「召喚に応じ参上しました。貴方が私のって熱っ!?火!?火の海の中!?」
カルデア一同は凍りついた。戦力増強のための英霊召喚で、まさかの年端も行かない少女が顕れ、かと思えば火にガチビビりしたからだ。
女性だからと言って戦力にならないと考えているわけではない。マシュは強いし、さっき出会ったシャドウ・サーヴァントのうちの一体に、女性が混じっていたからだ。
そのシャドウ・サーヴァントは、立香たちが初めて出会った敵の英霊でもあり、クーフーリンが横入りに助けてくれていなかったら敗北していただろう強敵でもあった。
だが、彼女は”大人”だった。背はスラリと高く、細い腕からは想像出来ないゴリラめいた腕力による杭の一撃はかなり恐ろしいものだった。
それに比べて、目の前の少女は若い。というか幼い。マシュはあのシャドウ・サーヴァントよりも若い。多分俺と同年代だと思う。だが、少女はそれ以上に幼かった。
言っちゃなんだけど、10歳前後の容姿と未だに慌てふためいている様子からは、とてもじゃないけど強そうな印象は抱き難い。腕というか、全体的に華奢だし。
「ちょっと!いい加減に落ち着きなさい!」
見かねたオルガマリー所長が少女に歩み寄り、肩に両手を置いて声をかける。さっきまで召喚の重圧で顔を青くしていたが、自分より焦っている少女を見て頭が冷えたのか落ち着いている。
恐慌に陥りかけていた少女は肩を触られてピクンとはねたが、所長の方に顔を向けた。
「は、はい!」
「しっかりしなさい、安全とは言い難いけど、ここまで火が飛んでくることは無いわよ。もう一度やり直しなさい」
サーヴァント相手によくあんなに強く出られるなあ。そんな風に思っていると、どうにか立ち直ったらしい少女がこちらを向いた。
「わ、分かりましたっ。それでは、改めまして…
サーヴァント、キャスター。名を瀬笈葉と言います。先ほどはお見苦しいところをお見せしてすみません。こんな私ですが、マスターの助けになれるように頑張ります!」
ペコリと深くお辞儀をしながら、その少女はそう締めくくった。さっきの慌てようとは別人に思える落ち着きっぷりに驚かされたが、それでもやっぱり強そうには見えない。先行きを不安に思っていると、所長が今度はこちらに声をかけてきた。
「藤丸!あなたが召喚したサーヴァントでしょう!早く契約してステータスを見なさい!」
その声にハッとさせられる。そういえば、サーヴァントは召喚しただけではダメで、契約しないといけないのだ。そうしないと現界を維持出来ず、わずかな時間で消滅してしまうらしい。
そして、契約をしたサーヴァントは能力が見られるのだ。早く契約をしないと、せっかく召喚出来たのが無意味になってしまう。慌てて少女…葉のもとに走る。
「えっと、葉、さん。いきなり呼び出しておいて不躾だけど、俺と契約してもらいたい、です」
少女の容姿からは、とても強大な英霊という認識を持てないせいでぎこちなくなってしまう。年下にしか見えないのに敬語を使ってるのも変な感じだ。そんな様子がおかしかったのか、葉はくすりと笑った。
「葉でいいですよ。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
その言葉と共に、何かで繋がる感覚がひとつ増える。それと同時に、葉のステータスが見えてくる。
| 真名 | 瀬笈葉 |
|---|---|
| クラス | キャスター |
| 出典 | 東方求聞史記(東方自然癒) |
| 属性 | 秩序・善 |
| 地域 | 幻想郷 |
| 筋力 | C |
| 耐久 | D++ |
| 敏捷 | B |
| 魔力 | A+ |
| 幸運 | D |
| 宝具 | EX |
…
スキルや宝具まで見たが、正直、ステータスの見方は分からないので、所長に見たままを伝えた。内容を聞いた所長はロマンと顔を突き合わせ、難しそうな顔をして話し合っていた。
「魔力が優れているけど、厳しいわね…火を怖がっていた理由も分かったわ」
『植物の力を借りられる能力、ですか。普通なら有用なんですけどね。いかんせん火の海の中です、使いようが無いのが惜しい』
「宝具も攻撃より補助に寄っているし、Cランクではアーサー王には効果は無さそうね。それ以前に、既にいるキャスターが召喚されるのが想定外すぎて…」
『想定外と言えば、彼女、幻想郷の住人なんですね。まさか実在していたとは…それはともかく、後衛二人に、防御役が一人ですからね。前衛が召喚されるのが望ましかったのが本音です』
「っ…それでも、もう召喚のためのリソースはありません。頭数で言えば、サーヴァントが3体。勝ちの目は十分にあるはずよ」
『…無事の帰還を祈っています』
会話が終わったのか、所長がこっちに戻ってきた。手持無沙汰になり、顔合わせを済ませていたサーヴァント一同も集まってくる。
「お待たせしました。まずは藤丸。よく英霊召喚を成功させませした。この土壇場で戦力をひとつ増やせたのはとても良い仕事です。ですが、相手は強大な力を持つアーサー王です。サーヴァントが一体増えたとしても、油断出来る相手ではありません。なので…クーフーリン」
「あいよ」
「あなたがアーサー王について知っている事を、全て話してもらいます。その上で、如何にかの騎士王を打倒するか。作戦を練る必要があります。いいですね?」
「ああ、全部話してやるさ。にしても、どういう風の吹き回しだ?」
クーフーリンの問いに所長は硬直したが、すぐに何でもないように問い返した。
「…何がでしょう」
「その態度だよ。お前さん、そんな殊勝じゃなかったよな?正直言って別人みたいで気持ち悪いぞ」
「だ、誰が気持ち悪いですって!?私は私なりにねぇ!」
突拍子も無く煽られてキレた所長だが、その様をみてクーフーリンは笑った。
「そうそう、そんな感じだ。あんまり肩肘張らないほうがいいぜ?頭空っぽにしろたぁ言わねえがよ、緊張しすぎたって良い事はないからな?」
「わ、分かってるわ!それに、態度を改めたのは緊張のせいじゃないわよ!私は私なりに、功績を認めようと思って…な、何見てるのよ」
「いえ別に」
所長の態度が軟化したのを見て、つい嬉しくなってしまった。顔のニヤケを何とかして抑えるのに、今は精一杯だった。
所長:軟化。自分たちがほとんどできなかった英霊召喚が出来たのを見て思うところがあった。
葉::植物は全焼。地面はコンクリ。時刻は夜で陽は沈み。完全に強みが潰されてる状態。
次回は8/14