METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
『…様子がおかしい。…術師隊、攻撃中止』
ジョンの合図で、術師達のアーツ攻撃が一斉に止まる。
「…攻撃が止まった?」
「ドクター…霧が…霧が晴れていきます」
『…小隊、霧が完全に晴れるまで止まるな、前進を続けろ。警戒は絶やすな』
「…あっけないな、撤退したのか?」
アルファ部隊は方陣を組んだまま、薄くなっていく霧の中をフレアを頼りに前進し続ける。
『全員、ケミカルライトをしまえ、もう必要ない』
「…奴ら、見切りが早すぎるな」
「アーツで全滅したのでは?」
『警戒を怠るな』
ジョンは中枢地区へと流れていく霧の流れを見ていた。
だんだんと薄れていく霧の中、はっきりしていく視界の中に、人影を目にする。
『…術師隊、6時の方向へ一斉射』
「え、あ!はい!術師オペレーター、攻撃を!」
直後、人影のいるあたり一帯にアーツによる法擊が降り注ぐ。
爆音と衝撃、あたり一帯の霧が一気に霧散していく。
「…敵ですか?」
『…』
爆煙が晴れた後、そこには複数人のレユニオンが立ち竦んでいた。
「…ちっ!本当に学習しない奴らだ!狙撃隊、撃…」
『待て』
ジョンの一声でボウガンを構えたオペレーター達の動きが止まる。
立ちすくんでいたレユニオン達は、よく見れば全員焼け焦げていた。
やがて膝から崩れ落ち、折り重なるように地面に倒れ伏す。
「…なんだ?」
レユニオン達が倒れ伏した後、そこには1人の人影だけが残る。
「ゲホ、ゲホッ…!
…いいねえ、容赦ないじゃないか」
人影は倒れたレユニオンを、まるで水溜まりを避けるかのように飛び越える。
そして、ジョン達の前に完全に姿を現した。
「やあ、はじめまして、闖入者の皆さん。
僕のことは、メフィストと呼んでくれよ」
そこには年端もいかない子供が立っていた。
子供は屈託のない笑みをジョン達に向けると、大仰に、丁寧にお辞儀をした。
『撃て』
「ど、ドクター…あれはまだ子供」
『アーミヤ、撃つんだ』
「でも、ドク…」
「あっはははは!!
…いいねえ、やっぱりあんた最高だ。予想通りだよ!」
『…狙撃オペレーター、奴を撃て』
「り、了解!」
狙撃オペレーターは躊躇しながらも、ボウガンの矢を少年、メフィストに放つ。
高速で放たれた矢、それは真っ直ぐに少年の眉間を捉え、吸い込まれた…かのように見えた。
「がっ!?」
しかし、次の瞬間には、メフィストの前に盾になるように躍り出たレユニオン兵によってそれは防がれていた。
胸を矢で貫かれたレユニオン兵は、鈍い音を立てて地面に倒れる。
「…これでも結構可愛らしい見た目をしていると思ってるんだけどね。
…いい、いいなあ…なあ…あんた、なんでそちら側にいるんだよ」
『狙撃オペレーター、止めるな、撃ち続けろ』
「…了解!」
狙撃オペレーター達は少年の只者でない雰囲気を悟ったのか、それぞれが的確に急所を狙って攻撃する。
「おいおい、僕は名乗ったんだよ。
君たちも名乗り返さないと失礼じゃないか…!」
次々とメフィストの前にレユニオンの兵士がどこからともなく現れ、矢は尽く防がれる。
その様子を微笑みまじりに眺めていた少年が手をあげると、どこからともなくジョン達の隊列に矢が降りかかった。
「矢だ!
重装オペレーター!」
「遅いよ」
重装オペレーターが矢から味方を守ろうと盾を上に挙げた瞬間。その目の前にアーツの砲撃が直撃する。
爆風に盾が煽られ、重装オペレータの数人が宙を舞う。
「ぐああ!?」
「ギ、アアァ…!」
そして隊列の防陣に大きな隙間が開いてしまった。
「…苦労するねえ、君が率いるにはそいつらは心がありすぎるよ、扱い辛いだろ?」
『ACE、負傷者を隊の中に引き入れろ、穴を埋めるんだ、急げ。
アーミヤ、アーツを一斉投射』
「は、はい!」
「負傷者を中へ、重装後ろの守りを固めるぞ!」
「あはははぁ!!
いいね、そうこなくっちゃ!
Hー1・2・3、敵の穴に飛び込め!」
メフィストの後ろから、顎を地面に擦らんばかりに身を屈めた兵士が飛び出す。
それはまだ混乱の冷めない重装オペレーター達の防御の隙間に飛び込んでいく。
「だ、ダメです、もう…味方に近すぎる!」
術師オペレーターはあまりに素早く動く敵を前に狙いを定めることができない。
それは狙撃オペレーターも同様だった。
「こ、このっ!」
前衛オペレーター達が止めようと刃を振りかざすが、密集隊形だったために思うように防ぐことができない。
「こいつら、早すぎる!」
「ドクターを守れッ!…先鋒!」
「遅い、遅い!遅すぎるよお前ら!
あいつが喉だ、かっきってやれ!」
どうにかして止めようとする先鋒オペレーター達の足元を縫うように敵兵士はジョンに迫っていく。
「だ、ダメだ!止まらない!」
「ドクターッ!!」
大通りにアーミヤの叫び声がこだまする。
レユニオンの凶刃は、誰も止めることができないまま、老人の首に向かって吸い込まれていく…。
「…シャァッ!
…ご、が…ッ!?」
だがそうはならなかった。
ジョンはレユニオンの兵士の手首を取ると素早く捻り上げ、重心を低く、自らの懐に迎え入れるように引き入れた。
次の瞬間、レユニオンの兵士の腕は肘から鈍い音を立ててひしゃげ、弧を描くようにジョンの後ろに叩きつけられる。
レユニオン兵士の肺から全ての空気が吐き出され、視界が明滅する。
次の瞬間にはジョンが素早く繰り出した足がレユニオン兵士の顎を踏み砕いていた。
「ガバッ…!ァ…」
ジョンは続け様に近くの狙撃オペレーターのボウガンを取り、刃を振りかぶり宙をまうレユニオンを射抜く。
「返すぞ」
「え、あ、は!?」
狙撃オペレーターにボウガンを投げて返すと、仲間がやられても躊躇せず突っ込んでくる最後の1人を見る。
「盾をこちらに構えてくれるか?」
「…は?」
「早く」
「は、はい!」
オペレーター達の足の間を縫い、向かってきた兵士の突き出したマチェットがジョンの喉元を狙って空を切る。
ジョンは突き出された腕を取り、それを片手でこともなげに下へ向かってへし曲げる。
顔面を突き出す形となったレユニオンの兵士は、生々しい音を立てて盾に突っ込み、動かなくなった。
「けが人は?」
…
「…おいおい」
メフィストは目を見開いた。
…
「え…あ、はい!おりません!」
「そうか、状況は継続中だ。
…かっこつけすぎたか…?惚けてる場合じゃないぞ君」
「…なんだよ…お前、本当に…なんなんだ爺ィッ!」
メフィストは心底嬉しそうな顔を浮かべ、ジョンを禍々しく睨め付ける。
「繰り返す、状況は継続中だ…諸君、どうやら今までの敵とは違うようだ。
だが…何も今までと変わりはない、目の前の脅威を打倒する」