過労死ワイ、戦いを全力で避けた結果怠惰の魔神扱いされる。 作:シーボーギウム
うーん難産。そのせいで小説パートが微妙かもしれない……
許し亭許して。
7月最後の初投稿です。
△月〆日 晴れ
街についた。前いた街に比べてかなり栄えている。どうやらここはこの国一番の学校があるらしく、そこに商人やら何やらが目を付けてドンドン発展していった結果、これだけ大きな街が出来上がったらしい。これから調べ物などには困らなそうだ。
それはともかく、この街に着いてから気付いた問題がある。とても簡単でかつ深刻な問題だ。
金が、無い………!!
元々エンカウントした騎士団から奪ったものだ、そう多いわけでは無い。初めの街での宿代、お姉さんへのお礼代、そしてこの街での宿代。しばらくここに滞在する予定なので宿代は更にかかる。その上この街の方が前の街より宿代が高い。
早い話が、収入が必要というわけだ。要するに仕事をしなければならない。
ヤバい手が震えてきた。
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△月▼日 晴れ
とりあえず落ち着いた。完全にトラウマだな。
仕事云々は一度忘れて、今日はルビアと街を散策した。そこで今更だが気付いたのだが、この世界、割と前世と食事情に変わりが無い。前の街では異世界転生間もないのもあって興奮気味だったせいで気付かなかったが、こうして街の露店などで売られている食べ物は総じて美味いし、味はともかく見た目がヤバい、みたいなのもほぼ無い。いくつか明らかに虫なのがあるが………
ともかく、そうして食事情が前世似なおかげで食べる物には困っていない。名前は違うが前世で見た事ある料理とかもある。流石に日本食は存在しないが。
色々食べ歩きした後で、俺達はこの街にあるという国立図書館に向かった。
外観は図書館、というより博物館が近く感じた。あととにかくバカでかい。五階建てで、歩いてだと端から端まで1時間かかりそうなぐらいに広い。しかしそこは異世界、移動用の乗り物のおかげで端から端まで5秒である。
街でもいくらか魔法によるテクノロジーは見ているのだが、実は限定的に見ればこの世界の方が発展しているものも結構ある。これは主に移動や配達といった分野が顕著だ。上述の図書館の乗り物もそうなのだが、移動中はあらゆるものをすり抜ける魔法によって直線距離、かつ高速での物流が可能となっているらしく、更に帝都などの最重要の書類などは転移魔法が使われていたりもするらしい。そして残念なことに、転移魔法は現状人を送る事は不可能らしい。
これは現在使われている転移魔法の仕組みが関係している。まず、転移魔法の属性は救恤で、この属性は他者の傷の回復や支援を得意とする属性だ。この属性の肝は、他者に何かを与える、ということにある。
今使われている転移魔法で送る物は、基本的に
つまり、送りたい物の一部分を
要するにこれで人を送ろうとすると見るも無残な状況になる。
まさかこんなに速く夢の一部が潰されるとは思わなんだ。まぁいざという時の為に転移魔法が欲しいってだけだったのでそこはもう仕方ない、諦めるとしよう。
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△月♫日 晴れ
今日も図書館に来た。
転生特典でこの世界の言語を脳に直接インストールした俺はもちろん、ルビアも読み書きは完璧なので暇つぶしにかなり相性が良い。ルビアは魔法関連の本を、俺はこの世界の物語を主に読んでいる。
そして気付いたのだが、この街の住人の識字率がかなり高い。ルビアに聞いてみたところ、この街は勤勉の都と言われているらしく、この国で最も知識深い人間が多い街なのだそうだ。
この街は前世の日本で言うところの義務教育制度が施行されていて、幼いうちから高い水準で教育を受けられる。しかも入学費その他諸々の諸経費はこの街を収める公爵が受け持つ為
そういうわけでこの街の識字率が跳ね上がっているようだ。
しかしこの街の公爵様はかなりの人格者だな。こういう異世界の貴族は油ぎったクソデブサイクで「下等な平民共は黙って金を出すザマスーwww」とか言ってるイメージだったのだが(ド偏見)
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△月■日 晴れ
ルビアが学校に行ってみたいと言い出した。
もっと魔法についての勉強がしたいらしい。それと、あの子は言わなかったが多分学校というものへの憧れもあるのだと思う。
昨日一昨日は気が付かなかったが、ここの図書館はこの街の学校の生徒と思わしき子達が結構いる。もちろん図書館で静かにするというルールは守っているが、彼等は傍目に見てもかなり楽しげだ。
正確にはわからないが、ルビアの年齢は見た感じ13〜15歳。丁度彼等と同年代だ。友達というものに飢えていても不思議では無い。しかも、理由は知らないが奴隷になっていたのだ。その期間がどれだけのものなのかはわからないが助けた時の様子を見る限り、1年や2年は優に経過していたはずだ。
更に彼女の学力だ。この都市が特別なのであって、他の都市では義務教育なんてものは存在しない。だというのに彼女は当たり前に文字を読み書きできている。表現が少し正しくないかもしれないが、こういう中世ヨーロッパ的世界観では文字が読める、というのは学力的にかなりのステータスなはずだ。つまり、どういう経緯で奴隷になったのかはわからないが、元々ルビアはそこそこに財力のある地位にいたことになる。
程度に差はあるだろうが、そういう地位の人間はあまり自分より下の地位にいる人間と関わりを持つのを嫌うイメージがある。仮に彼女の家がそうでなかったとしても、そういった繋がりは奴隷になってしまったせいで全て消えているだろう。
今、彼女と繋がりのある人間は俺だけだ。かろうじて色欲のお姉さんも繋がりがあると言えるかもしれないが、それでも二人しか繋がりが無い。
寂しい、のかもしれない。
できれば行かせてあげたいが、そう簡単に決められることでも無い。金のこともそうだが、どういう手続きが必要なのか、万一にも俺達が大罪七属性を持っていると知れればまずいことになる。
幸いこの街にはまだ滞在する予定だ。少し考えるとしよう。
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私達がこの街に来て、一カ月と少し経過した。その間色々あった。色々あったうちに、今の私達は宿ではなくある飲食店で下宿させてもらっている。ずっと宿で泊まっているとお金が湯水の如く流れていってしまう、そんなわけで私達二人の労働を対価に住ませてもらっているというわけだ。
『以上で祝辞とさせてもらう』
拡声魔法を通して、壇上の青年が話を締め括る。降壇する間にも、周囲は緊張感で包まれていた。
そう、私は念願叶って今日から学校に通うことになった。
私が学校に行きたいと思ったのにはいくつか理由がある。が、最たる理由はディアの役に立ちたかったからだ。助けられて以来、私は彼女の世話になりっぱなしで、迷惑をかけてばかりいる。この国最大の学校で魔法について学べば、彼女の役に立つ知識が得られると思ったのだ。結局お金等の迷惑をかけてしまったのは否めないが。
私の今の目標は、ディアを養う事だ。ディアは仕事が大嫌いみたいで、今の仕事はまだしも、その前に日雇いの書類整理の仕事をして帰ってきた日は、怯えたように震えて、涙を流していた。あれは尋常なものではなかった。多分、何かトラウマがあるんだと思う。
だから私は、命を救ってくれた恩返しとして彼女が何もしなくても、何不自由なく暮らせる環境を整えることを目的にした。この国では魔法の才能がそのまま高い地位へと直結する。まだ具体的な案は見つかってないが、幸い私は忍耐の魔力はそれなりに高い。これをどうにか利用すれば、この国の重要なポストにも付けるだろう。
大罪七属性を持つ私がそういうポストに就こうとするのは些かリスクが高いかもしれないが、命の恩を返すならば、命をかけて恩を返さなければならない。
ふと、美徳七属性だけでどうやって出世するかを考えていると、緊張した空気が弛緩し、周りが色めき立った。何事かと意識を壇上に向けると、先程の青年とは別の青年がそこに立っていた。
(あれって確か………)
鎧に身を包んだ、黒髪黒目の青年だ。顔立ちは端正。鎧を着て、なおも身体の芯が全くぶれない歩みからして、相当鍛えているということが素人目に見てもわかった。
初めて目にしたが、知っている。彼はこの街を治める公爵であり、七大神の内、勤勉の神の加護を受けた聖騎士。
ラバルド・ユーリス
帝国最強と言われる騎士だ。
『入学おめでとう。僕は、君達を歓迎する』
柔らかく微笑む彼を見て、一つの考えが頭の中に浮かんだ。
(彼に取り入れば……)
彼の直属の部下になれば、間違いなく私の目標は叶うだろう。そしてこの学校からもわかるように、彼は人格者として有名だ。馬鹿正直に話す訳にはいかないだろうが、正直に目的を伝えれば、最悪部下になれなくても目的達成の為に何かしてくれるかもしれない。
まぁかなり希望的観測だが、彼の情に訴えかけておけばいずれ役に立つかもしれない。
式が終了し、生徒達が各々動き始める中、私はラバルドの元へ足を向ける。
しかし、その前に誰かに右手を引かれた。私の手を引くその腕はかなりの力で私を引っ張っていく。人混みを抜け、校舎を通り過ぎ、人気のない校舎裏に着いた時、ようやくその腕の主の姿が明らかになった。
それは小柄な少年だった。私は同年代の女の子に比べても少し身長が低いが、それよりも少し小さい。肌は白く、髪は金で瞳も金。しかし、その姿は黒い霧が散り、すぐに崩れ去った。肌は褐色に、髪は燻んだ白に。唯一、瞳だけが変わらないままだった。
そして、彼の奥底に現れた
「はじめましてだな馬鹿女」
煩わしそうに彼は言う。そして私は理解した。
「ウィディー・エンヴィー。嫉妬の魔神だ」
どうやらこの学校生活は、普通にはいかないらしい。
感想、評価ありがとうございます(先置き)
それでは8月まで失踪します。