エピローグ-AI
事の始まりはあの子が少しずつ私達から距離を取り始めたことから。
いつも仲良く遊んでた兄妹が、少しずつ離れて、一人になってた。
私は妹が泣いているのをただ抱きしめるのが精一杯で、
それでもあの子のあんな目を見てしまったら仲良くしろとも言えなかった。
何故あの優しい弟があんな目をしているのか知りたくて
しらべてしらべてしらべて…
私にとってあの子は弟だ。
守りたいと思った。抱きしめたいと思った。
あなたの居場所はここだと、伝えたかった。
あの子が殺されそうになるのを見て、動かないはずの体に再び力が入った。
出来たのはこの身を盾にすることだけだった。
「姉さん、なんで…」
最愛の人の声が聞こえる。
今日私はここで散る、私の怨敵の刃は私の体を深々とえぐっていた。
「キリト、直葉を頼んだわよ。」
とっさに振るった私の短刀はヒースクリフに突き刺さっていた。しっかりと麻痺してるところを見ると置き土産としては十分だったようだ。
「これは驚いたね、クレハ君。君は確かに動けなかったはずだが。」
ヒースクリフはきっと素直に驚いていたのだろう。最後にその姿を見れたのは一矢報いれたようで少しだけ嬉しかった。
「きっとあなたにはわからないわ。」
きっとわからないだろうこの人には、時にシステムすら超えるものがあるということが。
命が削れていくのが見える。
後悔はなかった、こんなろくでもない世界でも、弟を守れたのだから。
そして私は…
砕けた体が漂っている。天空の城が崩れていく。
「私に何の用かしら、ヒースクリフさん。」
私の体はもう死んでいるだろう。
「どうせなら反省会でもしようと思ってね。」
私のそばにはいつの間にか一人の男性が立っていた。
茅場晶彦はただ静かに崩れていく城を見ていた。
彼は私の敵だった。キリトを現実に返そうとしていた私にとっては
怨敵といってもいい。
しかしクリアされた今となってはもう敵ではないのだ。
「キリトは生きていますか。」
「あの場にいた全員が生きている。君を除いてはとつくがね。
キリト君とアスナ君には頼みたいことがあるから、
まだログアウトしてはないが、
ゲームマスターとしてしっかり現実に返すつもりだから安心するといい。」
「私は死んだんですね。」
「ここにいるのは、君の残留データといったところか。
あるいは焼き付いた魂とでも呼ぶとしよう。そこに意思があるという意味では、
生きているとも言えなくもない。君がそれをどう判断するか次第ということだろう。」
質問したいことなどその二つしかなかったため、私は崩れていく城に視線を戻した。
さらさらと崩れていくアインクラッドは美しかった。
あの城でのことを思い出す。
キリトと一緒に住んでいたログハウス、初めはギクシャクしていたけど、いつの間にか仲のいい家族に戻れたこと。
キリトがアスナちゃんを連れてきて、ユイちゃんが増えて、少しずつ家族の輪が広がっていった。
サチちゃん達を失って泣いてた夜、私はキリトを抱きしめて一晩中一緒にいた。
死に物狂いでレベルを上げてサンタと戦った夜、サチちゃんがどれだけキリトを愛していたかを知って二人で泣いて抱きしめあったりもした。サチちゃんに一目でいいから会ってみたかった。
兄貴分のクラインさん、エギルさん、妹のようなシリカちゃん、仲のいい友達のリズ、皆で集まって
お茶会したこともあった。
きっと大丈夫、キリトを大事に思ってくれる人がこんなにいるから。
「キリトとアスナちゃんに伝言を頼めますか。」
「君自身が会いに行かなくていいのかね。」
「きっと未練になりますから。」
「そうかね。なんと伝えればいいんだい。」
「キリトに、お姉ちゃんはたとえ血がつながってなかったとしてもずっと愛していると。
アスナちゃんには、妹と一緒にキリトを支えてほしい。と伝えてください。」
「クレハ君、君は。」
「私は和ちゃんを愛おしく思ってるただの女なんですよ。」
結局のところ弟に依存していたのは私のほうだった。
ただそれだけの話だった。
「わかった、そう伝えておこう。
最後に一つ聞きたかったことがある。
何故君は動けたんだい。」
「決まってるじゃないですか、
人を最後に動かすのは、愛なんですよ。」
「参考になったよ、今度は馬にけられないようにしよう。」
そういうと茅場晶彦は消えていった。
私も少しずつ消えていった。
暗い闇の中で茅場は呟いた。
「それに、外でおかしなことをやっている者もいるようだ。おもちゃ箱を開いた以上は後片付けもしっかりするとしよう。美しい君のフラクトライトの輝きに誓ってね。」
初投稿です。
初っ端からキリトさんのダメージがやばいことになりました。
アリシゼーション見たら書きたくなったんで書いています。
クレハさんはガチ恋勢ですが常識はあるので、アスナさんを認めました。
結果大惨事になった感じです。
クレハさんの死から、団長討伐までにラグがあったために間に合いませんでした。
これ以上はネタバレになりかねないので
お口にチャックして次の話をお待ちください。
ちなみにクレハさんは姉でなかった場合、
全力で勝ち取りに行くタイプなのでアリスに似ています。