過労死ワイ、戦いを全力で避けた結果怠惰の魔神扱いされる。   作:シーボーギウム

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先日fate観に行きました。もちろん感染対策は万全にしてですが。
良い終わり方はしましたけど途中途中キッツイのがありましたねぇ………

余韻に浸っているので初投稿です。


10.異世界日記 その9

◆月∀日  晴れ

 

 どうやら選抜大会の一週間前から街全体でお祭りをやるらしい。うちも何日か出店を出すことになった。店長曰く、今までは人手が足りなかったが、俺とルビアが入ったから出来るようになったのだとか。

 うちが出すのは名物のアップルパイだ。うちのリンゴは店長の弟さんが営んでる果樹園から定期的に送られてくるものだ。リンゴ自体、普通に食べても甘くて美味しいのだが、それをアップルパイに使うわけだ。パイはサクサクで、甘すぎないから無限に食べれそうな程美味しい。

 

 俺以外には基本ツンツンしてるルビアもこのアップルパイを食べている時は普段からは想像もできないフニャフニャした可愛い笑顔を浮かべる。カメラが無いのが惜しくて仕方ない。

 

 聞けば、この祭りは飲食店にとっては大きな収入源となるらしい。長いことお世話になっているのだ、しっかり売り上げに貢献したい。

 

 

 

 

 

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◆月?日  晴れ

 

 売れ過ぎじゃない……?作るペースが間に合わないとか初めてなんですけど……

 一日中ほぼひっきりなしに客が来るもんだから午後までほぼ休めなかった。店長もここまでの繁盛は予想していなかったようで、急遽この祭りが終わったら数日休みにしてくれた。

 

 あまりの売れ具合に材料が尽きてしまったので、午後からは俺とルビアは他の店を見て回った。大半が食べ物の店なのだが、工芸品などの商品を出す店や大道芸をやっている人など様々な人がいた。途中マリアちゃんとリンディちゃんと合流して一緒に色々見て回った。

 二人に何故選抜大会前にこんな祭りをやるのかを聞いてみた。

 どうやら元々は酒場で行われた賭事だったらしい。その規模が段々大きくなって、今では街ごとのお祭りになったのだという。

 

 この祭りの期間中学校の決闘場が自由に使えるらしく、そこで腕試しする人も多いのだとか。明日あたり少し覗いてみよう。

 

 

 

 

 

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◆月!日  晴れ

 

 告白された。店の常連だった男の子だ。多分年齢的には16〜18。俺と同い年くらい。

 正直めちゃくちゃ驚いた。自分の容姿は神様お手製の美少女なことを考えればある意味当たり前なのかもしれないが。

 

 返事は、まぁ断った。前世が男で、今でも俺の恋愛対象は女の子だ。悪いが彼を愛することはできない。

 

 うーん複雑だ。こういうことを予期していなかったわけではないが、まさかここまで近い関係の人から告白されるとは思っていなかった。

 

 今日はちょっと気分が乗らないのでここまでにしよう。

 

 

 

 

 

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◆月∝日  晴れ

 

 チカレタ……

 

 皆俺に決闘申し込むのヤメロォ!!学校で実力の認められているマリアちゃんに勝ったんだぞ俺。ならせめてマリアちゃんに勝ってから挑んでくれ。

 

 何故こんなに決闘を申し込まれたのか、何やらどこぞの誰かに報酬を与える代わりに俺と決闘してきてほしいと頼まれたらしい。理由は知らんとのこと。初めの一人を断らなかったのがまず失敗だった。そのまま飛び入りで十連戦させられた。足がパンパンだ。

 

 とりあえず俺に決闘申し込まさせたやつ絶許。

 

 

 

 

 

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 祭りが終わり、選抜大会も終わった。これは一定以上の実力の生徒によるトーナメント方式で、数日にわたって開催され、上位5名と順位関係なく審査員によって高い実力があると判断された3名の計8名が更に半年後、帝都で行われる御前試合に出場することになる。ルビア、リンディちゃん、マリアちゃんの一戦目の相手はなんか、うん、モブだ。ルビアは秒で相手の四肢を氷漬けにして圧勝、リンディちゃんは近接用の槍と魔法での操作用の槍の変則二槍流で圧倒し、マリアちゃんは例の戦法に改善された音の弾丸で終始戦いを有利に進め、最終的に相手に降参させた。

 続く第二回戦、ルビアはまたも氷結魔法で相手を瞬殺、リンディちゃんは槍に加えて突風魔法も使い始め相手を圧勝した。しかしマリアちゃんは惜しくも負けてしまった。

 その相手の名前はアルト・スー。金髪碧眼の絵に描いたようなテンプレイケメンである。どういうわけか彼にはマリアちゃんの音の弾丸が一発もヒットしなかったのだ。まるで弾丸のほうから彼を避けているような動きだった。恐らく特殊魔法だろう。

 

 彼とはリンディちゃんが翌日の第四回戦で当たる可能性があったのでみんなで集まって色々対策を練った、のだが………第三回戦で彼が当たったのは変装したウィディーくん。うん、引く程一方的な試合だった。ウィディーくんは雷撃魔法を使うらしいのだが、操作技術が半端なかった。雷撃をアルトくんの周りでグルグル旋回させて檻にして、その中を雷で満たしていくという単純だが、だからこそ難易度の高い戦法。

 雷撃魔法は攻撃魔法の中でも極端に操作、制御の難しい魔法だ。基本的に放出するか身に纏うのが使い方だ。普通放出した雷撃を操るなんてのは無理だ。この国中探しても樹木魔法の第四段階習得者より見つからないんじゃなかろうか。

 とまぁそんなこんなで色々あって、最終的にルビアとウィディーくんが決勝で戦い、ウィディーくんが優勝した。

 

 閑話休題(そんなことはどうでもいい)

 

 理由はわからないが、ルビア曰く選抜大会が終わってからマリアちゃんの元気が無いらしい。二回戦で負けたことを気にしているのかとも思ったが、二日目も普通に元気だったし、なんならあまり戦わずに済んだと言っていたくらいだ。それは関係ないと思う。

 ルビアもリンディちゃんも色々聞いたがはぐらかされて答えてくれないそうだ。

 多分、なまじ近い関係なせいで話しにくいのだろう。俺も言うほど遠い関係とは言えないが、関係はルビアとリンディちゃんよりは浅いし、年齢も違う。二人に比べれば多少は話しやすいだろう。

 

 というわけで現在、俺はマリアちゃんと店の中で二人きりになっている。店長に頼んで少しの間貸切状態にしてもらったのだ。店長も今は自室にいてもらっている。

 

「はいアップルパイと紅茶」

「あ、ありがとうございます………」

 

 なるほど、確かに元気が無い。いつもならアップルパイを見て目をキラキラさせているのだが。まぁ今日のアップルパイはちょっと歪な形をしているのでそのせいかもしれないのだが……

 

「あ、あれ?」

「あー、ごめんね。今日は俺が作ったんだ」

 

 そう今日のは店長に教えてもらいながら作ったものなのだ。その割には形が不格好だが、味は多分大丈夫だと思う。

 マリアちゃんは少し驚いたような表情をしてからアップルパイを口に運んだ。

 

「ふふ、お、美味しいです」

「そっか、良かった」

 

 笑った。今日初めてだ。その後マリアちゃんは黙々とアップルパイを食べていた。いつもなら、今みたいに俺と二人きりでももっと色々な話をしていただろう。天真爛漫という言葉が似合う彼女だ、思っていたよりも抱えているものは大きいらしい。

 食べ終わった後も少しの間沈黙し、しばらくして、マリアちゃんは俺に不安げな視線を向けた。

 

「は、話を……聞いてくれますか………?」

「俺でよければいくらでも」

 

 両手をギュッと握り締めながら、マリアちゃんはポツポツと語り出した。

 

「わ、私、髪が青いじゃないですか……」

「うん」

「で、でも、両親や妹の髪は赤いんです。ローズ家の特徴らしいんです」

「確か強い魔力を持ってると髪色とか瞳の色とか影響されるんでしょ?ならマリアちゃんも………」

 

 強力な魔力は人体に影響を与える。例えば俺も怠惰の魔力の影響か瞳は翡翠色、ルビアも氷を思わせる青い瞳を持っている。因みに黒髪は元々持つ色が強すぎてほぼ影響を受けないらしい。

 とはいえ、まぁ例外は多い。特殊魔法を使えるようになると色が変わったり、聖人のような『権能』と言われる力を使える存在は、存在の強度なるものが強過ぎて微塵も影響受けなかったりするのだという。

 

 たしか慈悲の魔力が影響を与えた時の色は────

 

「緑……」

「そ、そうなんです。私の髪色は魔力の影響じゃなくて、遺伝(・・)です」

「それは……」

「私、預けられた子なんです」

 

 マリアちゃんはとても辛そうに笑った。

 何故今になって伝えられたのか。彼女のご両親は元々学校に入学するタイミングで伝えるつもりだったらしい。しかしリンディちゃんと楽しそうにする彼女を見て、伝えられないまま時間が過ぎてしまったのだという。

 

「14年前に、い、家にボロボロの格好で、赤ん坊を抱いた男の子が来たらしいんです。その赤ん坊が私だって………」

 

 丁度、前世で言うところの思春期にあたるマリアちゃんにはキツい話だ。聞く限り、彼女のご両親はちゃんと彼女を愛しているように感じた。だがそれでも、長い間一緒にいた家族と血の繋がりがなかったというのはかなり堪えるのだろう。

 

「マリアちゃん」

 

 俯き、暗い顔をする彼女を抱き寄せる。俺ができることなど殆ど存在しないだろう。それでも何かをしてあげたかった。

 

「辛かったね、苦しかったね」

 

 ただそれだけ言って頭を撫でる。俺は生憎、前世の両親とは普通に血の繋がった親子だった。だから、今彼女に血の繋がりはそんなに大事じゃないなんてチープな言葉は、言うことができない。前世で彼女の倍ほど生きている俺でも、実は両親と血の繋がりが無かったと知れば、それで受けるショックは計り知れない。血の繋がりは、マリアちゃんのような悩みを持つ人がいる以上充分大切なことだ。

 だから、実体験の伴わない言葉を伝えたところで、それは彼女の為にならない。薄っぺらい偽善でしかない。

 だから、俺が今マリアちゃんにできるのはただ受け止めてあげることだけだ。

 

「あ、あの………」

「我慢しなくていいんだよ」

 

 その言葉がトリガーになったのか、彼女はその瞳からポロポロと涙を流し始めた。声も出さずに彼女は涙流す。俺はただ頭を撫で続けた。

 

 しばらくの間、静かな時間が流れていった。

 

 




感想評価よろしくお願いします。

多分ここにでも書かないと書くタイミングが無くなる設定。
ローズ家はこの世界でそこそこ有名な商家です。

では失踪。
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