブーマー」のパイロットは、操縦桿を軽く握り、縦隊で空を切り裂いていくヘリの集団、その中ほどで哨戒ヘリの後ろ姿を見つめている。

ヘッドセットの周波数を操作し、自分の機体のクルーに声を投げかける。

 

『さて、ブーマーに搭乗しているオペレーター諸君。

ロドスを出発して、現在30分ほど経過している。

もう一度「荷物」や装備の総点検を行ってくれ』

 

パイロットの声に、数人の医療オペレーターがせわしなく動き出す。

 

「うむ…ポッドの動作に問題はない。

すぐに治療ができるように機器の初期動作は全て完了させておけ」

 

ワルファリンの指示に従い、医療オペレータは様々なモニター機器の前でコンソールを操作する。

そこから少し離れた座席で、護衛のオペレーター数人が各々の装備を点検している。

 

『機長、現在位置、暫定目的地まで40キロ』

 

『了解、そろそろ隊列の変更だな』

 

その直後、ブーマーのヘッドセットに総指揮を行う「エセックス」から、全体に向けてのコールがかかる。

 

『エセックスから急行部隊全体へ、現在作戦は問題なく進行中。

現地到着を前に部隊陣形の再構成を行う』

 

『こちらブーマー、了解』

 

『スターバック・1了解です』『スターバック・2了解した』

 

『レイクローザー、了解』

 

『ハープーンシューター、指定の位置へ移動する』

 

ところ変わってティルトローター機のコックピット。

 

『こちらグッドボーイ、了解!』

 

『ポール、今回はアクロバットは無しにしてくださいよ。

今回の任務、お客さんは満席なんですから』

 

副機長から苦笑いと共に投げかけられた言葉にポールと呼ばれたパイロットは肩をすくませる。

 

『そりゃお前、時と場合にもよるだろ。

敵さんの攻撃を避けるときは、仕方なくグッドボーイを揺らすこともあるかもしれん』

 

『そりゃよかった、俺達は現地が占領されてからの後発組ですからね』

 

『何事も予定通りいかないのが航路(人生)ってもんさ』

 

『縁起でもない』

 

『…しかしまぁ』

 

ポールは操縦席に据え付けられたモニターを操作し、後ろの搭乗席を映す。

 

『今回のお客さんは随分と静かじゃないか、物資輸送隊のやつらを乗せたときなんて放っておいても期待が左右にロールしそうだったってのに』

 

グッドボーイ号の搭乗席、そこには行動隊E3、E4、そして新設部隊「METAL」の結成にあたって、様々な舞台に属することになった民間からの戦闘員である二人の姿があった。

一人はリストデバイスから、何かしらの機械の設計図をホログラムで眺めており、もう一人は大型のボウガンの弦の張りを機材を用いて調整していた。

 

『新入りが二人ですか』

 

『新設部隊METAL結成にあたって編入されたって話だよな、操縦がなけりゃ呑みでも誘いたいくらいの別嬪さんだが』

 

『そのときゃ私も誘ってくださいよ』

 

 

グッドボーイ号機内。

 

「なぁあんた」

 

話しかけられたエーギル人の少女は胡乱な瞳を一人のオペレーターに向ける。

 

「俺はE3リーダー、コールサインは「シバ」だ、今回はよろしく」

 

バラクラバを指で下げ、目立つ火傷跡を気にもせずにシバは少女に話しかけ、手を差し出す。

少女はその手をゆっくりととり、口にくわえていた棒付き飴を取り出すと口を開いた。

 

「…グラウコスです、よろしくおねがいします」

 

「あぁ、よろしく」

 

E3リーダー、シバはグラウコスと固い握手を交わすと、今度はボウガンを弄り回しているもう一人のエラフィア人の傍に歩み寄る。

 

「…んン…!」

 

その少女は固そうなボウガンの弦を機械の力で張り直しているようだが、どうやらうまくはらないようだ。

 

「…忙しいところすまない。

今少し、いいか?」

 

「…後で、手伝ってくれるなら」

 

少女は両肩にこもっていた力を抜くと、シバに顔を向ける。

 

「ファイヤーウォッチ」

 

少女は短く言い放つと、油のついた手をズボンで拭ってから差し出した。

 

「E3リーダーのシバだ。

今回の任務、よろしく頼む」

 

「よろしく…」

 

握手を交わした後、ファイヤーウォッチはシバに向かって機器の一つを差し出す。

 

「そっちを抑えていてほしい」

 

「あ、あぁわかった…こうか?」

 

「…もっと強く引っ張ってほしい」

 

ファイヤーウォッチに急かされながら手伝うシバ。

 

二人の様子をなんの気なしに見ていたグラウコスは、二人の足元にある機器の電力源であるバッテリーを見やる。

 

「…バッテリー」

 

「ぬぎぎぎ…!」

 

「…もっと強く引っ張って」

 

「い、いや…これで全力…!!」

 

ファイヤーウォッチと顔が真っ赤のシバはグラウコスの言葉に気づかない。

ため息を吐きつつ、グラウコスは二人に近づき、腰を落としてバッテリーを指さす。

 

「…あの」

 

「ふぬぬぬ!!!

…へ?」

 

素っ頓狂な声を上げたシバがグラウコスに気づき、ファイヤーウォッチも視線を向ける。

 

「バッテリー、表示が狂ってます。

…恐らく、表示より充電されてないはず」

 

「そんな、まさか」

 

ファイヤーウォッチがすこし慌てた様子で、バッテリーに近づく。

 

「ちょっとまっててください」

 

そういうと、グラウコスは自身の座席から大きめのバッテリーを取り出してくる。

 

「私のを使っても、いいですよ」

 

「…助かる」

 

ファイヤーウォッチは素早くバッテリーを機器につなげると、それは勢いよくボウガンの弦を巻き上げていく。

歓声を上げるシバと、少し頬の緩むファイヤーウォッチ、そしてどこか満足そうにしてその後の調整も手伝い始めるグラウコス。

その様子を二アールは微笑み交じりにみつめる。

 

「どうしました隊長」

 

「ん、いや何でもない」

 

そう言って二アールは隣の女性オペレーター、行動隊E4の副官に向き直る。

 

「君とはまだドクター救出作戦からの付き合いだったか」

 

「ええ、随分命も救われました」

 

そういうと副官はバラクラバを外してにこりと微笑む。

 

「そうだったか?」

 

「…えぇ、私だけではありませんが」

 

二アールはその言葉に思わず笑みをこぼす。

 

「今回も盾の役目、存分に果たせるといいのだがな」

 

副官は二アールににじり寄ると、そっと耳打ちをする。

 

「…残念でしたね、今回は。

…ドクターと別のヘリで」

 

「…ッ!?」

 

二アールは一気に顔を赤面させる。

 

「な、ななな!?」

 

 

『…なんだ、存外楽しそうにしてるじゃないですか』

 

副操縦士はそういうとモニターから顔を外して自身の持ち分のコンソールを操作する。

ポールはため息を一つ吐くと、副操縦士越しにキラリと朝日を反射する機影を見つける。

 

『…おっと、あれは』

 

 

『こちら龍門近衛局所属、赤竜(チーロン)

前方を飛行中のロドス所属機、応答されたし』

 

エセックスのパイロット、カーペンターは周波数を龍門機のそれに合わせる。

 

『こちらエセックス、龍門機の合流を歓迎する』

 

『歓迎感謝する。

現時点をもって我々龍門飛竜隊、赤竜(チーロン)青竜(チンロン)黄竜(ファンロン)はロドスとの共同作戦に合流する』

 

通信と同時に龍門近衛局所属のヘリ部隊がロドスの陣形に轟音をたてて近づいてくる。

漆黒の機体にナンバリングらしきものが記載されたそれは、ロドスのモスブラックの機体群に驚くほどよくなじんだ。

 

「あれが…」

 

ジョンはエセックスの操縦席の少し後ろ、指揮官席の傍に設けられた強化ガラスの窓に顔を近づけて、嘆息する。

 

「近衛局のヘリ部隊か」

 

「そうですね、時間ぴったりです」

 

アーミヤはリストデバイスに目をやりながらジョンの傍に立つ。

 

龍門近衛局のヘリは見事な制動でロドスのヘリ群に近づくと、事前に示し合わせた通りの位置で随伴を始めた。

 

「…よく訓練されている、心強いものだ」

 

『全く』

 

ジョンの耳元のヘッドセットから声が上がる。

カーペンターは真横に随伴する赤竜に目をやって続ける。

 

『凪の日とはいえ、見事なものです。

さすがは龍門の矛、近衛局ですな』

 

『龍門機が合流したということは、アーミヤ』

 

『ええ、作戦地域まではあとすこ…』

 

その瞬間、アーミヤの言葉を遮るかのようにコール音がエセックスパイロット含め、ジョンやアーミヤ、その他指揮系統に属する者に響き割った。

 

『き、聞こえますか!!

聞こえてたら返事を、返事をお願いします!!誰かっ!!』

 

『こちらロードマスタ―のカーペンター。

まずは貴官の所属、コールサインを述べられたし』

 

『…!!

ッ!すいません!

こちら陸上…強襲部隊、医療班のミルラです!』

 

『貴官の通信はドクターに向けてのものか?』

 

『は、はい!

はい、そうです…ドクター!

ドクター、助けてください!!』

 

ジョンは自らのヘッドセットを操作し、ミルラの発している周波数に合わせる。

 

『ミルラ、ジョンだ。

落ち着いて状況を説明しなさい』

 

『ど、ドクター!

みんな、みんなが!』

 

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