超特急論破 Prelude   作:鳶子

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第9楽章:慣習法は自由を侵害するか?

✧ ✧ ✧

 

 

「やあ、64日と17時間と32分43秒ぶりだね。久しぶり」

 

「…はぁ。お久しぶりです、薊博士」

 

「君の内通者なんていう面倒な位置取りのせいでこのパート、俺との対談しかできない上にド真ん中にぶち込まれてるんだよね。中間者、みたいな位置づけでさ…あと忌み数ね」

 

「わざわざそうするように仕向けたのは貴方でしょう。僕の責任では無い」

 

「そっかそっか〜…もしかして、あの子たちと一切関われないから拗ねてる?君ももっとお友達作りたい?作ってあげようか?」

 

「人工物の友人を作る趣味は有りません」

 

「はぁ、思春期かなあ、反抗期かなあ、冷たいなあ〜……昔は防犯ブザーなんか鳴らしてイチャイチャしちゃってたのに!」

 

「…お望みならまた鳴らしましょうか。今度はパトカーのサイレンでも良いですよ」

 

「ええ〜…じゃ、俺は捕まったら涙を飲んで君のことを洗いざらい話すよ」

 

「僕は法に抵触する行為は一切していません。どうぞ、好きなだけお話してください」

 

「…君が対話だけに力入れると普通に負けちゃうから、地の文オンにしていい?気散らすために」

 

「力を入れてすらいないのに勝手に負けないでください。貴方が焦らすのが悪いんでしょう…僕は早く報告を済ませたいだけです」

 

「……OK.それじゃあどうぞ、照翠法典くんによる、中間報告発表会」

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

 

「1番。訓練中に部下を助け、上官に呼び出しを食らう。歩道で13番と接触。記憶処理完了済。

 

2番。中学時代の同級生に呼び出されていた。1番と6番に接触。記憶処理完了済。

 

3番。4番が同じ喫茶店にいたが、気づいていなかったため特に処理は施していない。

 

4番。浮気調査中に4番と15番に接触。依頼人が殺害され、墓参りに。10番と接触。記憶処理完了済。

 

5番。人格の増殖を確認。9番と接触。記憶処理完了済。

 

6番。2番と接触。記憶処理完了済。

 

7番。パトロール中に3番の妹と接触。ゴミ拾い中に13番と接触。記憶処理中。

 

8番。ショコラトリー・ル・シュクレで10番と接触。記憶処理完了済。

 

9番。5番と14番と接触。記憶処理完了済。

 

10番。墓参りで4番と接触。ショコラトリー・ル・シュクレで7番と接触。記憶処理完了済。

 

11番。妹が7番と14番に接触。"魔法少女"という単語を削除。

 

12番。省略。

 

13番。2番の中学の同級生に告白される。歩道で6番と1番に接触。記憶処理完了済。

 

14番。3番の妹と接触。記憶処理完了済。

 

15番。新種と思われる植物を発見。2番と4番に接触。記憶処理完了済。

 

16番。未確認。」

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

「自分のこと省略しないの。何かなかったの?」

 

「そうですね…今、不審な人体実験の研究者に会っています」

 

「俺じゃん?…あ、そうそう。面白いモノゲットしたんだよねー。見てコレ」

 

「…何ですか、それは」

 

「君のお義父さんが書いてた日記。真っ黒趣味悪ノート。机の上に盗ってくださいと言わんばかりに置いてあったからこっそり借りてきちゃった」

 

「…それはそれは。不法侵入と窃盗罪で、立派な犯罪者ですね」

 

「ま、窃盗なんて可愛く見えるレベルの犯罪者だし。こんぐらいは許してにゃん」

 

「…………」

 

「あ、無視されるからみざりん傷ついちゃった。あーあ。死のうかな」

 

「いくらでもどうぞ。僕の居ない所なら」

 

「あーん、クソガキだ……」

 

「僕は良い子ですよ。貴方がそうしろと言ったんでしょう…いい加減、皆で仲良く積み木を積み上げるだけの生活にも飽き飽きしてきましたが」

 

「平穏無事な日常を積み木に例えるとは…ポエマーだね。それなら君がさっさと壊しちゃえばいいのに」

 

「コレを壊すのは僕ではありません。貴方も思うんでしょう?もっと適任が居ると」

 

「…まあね。彼女がどんな化学反応を見せてくれるのか、楽しみで仕方がないんだ…絶望が生み出す副産物、実に興味深いテーマだよ」

 

「あぁ、成程。こういうのを悪趣味と呼ぶんですね」

 

「ったく、酷いなあ〜…俺はただ"知りたい"だけだよ。ミクロの単子から宇宙の果てまで、身を滅ぼしてでも知りたい。どこまでも好奇心と知的探究心のままに生きている。君だってそうでしょ。」

 

「えぇ。…全く、誰に似たんでしょうか、僕は」

 

「さあね…いやはや、人の作った制定法の穴を見事くぐり抜けた君は、その先で人の積み上げた慣習法に縛りつけられてるんだね」

 

「慣習法…コモン・ロー?…違います。縛られているのではなく、僕がその人の作った慣習法と言う奴に合わせてやってるに過ぎない」

 

「当事者の気持ちはわからないよ。客観的に見れば案外そういう風に見えるってコト」

 

「…そうですか。貴方にはそう見えるんですね」

 

「うん。まあ俺は法学の専門じゃないし、君を哲学したい訳でもないから、今回はここら辺でお開きってことで…バイバーイ。」

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