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「好きです、付き合ってください!」
「…………やだ」
「…え?」
「ボク、この前見ちゃったんだもん、君が他校の女の子いじめてるとこ。そんな酷い女の子とは付き合いたくないなー」
「…………」
今まで関わったこともない今日突然告白してきた女の子は、わなわなと体を震わせて、踵を返して帰っていった。
きつく巻いた茶髪の髪が揺れて、メデューサみたいだ。怖い怖い。
「…当てずっぽで言ってみたけど、ホントに図星だったんだ」
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授業を屋上でサボってたら、放課後になった。先生から呼び出し食らってたけど、どうせ授業に出てないことだろう。無視していつものラテを飲みに行く。外履きをつっかけて外に出た。
テストで満点取れるんだから、授業をわざわざ聞く必要もない。
どうして教科書をパッと見れば分かることを、わざわざ1時間近くかけて教えるんだろ?効率悪い教師に付き合わされるのは御免だ。
グラウンドから車道に出るフェンスを軽く飛び越える。回り道するよりこっちの方が早い。
反対車線から来た車にクラクションを鳴らされたけど、舌を出して喫茶店に向かった。
「いらっしゃいませー」
「トールアイスライトアイスエクストラミルクラテ1つ。店内で飲みまーす」
「かしこまりました」
店員がてきぱきと準備を始める。氷は少なめ、ミルクは多め。頼む時の鉄則だ。
レシートをポケットに突っ込んで、注文したドリンクを受け取って適当な席に座った。ちびちびと飲みながら、スマホを片手に持って、溜まっていたメッセージを少しずつ返していく。
「うげっ」
姉貴からのメッセージが受信されていた。3時間以内に返さないと殺られる。2時間前だったのでギリギリセーフだ。
『帰りにコンビニでからあげ買ってこい。メールを読んでから1時間以内』
「…チッ」
あと1時間既読を付けなければよかった。今日はここで2時間ぐらい潰すつもりだったけど、仕方がないので飲み干して席を立つ。
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「………」
コンビニの袋を片手に家への帰路に着く。むしゃくしゃしてそこら辺にあったコーラの空き缶を蹴飛ばした。
転がっていく先を見ると、やたらとカラフルな足元に行き当たった。
「ポイ捨てはいけませんよ!」
その声に顔を上げると、カラフルな靴の主である、白髪の女の子が目の前に仁王立ちしていた。
「…これ、ボクが捨てたんじゃないんだけど」
「見て見ぬフリも同罪です!ゴミを見たら拾うですよ!」
「はーい、気をつけまーす……」
面倒な奴に絡まれたな、と思いながら脇を通り過ぎる。
その子が持っている、ボクと同じロゴのコンビニのビニール袋の中には、空き缶とか紙パックがごろごろ入っていた。…ご苦労なこった。
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からあげだけ家に置いて、急ぎ足でゲーセンに行った。姉貴がいる時にあの家に長居したくはない。
「お、大当たり」
ジャラジャラとメダルが雪崩こんでくる。水着を着たキャラクターがこちらを見て笑う。残念ながらソッチの次元に興味はないけど。
テストで満点とって、サッカーでハットトリックして、女の子と適当に遊んで、不良にガンつけられたら適当に殴り飛ばして。
そんな日常をずっとだらだら過ごしてる。楽しくないと言ったら嘘になるけど、楽しいというのもなんか違う。
ボクが求めているのは、もっと刺激的なナニか。このイージーモードで退屈な日常をぶっ壊す、起爆剤を求めている。
ボクをゾクゾクさせる、ハイリスクハイリターンの駆け引き。そんなのがどこかに転がっていないかと思うけど、生憎こんな平和な街には存在しない。
ゲーセンを出ると、通り過ぎざまに誰かと肩がぶつかった。
「…あら、ごめんなさいね」
「………」
不愉快だったので無視してそのまま歩いた。
あら、ってナニ?オカマかよ、気持ち悪い。アイツみたいな変な奴もいるのに、なぜか次の日になるとそのコトを忘れてる、なんてのがほとんどだ…どーでもいいけど。
「…Aha,その些細な違和感に気を留めないからこそ、君はいつまでも退屈から抜け出せないんだよ…夢乃」
反対車線を歩く青年のそんな声は、彼に届くはずもなかった。