超特急論破 Prelude   作:鳶子

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第10楽章:レイジーな日々に手直しを

✧ ✧ ✧

 

 

 

「よっしゃあ!GG!」

 

両方向からやってきた敵を、一気にカスタムでキルする。試合が終わる頃には、灰色の廃墟が一面ピンクのインクで塗り尽くされていた。

 

今回も1位。鼻歌交じりになりながら、次の試合のマッチングをする。

これが終わったらクラスの友達から借りてた漫画を読もう。期待の新人のギャグ漫画らしく、1回読んだことがあるけど超面白い。

 

マッチングを追えて、自分のアバターがインクの中から立ち上がる。ゲームの中で、自分のお気に入りの服を着たアバターが動き回るのが好きだ。また報酬を貯めて新しい衣装を買おう…次はどんなテーマの衣装にするか、考えるだけでワクワクする。

 

 

「ひろ!おつかい頼んでいい?」

「…はーい!」

 

1階から呼びかけられて、しぶしぶゲームをセーブして下の階に降りる。ついでに家で作ったぬいぐるみを学校に置いていこうと思って、受け取った買い物メモとぬいぐるみを2つぐらいリュックに詰め込んで、サンダルをつっかけてスーパーに向かった。

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

「…お?」

 

スーパーからの帰り道に学校に寄ろうとしたら、赤い風船を持った女の子がブランコに1人で腰掛けていた。

「…ひっく……ぐすん、ぐすん……」

 

…泣いてる。公園の中に入って、ゆっくり近づいて話しかけた。

 

「どうしたんだあ?迷子か?」

「……うん」

隣のブランコに座って目線を合わせると、女の子は小さく頷く。高い位置で結んだ、灰髪のツインテールがかわいい。

 

「どこから来たか覚えてるか?」

「………」

今度はふるふると首を横に振られた。

 

「…ふうせん、おいかけてたの。しらないおねえちゃんが、取ってくれたけど、おうちにどうやって帰ればいいのかわからないの……」

「そうかあ……」

迷子ってどうしたらいいんだろう。小さい女の子に道を説明させるのって、たぶん難しいよなあ…。

 

「…みら、このままおうち帰れないのかなぁ…ぐすん…うぇぇん………」

「な、泣くなってえ!…ほら、これやるよ」

 

慰め方が分からなくて、咄嗟にカバンからぬいぐるみを出した。すると、顔を上げてぬいぐるみを見つめている。

 

「……かわいい、うさぎさん…!みら、うさぎさん好き」

「へへっ、いいだろ?これやるから元気だせって、私も一緒におまえのおうち、探すからさ」

「いいの?もらって…」

「ああ。暗くなる前に帰ろうぜ、みら」

 

「うん…ありがとう、おねえちゃん!」

 

おねえちゃん、と呼ばれた途端、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてくる。私にもこんな妹がいたらなあ…。

 

「あ、あのね、迷子になったときはこれを大人にみせろっておにいちゃんに言われたの」

そう言ってみらはブランコから立ち上がると、リュックの中から何かを取り出して見せてくる。それは住所の書かれたカードだった。

 

「…うん。この住所の辺りなら分かるぞ、ここってチョコレート屋の近くだよな?」

「そう!しょことらとりー、なんとか!おうち帰れる?」

「帰れる帰れる。ほら、早く行こう」

 

手を差し出すと、小さなもちもちの手でぎゅっと握られて、無性に愛おしさが湧いてくる。まさに、自分がお姉ちゃんだぞって感じだ。

歩きながら、みらの家族の話を聞いていた。

 

「あのね、みらのおうちにはね、パパと、ママと、おにいちゃんとみもちゃんがいるの」

「みもちゃん?みらの妹か?」

「みらとみもちゃんはふたごなの。みもちゃんはすっごくピンクが似合うんだよ!この麦わらぼうしのリボンも、みもちゃんと色ちがいなの!」

「双子ってすっげえ楽しそうでいいなあ…そうだ、この色違いのぬいぐるみもあげるからさ、みもちゃんにあげてくれないか?」

 

カバンの中からもう1つのぬいぐるみを取り出す。ほんとはデザインコンテスト用に作ってた奴だけど、また作ればいいや。

 

「わあっ、ありがとう!みもちゃんよろこぶと思う!」

この笑顔を見たら、ちゃんとかわいがってくれる子にあげた方が100倍いいって思える。ぬいぐるみもきっとそっちの方が幸せだ。

 

「おにいちゃんもね、たまにみら達にぬいぐるみ作ってくれるの」

「へえ〜、いい兄貴なんだな」

「うんっ、おにいちゃんはすごいんだよ!おりょうりもおせんたくもできるし、べびーしったーってお仕事してるの!みらのじまんのおにいちゃん!」

「すげえなあ!私もそんな風になりたいなあ…」

 

まだ見たこともないみらの兄貴に憧れを抱いてしまった。男で優しくて家事もできてベビーシッターって、超かっけえじゃん…。

 

またしばらく歩くと、みらはクリーム色の二階建ての家の前ではっとしたように足を止めた。

 

「…ここ!みらのおうち!」

「おお!よかったなあ、無事に帰れて」

「おねえちゃんのおかげだよ、ほんとにありがとう!」

 

ぎゅっとみらが抱きついてくる。頭を撫でてやるとみらはとても嬉しそうにした。

 

「じゃあおねえちゃん、またね!」

「じゃあな!元気でいろよ!」

 

みらが見えなくなるまで手を振ったあと、冷凍食品を買ってたことを思い出して、自分の家に超急いで帰った。

 

今日の晩ご飯のおかずの牛肉は、なんでかわかんないけどすっごくうまかった。

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