もしプリコネ設定ガチ勢ニキがいたら教えてください。お返しに糞メガネ贈呈します。
「死ねぇ!」
「テメェがな!」
火花が散った。
それはお互いの剣の交差。
その剣を境に、二人の視線も交差する。
「あぁ……いい。本当にそのゴミみたいな性格を抜けばお前は本当にイイ……!」
「何上から目線でモノほざいてんだこの宴痴女。人の性格揶揄してる暇あるなら脳みその手術でも受けてきたらどうです? 腕の良いのがいるギルド教えますよ。トワイライトキャラバンっていうんですが──」
そんな会話を繰り広げながらお互いが剣を突き出しあい、時には拳でフェイントをかけ、脚技で動きを絡め取りにいく。
「いつもの事ながらよくやるね、あの二人」
「かれこれ4時間あれッスからねぇ」
その光景をぼんやり眺めていたのが、先程まで同様に訓練をしていた二人、名前をトモ、マツリという同じNIGHTMAREに所属する少女達だった。
NIGHTMAREはギルドではあるが、ランドソル王国直属の騎士団でもある。そのため規律なども厳しく、そもそもこの組織に身を置く人間自体が規律的な人間が多い中で、あの二人はこう……別枠の何かだった。
規律的と言うには自由すぎて、
模範的と呼ぶには破天荒すぎた。
もちろん反感を買わない訳ではない。
しかしそれでも許されるのは、誰もがこの光景を知っているからであろう。
「相変わらずよく動く! どれ、止まったら最後、標本のように刺し止めてやるさ☆」
「間違っても騎士のセリフじゃねぇですね! つーかまじで木刀でやりましょうよー。訓練のたびに命の危険に陥るとかブラック過ぎんでしょ」
「い、や、だ。貴様木刀へし折って戦いを投げ出すだろう?」
「ババア無理すんなよ──うお、今のはあぶねぇ! 今のはあぶねぇ!」
方や『誓約女君』と呼ばれる女騎士。
オートカウンターなる敵の攻撃を認識していなくても躱し、最適の一撃を反射で叩き込むというなんともチートじみた戦いができる戦闘狂。
しかしそれに追いすがり、こうして四時間も決定打も貰うことなく戦闘を続けられるのはこのカナタという男だ。
そんなことができるのはこのギルドでも団長以外にいるかどうかというほどなのに。
ある日気になったトモはカナタに聞いたことがある。なぜあの人相手にそんなに戦えるのか、と。
『え? 戦える理由? あぁ、オートカウンターの事ですか? それなら簡単です。あれ要は、“最適なタイミングで攻撃を避け、最適なタイミングでカウンターを放つ”だけなんです。だったらその最適なタイミングを掴めば少なくともこっちもダメージは負いません。最適なタイミングで避けられるのならば、どのタイミングにおいても避けることができない攻撃を用意するだけで攻略可能でしょう?』
そんなことを、さも当然のように言い放ち、そしてこうして実際に繰り広げられる光景をみると彼の強さがよくわかる。
「……私もまだまだだなぁ」
「多分あれを目指すのはまた別かと思うんスけど」
響く剣戟をBGMに、二人の朝は過ぎていった。
◆
自称騎士ではあるものの、毎日が忙しいといえばそうでもない。
シフトで組まれた巡回を行い、それを書面にまとめ、必要な業務さえ終わらせてしまえば基本的には暇なのがこのNIGHTMAREというギルドだった。
その手漉きをどう過ごすかは決められておらず、最低限のことさえ行っていればまず除名なんかもされない、ある意味では優良なギルドだった。
そんなわけで、必要な業務を終えたカナタが来たのは木造の建物。やや建付けの悪くなったドアをノックもせずに開いた。
「よぉガキ共。お兄さんが手土産持ってきたぞ〜」
『おじさんだ!!!』
「はいさよならー」
『パパ! 大好き! パパ!』
「その媚の売り方は俺の立場がヤベーからやめろ」
アホなやり取りをしながら手に持っていた菓子類を集る子供たちにバスケットごと渡した。
頭をワシャワシャなでてから中に足を踏み出し──。
「あら、またサボり?」
「……アンタが面倒みに来いって言ったんでしょうが、元上司」
「そうだったかしら? 元部下。ま、お茶くらいは出してあげるわよ。座りなさい」
椅子に腰掛け、こちらを猫のように細めた目で見て笑う彼女──この【サレンディア救護院】の院長。
そして元NIGHTMARE直属の上司でもあったサレンがいた。
「……それにしてもアンタ老け込み過ぎでは?」
その姿を見て、思わずこぼれた言葉がそれだった。
同時にサレンが机に額を打ち付けた。
ゆったりとした白が基調の服。
天窓から差し込み日を浴びながら、紅茶を飲んで手元で縫い物をしているその姿──これで17歳は笑う。本当に笑う。
「……本当に気にしてるんだからやめなさい……! どこか、私のどこが悪いっていうの……!」
「いやもう全体的に雰囲気が母親のソレ。昔のアンタなら俺が言い切る前にぶっ飛ばしてたでしょ」
丸くなったもんだとカナタが顎をなでた。
サレン。今はこうして苦労人の雰囲気を感じさせる女ではあるが、NIGHTMAREにいた頃はそれはもう鬼だった。
他人に厳しく、それ以上に自分に厳しい女だった。真面目で純真で、潔癖と思えるほどに眩しい女。
厳しいし訓練は辛いしでいい事など少なかったが──離れようとする騎士は一人もいなかった。
全員がこの女の後進を征き、いざという時、この女のために死ねるのであればそれでもいいと思うほどだった。
未だにそれを引きずるものを少なくない。
「……だったらたまには剣でも振りに来りゃどうですかね。編物するほど手が寂しいんなら、うちの若いのでも扱いたらどうです? 少しは若さなんなりを取り戻せるんじゃないですか?」
そういう自分の言葉の端々に、未練が見え隠れする事にカナタは恥じらいを覚えた。なんて女々しさだろう。とどのつまり、自分もあの光景をもう一度見たいだけなのだ。
その言葉にサレンは薄く笑った。まるでカナタの言いたいこと全てが分かっているように、見透かすような透明な笑みだった。
「……ふふ、そうね。でも駄目よ。またあそこに行ったら未練が出ちゃうじゃない」
「そうですか。ま、俺らからしたらアンタがいなくなって地獄のシゴキが無くなってせいせいしたもんですから、助かりますがね」
そう言葉を返すのが、精一杯の強がりだった。
「なーなーカナタ!」
その時だ。この救護室の中に住む子どもたち用に作られた二階から、忙しない足音と共に子供が駆け下りて来た。
アヤネとクルミという少女だった。
そのままの勢いで、アヤネがこちらの脚に飛び付き、怪我せぬようにそのまま足もとへと抱え込んだ。遅れてやってきたクルミもやや気恥ずかしそうにしているのを気にせず膝に乗せる。
「お菓子、なくなったよ!」
『無くなったぜ!』
「あ、あの……」
「ほう。ホントの事言ったらこのアメやるぞ?」
「部屋に隠して貯蓄した。まだ叩けば出るかと思って」『アメだアメだー!』
「強かだなぁ……」
こういう強さを持ってさえいれば、まぁ生きていられるだろうと一種の感動を覚えながらポケットなら出したアメを与える。
「こらあなた達! いくら良い金づるだからってそう何度も駄目だからね! こういうのは搾り取るペースが大事なんだから!」
「おい。おまえ、おい」
この現状を生み出したであろう現状に突っ込みながらため息を付く。
両足に感じるそれぞれの重さが、前来た時よりも少しだけ重くなっていることに感慨深さを覚える。
初めて膝に乗せたときは、それは軽かった。
まるでそれが、この子達自体の価値であるかのように、羽のような軽さだった。
心を閉した昏い瞳。見上げることを忘れた顔。
今じゃ信じられないが、そんな二人だった。
「そういえばサレンママ。昨日隣のおばさんが言ってたけどねー」
「ママって呼ばない。なに?」
「うん。カナタとはいつヨリ?を戻すのってー」
『────』
その瞬間、この空間の空気が死んだ。
いらない(未来予知)