超特急論破 Prelude   作:鳶子

6 / 16
第6楽章:火を点けない起爆剤は燃えることもない

✧ ✧ ✧

 

 

「好きです、付き合ってください!」

「…………やだ」

「…え?」

「ボク、この前見ちゃったんだもん、君が他校の女の子いじめてるとこ。そんな酷い女の子とは付き合いたくないなー」

 

「…………」

 

今まで関わったこともない今日突然告白してきた女の子は、わなわなと体を震わせて、踵を返して帰っていった。

きつく巻いた茶髪の髪が揺れて、メデューサみたいだ。怖い怖い。

 

「…当てずっぽで言ってみたけど、ホントに図星だったんだ」

 

 

✧ ✧ ✧

 

授業を屋上でサボってたら、放課後になった。先生から呼び出し食らってたけど、どうせ授業に出てないことだろう。無視していつものラテを飲みに行く。外履きをつっかけて外に出た。

 

テストで満点取れるんだから、授業をわざわざ聞く必要もない。

どうして教科書をパッと見れば分かることを、わざわざ1時間近くかけて教えるんだろ?効率悪い教師に付き合わされるのは御免だ。

 

グラウンドから車道に出るフェンスを軽く飛び越える。回り道するよりこっちの方が早い。

反対車線から来た車にクラクションを鳴らされたけど、舌を出して喫茶店に向かった。

 

「いらっしゃいませー」

「トールアイスライトアイスエクストラミルクラテ1つ。店内で飲みまーす」

「かしこまりました」

 

店員がてきぱきと準備を始める。氷は少なめ、ミルクは多め。頼む時の鉄則だ。

レシートをポケットに突っ込んで、注文したドリンクを受け取って適当な席に座った。ちびちびと飲みながら、スマホを片手に持って、溜まっていたメッセージを少しずつ返していく。

 

「うげっ」

姉貴からのメッセージが受信されていた。3時間以内に返さないと殺られる。2時間前だったのでギリギリセーフだ。

 

『帰りにコンビニでからあげ買ってこい。メールを読んでから1時間以内』

「…チッ」

 

あと1時間既読を付けなければよかった。今日はここで2時間ぐらい潰すつもりだったけど、仕方がないので飲み干して席を立つ。

 

 

✧ ✧ ✧

 

「………」

コンビニの袋を片手に家への帰路に着く。むしゃくしゃしてそこら辺にあったコーラの空き缶を蹴飛ばした。

転がっていく先を見ると、やたらとカラフルな足元に行き当たった。

 

「ポイ捨てはいけませんよ!」

その声に顔を上げると、カラフルな靴の主である、白髪の女の子が目の前に仁王立ちしていた。

 

「…これ、ボクが捨てたんじゃないんだけど」

「見て見ぬフリも同罪です!ゴミを見たら拾うですよ!」

「はーい、気をつけまーす……」

 

面倒な奴に絡まれたな、と思いながら脇を通り過ぎる。

その子が持っている、ボクと同じロゴのコンビニのビニール袋の中には、空き缶とか紙パックがごろごろ入っていた。…ご苦労なこった。

 

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

 

からあげだけ家に置いて、急ぎ足でゲーセンに行った。姉貴がいる時にあの家に長居したくはない。

 

「お、大当たり」

ジャラジャラとメダルが雪崩こんでくる。水着を着たキャラクターがこちらを見て笑う。残念ながらソッチの次元に興味はないけど。

 

 

テストで満点とって、サッカーでハットトリックして、女の子と適当に遊んで、不良にガンつけられたら適当に殴り飛ばして。

そんな日常をずっとだらだら過ごしてる。楽しくないと言ったら嘘になるけど、楽しいというのもなんか違う。

 

ボクが求めているのは、もっと刺激的なナニか。このイージーモードで退屈な日常をぶっ壊す、起爆剤を求めている。

ボクをゾクゾクさせる、ハイリスクハイリターンの駆け引き。そんなのがどこかに転がっていないかと思うけど、生憎こんな平和な街には存在しない。

 

 

ゲーセンを出ると、通り過ぎざまに誰かと肩がぶつかった。

 

「…あら、ごめんなさいね」

「………」

 

不愉快だったので無視してそのまま歩いた。

あら、ってナニ?オカマかよ、気持ち悪い。アイツみたいな変な奴もいるのに、なぜか次の日になるとそのコトを忘れてる、なんてのがほとんどだ…どーでもいいけど。

 

 

 

「…Aha,その些細な違和感に気を留めないからこそ、君はいつまでも退屈から抜け出せないんだよ…夢乃」

 

反対車線を歩く青年のそんな声は、彼に届くはずもなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告