私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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 ユウラン・アルシップス 冒険者レベル8 経験点82000+310

 HP87+12 MP86

 ファイター技能レベル7 ソーサラー技能レベル6 コンジャラー技能レベル8

 フェアリーテイマー技能レベル4

 スカウト技能レベル9 レンジャー技能レベル3 セージ技能レベル5

 エンハンサー技能レベル5 アルケミスト技能レベル4 ドラゴンレゾナンス技能レベル4

 器用度18 敏捷度21 筋力26 生命力30 知力27 精神力30

 レベル取得:<<魔法拡大/数>> <<魔法拡大/すべて>> <<マルチアクション>> <<頑健>> <<足さばき>>

 魔法取得:<<武器習熟A/メイス>> <<防具習熟A/非金属>> <<防具習熟A/金属>> <<防具習熟A/盾>> <<回避行動Ⅰ>> <<全力攻撃Ⅰ>> <<ターゲティング>>

 ?:<<必殺攻撃Ⅱ>> <<牽制攻撃Ⅱ>>



第三話「鉱脈」

 

「御用とは何でしょうか」

 

 私はシムロン冒険者養成学校の校長室に案内された後、木のストローでお茶を飲む校長に問いかけた。

 

 広い一室に備えてある腰の低いソファに腰を下ろし、目の前のカモノハシのような生物を見やる。

 

 カモのように広い嘴、水かきの付いた4本の指、竜のような鋭い爪と黄色い瞳、おおよそ卵型のシルエット、フワフワな水色の毛並み。

 

 校長と呼ばれたそのヒトは、2歩行をするカモノハシ型の種族――タツビトリだ。「ドラゴンソード」的に言えば、肉体性能は低いが知力系統が高いマジックユーザーで、近接武器に回数性の毒を付与する能力と毒&雷属性の軽減能力を持っている後衛向き(・・・・)の種族だ。

 

 リザードマンのように卵から産まれ、竜の爪と瞳を携え、ヒトのように母乳で子供を育て、鳥の嘴で言葉を話す。

 

「イコ……スイコウ校長」

「まぁまぁ、来て早々にそんな焦らんといて」

「これでも忙しいんですけどね。用が無いなら帰りますが?」

「んもう、せっかちなんやから……」

 

 スイコウ校長は訛りのある共通語でぼやきながら佇まいを正す。

 

「ユウランちゃん、退学取り消してくれへん?」

「理由次第ですね。少なくとも、居る意味はなくなってますので」

 

 シムロン冒険者養成(・・・・・)学校なので、既に冒険者として一廉の人物となった私が所属しているのは、はっきり言って意味が無い。

 

 加えて、今の状況は、小学生の集団に混じって大人が授業を受けているようなもので、かなりみっともない行為でもある。

 

「あー……活躍は聞いとるよ、届け出を出した後の」

「それで慌てて止めに来たと」

 

「でな? そんな娘が中退するっていうのは、後進の子たちにも影響が出るわけよ」

「一日幾らで雇いますか?」

 

「一日!? なんちゅうがめついやっちゃ……」

「日雇いしか認めませんが、お安くしますよ。依頼を出していただければ、指定の時間帯で1日4時間働きますとも」

 

「……日雇い? いやいや、まとめてやった方が効率ええやん。というか、所属してもらえるだけでいいんやけど」

「……」

 

 正論を吐かれてしまった。

 

 私としては、毎日の依頼で1000点を稼ごうとしているわけだが、傍から見るとこれは異常な行為になる訳だ。例えるなら、ゴブリンを10匹退治してほしい村人と、1匹ごとに依頼を発行してほしいユウランという関係だ。

 

 自身に課せられたルールから逆算して効率的な方法を遵守しようとすると、当然だが常識的な価値観と齟齬が生じる。

 

「普通に考えたらそうでしょう。ですが、私がここの生徒であることに起因する規則はあるはずで、スイコウ校長にも私を使いたいという意図が無いわけでは無いでしょう?」

「……ほうほう、そんで?」

 

「そういった政治的なしがらみを加味して、一日ごとの契約でない場合、私が正規の手段で卒業するまでの期間は……上級クラスですと最短で1年でしたね、なので残り9か月弱。仮に270日としましょうか、ここ1週間あたりの稼ぎが10万Rなので」

「は?」

 

「385万R、成長性を加味して450万Rですね」

「待ち待ち」

 

「2週間に一度拘束されるとして、日当たりの金額と掛けて……契約金は28万Rくらいですかね」

「待ちぃやって!」

 

 人が話しているときは話を聞きましょう。

 

 しかし杓子定規にもいかないのがコミュニケーションなので、はいなんでしょうかと耳を傾ける。

 

「10万R!? 週で!?」

「嘘ではありませんよ。"稲妻の鉄槌亭"の店主に聞いてみるといいでしょう。別の冒険者の宿でも依頼を受けているので、多少は下がりますが」

 

 カモノハシ……じゃなかった、タツビトリの校長が絶句したように嘴を開けた。

 

 今では湯水のように使っているお金の話が原因だ。

 

 冒険者は宿飯付きで一か月900R前後の出費で生活可能だが、これが4人家族の中流家庭になってくると生活費だけで月1500~2500Rは必要になる。4人家族を(単に食住を満たして生きるだけなら)4年養える収入を週単位で稼げるのだから、驚かない方が無理だ。

 

 現代風に言い換えると週給1000万円。物価の違いがあるため簡単に置き換えることはできないが、冒険者は稼げる職業だという事がよく分かる。

 

 まぁ大体の人間はそこまで稼げずに死ぬんですけど。

 

 ちなみに、スイコウ校長は女だ。見た目は単なるかわいい生き物なので区別はつかないが、声で判別できる。

 

「ここ1,2か月は忙しいので、9か月一括契約なら35万Rで請け負いましょう、急な呼び出しにも対応しますよ。1日プランなら、養成学校に籍を置いたうえで、私を好きな時に4時間働かせて850R、お得です。もちろん、どちらのプランも卒業要件を無条件で満たすことが前提ですが。情報を整理しますと――」

 

 プラン1。契約金は35万R。卒業まで学生として籍を置き、9か月の間、1日あたり4時間限定で、ユウランをいつでも、ある程度学校の意向に従うよう行動させられる。依頼としてのカウントは1回だ。このプランでは、業務時間外でも学生として振る舞う。私は恨む。

 

 プラン2。契約金は1回850R。卒業まで学生として籍を置き、依頼1回あたり4時間限定で、学校の意向に従うよう行動させられる。業務時間外は学生として振る舞わない。私はあなたを大好きになる。

 

「どっちも同じちゃう?」

「ええ、毎日働かせるつもりならプラン2がお得ですね」

 

「……??? 頭こんがらがってきた」

「日程調整ができるプラン2がおすすめですよ」

「こんな面倒な事して、何の得があるん?」

 

 現時点で学生であることのメリットは無いが、学生であることが政治的なデメリットになるわけでもない。

 

 用事があるなら毎回依頼として呼び出してね、を迂遠に伝えるとこうなる。傍から見ると馬鹿だ。

 

「あくまでも『依頼を受けたから学生として振る舞う』といった契約を我々の間で成すことが目的です。先ほども言いましたが、修行で忙しいので、なぁなぁの関係で時間を取られるのが嫌なだけです。単位の取得も終わってませんし」

 

「あー……? まぁ、冒険者っちゅうのは自由なもんやからな。よし! プラン2で契約しようやないか」

「では、依頼がある場合は"稲妻の鉄槌亭"までご連絡を。宿を変える時はこちらから連絡しますよ」

 

 今回の交渉、経験点は無いが、楽に経験点を稼ぐ足掛かりになった。

 

 下水道の掃除を済ませて宿に戻ると、今度は別の人間からの呼び出しだ。

 

「副市長からのお呼び出しだとよ。有名になったもんだな」

「ふぅん」

 

 副市長ということは、シキブの案件だろうか。

 

 報酬は要相談となっているが、依頼の形で来ているので、ホイホイとそれに乗っかる。

 

 3度目のお屋敷。

 

 依頼を受領した証を見せると、門番が分厚い鉄扉を開けた。そこで待っていたのはシキブではなく、老齢の家令だった。

 

「ようこそおいで下さいました、ユウラン・アルシップス様。どうぞこちらへ」

 

 恭しくお辞儀をした男性は、優雅な所作で私を応接室に導いた。相も変わらず冷たい雰囲気の屋敷だったが、応接室は質実剛健な作りで少し落ち着く。

 

 少々お待ちくださいと言って部屋を出た家令と入れ替わるように、年配のエプロンをした女性が紅茶とクッキー、スコーンを置いて出ていく。

 

 鼻腔くすぐる甘い香りに思わず食欲をそそられる。

 

 ……クッキーを一枚手に取って、少しずつかじる。賽が振られないので、少なくとも毒物はなさそうだ。

 

 イチゴの風味がする甘いクッキーだ。一枚また一枚と口に運び、紅茶を含むと優雅ァ~な気分になる。スコーンにはナッツが入っていて食感もいい。

 

 あんまりにも美味しかったのでパクパクと食べ進めていると、最後のスコーンを口に放り込んだ直後にノック音がして、部屋の扉が開いた。

 

「失礼いたします。アルシップス様、旦那様のご用意ができましたので……ご準備が整いましたら、こちらのベルにてお知らせくださいませ」

「……ふぁい」

 

 そう言うと家令は音もたてずに扉を閉めた。今のうちに紅茶でスコーンを胃に押し込み、口元を拭いてピッと背筋を伸ばす。食欲につられて恥ずかしい事をしてしまった。

 

 チリンチリンとベルを鳴らすと、扉をうやうやしく開けた家令が、何事も無かったかのように先導した。

 

 次に案内されたのは会議室のような場所だった。見慣れない老齢の男性とシキブが席に座っており、家令が椅子を引く。

 

 二人とも柔和な顔で、逆に不気味だ。

 

 家令が出ていき扉が閉まると、不自然なほどに室内が静まり返った。防音性が高い部屋のようだ。

 

「突然のお呼び出しに応えていただき、感謝いたしますわ」

「うわ……」

「ちょっと、引かないでよ!」

 

 猫被りが露骨過ぎたので思わず声に出てしまった。

 

「孫娘と仲良くしていただいているようで――」

「本題に入りましょう。迂遠なやり取りで時間を消耗するのは惜しいのでは?」

「そうですね。お噂通り時間を重んじる方で、このサダマタ安心いたしました」

 

 はっはっは、と笑うシキブの祖父サダマタの顔は好々爺(こうこうや)といった具合で、人付き合い上手そう臭がする。

 

 う、胡散臭ぇ……。

 

 政治家という者は皆こうなのか?

 

 私は精神が闇属性の人間なので、光属性の人間は苦手な所である。得意だったら養成学校でも孤立してませんし、……いや、別に組む必要性が無かっただけですし。

 

「まずは依頼内容を聞きましょうか」

「私たちの護衛よ」

 

「1依頼につき1日4時間800Rになります」

「あんたこの前からいっつもそれね……」

 

 少し呆れたようにシキブが呟く。

 

「孫から話は聞いているよ。それでだね、条件の方を少し緩和してくれないかね? もちろん、報酬の上乗せを検討するとも。君も、因縁があるのだろう?」

「ここのお嬢様のせいでね」

 

「シキブが本当に悪いことをした! しかし、過ぎたことを悔やむよりは、協力し合おう。もちろん、出すものは出す」

「ベテランの冒険者パーティ"機械仕掛けの白百合"を相手にですか。はっきり言って、金を積んだだけで勝てる相手ではありませんよ」

 

 夜のような静寂が訪れた。

 

 現在進行形で命を狙われており、過去に家族を暗殺されたにもかかわらず、逮捕することも告発することもできないということは証拠が無いのだろう。孫娘を軟禁して亀のように引きこもり、気付かないふりをして命を繋ぐ日々。

 

 その平穏は自由を求めるシキブのやんちゃによって破られ、高名な冒険者パーティによって真綿で首を締めるような包囲網を敷かれつつある。

 

 はっきり言って詰んでるし、それは相手も分かっているようだ。

 

「次が私というのは癪に障りますが、この街で生きていく以上、いつかはぶつかる相手。いい機会なので私が排除しましょう」

「……それってどういう意味?」

 

 シキブが訝しむ。

 

 冒険者養成学校に入って半年もたたないようなペーペーが、10年以上の大ベテランのパーティを相手にどう立ち向かうのか。

 

 いや、いつかはぶつかる相手という点だろうか。

 

「やりようはある、ということですよ。1,2か月ほど時間が稼げれば、アテがあります」

「それで、アテというのは!?」

 

 サダマタが興奮した様子で机に身を乗り出す。

 

「それは教えられません。あなたたちの口から洩れた時、次は私ですから」

 

 強くなって真正面からボコります、とは言えない。煙に巻くのが一番だ。

 

「随分な言い様じゃないの。それに、時間を稼ぐっていうのは?」

「我々の優位性は人数と情報です。相手の顔は広く知られており、侵入を誰かに見咎められるだけでアウトです。人数を増やしたことはその点では有利ですが、時間が経過すれば口を滑らせる者も出てくるでしょう。相手は高位冒険者、情報が割れれば実力で警備を突破してきます」

「ぐ……」

 

 サダマタが口惜しそうに唇を一文字に結ぶ。

 

 今の時点で強行突破してこないということは、敵は実力的には9~11レベルが妥当なところか。

 

「そこで、私が人手不足を補いましょう。ゴーレムを使います。

 夜を昼のように明るくして光源を確保し、夜間の侵入確率を低くします。警備の人員は必ず相互監視が可能なように配置して、不意打ちによる監視網の崩壊を防ぎます。

 出入口は基本的にどこもゴーレムで固めて、信頼できる人にはケイルレンズ――録画用の魔法機器ですね――それを持たせましょう」

 

 ぺらぺらと対応策を話すと、シキブとサダマタが顔を見合わせた。

 

「続けて?」

 

「これは相手の侵入を防ぐ策ではありますが、逆に焦らせてしまう効果もあります。

 何が目的かは知りませんが、彼らは我々を排除したい。その目をかいくぐって生き残ったお二人は特に。

 

 証拠の有無は知りませんが、狙われている以上、敵は我々に告発されることを恐れているわけですので、防御を固めているにもかかわらず時間だけをいたずらに消費すると、準備が整う前にと強行突入されるでしょう。

 その対策として、生存確率を上げるために、ダミーのお二人をゴーレムと魔法で用意します。外出は必ず5人以上で人通りの多い場所を必ず通り、夜は避けます。家以外ではトイレの時も一人にならないで下さい、絶好の暗殺チャンスです」

 

「……中々、難しいですな」

「ゴーレムは扉の前に2体ずつ設置して、特定の人物が合言葉を唱えなければ攻撃するようにします。装飾品との照合や3つのパターンも合わせて、情報を伝える相手の限定や罠用のゴーレムも用意します。ゴーレムを瞬時に破壊できる相手対策として、大きな音が鳴る砂利が用意できればなおよしです」

 

 セキュリティは人間の口から破られるので、合言葉を複数用意し、特定の人間がアクセスできる場所を限定し、断片的な情報を持つ相手を罠に嵌められるようにする。

 

 ……泥棒の経験者か? という顔で見られていますが、予算があればこのくらいは普通……普通じゃない?

 

「ゴーレムの変装などは私の魔法で行いますし、トラップに関しては……材料があればですね。この暗闘が終わった後、ゴーレムを引き取らせていただけるなら、作成費用は大丈夫です。材料費だけお支払いいただければお作りしますよ」

「そのゴーレムってどんな奴で、費用はどのくらいなわけ?」

 

「お見せしましょう。目を閉じてください」

「……閉じないと駄目?」

「ええ、私の手札ですから」

 

 二人が目を閉じているのを確認した後、彼らの背後に移動して、魔法の詠唱のような言葉をつぶやいて誤魔化しながらストーンサーバントとブラスウィングを取り出す。

 

 ストーンサーバントの両拳からは【ファイアウェポン】の炎が煌々と燃え、ブラスウィング(真鍮の鳥)の全身からは【アイシクルウェポン】の冷気が漏れ出ている。

 

「どうぞ、振り返って下さい」

「……へぇ、これが警備するの? 延焼しないかしら」

 

「冷気の方を付与するので、そこは安心してください」

「これは1体いくらなんだい?」

 

「ブラスウィングの方はこれと同じフルカスタムで1体あたり9400R、カスタムなしの使い捨てなら1500Rですね。ストーンサーバントは体力や守備半径を増やす場合1体あたり3400R、カスタムなしだと1000Rです」

「随分するのね」

 

「普通の冒険者よりも融通は利きませんが、戦闘においては不眠不休で頼れますよ。私としては16体8か所を警備用として配置し、別の4体をお二人の寝室で身代わりとして置きたいですね」

 

 2~3万R掛かるわけだが、大きな屋敷を維持できる程度には蓄えや収入がある人だ。このくらいは余裕だろう――と思っていた。

 

「…………額を、抑えられないでしょうか」

 

 眉間にしわを寄せながら絞り出すようにサダマタは言う。

 

「あ……そうか、冒険者ね?」

「事態が読めないのですが……」

 

 冒険者ね? って何?

 

 シキブは気づいたようなので、水を向ける。

 

「冒険者とか私兵を長年雇っているから、お金が足りないんでしょ?」

「…………」

 

 サダマタは沈黙で肯定した。

 

「そのくらいでいいなら貸します。お気持ちで返してください」

「キラーパスね、おじいさま」

「う、うむ……」

 

 大枠が決まったので、あとは詳細を話して解散だ。

 

 屋敷の中を見て回り、【イリュージョン】の魔法でゴーレムを人に化けさせたり、扉を壁に、壁を扉に見せかけたりして、効果のほどをデモンストレーションする。配置はここがいいとか寝る時はダミーを置くとか、細部を詰めた。

 

 報酬代わりにイチゴのクッキーを頂いて撤収。明日から毎日ゴーレムをせっせと作ることになった。報酬はアドバイス料でとりあえず800R。以降の依頼代は、事が終わればゴーレム代を含めて返してくれることだろう。

 

 本格的に抗争へ挑む事になったが、この流れは初めてソロで活動しようとした瞬間に決まっていたようにも思える。

 

 この都市に得体の知れない冒険者どもが居るなら、いずれ戦う事になっただろう。意識外から不意打ちされるよりはいい。

 

 で、私はさっさと強くならないといけなくなった。

 

 何故か?

 

 当然、家族を人質にされると不味いからだ。いきなり殺すことは無いとは思っているが、カウンターで無力化できる程度にはしておかなければ危ない。尤も、シキブたちよりは優先度が下がる相手だと思われるので、猶予はあるだろう。

 

 今後の成長スケジュールは以下のようになる。

 

 1.フェアリーテイマー技能レベル6到達(4500点)

 

 2.ファイター技能レベル11到達(22500点)

 

 3.ソーサラー技能レベル12到達(34500点)

 

 4.コンジャラー技能レベル11到達(18500点)

 

 5.ファイター技能レベル13到達(19500点)

 

 6.プリースト技能レベル13到達(54500点)

 

 な、なんだこれは……。

 

 まず、1番の妖精使いの技能はハメ技に必要。

 

 2,3,4番は基本的に順不同だが、11レベルに到達する最初の技能はファイター技能にする必要がある。

 

 これは特技の"置き換え"に関係する話で、ある特定の、例えば<<全力攻撃Ⅰ>>を取っている時、ファイター技能が9レベル以上である場合、特技を取得した際に<<全力攻撃Ⅰ>>は<<全力攻撃Ⅱ>>へ置換される。

 

 特技が"置き換え"られるという性質を逆手にとって、永続化【ウェポンマスター】で取得した置き換え可能な特技を置き換える算段だ。

 

 <<全力攻撃Ⅱ>>を取ると、【ウェポンマスター】で習得した<<全力攻撃Ⅰ>>は消えてなくなるが、【ウェポンマスター】の効果はあくまでも<<全力攻撃Ⅰ>>が対象となるため、不意のディスペル系魔法で【ウェポンマスター】<<全力攻撃Ⅰ>>を解除されても<<全力攻撃Ⅱ>>は残る。

 

 これをすることで、基本的には最大8つまでしか取得できない特技数をかさ増しする。

 

 なので、今後を考えてファイター11レベルは必須。

 

 3番のソーサラー技能も、【スリープ】の成功確率と特技の置き換えに関わるので必須。

 

 4番は……まぁ、ゴーレム関連なのでなくてもいい。

 

 5番のファイター13レベルは、特技置き換えの関係上必須。

 

 6番は言わずもがな。

 

 …………3倍くらいになってる!

 

***

 

 それから3日間は下水道とシキブの家と冒険者の宿を行き来する生活だ。防衛体制は整ったので、あとは経験点を稼ぐのみ。

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 

「下水道の依頼、また無くなったんですか?」

「ああ、何でも防衛省の方で予算が削られたらしい」

「はぁ~、どこも大変ですねぇ」

 

 家出をしてから13日目、とうとう下水道が枯れた。経験点の鉱脈が一つ失われたので、新たな場所を見つけなければならない。シキブ家は浅い鉱脈で、あと2,3週間と考えると20000点程度しか掘れない。

 

「で、"掃除人(スイーパー)"さんよ。依頼はどうする?」

 

 "稲妻の鉄槌亭"店主ボーマンがニヤニヤと意地の悪い顔で尋ねる。

 

「は? なんですそのスイーパーって」

「この店でのお前さんのあだ名だよ」

「はー……泥臭いですね。センスがない。この美少女ぶりを称えないんですか?」

「何を言っているんだお前は」

 

 私が受けている依頼の大半は行政からのものだ。

 

 下水道(公共物)や街道(都市が管理)での依頼や戦争、村(行政単位)の依頼と、見事に秩序へ偏っている。

 

 じゃあここで、何でもいいから受けてやるか!とはならない。依頼を生み出しているのはGMじゃなくて世界そのものというか、「騙されたお前が悪い」を正気でのたまう人間どもであることを忘れてはいけない。

 

「じゃ、ちょっと遠くてもいいので、討伐系の依頼はありませんか?」

「気軽に言ってくれるぜ……近隣の街から流れてくる依頼もあるけどよ、ウチはシムロンに合わせた依頼の方が多いんだっての。護衛とか荷運びとか――」

 

 ペラペラと紙束をめくる店主の言葉には頷ける。納得できるかどうかは別だが。

 

「あんたにゃそれなりに儲けさせてもらったけどよ、別の所に行った方が良いぜ。近場ならアクマハンとかだな」

「アクマハンですか」

「南南西の要塞都市だ、歩いて2日か3日ってとこだな。そこじゃ"三獄頭"が一、"炎魔眼"ケルケスキャトルっつーバジリスクの勢力とやりあってる」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「へぇ、走って2時間くらいですか。日帰りで冥族が狩れるなんていい所じゃないですか」

「……そういう奴だよな、お前は」

「アクマハンに知り合い居ません? いたら紹介してほしいです」

「情報料1000Rだ」

「お願いします」

「……はぁ、待ってろ」

 

 紹介状を受け取り、シキブの家へ訪問して依頼分の警備や日帰りで冥族狩りに行くことを伝えて、出発だ。

 

 14時頃には要塞都市アクマハンに到着。大きな石壁が森を見渡せる平野にポツリと君臨している。

 

 私がダッシュで近づいてくると4人の門番は槍を構えて警戒態勢を取る。

 

「一人か!? 何をしに来た!」

「冒険者ですよ、普通に冥族を狩りに来ました」

 

「何っ!? お前、ドラグニカか? 距離を取れ! 悪いが魔法を受けてもらうぞ! 【サーチ・プルートゥス(冥族)】!」

「……どうです?」

 

「擬態ではない! 装備を置いて手荷物検査をさせてもらう!」

「荷物はこれだけか!?」

 

「ええ」

「どこから来た!?」

 

「シムロンから」

「遠いぞ!」

 

 普通に会話をしているのにかなり怪しまれた。

 

 ごちゃごちゃと検査を受けて無事に通される。決め手は紹介状とンアの聖印だ。「もっと早く出せ!」と怒られた。すまぬ。

 

 中に入ると、そこら中に剣を担いだり杖を持ったりしたヒト族がいる。怪我人も居れば初々しい顔のパーティもいる。

 

 色々と観光したい気もするが、まずは紹介状された"黒の戦士亭"へ赴く。

 

「はぁ、"稲妻の鉄槌亭"ね……そういえばそんな所に知り合いがいたな」

「えっ」

「戦士か? 手を出せ」

 

 "黒の戦士亭"の店主、ブルドッグの犬人男がムキムキの腕を差し出してきた。

 

「二日酔いだろー!」「負けんじゃねぇぞ!」「お嬢ちゃんに100Rだ!」

「ええ、どうも」

 

 集中して手を握り返し――賽が振られる――達成値に差があったのかあっさりと店主が音を上げた。

 

「ひ~、なんつー握力してんだ」「よっしゃ勝ったぁああああ!!」

 

「見た目よりできますよ」

「分かった。だが新顔だ、受けるにしたって時間も遅ぇし、明日外の依頼を……」

 

「15時くらいですよね? 今から受けます」

「アクマハン舐めてんのかジャリガキッ!!」

「お試しの依頼なんてチマチマやってられませんよ。さっさとしてください」

 

 言い合いがしばらく続いたが、先に折れたのは向こうだ。

 

「夜に森から出てきた冥族どもが、村や町の近くに巣を作りやがる。アクマハン以北で10体以上殺して、場所を報告してもらう。報酬は出来高だ!」

「簡単ですね。よく出没する場所はありますか?」

「知ってるが、自分で探せ! だがまぁ、そうそう高レベルの冥族とは出くわさねえから安心しな」

 

 やはりというべきか、実力主義の気風が強い場所だ。

 

 市内で軽く情報を集めて、北西へ走って20分のところにある"渡りの森"へ。アクマハン近辺にある森の中だと、三獄頭の支配領域に最も近いからか、よく冥族が脱走したり派遣されるらしい。

 

 道中で一匹潰しながら森を軽く散策していると、足跡や痕跡はすぐに見つかった。

 

 足跡を辿るだけだと小物や動物が引っ掛かるので、久々に可愛く悲鳴を上げながら歩く。

 

 やはりというか、釣れた。

 

 マシナルエイプの上位種マシンガンエイプ3体や、顔なしの冥族を含めて15体(それと動物もちょっと)を仕留めて森を出ると、もう深夜だった。剥ぎ取りにほとんどの時間を掛けたので、7時間ほどかかった森狩りのうち4時間は剥ぎ取りの時間だ。

 

 もう夜の12時で、アクマハンの明かりは消えないが、いまから手続きをするくらいならさっさとシムロンに帰って、シムロンでの滞在時間を増やす方が良い。

 

 消耗も少ないので、2時間ちょっと走って"稲妻の鉄槌亭"へ戻る。午前3時に着いたので、寝袋の効果で3時間睡眠。朝6時には起きてシキブの家を確認、アクマハンへ走って戻って依頼を完遂した。

 

「こりゃ顔なしの奴か!! こんなやつまで潜んでいたとはな……」

 

 顔なし(フェイスレス)は魔法を使う8レベルの冥族だ。護衛も居たが、多部位の雑魚だったのでブレスのカモだった。

 

経験点は合計2350点で、報酬は5000Rと合わせて24960R。

 

 ……儲かるなぁ。

 

 本当に儲かるなぁ!

 

 森をちょっと歩いただけでこれだけ稼げちゃうのか……。

 

 もう新人冒険者みたいに下水道でチマチマできない!

 

 まぁ、今日は妖精との契約に時間を使うので、昼を食べた後にシムロンへとんぼ帰り。シキブの家で警備をして就寝だ。

 

 通勤と睡眠に7時間、シキブ家で4時間使うので、残りの13時間は食事や剥ぎ取りを切り詰めないと沢山依頼をこなせない。

 

 なので、戦利品を自動で集めてくれる魔法機器・スーパーオートローバーを9600Rで購入。剥ぎ取りダイスは平均値以上なので、収入もそこまで減らない。

 

 これからが本番だ。

 

 事故死に気を付けて、ご安全に!

 

*

 

 6時起床。今日のごきげんな朝食はリゾットだ。

 

 腹を満たしたらシキブの家に顔を出して、紅茶を飲みながら警備の仕事。屋敷の壁を念入りに調査して、侵入の痕跡や幻術があるか否か、外周と内周を確かめ、ゴーレムのHPや状態を確認。屋敷の外を確認したら、次は内部だ。作成したトラップが解除されていないか、鍵開けの痕跡はあるか、そういった項目を隅々までチェックして報告する。

 

 時間が空いたらシキブの訓練に付き合って、4時間経過したら透明マントで隠密しながら屋敷を出る。

 

 アクマハンに11時30分に到着したら、質素な昼ご飯を食べて前線の依頼だ。

 

「――で、晴れて新入りとなったお前は"銅級"になる」

「何かのランクですか?」

「おう。アクマハンで何の依頼を受けられるか、コレで決まってる。石、鉄、銅、銀、金、ミスリルの順だな。強さと信頼で階級分けしてるわけだ」

「今の私は何の依頼を受けられるんです?」

 

「あー……アクマハンは最前線だ。南下して森の方へ行けば、砦が3つあってな、そこは銀以上の連中が急な侵攻に備えてる。で、銅以下は見晴らしをよくするために、木を切り倒す連中の護衛をするわけだ」

「なるほど。見晴らしを良くして、冥族が隠れられる領域を減らし、敵の侵攻に備えやすくするわけですか」

「それだ!」

 

 この店主は大丈夫か……?

 

 まぁ、言語化能力にはあまり期待していない。

 

「他には森の偵察、騒ぎを起こした冥族の討伐、魔法が使える奴は回復の仕事もあるが」

「討伐と回復をやります」

「……お前、魔法使いか?」

「魔法戦士ですよ。こう見えてもね」

 

 東南東で目撃されたフロッグマンの一団の討伐を受領し、追跡。

 

 目撃証言や足跡をもとに4時間ほど探索すると、妖精使いのフロッグマンテイマー(レベル6)が1体と、それに率いられたフロッグマン5体を確認。わざとらしく悲鳴を上げておびき寄せてこんがり焼いた。

 

 ……この悲鳴作戦、考えなしの冥族どもには滅法効くな。女子供は肉が柔らかいらしいので、冥族的にはいわゆるボーナスアイテムだ。ボーナスアイテムはお前らの方だと言いたい。

 

 剥ぎ取りはスーパーオートローバー君に任せようと思ったが、こいつの固定値だとフロッグマンは何も剥げない。

 

 F○ck!

 

 しょうがないので自分で1時間も蛙マンを捌いて帰る。

 

 戻ると18時30分ごろで、回復依頼には間に合った。

 

 野戦病院のような、アクマハン市が割安で経営しているところへ赴き、回復効果のある魔法を使ってお小遣い稼ぎだ。魔法による治療行為は通常だと神殿が行うものだが、神官も忙しい前線の街ではMPを金に換える行為は結構あるらしい。

 

 お陰様で経験点は今日だけで3260点だ。人助けって楽しいねぇ!!

 

 今日は"黒の戦士亭"で3時間眠った後、深夜にシムロンへ帰還。

 

 永続化【ライト】が掛けられたゴーレムのせいで夜でも眩しいシキブの家の周辺に、怪しげな輩が居ないかを調べ、"稲妻の鉄槌亭"で暇を潰す。

 

 ……母さんの治療が終わったら何しようかな。

 

 妹の目を治そう。

 

 【コントロールボディ】でちんちん生やして、風俗に行くのもいいな。

 

 周辺の冥族を叩きのめしたら安全は確保できるだろうし、これからも頑張るぞい。

 

 




えっ、今日は女のガキを食っていいんですか!?(焼死)

タイトル、もっとキャッチ―な方が良い?

  • ちんちんはやめろ
  • 主人公の属性押し出せ
  • そのままでいろ
  • なろうみたく長くしろ
  • 副題付けろ
  • もっと中二病にするとかさぁ
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