過労死ワイ、戦いを全力で避けた結果怠惰の魔神扱いされる。   作:シーボーギウム

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投稿遅れてすいません。次回から投稿ペースを10月5日まで週一にさせていただきます。

今回過去最長。

久しぶりに初投稿です。


15.『海を探す物語』

「何者だ」

 

 臙脂色の髪の女にラバルドは問う。彼女はその手には、深紅の、錆び付いた剣が握られている。その剣は錆び付いていながら、何故か易々とラバルドの絶剣を防いでいた。

 

「脳が溶けるんです」

「は?」

 

 女の意味のわからない言葉にラバルドは困惑する。女は彼を気にすることもなく続ける。

 

「この剣、使うと脳がドロッと溶けるんです。そんでドロドロになった脳がまた集まってまた脳になる。何度も溶けて戻って溶けて戻って、とぉっても痛いんです」

「何を……」

 

 女は目を伏せていて表情が伺いしれない。しかしそこにある異様な気配に、ラバルドはただならぬものを感じた。

 

「あああああ〜溶けるぅぅぅう、痛いぃ、痛い痛い痛いぃぃぃぃい」

「っ!」

 

 女の発狂に、ラバルドは反射的に距離を取った。得体の知れなさに鳥肌が立つ。が、そこでディアがいなくなっていることに気がついた。

 

「まさかっ!?」

「残念、もうとっくに街の外に出てますよ」

 

 そうラバルドに告げる女の表情に、先程までの狂気は無い。騙されたと気付いたラバルドは舌打ちした。

 

「いやー上手いこと騙せて良かったです。これ見破られたら流石に凹みましたね」

 

 ラバルドは豹変した女に疑念を募らせる。初めの狂気も、今の姿も、彼には全て本当の姿にしか見えなかった。彼女は先程までの異様さは完全になりを潜め、淡く微笑んでいた。

 

(一体何者だ……?ディアを助けたということは使徒なのか……?)

「ええ、ご想像通り私は強欲の使徒ですよ」

「っ!?」

 

 女の心を読んだかのような言い様にラバルドは目を見開いた。彼は淡く微笑む女に対する警戒を深める。対して女は自然体のままだ。精神的な余裕の差が、そこに如実に現れていた。

 

(心が読めるのか……?)

「別に心を読んでいるわけではないですよっ!」

 

 言いながら女はラバルドに斬りかかる。剣がぶつかり合い、火花を散らす。女の言葉とは裏腹に考えが見透かされていることに、彼は言いしれない不快感を覚えた。その様子を見て女は笑みを深めていた。

 

「私は人格の分析に長けていまして、分析した人格があらゆる場面で何を考えるか予測できるんです。さて帝国最強さん。ずっと我々使徒の脅威となってきた貴方が、分析されてないとお思いですか?」

 

 女は刃を振るい、ラバルドの剣を弾く。それだけで女の技量を感じ取ったラバルドは、即座に女を斬り殺すことに思考を切り替えた。女はそれを感じ取ったようだが、帝国最強に殺意を向けられてなお表情を崩さない。

 

「どんな状況でもその剣に一切の迷いが表れないことから、貴方は強い精神力を有していると思われがちですが、それは違う。貴方は心を殺す術を身に付けているだけで、その精神はそう強くない」

 

 返答を返さぬままにラバルドは剣を振るう。ディアにくらった一撃故か、その動きは少し前と比べて随分と鈍かった。一撃一撃が速く、かつ重い。しかし女は舞うような動きでその剣を容易く受け流している。

 

「貴方の精神自体は未熟も未熟。だから子供を殺せば心を痛めるし、友人を殺せば相応に壊れる。本当の意味で受け入れられるわけではないのに、しかしそれを強引に捩じ伏せてしまうが為に、貴方は帝国最強として君臨できている」

 

 図星だった。だからこそ、ラバルドは苛立ちを募らせていく。しかしそれで剣はブレない。それが女の推理を肯定しているようで、彼を更に苛立たせた。

 それも、女は見抜いていた。剣にそれは表れていない。だが表情に、仕草に、普通は気が付けない程僅かだが彼の苛立ちが表れていた。それを見て、女は内心でほくそ笑んだ。

 

「ディアさんのおかげで随分余裕ができていたようですね。ただ、それも彼女が使徒だったことで大きく崩れた。今の貴方は前よりも脆い。貴方は迷いが無いのではなく、その許容量が多いだけ。今まで誰もその許容量を越えることが出来なかっただけ」

 

 淡々と、無感動に女は続ける。お前の事などお見通しだ。そう告げるかのようにラバルドの心を暴いていく。

 

「貴方のその無表情が崩れた先には、一体どんな表情があるんでしょう」

 

 女の頬が僅かに紅潮する。目がトロンと蕩け、艶めかしく唇を舐めた。確かな愉悦がそこにあった。

 

「その表情を見たい、その時の声を聞きたい、どんな言葉を言うのか知りたい」

「何より、私はその無表情を初めて崩したという称号が欲しい!!」

 

 言葉と共に女が地に手をつき、魔力を流し込む。するとドンッ!!と強い揺れがその場に発生した。そうして地面から現れるのは無数の石の塊。一体一体がラバルドの3倍はある巨躯の人型だ。

 

 ゴーレム。土石魔法の基礎にして奥義。土石魔法は基本的にゴーレムを利用する魔法だ。巨大な(スパイク)型のゴーレムや、腕だけのゴーレム、剣や盾を模したゴーレム。そういったゴーレムを操作するのが土石魔法の真髄だ。

 

「その程度、何体創り出したところで!」

「良いんですか!?その中に何があるかも知らずに壊しちゃって!」

「っ!」

 

 その言葉に一瞬固まったラバルドに向けてゴーレムの一体が拳を放つ。それを避けた隙を狙って、女は突きを放った。彼は軽く剣で弾き、背後から迫る拳型の岩を身体を捻って回避する。

 

「クソッ……!」

「そう怒らないでください。今度は騙してませんよ?」

 

 また騙されたと憤慨するラバルドに、女は微笑みながら言う。それを証明するためか、彼女に1番近かったゴーレムの身体に剣を突き刺した。まるで豆腐を切るかの如く刃はゴーレムの中に吸い込まれる。

 引き抜いた剣の鋒には、一匹の虫が止まっていた。

 

「これ、見覚えありますかね?」

「ま、さか……それは………!!」

 

 ラバルドの顔に明らかな焦りが生まれる。その様子を見て、女は恍惚とした表情を浮かべた。

 

 帝国は、今まで何度も戦争を経験している。現国土の三分の一は他国から奪い取った、あるいは併合して手に入れた領土だ。帝国は今まで全ての戦争で最終的には勝利を収めているが、今から約15年前、ある戦いにおいて、帝国は歴史的な大敗を経験した。

 

 その戦線は、一時泥沼の消耗戦となっていた。帝国もその敵国の戦力は拮抗し、実質お互いに相手の食糧が切れるのを待つ戦いになった。それを重く見た上層部が大量の物資と人員、武器を前線に運ぶよう指示。結果、敵国を圧倒しうる大軍勢が送られた。

 

 それを、ある蟲の群れが襲った。

 

 その蟲は食糧を、武器を、鎧を、医療物資を、馬車を、その場にある生物を除く全てを喰い尽くした。更には周辺の村の畑や家屋すら喰い散らかし、近くの森から完全に草木を消し去った。

 有史以来最悪の災害とされ、後に兵糧喰らい、武器喰らい、商人殺しなどと呼ばれるその蟲は、未だに発生が確認され次第最優先で駆除命令が出される。

 

 その正式名称を"暴食蟲"。最大級のドラゴンよりも危険視される存在だ。

 

「さて、私が今出したゴーレム全ての中にこの蟲を大量に飼っています」

「なっ……!?」

「合計すれば相当な数になりますよ?」

 

 暴食蟲は文字通り、現在進行形で生きているもの以外全てを喰う。この街に放たれれば、残るのは住人だけになるだろう。帝国でも大きな方の街の住人全てが、家も財も無く路頭に迷う羽目になる。

 

「とはいえ、私もこの蟲を放つのは本意じゃありません。というわけで私と取り引きしませんか?」

「…………見逃せ、ということか……」

「話が早くて助かります」

 

 頭の中で、ラバルドは目の前の女とこの街の住人を天秤にかける。危険性(女達)の排除を優先するか、住人の命を優先するか。どちらも大きなデメリットがある。だからこそ、彼が選ばなければならないのは少しでもデメリットの小さい方だ。

 

「僕は……」

 

 ラバルドの表情が歪む。そして、長い逡巡の後に彼は決断した。

 

「僕は────」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「ん、うぅ………」

 

 気怠さ共に目を覚ます。初めにルビアの目に映ったのは、木製の知らない天井だった。ルビア予想以上に重い身体をどうにか起こし、周りを見渡す。見れば、それは南方の国の建築様式だ。襖があり、畳が敷かれている。

 

「起きたか」

「ウィディー………」

 

 見知った顔に、ルビアは気絶する前の記憶を思い出した。そこで、ディアの魔力を感じ取れなくなったことまで思い出し、途端に彼女は取り乱し始めた。

 

「あ、ああ………」

「おい、ルビア……!」

「い、や……」

「おい!ルビア!落ち着け!」

「いや、いや、いやいやいやいや!!」

「ルビア!話を……!」

 

 ウィディーの声も届かず彼女は絶望に支配される。呼吸が浅く、目には涙を浮かべ、ガタガタと震え始める。

 

「い「少し黙れ」っ!」

 

 それを、青い髪の青年が恐怖で持って止めた。底冷えするような声で、ただ一言付けるだけでルビアの絶望は恐怖で塗り潰された。彼女が怯えた表情を青年に向けると、青年は圧を消し、僅かに微笑んだ。

 

「悪いな、こうでもしねーと落ち着かなかっただろうからな」

「え、と」

「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はグーラ。グーラ・グラトニー、暴食の魔神だ」

 

 青年のなんでもないかのような言葉に、ルビアは絶句した。紺色に、金の装飾を持つローブを羽織る青年、グーラはそんなルビアの反応に少し不満気な表情をする。

 

「なんだ、もうちょい驚いてくれてもいーだろ」

「いや、十分驚いてんだろ……」

 

 ウィディーの突っ込みに、そうなのか?とグーラは疑問を呈する。実際、普段のルビアならばもう少しわかりやすい反応をしただろう。だが、今はグーラの荒治療でどうにか落ち着いてはいるが、ディアが死んだと思っている彼女は普段通りにする気力は無かった。

 

「……よし、ルビアだったな?着いてこい」

「え?」

 

 襖を開け廊下に出たグーラはそのままスタスタと歩いていく。それに呆れるウィディーに手を引かれ、ルビアはグーラの後を追った。廊下から、僅かに外の様子が伺い知れた。ルビアはその光景を知らなかったが、それはまさにディアの前世の故郷、日本で見られるような街並みだった。しかし普通と異なっていたのは、淡い色の煙があちらこちらに漂っているということと、常に甘ったるい香りが充満していることだ。

 

「あまり匂いを嗅ぐなよ。それ媚薬香だからな」

「は!?」

 

 ルビアはウィディーの言葉に正気か?という視線を向ける。それに対してウィディーは至極うんざりとした表情をした。

 

「この区画は色欲の使徒が一番多いんだよ。言うなれば遊郭だ」

「なんでそんなもん……」

「使徒たっての希望だ。俺達大罪魔力持ちは帝国じゃ発見され次第即殺か、女なら生殖機能潰された上で性奴隷だ。まー女もそのうち殺されるがな。ともかく、そのせいでどーしても絶対数が少ねー。言い方がクソだが、ここで増やしてんだよ」

 

 ルビアにも心当たりはあった。彼女は自分が既に子を産めない身体になっていることは、随分前から気づいていた。だからこそ、ウィディー達に聞かされた話も仕方がないことだと判断していた。無理矢理でもないなら否定する意味もない。

 

「この街って名前あるの?」

「一応オレ達は大罪都市って呼んでる」

「区画っていうのは?」

「名目上は属性で分けてる。嫉妬街とか暴食街みてーにな」

「ふーん……」

 

 ルビアは生返事を返しながら眼下の街並みを眺める。勤勉の都市に比べて秩序というものがいくらか欠落しているように見えるが、活気に満ち溢れていた。

 

 しばらくして、グーラがとある一室の前で止まった。

 

「開けてみろ」

「?」

 

 グーラの言葉に疑問を持ちながらも、ルビアはそれに従って襖を開ける。

 そこには、ディアが眠っていた。

 

「ディア!」

 

 ルビアは泣きながら彼女に駆け寄る。ディア、ディアと何度も名前を呼びながら眠る彼女に抱きついた。しかしすぐに違和感に気付いた。息はある。心臓も動いている。だが、

 

「ディアが眠ってから何日なの……」

「2日だ。だが、いつ目覚めるかは分からねー。少なくとも数年は起きねぇだろーよ」

「お前は感じ取れなかったかもしれねぇが、ディアは正体不明の力を使っていた。眠ってる理由はそれを使い過ぎたからだ」

 

 淡々とした2人の言葉にルビアは僅かな怒りを覚えるが、それ以上に悲しみが強かった。彼女は顔を俯かせ、自身の無力を悔いる。しばし部屋に重い空気が流れるが、それを打ち破る者が部屋に入ってきた。

 

「痛つつつ……はぁ…だる……」

「リティア!?」

「なんで起きてる!?寝てろたわけぇ!!」

「ディアさんの様子が気になりまして」

 

 臙脂色の髪の女、リティアはそんなことを言いながらディアの枕のすぐ側に座る。そしてゆっくりと全身を確認して、異常がないことに安堵した。彼女は一応回復魔法の使い手だ。本来ならディアの体調の管理を部下に任せ、異常があればリティアが直接その場に行って治療する、というやり方だったが、その部下が今日は訳あっていない。その為、彼女が直接確認しに来ていた。

 そんな彼女に、グーラとウィディーが叱責を飛ばす。

 

「傷だけで言えばてめーの方が重いんだぞ!」

「ダーインスレイブ使ったばっかだろうが!」

「大声で叫ばないでください……傷に響きます……」

 

 身体中に包帯を巻いたリティアは頭を抑えながら二人に苦言を呈する。彼女の傷は、彼女がラバルドとの戦いで使った剣が原因だ。

 

 【愚剣ダーインスレイブ】。それはこの世界に四本存在する、剣の名を冠する外付けの特殊魔法(・・・・・・・・)だ。ラバルドの持つ絶剣と並ぶこの剣は、使用者に規格外の強化を施すその代償に、剣を収めた時点で人間を一人殺めていなければ命を失い、殺めていても、持ち主に凄まじい反動を与える。更に言えば、手にした者の精神力が足りなければ持っただけで破壊衝動に呑み込まれ、精神崩壊を引き起こしてしまう。

 

 リティアは愚剣を抜いた。そうしなければ、彼女はラバルドの初めの剣を受けることすらままならなかっただろう。

 

「本当に、馬鹿なことやってくれましたよ……おかげでこんな大怪我負っちゃったじゃないですか。私結婚まだなのに……」

「お前……!」

 

 ルビアはリティアの言い様に怒りを露わにする。しかしリティアはそんな彼女の様子をつまらなそうに眺めていた。その瞳には、何故自分が怒られているのか分からないという考えがありありと表出している。

 

「やったこと、やろうとしたこと、それが如何に正しかろうが、尊ぶべきことであろうが、それでこんなことになってるなら自業自得で馬鹿なことなのは事実でしょう」

「黙れ!」

 

 怒りに任せてルビアは彼女に掴みかかろうとする。しかしそれをウィディーが止めた。ルビアは彼を射殺さんばかりに睨み付ける。それを受け、ウィディーは気不味そうに目を逸らした。

 

「リティア、俺達はそれを言える立場じゃない」

「はぁ?何言ってんですか?言えますよ。どんな理由があろうがラバルド相手に戦いを挑んだのはあくまで彼女の自己責任。私にもウィディー様にも責はありませんよ。あんな状況に陥られたら、普通こんな助け方しかできませんよ」

 

 リティアの言葉に、ルビアは思考が停止する。そしてその意味を理解して、彼女は激昴した。

 

「ディアが、戦ってるのを見てたのか……なら、なんで、なんで助けなかった!!!」

 

 ルビアがリティアに掴みかかる。ドンッ、と背中から壁に叩きつけられ、リティアは苦悶の声を上げた。その様子に止めに入ろうとしたグーラとウィディーを、リティアは視線を向けて止める。

 

「なんで……!」

「なんで?当たり前でしょう。介入のタイミングを間違えれば私は当然として、ウィディー様でも死んでいました。たまたま、彼女が気絶した瞬間が良いタイミングだっただけです」

「戯言を!私なら……!」

「副団長にも勝てなかったのに?」

「それはっ……!」

 

 言葉に詰まる。言い返せず、ルビアは苦々しい表情になった。

 リティアの言ったことは事実だ。事実だからこそ、それが重くのしかかる。副団長相手に苦戦していたルビアでは、ラバルドとの戦闘に合流したところで足でまといにしかならなかっただろう。

 

「自惚れが過ぎませんか?自分の実力も分からず私なら助けられた?冗談も程々にしてください」

「なら、どうしたらよかったのよ……!!」

 

 ルビアが悲痛な声を上げる。彼女は何も出来なかった。だが、それで納得出来るほど物分りのいい性格ではない。大切な人間が昏睡状態に陥ったショックというのは計り知れないだろう。ディアの助けになることが出来なかったという自責が、彼女を必要以上に追い詰めていた。

 

 この場にいる者は皆、大切な誰かを失ったことがある。ウィディーは仲間を、グーラは両親を、リティアは妹を。

 だからこそ、彼らはルビアを放っておけない。まだ失ってもいない内に絶望している彼女が気に食わない。手の打ちようがあるうちに諦めているのが許せない。まだいくらでもやり直せるのにそれを放棄しているのが、彼らは腹立たしくて仕方がなかった。

 

「ディアさんは、まだ死んでません。眠ってるだけです。少なくとも数年、長ければ十数年眠ったままかもしれませんが、それでも生きている。なら、貴女が諦めてどうするんですか」

 

 リティアの声に力が込もっていく。誰かを失う苦しさを、大切な人が苦しんでいる時に、何も出来ない無力感を、彼女はよく知っている。

 

「やりようのあるうちに諦めるな!そんなんじゃ……いずれ本当にディアさんを失うことになるぞ!」

 

 それは勝手な自己投影だ。自分は守れなかった、助けられなかった。だからお前は守り切れ、必ず助けろとでも言うかのように。彼女は願いを、ルビアに託そうとしていた。

 

「これから先、貴女達は間違いなく戦いに巻き込まれる!全力でないとはいえ最強の騎士と渡り合える人間を、暴走させたまともに制御もしていない魔法で都市一つ凍らせられる人間を、帝国が放置してくれるわけがない!」

 

 事実を突き付ける。無慈悲に徹底的に、容赦ない現実を突き付ける。

 

「また平穏が崩れた時に、また理不尽に襲われた時に、そうやって無意味に嘆いていたいなら好きにしろ!だけど、それが嫌なら、今度こそ自分の手で助けたいというのなら、」

 

強くなれ!!

 

 その言葉が、ルビアにあることを気が付かせた。

 

(ああ、そっか)

 

 マリアと戦い、リンディと戦い勝った。ディアとはまず戦ってすらいなかった。選抜大会決勝でのウィディーとの戦いでは、勝てるわけがないと戦う前から勝つことを放棄していた。

 彼女が心の底から勝ちたいと思った戦いで負けたのは、今回が初めてなのだと。

 

(今回は運が良かっただけなんだ)

 

 命のかかった戦いだ。普通、負けたのなら生き残ることなどほぼ不可能。今回誰も死ぬことなくこうしていられるのは、限りなく奇跡に近い幸運だっただけだ。次に同じようなことが起きれば、今度こそ死人が出るだろう。

 

(でも、それは変えられる)

 

 今、リティアに教えられたことだった。ルビアは変えられると知って、違う結末を得られると知って、何もしない愚者ではない。

 

「どう、したらいい……?」

 

 強く、傲慢な光がその瞳に宿る。他者がどう思おうと、関係ない。気に入らないなら捩じ伏せる。望まざるは跳ね除ける。ひたすらに傲慢に、迷いなど一つもないと言うかのように前進する。それこそが己なのだと、ルビアは証明しなければならない。

 

「どうやって、強くなればいい……?」

 

 守られていた今までの自分を否定する。そしていつか、ディアが目覚めた時に宣言するのだ。

 

「私に力を、寄越しなさい(・・・・・・)

 

 「守るのは私だ」と。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 序章を終えよう。始まりを告げよう。

 ただの凡人が、世界に変革を齎す物語、その『もう一つの題名』を奏でよう。

 復讐を、自由を、幸福を、それらを求めた者達の戦いを記録しよう。

 平穏を、平和を、日常を、それらを守らんとした者の生き様を刻み込もう。

 

 この、物語は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海を探す物語』

 

 

 

 

 

 

 





感想評価よろしくお願いします。


では、失踪します。

投稿頻度に関するアンケートしたばかりで忍びないのですが、一区切り付いたら1ヶ月程投稿を週1にして書きだめする期間を作ろうか考えています。ちょっと回答お願い致します。

  • 構わん、やれ。
  • ダメです。
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