METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
「なんだ」
『敵集団…ロドスが戦闘を開始しました』
「…わかった、そちらへ向かう」
クラウンスレイヤーと呼ばれたレユニオンの指揮官は無線機を腰にしまい、フードをかき上げた。
「…行くぞ、敵は残さず殲滅する」
その言葉に霧の中から兵士たちが飛び出し、爆炎のあがる戦地を目指していく。
「ロドス…ここで一体何をしていた」
クラウンスレーヤーはフードを深くかぶり直し、遥か彼方の戦地を睨みつける。
「…今度は、逃さない」
ジョン達、ロドスのオペレーター達は第2の牽制ポイントに到達。
そこでレユニオンの暴徒達と戦闘を繰り広げていた。
「くるぞ!構えろ!」
「レユニオン共、学習しない奴らだ!」
重装オペレーター達の盾に暴徒達のマチェットがはじかれ、火花を散らす。
「今だ!突き崩せ!」
重装オペレーター達の手に持つ得物、剣や鈍器がレユニオン達を地面に叩き伏せる。
『狙撃オペレーター、重装オペレーターの補助に回れ。
次のポイントまでもうしばらくここで粘るぞ』
『了解!』
「…あいつらのあの勢いはなんだ?
まるで躊躇を感じない、傷つくのが怖くないみたいだ」
前衛オペレーターの1人が身を震わせながら呟く。
「実際、恐怖を感じていないのだろう。
彼らは自分たちの行為に酔いしれている」
ACEはボウガンに射抜かれてもなお前進を続ける暴徒を見て呟く。
「チェルノボーグは都市国家の中でも特に感染者の風当たりが厳しい都市だ。
…恨みを持つ感染者も多い、それが今彼らの手でこうも破壊され、蹂躙されている。
高揚感と達成感で痛みも忘れるだろうさ」
「…あいつらはもうすぐ天災が降りかかることをわかっているんでしょうか…?
撤退する様子もない、ただがむしゃらに戦い続けている」
「わかっているさ。
でも止められない、今止まってしまえば、今享受している勝利も失われてしまう。
…いや、まだ勝利を求め続けているのかもしれない」
「あいつらはここを破壊できるなら…死んでもいいと?」
「よく見ておけよ、あれが俺たちがいずれ相対する「感染者のもう一つの顔」だ。
…もうすぐ移動する時間だ、持ち場につくぞ」
「了解…」
…
「ドクター、敵の追撃勢力の足並みが乱れてきたぞ。
最初と比べて随分人数も減ってきている」
ドーベルマンが指揮を行うジョンに報告を行う。
「こちらの損害はほぼ皆無。
それに比べて彼らの被害は襲いかかってくれば来るほどに増していく。
君たちの力量に恐れをなすのも当然だが…思い切りが良すぎるな」
「ああ、あれだけ狂ったように襲いかかってきていたのに…いやな感じだ」
ドーベルマンが重装オペレーター達の向こうで襲いくる暴徒を見て呟く。
その時だった。
『…ど、ドクター!
レユニオンの暴徒が敗走!撤退して行きましたが…!
後方から、猛烈な勢いで…き、霧が迫ってきています!』
「ドクター!」
「きたか…アルファ各員へ通達」
…
『アルファ各員へ、濃霧が発生した、敵の襲撃に注意しろ』
「ACEさん!」
「わかっている!
ドクターの言っていた霧の兵士か…。
狙撃オペレーター、重装オペレーターを下げるぞ!援護しろ!」
『了解!小隊は両翼に展開する!中央に道を開けるんだ!』
「打ち合わせ通り、道にフレアを投射する!」
「投射開始!」
フレアの投射がACEの命令を合図に行われる。
「霧に飲まれるぞ!」
乳白色の煙の海はジョン達を凄まじい勢いで飲み込んでいく。
やがてあたりは隣の兵士の所在を判別するのも難しい状態になっていった。
「 …」
先ほどの喧騒が嘘のように消え去り、前衛オペレーターの1人が、喉を鳴らす音だけが響いた。
…
「…」
「クラウンスレイヤー、配置につきました」
クラウンスレイヤー達はジョン達を見下ろす形で大通りの両脇を囲む建物、その屋上に立っていた。
「行け、ロドスを殲滅しろ…1人も逃すな」
「ハッ!」
その直後だった。
眼下の煙の向こうから、眩く煌く閃光が放たれた。
「…っ!?なん…!」
「リーダー!危ないッ!」
直後、クラウンスレイヤー達のたっていた足元は、アーツの砲撃によって粉砕された。
「ぐああっ!?」
「ああああ!」
「お、落ちる!!」
衝撃に直撃したもの、破砕した足元に掬われ、瓦礫とともに落ちるもの。
レユニオンの兵士たちに瞬く間に混乱が伝播した。
「っ!?なんだと…!」
「無事ですか、クラウンスレイヤー!」
「…私は無事だ、それよりも…あいつら」
爆風でほんの少しの間晴れた煙の向こうから、老人の鋭い眼光がクラウンスレイヤーを捉えていた。
「私たちを…捉えていたというのか…?」
…
「やはりいたか」
「ドクター、術師隊はこのまま建物屋上への無差別法擊を続行します!」
「ああ、それでいい。
各隊員はケミカルライト点灯、周囲の味方を見失うな。
足並みを揃えてゆっくり後退する」
『了解!ケミカルライトを点ける!』
アルファ部隊の全員がケミカルライトの容器を曲げ、発光したそれを胸元につける。
「アーミヤ、法擊を絶やすな。
ライトを目印に狙い撃ちにされるぞ。隙を与えるな」
「わかりました!術師隊は護衛の前衛オペレーターとともに後退!
その間もアーツを放ち続けてください!」
『わ、わかりました!』
『離れるなよ、道のフレアが目印だ!
先頭の動きについていけばいい!』
アルファ部隊はつかず、離れずの体制でゆっくりと道に放たれたフレアに沿うように移動を始める。
「…くそ、ロドスめ!思い知れ!」
霧の向こうから、アーツの衝撃で落下した兵士が襲い掛かる、が。
「…きたぞ!」
重装オペレーターの盾に搭載されたマグネシウムフラッシュが弾ける。
「ぐああっ!?」
レユニオン兵士はその強烈なマグネシウム燃焼の光に目を焼かれ、悶える。
「敵を視認!この方向!」
重装オペレーターの後ろにいた前衛がケミカルライトを振る。
『アーミヤ』
「術師隊、5時の方向に一斉射!」
直後に複数人のアーツによる砲撃がレユニオン兵士たちに突き刺さる。
と、同時に晴れた霧の合間を縫って狙撃オペレーターの射撃がさらにレユニオン達を襲う。
『急ごしらえの対応策だったが、うまく行きそうだな』
「怖いぐらいに、流石だ…」
…
「…ちっ!」
「奴らの動き、あんなものは見たことがない…」
クラウンスレイヤーは爆破された箇所から少し離れたところで、霧の中に閃光が迸るのを見ていた。
「獣を放つ、準備しろ」
「は、はっ!」
「あいつ、あいつは初めてみる…何者だ…?」
クラウンスレイヤーの脳裏にはこちらを睨みつけるあの老人の目が思い出されていた。
「なんだか面白そうなことをしているねえ、クラウンスレイヤー?」
少女の首筋に氷を当てられたような悪寒が走る。
肩に置かれた手を振り払い、素早い動きで振り返り、獲物を構えてその少年を睨め付ける。
「…メフィスト…貴様、首をはねられたいのか?」
「…怖いなあ、そうツンケンしないでよ。
それよりも、君の担当域はもっと中枢よりのはずだろ?
ダメじゃないか、任務をほっぽりだしちゃあ。
僕でさえ、しっかりとお仕事は終わらせてきたんだよ?」
「…」
「まあ、いいんだ。
僕もそれでよく怒られるしね、人のことは言えないし。
…でも、あれは僕がもらうよ」
「…ふざけるな」
「なんだい?
なあみんな、クラウンスレイヤーは久しぶりに顔に泥を付けられてご機嫌斜めらしい!」
メフィストの言葉を皮切りに霧の中から次々とレユニオンの兵士たちが現れる。
「君の兵士は貴重なんだ、訓練されてるからね。
その点、僕のは消耗品だ、いくら減ろうと苦労はない、だろ?」
「…」
「それに、たまたま街に紛れ込んだネズミを君が、猟犬が相手するのもおかしいだろ?
情報収集はうまくいったのなら、さっさと君の担当エリアに戻りなよ」
「余計な真似をするなら…!」
「君にはまだ仕事が残っている。やるべきことが、そうだね?」
「…ちっ!
…好きにすればいい、あれを「ネズミ」呼ばわりする、お前が惨めに負ける姿を霧の向こうで見ていてやる」
「…いうねえ」
「…撤退するぞ」
「…了解」
クラウンスレイヤーはメフィストと呼ばれた少年にわざと肩を当てて霧の向こうに消える。
メフィストは埃でもついたかのように肩を払うと、晴れつつある霧の向こうにいるであろう敵に、禍々しい微笑みを向けた。
「…おもちゃの独り占めは、されるのは嫌いなんだよ、僕は」