私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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 ユウラン・アルシップス 冒険者レベル9 経験点97500+930

 HP91+12 MP93

 ファイター技能レベル9 ソーサラー技能レベル6 コンジャラー技能レベル8

 フェアリーテイマー技能レベル6

 スカウト技能レベル9 レンジャー技能レベル3 セージ技能レベル5

 エンハンサー技能レベル6 アルケミスト技能レベル4 ドラゴンレゾナンス技能レベル4

 器用度23 敏捷度24 筋力26 生命力32 知力30 精神力31

 レベル取得:<<魔法拡大/数>> <<魔法拡大/すべて>> <<マルチアクション>> <<頑健>> <<足さばき>>

 魔法取得:<<武器習熟A/メイス>> <<防具習熟A/非金属>> <<防具習熟A/金属>> <<防具習熟A/盾>> <<回避行動Ⅰ>> <<全力攻撃Ⅰ>> <<ターゲティング>> <<両手利き>> <<ブロッキング>>

 脱法取得:<<必殺攻撃Ⅱ>> <<牽制攻撃Ⅱ>>




第四話「戦士蛮行」

 

 暗闇の中、女の平坦な話し声だけがボソボソと聞こえる。

 

「あそこの警備はどうだった」

「ゴーレムが複数体。人間もいる。常に【ライト】が掛けられて闇夜に紛れての侵入は難しい。ヒトに見せかけたゴーレムもいるだろう」

「奴の動向はどうだ」

「屋敷への侵入を捉えるのは容易い。だが、外出は未だに捉え切れていない」

「何かしらの証拠を押さえられると面倒だ。奴は妖精使いでもある」

「手早く襲撃しないと」

「奴の居所は常に掴めない。市内を面妖な速度で移動している」

「ならば、待ち構えて夜襲するのみ」

「我々は目立つ立場だが、利点もある」

「ひとまず、ユウラン・アルシップスの行動を把握する所から始めよう」

 

***

 

 "稲妻の鉄槌亭"で朝食にミネストローネをいただきながら、今日も今日とて店主に依頼をねだる。

 

「アクマハン市行きの荷物とか無いですかね?」

「あぁん? ねぇよそんなもん」

「じゃ、張り紙でも貼ってくれません? アクマハン道中の街なら安く届けますよ、軽い物なら5Rくらいで」

「へいへい。中身はお前が書けよ、宣伝料は500Rだ」

 

 チラシのような白い紙を渡されたので、条件を書いて店主に預ける。店の壁をや掲示板をよく見れば、汚れているが同じようなものがいくつか貼ってあった。

 

「それではもう一つ。コレ、緑竜石っていうんですけど、持ってる人が居たら1つ300Rで買い取ります。110個まで欲しいんですけど、1つ預けるので色々聞いていただけませんか?」

 

 店主に見せると物珍しそうに緑の石を観察する。

 

「へぇ、初めて見たぜ。じゃ、買い取り1つあたりの仲介料は50Rだ」

「1つ350Rですか、では先に3500R預けておきますね」

 

 大して悩む暇もなく大金を差し出したので、ボーマンは少し驚いてみせた。

 

「お前さん、小金を稼ごうとする割によく使うなあ」

「失敬な、人の役に立とうとしているんですよ」

 

 朝にそんなやり取りがあったものの、9時頃にはアクマハンに到着。誰かに尾行されていたので、撒いたりシキブの家を確認したりして時間を喰った。

 

 5時間の木こりの護衛で、斬り倒されていく木々を見ながら寄ってきた雑魚を蹴散らす。

 

 平均3レベルが8体、火気厳禁でチマチマと殴りながら、周囲の護衛たちと共闘した。

 

(木こりの依頼は駄目ですね。時間の割に経験点が不味いし、襲撃に依存し過ぎてます。それと、そろそろ武器の新調時期ですね)

 

 "黒の戦士亭"に朝と同様の頼みごとをして、シムロンへとんぼがえり。

 

 夕方から夜にかけては、シキブの家を警備する。

 

「ねぇ、ロリっ娘」

「ロリっ娘!?」

「親の病気ってのはどうなったの?」

「……ああ、それですか」

「私に構ってる暇あるわけ?」

 

 私を巻き込んだくせに、変な所で律儀である。

 

「神官としての修行中なので大丈夫です」

「神官んぅ?」

 

 シキブが攻撃の手を止めて、怪訝な顔で私を見る。

 

 戦士であり斥候であり少なくとも2種の魔法を修めている子供の女冒険者が、とうとう病気を治すために神官になったのだから噴飯ものである。

 

「ほら、打ち込みの手が止まってますよ」

「今まで掠らせてもくれない癖に……というか修行って何よ」

 

「武者修行です」

「それ神官と関係なぶへっ!?」

 

「回避を怠りましたね」

「さっき私が当てる訓練つったろオマエー!!」

 

 シキブの訓練に付き合うのも警備の一環だ。技能が生えればデータ上はHPが上がるので、生存確率がミリ増える……かもしれない。データに基づく推論でしかないが、まぁ気休めにはなる。

 

 ちなみに、私のパンチはシキブの素のHPをほとんど削る程度の威力だ。これがどのくらいかと言えば、技能なしの一般人だと運がよければ生存できるくらい。彼女は魔法でHPや防御を強化しているので死ぬことはないが、死ぬほど痛いだろう。

 

 だからブチギレたんですね。

 

「ああ、すみませんつい」

「まったく……これで本職の拳闘士じゃないんでしょ?」

「【アドバンストヒーリング】。ええ、ただぶん殴ってるだけですからね」

「この体のどこにあんな力があるのよ……」

 

 身長が低いので手軽にポンポンと頭を撫でられる。

 

 か弱い少女の姿をしているので、一般的には非力であることが正しいのだが、ドワーフとかマナとか竜とか神がいる世界でそんなことを口に出すのはナンセンスだ。

 

 男女差や年齢の違いがあるのは一般ピーポーだけで、基本的に冒険者でそうした差異は無い。いや、むしろ一部の装備差で女の方がちょっと強いまであるのだが、常識とは一般人が作るものである。

 

 ただまぁ、私が男女とか子供とか、そういった外見要素で著しく何かを阻害されていることは無いし、女であることによる不都合が生じてもいない。

 

 前々世の記憶を持っている都合上、「女の身体になった」という意識はあるのだが、男であるとか女であるとか、そういった性に対する意識は希薄だと思う。

 

 男の記憶があれば男なのか、女体であるなら女なのか。ちんちんを欲していても男になりたいわけでは無いし、女体であっても男は恋愛対象や興奮の対象にならない。

 

 私がどちらであるかという議論は無意味であり、私は両者の間にあるグラデーションの一つでしかない。

 

「冒険者なんてこんなもんですよ。小ささならドワーフとかいるじゃないですか」

「あんたはドラグニカでしょ」

「いて」

 

 シキブは胸部装甲が薄いものの、美人なので目の保養になる。

 

 毎日の辛い仕事に、美少女との絡みが一滴混ざるだけで日々の潤い――QOLは爆上がりなのだ。

 

 翌日翌々日は、隙間時間に"機械仕掛けの白百合"が拠点にしている宿やメンバーの調査を済ませておいた。 

 

 "機械仕掛けの白百合"は5人の女ホムンクルスで結成された冒険者パーティだ。シムロン市北西部の冒険者の宿"勇士の烈剣亭"で寝泊まりをしている。

 

 パーティは全員がレベル11で、狙撃型のガンナー(アインス)コンジャラー軍師(ツヴァイ)二挺拳銃士(ドライ)二刀流の軽戦士(フィーア)護衛重点ファイター(フュンフ)だ。

 

 後衛3前衛2の攻撃型パーティ、という印象だ。アインス、ツヴァイ、フィーアが斥候技能持ちであるため、先制判定の勝利による<<ファストアクション>>で複数行動を行い、先行制圧を基本戦術とするパーティ、という分析になる。

 

 先行制圧は「ドラゴンソード」TRPG高レベル帯の必須項目でもあるので、知ってたというのが正直な感想だ。

 

 とはいえ、強いパーティかと問われると、別にそうでもないとしか答えようがない。前衛の厚みが薄く、総合力が低いのでパーティに穴を開ければそこから崩れていくだろう。

 

 現段階においては、能力値は私の方が高いが、敵の抵抗力が高いためブレスや魔法が効きづらく、1対1ならほぼ勝てるが1対5はかなり怪しい。

 

 特に、銃撃は魔法ダメージ扱いとなり鎧で軽減できないので、どうにかしたい。アテはあるのでお金を稼げばいいが、貯まる前に襲撃されると恐ろしいことになりそうだ。

 

 早速赴いたアクマハンではきこりの護衛しかできなかったので、経験点はまず()だったものの、緑竜石が2個手に入ったので良しとしよう。

 

 翌日のシキブ家訪問では、正面切っての戦闘は難しいことを伝えておいた。

 

 探ったことがバレるようなヘマはしていないと思うが、向こうはレベル的には上なので、既にバレていてもおかしくはない。闇討ちされた時用の逃げの備えはあるし、ケイルレンズで録画の準備もしている。

 

 尤も、襲われた時に逃げきれた場合、付かず離れずで逆にこっそり追跡してやり、殴り返すつもりだ。向こうもそれは承知しているだろう。

 

 なので、戦う時は、必ず決着がつく。

 

 それから数日は何事も無かった。

 

 配達の仕事で3000点は稼げたし、アクマハンでは簡単な討伐や、最前線に設けられた砦に攻めてきた冥族をぶち転がしたりして懐も暖まってきた。緑竜石の買い取りもちょくちょくできているので、総じて強化計画は順調である。

 

 ファイター技能が11レベルになったことで種族特徴も強化された。ブレスの射程と威力が上昇し、炎ダメージはデフォルトで半減、竜化すれば物理ダメージが+3点だ。HPとMPが100点を突破し、タフさには増々磨きがかかった。

 

 そんな家出23日目の帰路の出来事であった。

 

 アクマハンからシムロンへの道中、睡眠を挟んでから夜道を爆走し、あと10分ほどで街に着くか――5キロほど――という所であった。

 

 有り体に言うのであれば、殺気を感じた。

 

「出て来なさい! そこに居るのは分かっています!」

 

 時速35kmの猛ダッシュを機械のようにピタリと止めて、大声で前方に言い放つ。

 

 すると、街道の脇から5人と1体の何かが現れる。【オウルビジョン】で暗視能力を獲得すれば、そこには"機械仕掛けの白百合"がブロンズゴーレムを引き連れて待ち構えていた。5人とも見た目は似ているが、背丈や体型が微妙に食い違っており大変紛らわしい。

 

「一体どうしたんですかね! やけに物々しいですが!?」

 

 30mも距離があるので大声で叫び、無限【ライト】松明を投げ捨てケイルレンズで録画の準備をする。

 

 すっとぼけたような疑問を投げたものの、返事が無いどころか武器を構えた。

 

「お返事どうも! 武器を下ろさない以上、敵対行為とみなします!」

 

 射撃攻撃を反射する大盾を構えた戦士(フュンフ)とブロンズゴーレムが前衛。その7m後方に斥候の軽戦士(フィーア)と銃手のアインスとドライが中衛として構え、コンジャラーのツヴァイがその5m後方に位置している。

 

 位置取りは悪くない。向こうのパーティの最大火力が発揮される圏内に居ないので、もしも仮に先手を取られたとしても即死することは無い。

 

 ピリピリとした緊張感が張り詰め、些細な行動が開戦の火蓋を切って落とすだろう。

 

 まだ戦闘が始まっていないので、私は1時間でも2時間でも待ってよかったが、向こうはそうでもないらしい。感情が消え失せているかのようなホムンクルスの癖に、少し焦っているのかイラつきが感じ取れる。

 

 大方、魔法による強化効果が切れそうとか、そういった話だろう。

 

 頭の中で賽が――振られない。先制判定で使える錬金術(1回20000R)で賽の目は12固定だ。

 

 感覚が鋭敏に研ぎ澄まされ、彼らの焦り――その心理的間隙に動く。

 

 ブラスウィングを2体取り出して滑らかに前進しつつ前衛に炎の奔流を浴びせかける。ブレス2回と【ファイアボール】があっという間に二人を飲み込むと、炎が晴れた頃にはブロンズゴーレムは崩れ去り、重武装をしていたフュンフは息も絶え絶えだ。

 

 そして、ブラスウィングは爆炎に紛れて最後尾の魔法使い(ツヴァイ)に躍り掛かる。

 

「何処からゴーレムを!? 【コマンド】!」

「あげません!」

 

 私とツヴァイによる魔法でのブラスウィング支配権の争いは、お互いに能力増強の指輪/腕輪を破壊した結果、私に軍配が上がる。ブラスウィングを使っている格下に負けたことが驚きなのか、ツヴァイはその鉄面皮を歪ませた。

 

「まずはゴーレムを!」

(あら、そんなに厄介ですかね? というか、この人たち結構弱い?)

 

 殺したい本人をほっぽりだして、後ろの方でブラスウィング1体の胴体を破壊する。

 

 前衛のフュンフはゴーレム撃破までの時間稼ぎか、バスタードソードで斬りかかってきた。

 

「――死ね」

「おっと、お粗末な剣閃ですね。じゃ、私はこれで」

 

 するりと抜けて中衛後衛に少しだけ接近。置いていかれたフュンフを除き、ゴーレムを含めた全員がブレスの射程内だ。間を置かずに放たれた3度目の炎が人体を焼き焦がす。ブラスウィングが業火の中で司令塔であるツヴァイに襲い掛かるも、残念ながら仕留めるには至らなかったようだ。

 

 倒れた者は居ないが、次の攻撃でほぼ勝ちだろう。

 

 いやー、意外とあっけなかったな。

 

「止めろっ!」

「麗しい友情ですね」

「吹っ飛べ!」

「おお、危ない危ない」

 

 背後から斬りかかってきたフュンフの剣は余裕をもって回避し、ドライの2挺拳銃から放たれたレーザーもするりと避ける。他3人は回復したりブラスウィングを倒したりで忙しそうだ。

 

 データを抜いた時は私のレベルが9で、単純に互角のダイスバトルになるかと思ったものの、レベル11にもなると基準値に差ができたので戦いはかなり楽だ。

 

 正直、あとはどこで襲う/襲われるかに尽きると思っていたが、人気のない夜の街道で戦ってくれるとは思わなかった。

 

「どんな手段で襲ってくるかと思えば、拍子抜けですね」

「ほざけ! 皆を倒させはしない!」

 

 ブンブンと振り回される剣を避けながら微笑む。

 

「気持ち悪い。そのまま死ね」

 

 竜回帰・【灼熱の咆哮Ⅲ・轟炎】で炎ダメージは+7に上昇。溜まった竜闘気を純エネルギーの球体にして噴き出し、ダメ押しの炎ブレスと【ファイアボール】でアインスとツヴァイとドライが倒れた。残ったブラスウィングも破壊寸前になったが、足止めの仕事は十分果たしてくれた。

 

「ツヴァイ!? どうすれば――」

「に、げ……」

「仲間を見捨てて逃げるといい! 豚の餌にして凌辱してくれるわ!!」

 

 逃げられるわけにはいかないのできちんと挑発。

 

 したのだが、フィーアには逃げられてしまう。

 

「よくも、よくも3人を!!」

「襲ってきた方がよく言えますね」

 

 フュンフでは私を足止めすることはできないので、ブラスウィングに足止めさせつつ、全速力で追いかけてすぐに追い付く。

 

 移動力が余っているので回り込んでやると、私のような数値で作られた全身データ人間ではないので、衝突を避けてフィーアの足は止まってしまう。

 

「あなたの足じゃ逃げられませんよ」

「――クソッ!!」

 

 全力疾走で足並みが乱れた所に斬りかかってくるが大したダメージにもならず、魔導鎧の上から衝撃が伝わる程度だった。

 

「ま、待て、あちらよりも金を支払おう」

「死体が喋るな」

 

 ブレスと【クリメイション】で焼き焦がすと、フィーアの皮膚は所々が黒ずみ、赤い液体が滴って機械の身体が露になった。溶け落ちた顔の皮膚の下は機械であり、メタリックな外装が見える。腕も足も、焼けた皮膚の下はすべてが機械であった。

 

「……ただのホムンクルスじゃないみたいですね」

 

 ホムンクルスは人造の生命体であるが、機械の割合は滅茶苦茶少ない。

 

 フィーアはその点、サイボーグのようであり――賽が振られる――違う。彼女たちはホムンクルスではない、また別の種族だ。

 

「見たな……!」

 

 ほぼ死にかけだが、彼女は恐ろしい形相でこちらを睨みつけ、力強く剣を振るう。ただ、当たらなかったのでそのままブレスで焼いて終わりだ。

 

 死体を引きずりながら走って戻っていると、アインスとドライが立ち上がっており、全員の体力も半分ほど回復していた。ただ、死んだと思しきツヴァイの死体を囲っている。高レベル冒険者はチマチマと回復を重ねられるので、敵に回すとゴキブリのようにしぶとい。

 

 なので、死体を踏みつけて3人の間、真正面に立った。

 

「人もどきがヒトの真似事ですか?」

「お前……フィーアまでッ!」

「ツヴァイから退けッ!!」

 

 機械のように冷酷な暗殺集団、そんな印象を私は勝手に抱いていたが、どうにも頭に血が上りやすい連中のようだ。

 

 人の家族を暗殺して、私を闇討ちしておきながら、なんとも気持ち悪い連中だ。ユニコーンを密猟した私が言えた話じゃありませんが。

 

 至近距離約30cmで放たれた冷気の弾丸が顔を掠めて地面に刺さり、身をよじるとレーザーが脇を通過して街道の闇に消えた。ジャンプすると足元を剣が横切り、3人が3人とも食い入るように睨んできている。

 

(さっさと離れてりゃよかったのに……)

 

 尤も、逃げられると困るので安心している。

 

 竜闘気のエネルギー弾、炎のブレス、【ファイアボール】と範囲攻撃の連打でアインスは死体のツヴァイと一緒に仲良く倒れた。

 

「うわぁあああああ!!」

「喚くな」

 

 逃がさないために挑発をし続けたが、彼女らは最後まで逃げなかった。剣も弾も当たらず、無駄な抵抗をし続けて。

 

 残ったのを焼き殺して死体を引きずり、街道の隠れた場所で剥ぐ。変な魔法は掛かっていなかったので、魔道具や武具は遠慮なくいただく。

 

 こんなところを見られでもしたら大変だが、その時は死体の数を増やさせてもらう。

 

 ある意味で同族嫌悪なのだろう。私は家族を守るために犯罪も厭わない。こいつらは、何か知らんけど仲間の為に命を張る。

 

「お、こいつら42000Rも持ってますねぇ! 消耗品の魔晶石も余ってて美味しいし、装備も捌ければ大分足しになりますよ……これは通話のピアス? 5つもあるしどっかに売り……いやダメだ」

 

 証拠を残すつもりはないので、ストーンサーバントに掘らせた穴へいらない魔道具やゴーレムの残骸、死体を放り込み、焼く。焼いて焼いて焼いて焼いて、土をかぶせて埋める。

 

「さ、あとは拠点を捜索して悪事の証拠でも見つけますか」

 

 彼女たちの宿の鍵をポケットに入れ、【コンシール・セルフ】で姿を隠し、シムロンの"勇士の烈剣亭"へ赴く。

 

 音を立てず人並みをかき分けて、彼女たちが生活していた4階の部屋に入る。見張りはおらず、扉に罠も無い。ただの生活空間だ。

 

(流石に、宿の顔になっている冒険者ともなれば、部屋は豪華ですねぇ)

 

 部屋が3つ、ベッドが5つ、風呂トイレ付でなんなら自分が住みたいくらいだ。

 

 貴重品や犯行の証拠がないか、部屋を物色していると、アンデッドや魔法機器文明期、妖精に関する書物が多いことに気付いた。

 

(そういえば、装備を剥ぎ取った時も対アンデッド用の装備がありましたね。彼女たちも機械の身体ですし、マギシューも2人と多かった)

 

 他には疑似太陽を狭い範囲に出現させる帽子や、彼女たちが使わないであろう装備が手に入った。それと41000R。

 

 りゃ、略奪って儲かるなぁ……。

 

 他にも徹底して家探しをしたが、彼女たちの背景が分かる様な情報は一切認められなかった。何が何でも自分の情報は渡さないという徹底ぶりだ。

 

 ただ一点、赤い×印を刻んだ手製の地図だけが見つかった。

 

 地図には逆U字のシムロン周辺と思しき地形、その北側にある山と思しきギザギザの線、グネグネと北へ伸びる川が西へ大きく曲がる地点の、西岸の森っぽいもじゃもじゃの中に×が描かれている。

 

(怪しい……ここまで情報を落とさない奴らが唯一残したコレ、彼女たちの背後の組織でしょうか? それにしてはわざわざ書き記す意味が無い)

 

 これ以上は情報も貴重品も無かった。GM奥義「本気を出したら証拠なんて残る訳ないじゃないですか」だ。

 

 全ては死体のみぞ知る。

 

 一応、私は蘇生魔法が使えるものの、ホムンクルスなら蘇生で記憶が失われるし、ホムンクルスじゃないにしても素直に情報を吐くとは微塵も思えない。

 

 というか、燃やした時点で蘇生は無理じゃ。死体を運ぶのもリスキーなので、しょうがない。

 

(さて……あとはシキブたちに報告しますか)

 

***

 

「サダマタさん、それにシキブ。ご依頼の通りあなた方の護衛を完遂しました」

 

 屋敷の一室に、改まって呼び出された二人は面食らったものの、真剣な表情でテーブルに身を乗り出す。

 

「それって、"機械仕掛けの白百合"をどうにかしたってこと?」

「ええ、襲われたので止む無く。公表しますか?」

「公表すると言ったらどうするのかね?」

「ははは」

「ちょっとじっちゃま! そんなこと言ってるとマッハで闇に消えることになるわよ」

 

 シキブが焦った顔で掣肘するので、私は必殺のケイルレンズを出してやる。

 

「何もしなきゃ何もしませんよ。あと、これが証拠です」

 

 録画機器であるケイルレンズ弄り、戦闘時の様子を再生する。

 

「おいィ? 真っ暗で何も見えないじゃない」

「視点がちょっと低いんですよ。あ、ほら、ちょうど今松明投げましたよ」

「……彼女たちはどこにもいないようだが?」

 

『お返事どうも! 武器を下ろさない以上、敵対行為とみなします!』

 

 空中に投射された映像に映るのは、真夜中の戦い。

 

 爆炎に焼かれる人影が写り、怒号と悲鳴と銃声が室内に木霊する。

 

 1分と数十秒で終わった戦いの後、死体を引きずってきた画面の向こうのユウランがその凄惨な死に顔をケイルレンズに映す。

 

『シムロンで有名な冒険者に襲われたので撃退しました。残念ですが、今の映像にも誤解だから武器を下ろそうなどという言葉が聞こえませんでした』

 

「……偽物だったりする?」

「まさか、本物ですよ。証拠に、これは彼らの宿の鍵です。証明はできませんがね」

「どうしましょ。仇が勝手に死んで……はぁ」

 

 シキブは憂鬱そうにため息をつく。美人の憂い顔は絵になるなぁ。

 

「この物々しい警戒態勢は解いてもいいのかね? 知り合いの議員に少し怪しまれていて……」

「しばらくは続けた方が良いですね。失踪直後に警戒を解いたら自白してるようなもんです。追加の人員は居ないと思いますが、念のため」

 

 私、シティシナリオ(暗闘)はリアル知力が低いので苦手なんですよね。得意な方がおかしいんですけど。

 

 報酬は後程、ということで一旦解散だ。

 

 私も毎日あったシキブ家の依頼が無くなったので、もっと経験点を稼がないといけない。

 

 1週間ほどは、穏やか?な日常を過ごす。

 

 アクマハンに向けて北上してきた冥族の小部隊を叩き潰したり、シムロンの周辺で小物を潰したり、ちょっとした小包を配達したり、出くわした経験点を排除したりと平穏そのものだ。

 

 そんな家出30日目。いつもの如くアクマハンの冥族領地で破壊活動を行ってからシムロンに帰ると、"稲妻の鉄槌亭"のいつものカウンター席の横に誰かが座っていた。

 

「ボーマン、今日は何が美味しいですか」

 

 別に珍しい事でもないので、晩のメニューを尋ねるも、彼は顔を顰めて横の人をハンドサインで示す。

 

「お前のお客様だ」

 

 目が合うと軽く会釈をされたので、少し首を動かす。

 

 その人はどこかで見たことのある服装を――そうスーツだ、黒いジャケットとパンツを着こなしている、肩口まで亜麻色の髪を伸ばした女性であった。

 

 政庁街の近くを通るとたまに見かけるので、恐らく役人とか軍人だろう。

 

 しかし、垂れ目でおっとりとした印象の人で、中々のお餅(・・)であり、とてもじゃないが冒険者の宿に縁があるとは思えない。

 

 同じ格好をした線の細い男性が一つ奥の席に座っていたので、連れてこられたのだろうか。

 

「どうも、ユウランです」

「…………」

 

 ジッと見つめられる。

 

「あの、どうかしましたか?」

「……あっ! いえ、すみません!」

「???」

「噂には聞いていたのですが、その……こんなに可愛らしい方だとは思っていなかったので」

 

 なるほど、見る目のある人だな!!

 

「実際よく言われますよ、ええ」

 

 店主や周囲で聞き耳を立てていた冒険者が何故か見てくるので、ギロリと見つめ返す。

 

「まったく……それで、ご用は何でしょうか?」

「アッハイ。私は防衛省のミレーヌと申します。実は、スラムの方で発生している事件について、調査していただきたいと……」

「あ、時間掛かりそうなんで無理です」

「…………え?」

「要件がそれだけなら、話は終わりです」

 

 よほどショックだったのか、ミレーヌはこちらを見て固まってしまった。ミレーヌの隣に座っていた男が――多分彼女の部下だろう――席を立つが無視する。

 

「ま、待ってください! せめて話だけでも……!」

「はいはい、聞きますよ、聞けばいいんでしょう?」

 

 顔を紅潮させているので、少しは怒っているようだ。それでも、声を荒げたりすることは無く、私に聞こえる声量で話し始めた。

 

 内容を要約すると、こうだ。

 

1,7日ほど前からスラムで行方不明者がよく出るようになった。

 

2,3日前から死体が見つかり始めた。

 

3,神殿を経由して防衛省に話がやってきたのが一昨日。昨日になってミレーヌが部下と確認したところ、死体は必ず人や動植物と融合していた。

 

4,行方不明者も犠牲者も増えており、今後、スラム以外に被害が出てもおかしくない。

 

5,そのため、似たような事件に関わっていたという冒険者に依頼を出そうと考えた。

 

6,報酬や受け手の少ない依頼をこなしている慈愛のあるヒトだと思っていたのに……ひどい。

 

「私は私の都合で冒険者をやってるので、そんなことを言われても。犯人が分かった後にぶちのめす役なら、お安く引き受けますよ」

「……いえ、他をあたります」

 

 ミレーヌは失望や悲しみを孕んだ表情でユウランを一瞥すると、店主に礼を言って去っていった。

 

「……ま、いいか。ボーマン、今日のオススメは?」

「お前なぁ、それでいいのか?」

 

「会話苦手部か? 依頼あたりの拘束時間が長いのはNGだって、今まで結構言ってきたと思うんですけど」

「ヒトとしての話をしてるんであってなぁ」

 

「私には私の優先順位があるんですよ。森を歩くときに地べたの虫を気にしないのと同じです」

「今日は、パンだけだ」

「ちょっと!! あまりにも卑怯すぎる!!」

 

 まぁ、私が依頼を受けなかったのには、別の理由もある。

 

 地下水道で見た例の融合オブジェを作り出した奴と、今回の騒動の原因が同じ人物なら、敵は高レベルの悪魔(デーモン)を雑に召喚する奴だ。多分というか絶対に私よりレベルが高いだろうし、触らぬ神に祟りなしだ。

 

 というか、ヒト族を物理的に合体させる危険人物には普通に近づきたくない。

 

 敵対していた集団をこの前始末したばかりだというのに、厄介な敵を増やしてどうする。また必要経験点が増えるじゃないか。

 

 私はそんな言い訳をしながら、シチューに漬けるような硬いパンだけをモソモソと食べて――本当にパンだけにしやがった!――寝た。

 

 ま、翌日にはそんなセンチメンタルな悩みはどっかへ吹き飛んでしまっていた。

 

 ――"炎魔眼"ケルケスキャトル率いる冥族軍団急襲!

 

 私が到着した時、既にアクマハンの砦2つが堕とされ、大規模な戦いが始まっていた。

 

 




(こいつら蘇生してぶっ殺したら1時間あたり110点だよ、記憶をなくしたら奴隷だにょ)

ああんまりだぁぁああああ!

タイトル、もっとキャッチ―な方が良い?

  • ちんちんはやめろ
  • 主人公の属性押し出せ
  • そのままでいろ
  • なろうみたく長くしろ
  • 副題付けろ
  • もっと中二病にするとかさぁ
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