METAL GEAR × Arknights   作:安曇野わさび

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蜂の襲撃

荒野の中を複数の車両が轟音を上げながら走り抜けている。

装甲車両の天板を開放し、身を乗り出しているオペレーターがボウガンを構えながら、ボンネットをバンバンと叩いて運転席に叫ぶ。

 

「もっとスピード出せ!追いつかれるぞ!!」

 

「これでベタ踏みなんだ!

エンジンが燃えちまう!」

 

助手席に座るジュナーが窓から顔を出し、後方を見据える。

 

「あいつらこんな隠し玉を…!」

 

直後、車両の脇から空からの銃撃が地面を爆ぜさせながら迫る。

 

「来たよ!回避!」

 

「フンヌゥ!!」

 

運転手はハンドルを勢いよく回しながら、横から迫る銃撃をどうにか避ける。

 

「おわぁ!!落ちる!!気をつけろ!!」

 

天板にしがみつきながら狙撃オペレーターは後方に向かってボウガンの矢を放つ。

アーツを纏ったそれはまっすぐにそれに吸い込まれ、爆散した。

 

「当たった!」

 

ジュナーはその言葉に眉を吊り上げて叫ぶ。

 

「あんたねえ!」

 

そして再び、後方へ振り返ると歯噛みしながら再び腹の底から叫んだ。

 

「こんな状況じゃ何処撃ったって当たるに決まってんでしょうが!!」

 

荒野を行く車両団の後方、その空を埋め尽くさんばかりに甲高い音を立てながら漆黒の群れが車両を追い立てている。

それは無人攻撃機の群れ、ローター音を響かせ、機体下部に据え付けられた火器が鈍い光沢を放っている。

その数は、尋常ではない。

 

「『スウォーム』…!!レユニオンのやつら、どこでこんなに無人機を!!」

 

それは正に蜂の群れ(スウォーム)

 

「サベージ!まだ生きてる!?」

 

『生きてるよッ!?

なんなら横を走ってるけど!?』

 

ジュナーの車両の真横でサベージが窓を叩きながら、無線機に向かって叫んでいる。

 

「よかった!これだけの規模のスウォーム、制御装置がきっと近くにある!」

 

『わかってる!

…くっそー、航空部隊に無線が通じない…!

あいつらジャマーも使ってるのかなぁ、用意周到な事で…!』

 

サベージとジュナーの無線通信にまた別のコールが入る。

 

『サベージ、このまま走り抜けてしまえば制御範囲外に抜けられないか!』

 

ドーベルマンの乗った車両は殿、車両の後ろも開け放ち、そこから狙撃オペレーター達が必死の形相でボウガンを撃ち続けている。

 

『このままじゃ現地に着くどころか、道中の敵とやりあう前に矢が尽きるぞ!』

 

「いやぁドーベルマンさん、そりゃ厳しいかも…!」

 

サベージは時折荒れるリストデバイスのホログラムを見つめて苦々し気につぶやく。

そこには刺々しく荒波を立てている波形が表示される。

 

「こんな強力な通信波見たことない…こりゃ無線が通じないのはこのせいだな」

 

『じゃあ制御範囲外に出るってのも厳しいってこと…!?』

 

「…おかしいな…こんな強力な通信波なら航空隊も気づくはず、それなのに航空隊から何もアクションがないなんて…」

 

『もう航空隊は範囲外にまで進んで…危ない!!』

 

ドーベルマンの叫び声にサベージが後方へ振り返ると、そこには銃撃に晒されながら左右に車体を揺らすドーベルマンの車両があった。

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

『問題ない!だがこのままじゃじり貧だ!!』

 

「さて、どうしたもんか…!」

 

サベージが後方のスウォームを睨みながら苦々しく口を歪める。

その時だった。

 

『―お困り―な―ロドス―みんな!』

 

突如として外部からの無線通信が入る。

それは強力な通信波の影響からかひどく荒れた内容だったが、どこかで聞いた声にドーベルマンの耳がピンと立つ。

 

「この声は…!」

 

慌てて辺りを見回すドーベルマン。

すると車両団の左の彼方から、猛烈な砂塵を上げて接近する一台の車両があった。

その車両にはロドスにとって見慣れた企業ロゴが砂塵の向こうでも確認することができた。

 

『あなたのおそばで真心こめて!

ロドスの守護天使エクシア!只今参上!!』

 

そう言うや否や、赤髪の天使が四駆の天板を開け放ち、そこからロドスにとっての福音のラッパを吹き鳴らした。

その瞬間、スウォームの群れはすさまじい勢いで爆炎に呑まれていく。

 

『ペンギン急便だと!?』

 

『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん!』

 

「な、なになに!何が起こってるの!?」

 

サベージは窓に張り付きながら、こちらに向かって手を振るエクシアを凝視する。

 

「ぺ、ペンギン急便!?

なんでこんなところに…いや、でも助かった!」

 

『ロドスは依頼を出していないはず…よね!?』

 

ジュナーもまた、驚きの声を隠せない。

 

『話はあと!今はこの状況をどうにかしなきゃ!テキサス!』

 

『わかってる』

 

四駆は急減速したかと思うと、一気に殿の車両に並び、エクシアはドーベルマンに手を振りつつ笑顔を向ける。

 

「此処は私が受け持つから!みんなはこいつらをどうにかする方法を考えて!」

 

『はぁ!?

いや、助かるには助かったが!なにか案があるわけじゃなかったのか!?』

 

「いやぁこっちとしても、まさかみんながこんなことになってるとは露知らず…。

でも、サプライズの驚きは増したでしょ?」

 

エクシアは頭をかきながら、へへと笑う。

 

『あーもう!相変わらず行き当たりばったりだな運送屋!』

 

ジュナーの叫びが無線内に響き渡る。

 

「迷惑だったら今から帰ってもいいんだぞ」

 

テキサスはピコピコとチョコ菓子を咥えながらつぶやく。

 

『迷惑じゃないわよ!ありがと!』

 

どこかやけくそなジュナーの言葉を聞いてテキサスもまた頬を緩める。

サベージはリストデバイスのホログラムからマップを表示する。

 

「…時間はできた。

あとは何か…全く、腹立つぐらい何もないわね!」

 

そこには延々と広がる荒野と、点在する風雨で削られた岩盤の山。

 

『どりゃりゃりゃ!

あはー!何処撃っても当たる当たる!』

 

『エクシア!無理に下がるな危険だぞ!』

 

『大じょーぶ!ドーベルマンさんももうちょっと前に行った方がいいよ!

よ!流れ弾が当たるかもしれないし!』

 

『しかし…!』

 

心配そうな声を上げるドーベルマンをよそに、すさまじいドライブテクニックで銃火をかいくぐるペンギン急便の車両。

その運転席ではテキサスが汗も見せずにハンドルを流れるような動きで操作する。

 

『うちのテキサスは運転だって超一流なんだからだぅッ!!』

 

『ペラペラしゃべるな、舌噛むぞ』

 

『はんでからいふぁないで!!』

 

後方からはすさまじい爆音と銃火の音が鳴り響く、サベージは冷静さを取り戻した頭で思案する。

 

「…まっとうに考えれば、この山のどれかに制御装置がある。

だけど…」

 

サベージはマップで襲撃を受けた地点を確認する。

 

「すでに10数キロは走ってる。

こんな範囲で通信波を送れる装置なんて聞いたことないし、あったとしてもこの規模で作動させるにはとんでもない大きさになるし、その分エネルギーも食う…」

 

サベージはマップを拡大。

車両団が進む荒野の先にある他よりも一回り大きい山に目をやる。

 

「…考えられる可能性は…!」

 

サベージは無線を取り出すと全体に向けてコールする。

 

「みんな聞いて!

これから車両を2台、隊列から離れさせるよ!

具体的には医療班と狙撃班の車両!」

 

『『『はぁ!?』』』

 

『何を言ってるんだサベージ!

そんなことをしたらスウォームに袋叩きにされるぞ!』

 

『エクシアの援護なしじゃ数分も持たない、ましてや2台だけなんて!』

 

「大丈夫、きっと奴らはその2台を追わない」

 

サベージはマップを開いて車両団から枝分かれするように一本、指で道を作る。

 

「医療班には医療ヘリのスターバックと連携をとるために、強度の高い周波数で通信できる装備がある。

隊列を離れたらすぐ航空隊に無線連絡をし続けて、繋がるまでだよ」

 

『…なにか策があるのか』

 

「…まあ、ちょっとした賭けというか…勘だけどね」

 

『勘…!?』

 

「どちらにしろ、エクシアたちだってずっと私たちを守れるわけじゃない。

どこかで行動はしないと…あ、車両二台はスウォームが追尾してきそうだったらすぐに車列に戻ってきて!

…ごめんね、危険な思いをさせちゃうけど」

 

『問題ありません、隊長』『医療班もいつでもいけます』

 

「ミルラちゃん聞こえる?」

 

『ひゃ、ひゃい!きこえてまひゅ…!』

 

「あちゃー、緊張してる?

まぁ無理もないか、だけど」

 

医療オペレーターのミルラは同乗している前衛オペレーターの一人から無線を渡されると、おずおずとそれを受け取り、サベージの声に耳を傾ける。

 

『どうかよろしくね、無線が通じたら、ドクターに助けてってちゃんと伝えて』

 

「は、はい…!」

 

『大丈夫、ドクターに繋がれば、きっとどうにかしてくれる』

 

サベージは自らの車両の隣にならんだ2台、運転席のドライバーにサムズアップを送る。

 

「よろしくね」

 

『隊長こそ、ご無事で』

 

2台は勢いよく車列を離れていく。

 

「…だ、大丈夫なんでしょうか、皆さん…なにもないといいんですけど」

 

「大丈夫、ミルラちゃん」

 

運転席のドライバーが不敵に笑いながら、後部座席にいるミルラに応える。

ミルラの隣に座る女性前衛オペレーターが同じように笑いながら、ミルラに告げる。

 

「こういう時の隊長の勘は大抵当たる」

 

 

ドーベルマンは車列から離れていく2台を冷や汗を流しながら目で追う、そして再び後方のスウォームに目を移す。

 

「2台を追わない…?」

 

『勘が当たったかな』

 

「どういうことだサベージ」

 

『奴らを制御してるのは広範囲に通信波をばらまく装置じゃない』

 

サベージは道の先にある小高い丘の群れをマークしていく。

 

「指向性の通信装置だよ、それを使ってうちらをマーク…狙い撃ちしてるんだ」

 

『指向性の…なるほどそれならあの強力な通信波の説明がつく』

 

『このだだっ広い荒野をカバーできる指向性通信装置…?

またそりゃ大層なものを持ち出してきたわね。

だとしたら、周囲の丘の上…私たちを捉えることができる場所に奴らが…』

 

「それに…これが一番心配だったんだけど、装置は一台しかない。

今のこの状況がそれを証明してる。

奴らはあの2台を追わないんじゃない、追えないんだ。

この車両団と、離れた2台、どちらに注力するかは…正直それも賭けだったんだけどね」

 

サベージは冷や汗を一筋流しながら続ける。

 

「わかりやすく、大きい魚を狙ってくれる奴で助かった」

 

 

医療班の車内で無線機のノイズがゆっくりと収まっていく。

 

「…み、みなさん、これ!」

 

「無線のノイズが消えていく…ミルラちゃん!」

 

「はい!」

 

ミルラは無線機を両手で持ち、息を吸ってコールボタンを押しこむ。

 

「き、聞こえますか!!

 

聞こえてたら返事を、返事をお願いします!!誰かっ!!」

 

 

 

 

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