METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
ジョンはリストデバイスと、エセックス備え付けのコンソールを見渡し、そこに表示される地上部隊の車列を現す光点を見つめる。
「…またもや油断だ、このような兵器もあるとは」
そこにはミルラ達医療班の車両から送られてきた「スウォーム」の画像が表示される。
「もっと知る必要があるな…」
「仕方ないですよドクター、兵器だけでなく、様々な能力を持った人たちがいますから」
「しかし、間に合わせなければ彼らに害が及ぶ。
指揮を執るものとしては落第点続きだからな。
…カーペンター」
『はい、ドクター』
「航空隊のロードマスターは君だ。
現在、彼らの支援に当たれる者たちはいるか?」
『それがドクター、さっきから無線が入りっぱなしで。
皆、自分がと声を上げています』
「心強いことだ」
すると、ジョンのもとに直接コール音が入る。
『ドクター、失礼します。
こちらグッドボーイ機長、ポールです。
当機に搭乗しているオペレーターから、ドクターにお話があると』
「繋いでくれ」
するとジョンのもとに落ち着いた口調の女性オペレーターの声が届く。
『ドクター、私たちに行かせてください』
「君は?」
『グラウコスです。
その「スウォーム」ですが、私の武器で対処できると思います』
「詳しく話せ」
…
ロドス所属の航空隊に搭乗する全てのオペレーターにコール音が鳴り響く。
『全オペレーターに告げる。
現在陸上部隊が敵ドローン群の襲撃で足止めを受けている。
これに際し、航空隊からグッドボーイは一時離脱し、当該部隊の救援に向かう』
ロードマスターのカーペンターはレーダーに表示される光点を注視しつつ続ける。
『これにあたって部隊はさらなる再編成を行う。
また、レユニオンは強大な航空兵機を有していることが判明した。
以降は対空警戒を厳とするように』
ジョンはグッドボーイ号機長のポールに無線を送る。
「ポール、単機での救援になるが、本当に問題ないか?」
『スウォームであれば、以前出くわしたことがあります。
グッドボーイの足であれば、最悪緊急で離脱することも可能です、それに…』
『私の武器に関しては先ほど、資料を送った通りです。
大丈夫です、絶対に、失敗はありません』
グラウコスが機械音を響かせながら、淡々と告げる。
『こうまで言われちゃあ、無理ですなんて言えません。
行かせてください、ドクター』
「あぁ、わかった。
…グラスコス」
『はい、ドクター』
「帰ったら何か好きなものをやろう、何がいい?」
『…』
グラウコスは無線の向こうで呆気に取られたのか、機器を操作する音が止まる。
「何でもといってもあれだぞ、私に可能な範囲で…」
『作戦中に随分とお気楽な事をおっしゃるんですね』
「…気に障ったのであれば謝る、どうにもここの隊員は皆若くてな。
老婆心というやつだ」
『…考えておきます』
無線通信が終わり、ジョンはため息を一つ吐き、目元をさする。
「ドクター…」
アーミヤが心配そうに声をかける。
「いや、すまない。
こればかりはなれなくてな…単なる自己満足だ」
「いえ、きっと…伝わってると思いますよ」
ふとアーミヤの方を見ると、機体内でコンソール操作を行っているオペレーター達が、微笑みながらこちらを見ていることに気が付く。
「…なんだ、年寄りは子供に小遣いを渡したくなるものだろう。
君達にも感謝しているよ、当然な」
「はい」「わかってますよ」「感謝しています」
「…まったく、若者はもう少し生意気なぐらいで構わないんだがなぁ」
ジョンは改めて、自身のリストデバイスを展開し、PRTSを起動する。
「現地到着までは私も作戦指揮に参加する、カバーはよろしく頼む」
「「『了解!』」」
…
エクシアは空になった弾倉を車内に放り投げ、弾帯から新たな弾倉を取り出すとコッキングレバーを勢いよく引く。
「テキサース!弾だー!弾持ってこーい!」
テキサスは車体に取り付けられたミラーを駆使しながら、ぎりぎりのところでドローン群の火線を避け、そのたびにサスペンションが悲痛な叫び声をあげる。
「弾は車内にあるだけだぞ、エクシア伍長」
「嘘!?私伍長!?こんなに頑張ってるのに!」
「まじめな話」
テキサスもまた、新たなチョコ菓子を探し、ダッシュボードに左手をうろうろさせる。
「もつのか、弾」
「…正直厳しいかも!」
エクシアの額に汗が一つ流れ落ちる。
「一発で落ちてくれるんなら、もう2ダースくらいは相手にできたんだけどなぁ!」
「…ん?」
テキサス達の前を走るロドスの車両群に動きがあった。
『ペンギン急便!聞こえるか!』
直後にドーベルマンから無線が入る。
「どうした」
『前方数キロ先に熱源を探知した!
恐らくは敵集団が待ち構えている!』
「…最悪の知らせだな」
「え、なんだって!?」
エクシアが掃射しながら運転席に叫ぶ。
「…この先で検問をやってるらしい」
「うっそー!完全に速度オーバーじゃん!
…え、マジ!?」
(…さて、今ならまだ我々だけでも脱出できるが…)
新たなチョコ菓子を咥えながら、テキサスはハンドルを握りなおす。
『お前たちは離脱しろ!
これまでの救援には感謝するが、このままでは…!』
「…」
テキサスの顔がほんの少し歪む、が。
「なぁに言っちゃってんの!
ここまで来たら最後まで付き合うにきまってんじゃん!」
後方から響くエクシアの声にほんの少し頬を緩ませる。
「…だ、そうだ」
『…!
すまない、もう少しで救援が来るはずだ、我々も後方に一部下がらせる!
持たせてくれ!』
「了解、車両間隔は広くとる様に伝えてくれ」
後方のハッチを開き、狙撃オペレーターがボウガンをもって乗り出したロドスの車両が2台、殿まで下がってくる。
「…これはロドスにパーティは盛大にやってもらわないとな」
「そうだね、燃えてきた!」
…
ティルトローター機、グッドボーイはローターを真横に倒して全速力で当該空域に向かっていた。
『こちらグッドボーイ。
ドクター、聞こえますかどうぞ』
『ポール、無線解度に問題はない』
『当該空域に接近中、眼下に砂煙と黒雲を確認した。
…進行方向にも多数の熱源を感知、恐らくはレユニオンの集団だと思われる』
『了解した、あまり時間はないな…グラウコス』
「聞こえています、ドクター」
『これより、グッドボーイの指揮権を一部君に移譲する。
君のやりやすい場所に導いてくれ』
「了解しました」
グラウコスは耳に着けた無線機の位置を調整する。
戦闘オペレーターの一人が、グラウコスの体にハーネスを取り付け、そこにベルト金具を繋いで機体と繋いで固定する。
グラウコスは後ろに振り返り、操縦席からこちらに顔を向けているポールにサムズアップを返すと後部ハッチが音を立てて開き始める。
『後部ハッチ開放』
直後、まばゆい光が目を焼き、それに慣れた視界に荒野が広がる。
一歩、一歩とグラウコスはハッチ開放部に向かい、手に持った獲物を握りなおす。
「機体を降下、あのドローン群に接近してください」
『了解、総員衝撃に備えろ、これより降下する』
眼下の荒野を見下ろすグラウコス。
ふとその横に、また一人、今度は同じようにハーネスで固定されたエラフィア人オペレーター、ファイヤーウォッチが並ぶ。
彼女は耳元の無線機に手をやると、その場にしゃがみ、ボウガンを手に同じように眼下の光景を見下ろした。
『…カバーは任せろ、私は制御元を探す』
「助かります」
グラウコスの手に持つ得物「フランカー」の機構が展開し、内部装置から青い閃光がバチバチと唸りを上げる。
「バッテリーフル、いつでもいけます」