赤茶色の煉瓦、高く空まで登る建物が並ぶ。
馬車が3、4台並んで走っても余裕のある広い道でも圧迫感があるほど並ぶ建物は高い。
窓が有り、人と活気も中にはあるが、明らかにそれは壁と言うべきだ。
壁とかべの間には橋が架かりそのうえで踊る子供もいる。
「やっぱりここは賑やかだな。」
久々に訪れた旅人はその圧迫感と賑やかさの独特なコントラストに胸を躍らせることだろう。
高山の平原、斜面に造られたこの赤レンガの芸術作品の名は、、なんといったか。
昔、行商から軍隊まで幅広い人々が旅の道、そしてその休憩に利用した東西に長い都市。
真っ赤なレンガの街並みは見ていて面白い。
だが、歴史のある都市だからこそ様々な種族、言語、文化そして商品が混じっている特徴も持っている。
そんな真っ赤な都市を歩く雑踏の中、この話の主人公は少女。
身の丈は150も満たない小柄で華奢な四肢に長く伸びた透き通るような白髪。膝まで伸びた長い麻のマントに身を包み街並みを眺めながらフラフラと歩く。
、あえて名を伏せて彼女を呼ぶならその髪から「真っ白」と、そう呼ぶべきだろうか。
翡翠のような深い緑の瞳をした彼女、真っ白はある場所に向かっていた。
彼女の仕事道具、それを仕入れるための店。
摩天楼の回廊、そんな道からそれた裏路地に入る真っ白。
ただでさえ陽が射しにくく薄暗いクラスダローグの街並み。
細道に入れば家や店の入口から幽かに揺らぐランプのともしびが明るく感じるほどあたりは暗い。
空は青く、黒い壁の間を歩く。高山の地形が残っているのか所々急な階段を下りながら真っ白はさらに進む。
人の気配がない暗がりは進めば進むほど異世界の匂いを強くさせる。
そんな異世界と現世の狭間。彼女の目的とする店はそこにあった。
koffee “A”
不可解な店名に寂れた外観。先までの活気とは明らかに裏目の店。
店の中には店主と思わしき男性が1人。
そこそこ奥行きがある暗がりの店。名前の通りのカフェの体裁を整えた店作りはこまめに掃除がされているのか店主しかいないながらも埃っぽさやカビ臭さを感じることは無い。
齢6、70程度の老体に、綺麗に整った白髪。すっとした立ち姿はさながら貴族付きの執事を思わせる。
「いらっしゃいませ。」
多くは語らず、ましてや真っ白に目を向けることも無い。
空いていないようにも見えるが。
対する真っ白も何も言わず老店主の前に腰掛ける。椅子が高くて若干座りにくい。
「ご注文は?」
老店主が水入りのグラスを真っ白に差し出す。
「オリジナルブレンドのコーヒーと3.9センチの胡桃。」
水を片手にメニューを見ながら真っ白は答えた。
すると老店主は下顎に生やした髭を弄り考える素振りをする。
「鉄製の箱に20個入」
真っ白がメニューを見ながら軽く付け加えるように言った一言で老店主の髭をいじる手が止まった。
「成程。」
老店主は瞼をあけ青い瞳を真っ白に向けた。
かたやメニューで顔を隠すようにする真っ白。
「貴様、随分と若くなったな。」
「さぁ?」
顔を隠すのも無駄と思ったのか真っ白はメニューをカウンターに置き水を飲む。
「まぁいい。」
老店主はそのまま店の奥へと向かう
「6番はあるのかしら?」
真っ白が老店主を呼び止めると少しの間の後
「そうさな、100箱よこせと言われても問題ないくらいにはどちらも余らしている。」
「あっそ。(あくび)じゃあ4箱詰めといて。」
「、、、、」
老店主はわざとらしく咳払いをし、店の奥に行く。
カラカラと響く胡桃の音。正直それほどの箱が欲しかったかと今更考える真っ白。
それ以前に箱は余らせてるのだから入れるものだけ貰っとく方が無難だったのだ。
そこに気づくいた頃には4つ、綺麗に揃った箱を持った老店主が店の奥から出てくる。
「これでいいか?」
丁寧にトレイに並べられた4つの箱は高級感のある艶を持ちそれぞれに刻印が掘られている。
若干安っぽくも見えるが真っ白にとってはこれでよかった。むしろこれが良かった。
「ありがと。やっぱいいねこの箱は。」
「貴様くらいだわざわざこんな箱使うモノ好きは。」
老店主も苦笑いで真っ白の持つ鉄箱を見る。
「いいと思うのだけど。なぜなのか、、、コレガワカラナイ」
悩む素振りを見せる真っ白を横目にコーヒーを入れ始める老店主。
乙女の悩みを無視するとは何たるかと目で訴える真っ白。
わざとらしく悩む素振りを見せる真っ白に老店主はコーヒーを出す
「あー、そうだ。悪いのだけど追加で紙箱でも貰える?10箱くらい。」