過労死ワイ、戦いを全力で避けた結果怠惰の魔神扱いされる。 作:シーボーギウム
○月£日 晴れ
今日、ルビアから色々とこの世界について聞いてみたところ、とんでもないことが判明した。どうやら俺がひねった野盗は野盗じゃなくてこの国の騎士団だったらしい。曰く、このままだと国家反逆罪で死刑直行だとか。初っ端とんでもないことをやらかしてしまった。
しかし、これからもあんな感じに襲われ続けると思うと面倒くさい。出来る限り戦いなんてのはしたくないので転移魔法でも修得したいところだ。
それはそれとして、この街から別の街に移る準備もしておく。ずっと一ヶ所に留まっていたら間違いなく居場所がバレるだろうからな。とりあえず明日出発出来るようにしておこうと思う。
目的地は出来るだけ大きな街が良いな。転移魔法を〜なんて考えたのは良いが、転生特典で頭に叩き込まれた知識ではどうにも作るのが難しそうなのだ。できればそういったことに関する知識や練習方法が書かれた本などが欲しい。となると大きな街の方が良い、という事だ。
俺のこの世界での最終的な目標は、身の回りの世話を美人でエッチなお姉さんに全部任せつつ好きな事をしてグータラグータラ過ごす事だ。んで、その過程で必要なのは何不自由の無い家と身体、いざという時のための脱出手段とかそんな感じだと思う。
しかし現状、その目標に必要なものは何一つ揃っていない。まぁ家は最悪作ればいいが。しかし身体はそうもいかない。不老不死とは言わない、というか不死は嫌だが、不老にはなっておきたい。そのための魔法なんかもできれば開発したいがこれもまぁ知識が足りない。既に修得方法が確立されてたりしないだろうか。それだと楽で良いのだが。できれば自分で一から研究するのは御免被りたい。
とりあえず準備終了。明日出発だ。
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○月¥日 晴れ
いやー色々あった。順を追って話そう。
まず、昨日立てた予定通り俺達はこの街を出ようとしたのだが、どこから聞きつけてきたのか知らんが既に街に騎士団がいた。ギリギリ身を隠して事なきを得たが、街中を騎士が歩き回っててとてもじゃないが街から出られる状況じゃなかった。しかもアイツら俺とルビアを感知する方法があるらしく、一ヶ所に留まっていると速攻でみつけてやがるのだ。
直感的に感じたアイツらの実力的に、ゴリ押しすれば逃げられそうではあったが、これ以上事を荒立てるのは出来る限り避けたかった。それに顔がバレるのも避けたい。なんせルビアに聞いた感じ、俺達の立場は既に国際指名手配犯とほぼ同義なのだ。これで顔までバレれば異世界に転移して数日で世界から居場所が消えるとかいう難易度ルナティック状態になってしまう。
新たに作り出した布で顔を隠しながらどうにか裏路地を行き来して逃げてはいたが、そろそろ限界、というところでとても綺麗な、真っ赤な髪を持つお姉さんに声をかけられた。俺を見て唐突に「お前……怠惰か……?」とか言ってきた。速攻で違うと答えたが。あれだろうか、自己紹介の後で勢いよく「デス!!」とか言ってる人と同じような方なのだろうか……?もしそうなら綺麗ではあるができればあまり関わりたくないな。
そんな感じに下らない事を考えていると、お姉さんが囮になってやる、と言った。何故助けてくれるのか、まずどうやって囮になるのか、そんな疑問はあったが、手を借りなければニッチもサッチもいかない状況だったため、怪しくはあったがお願いすることにした。あと、なんとなく直感的に大丈夫だと思ったのもある。
んで、そのお姉さんが何をしたのかだが、うん………化け物かな?お願いした途端目視も難しい速度で俺達が向かうのとは逆の方向に向かって、それに呆けていたら凄まじい爆発が起こった。多分、魔力的なものがそのお姉さんと同じだったから、あの爆発はお姉さんが引き起こしたものだと思われる。
いや、えぇ……?(困惑)規模が完全に火山の噴火とかそういうレベルだったんだが?ま、まぁそのおかげで騎士は全員そっちの方に向かったから無事逃げることが出来たのだが……
もしかして俺ってそこまでチートじゃなかったりするのだろうか……?
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○月%日 曇り
この世界って美人多いのね。
俺は転生特典込みの美貌だろうからノーカンとして、ルビアは将来が楽しみな位には美人だし、昨日助けてくれた赤髪のお姉さんもかなり美人だったし、なんなら普通に街を歩いていた人達も、ルビアや昨日のお姉さんには負けるが前世基準で言えばかなり美人の部類に入っている。
んで、何故唐突にこんな事を書いているかというと、これまたルビアや昨日のお姉さん並みの美人と会ったのだ。しかも妙に雰囲気がエロい。あと多分めっちゃ強い。昨日のお姉さんの爆発の魔力を感知してから、なんか感覚が開いたのか、相手を見ただけで自分とどれだけ力量に差があるか、みたいなのがなんとなく分かるようになった。
とりあえず、絶対勝てないとだけ言っておく。
お姉さんは、街を逃げ出た結果予定がガッタガタになった俺達のことを、自分が普段使っているのだという小屋に泊めてくれたのだ。一応対価はある。と言っても少しの金と、俺の魔力を調べたいというだけだった。
お姉さんは魔法やら魔力やらの研究を長いことやってるらしいのだが、俺の持つ魔力が大層珍しいものなのだとか。死ぬようなことは絶対やらないという前提のもと、それを調べるのを対価に泊めてもらえることになった、というわけだ。
その調査だが、数日はかかるらしい。その数日の間は泊めてもらうことになった。
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○月+日 晴れ
今日はお姉さんが色々と教えてくれた。
まず、相手の魔力属性を見る技術。
この世界には美徳七属性と大罪七属性なるものの計14属性が存在するらしい。基本、大罪七属性の方は普通は秘匿されているから、ひけらかすのはやめておけ、と言っていた。知っているだけでもかなりの罪に問われるらしい。何で知っとるんや………
で、何故わざわざ俺、というか俺とルビアにそれを教えてくれたのかというと、俺達の持つ強い魔力属性が大罪七属性側だかららしい。知ってるだけで罪なのだ、実際に持っていたらどうなるかは想像に難くない。
因みに彼女曰く、俺は怠惰で、ルビアは傲慢らしい。俺の怠惰は分からんでもないが、ルビアって傲慢か……?
少し話が逸れた。
この世界で主流なのは美徳七属性で、謙譲、慈悲、忍耐、勤勉、救恤、節制、純潔の七種類あるらしい。
美徳七属性と大罪七属性はそれぞれ、謙譲と傲慢、慈悲と憤怒、忍耐と嫉妬、勤勉と怠惰、救恤と強欲、節制と暴食、純潔と色欲が対になっていて、対になっているものが両方高い数値を出すことはないらしい。つまり怠惰が高い俺ではどうやっても勤勉の魔力は高まらないということだ。
この七属性には当然得手不得手がある。相手の魔力が見えれば、仮に襲われた時、対応のしやすさが段違いに変わるのだとか。
次に魔力の隠し方だ。こっちの方が俺達には大事だ。
大罪七属性は持っているだけで重い罪に問われる。大分理不尽だが、それがこの国の法な以上、とりあえずはその法に従わざるを得ない。とはいえ魔力を隠さず垂れ流しではすぐに騎士に見つかってまともに生活もできない。というわけで魔力の隠し方を知らなければならない。
どういう風にやる、みたいなのは面倒なので省く。
魔力を隠したら、後は美徳七属性で高い属性の魔法の使い手だと偽れば、この国でもほとんど問題なく活動できるらしい。俺は美徳七属性では慈悲が、ルビアは忍耐が高かった。
怪しまれないよう少しそれぞれの属性の魔法について教えてくれるらしい。
なんでこの人こんなに良くしてくれるんだ………?
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ルビア達を助けた赤髪の少女は、街の南方にある草原にいた。
彼女の姿は、街にいた時と大きく異なっている。胸元から下腹部までを除き、ほとんど全身が赤い鱗に覆われ、その両手両足は龍のものとしか言えない形になっており、それに倣うように龍の尾がある。更に特筆すべきは側頭部にある一対二本の、天を衝くかの如き真紅の角だ。
そうして、明らかに姿を変えた彼女の拳は、街にいた騎士の胸を貫いていた。
「化け……物………」
「貴様らの所業を省みてから言え」
彼女が右手に力を込めると同時に、騎士の死体が燃え上がる。一瞬にして、黒く焦げ付いた骨のみが残り、彼女はそれを乱雑に、
「おーおー、これまた派手にやりやがって」
彼女の周囲の光景を見て、突如現れた青い髪の青年が気怠そうに呟いた。彼女は若干申し訳なさそうにしながら、青年に足元の溶岩の処理を頼むと、彼は右手を溶岩に向けて翳し、
「よっと」
右手を
「うーん、不味い」
「もとはそこらの土やら岩だぞ、美味いわけないだろ……」
何かを咀嚼する青年は呆れた様子の少女に肩を竦める。彼は口の中にあったものを呑み込んでから、一変して真面目な顔付きで彼女と向き合った。
「で、なんでこんなことやった?」
「目立つようなことをしたのは悪かった」
「過ぎたことはもういい。で、理由は?」
少女は視線を先程までいた街へと向ける。
「怠惰の使徒と思われる女を見つけた」
「なっ!?」
少女の言葉に驚愕し目を見開き、本当か?と問う青年に、彼女は事実だ、と短く答える。少女と同じく街に目を向けた青年は、少女が何故わざわざ目立つことをしたのかを悟った。
「ようやく揃ったか……」
「ああ、ようやく
二人は街を、その先にあるものを睨み付ける。
「「必ず潰す」」
多大な憎悪と、覚悟の籠もったその言葉を最後に、二人はその場から姿を消した。
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作者の属性が怠惰なので失踪します。