私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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 ユウラン・アルシップス 冒険者レベル11 経験点143500+5850

 HP104+14 MP114

 ファイター技能レベル11 ソーサラー技能レベル11 コンジャラー技能レベル8

 フェアリーテイマー技能レベル6

 スカウト技能レベル9 レンジャー技能レベル3 セージ技能レベル5

 エンハンサー技能レベル6 アルケミスト技能レベル6 ドラゴンレゾナンス技能レベル6

 器用度29 敏捷度30 筋力29 生命力39 知力40 精神力37

 レベル取得:<<魔法拡大/数>> <<魔法拡大/すべて>> <<マルチアクション>> <<頑健>> <<足さばき>> <<魔力撃>>

 魔法取得:<<武器習熟A/各種>> <<防具習熟A/非金属>> <<防具習熟A/金属>> <<防具習熟A/盾>> <<回避行動Ⅰ>> <<ターゲティング>> <<両手利き>> <<ブロッキング>> <<魔法収束>> <<鷹の目>> <<魔法制御>> <<MP軽減/各種>>

 脱法取得:<<必殺攻撃Ⅱ>> <<牽制攻撃Ⅱ>> <<全力攻撃Ⅱ>>


第六話「3時間睡眠 × 21時間労働 × 月月火水木金金」

 

 まだ世界に何もなかった頃、無限の闇の中で白い鱗の始祖竜が永遠を生きていた。

 

 無限の孤独を嫌った始祖竜は、この世界――ドラグエディアを生み出し、大地と空と海で無数の生命を育んだ。

 

 しかし、それでも孤独を癒せなかった始祖竜は、次に植物を、動物を、幻獣を、竜を、最後には自らの血よりヒトを生み出した。

 

 始祖竜の生み出した生き物は死なず、老いず、朽ちず、生み落とされた姿のまま暮らしていた。

 

 太古、ヒトは始祖竜と生きたのである。

 

 そこへ、どこからともなく混沌竜が現れ、死を、老いを、腐敗を生み出したが、これに怒った始祖竜は混沌竜を冥界に閉じ込めた。

 

 始祖竜は定命の存在となったヒトの営みを見守るようになったが、かつて不死であった生き物たちが牙を剥いたために、衣食住すらままならず、ヒトは滅びに瀕していた。

 

 死にゆく人々に同情した始祖竜は大地を拓く剣アスティラスを授けた。

 

 アスティラスの力によってヒトに平穏をもたらしたのが、今では開拓と導きの神として知られているウォーゼンだ。

 

 ヒトが平穏に暮らし始め、豊かになるのを見て、欲深い竜たちは嫉妬し、アスティラスを奪い取ろうと襲い掛かった。

 

 始祖竜は争いを望まなかったが、ヒトの青年ラギダが力を求めたので、戦いの剣バルディオスを彼に授けた。

 

 竜を退けたもののヒトと竜の溝は深く、これを深く反省した始祖竜は天へ上り、世界に満ちる力・マナとなって降り注いだ。

 

 この頃から、竜の特徴を持つヒト――ドラグニカが生まれるようになった。

 

 始祖竜が去った後、争いを避けるウォーゼンと征服を企むラギダは対立し、やがて戦争が始まった。

 

 ウォーゼンはアスティラスの力を友に分け与え、数多のヒトと神を伴ってラギダに立ち向かった。

 

 ラギダも、自分に従う者へバルディオスの力を分け与え、戦いの為の奴隷――冥族を生み出してヒトと大地を征服しようとした。

 

 長き戦いの果てに深く傷ついた神々は休戦協定を結び、ヒトと冥族を置いて天へと去っていった。

 

 大地には人族と冥族が残され、四方へ散り、戦が起こり、文明が興り、破れ、滅び、繰り返し……我々の時代が訪れた。

 

***

 

 唐突だが、私の行動は猫の額ほどの世間一般では和マンチと呼ばれる人種のそれとよく似ている。

 

 和マンチとは「ルールの範囲内で可能な限り自分を有利にするように立ち回るプレイヤー」のことだ。

 

 多くの場合、これには「ルールを曲解して自分本位の我が儘を通そうとする精神年齢クソガキ」という意味を含むので、基本的には誉め言葉ではない。

 

 私の和マンチ的行為は、【マナ・アブソーブ】によるMPの踏み倒しだったり、壁貫通ブレスだったり、荷物を山ほど持てたり、全速力で延々と走り続けられることだ。ルールに無い部分を都合よく解釈し、記載された文章を歪めて適応している。普通に考えて、無法もいい所である。

 

 私の場合は、GMやPLの居ない"一人プレイ"であること、「ドラゴンソード」の卓上遊戯ではなく「ドラゴンソード」の世界であることを踏まえて、そういった逸脱行為をしているわけだ。

 

 こんなことを語って何を主張したいのかと問われると、こう返すしかない。

 

 人を運ぶ旨の張り紙を冒険者の宿に貼っておいたら、翌日には運送業界の人がやってきてNGを出された。

 

 徒歩や馬車や船移動がメインとなるドラグエディアで、高速移動の需要は高い。早く安く安全に移動できるなら誰だってそれを利用したがると思うし、依頼として行えばバンバン経験点を稼げると思ったが、空を飛べないヒト族の方が権力を握っているわけで。

 

 店主に話を付けられたので強行するわけにもいかず、この話はここでおしまい。利益が絡むとヒトって怖いスね。

 

 小さな荷物を運ぶ程度なら見逃してくれるそうなので、安い早い確実をアピールするしかないだろう。

 

 というのが、ここ1週間くらいの話。

 

 シムロン―アクマハン間の配達は取り下げて、シムロン―セールクス―ポート・リート間で配達を始めることにした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 セールクスとポート・リートでは大通りに面している冒険者の宿に1か月1000Rで広告を出させてもらっているし、緑竜石の買取も進めている。

 

 一日のルーティーンとしては、まずシムロンで依頼の確認、【フライ】で1時間かけてセールクスへ向かい依頼の確認、次は1時間ちょっとかけてポート・リートで依頼を確認して、時間が余ればテンシライで依頼を確認する。

 

 私が受けても良いものがあるかどうかは運だ。店主が私の力量を見抜けず居留地での野犬退治に駆り出されたこともあったし、なければないなりに危なさそうな場所をうろついて狩りだ。

 

 今日も朝食を取りながら"稲妻の鉄槌亭"の店主ボーマンに諸々の確認をとっていると、宿の扉が勢いよく開いた。

 

 視線だけをよこすと、いつぞやのホムンクルスだ。名前は確か、えーと……――賽が振られる――アルファスだ。金髪の格闘家、グラップラーレベル6のアルケミスト3エンハンサー4で、今日は私が家出してから41日目だというのに全然成長していない。

 

 私は成長しましたよ。経験点で言うと10万3千点くらい。

 

 ……おかしいなぁ、目標の2倍くらい溜まったんだけどなぁ。これもみんな"機械仕掛けの白百合"とかいう連中が悪いんだ。

 

ひふんふふふふふふ(ひさしぶりですね)

 

 食事中なので口は開けない、マナーが悪いからね。

 

「ご、ご主人! 仮のご主人! 本物だ……」

「…………何の用ですか? 正直、忘れてたのでどっかに行ったもんだと思いましたが」

「あ、今はクラークさんの所で働いてるぜ。ってそうじゃなくて、みんなで探してたんだよ」

「それで?」

 

 続きを促す。

 

「魔物を倒したとか、そういう噂は聞こえてたんだけどよ……まぁ、とにかく探してたらよ、お屋敷に仮の主を探してるってヒト?がやって来たんだよ」

「へー、名前と見た目は?」

 

「……名前はアルセリウスフィトラーダ」

「え」

 

「見た目は……リザードマンっぽいんだけど、竜に似てるんだよな。尻尾と翼が生えて、体が黄色っぽい。で、なんかでっかい卵持ってて、あんたに会わせてくれって屋敷の前で行き倒れてた」

「そんな知り合いいませんよ。第一、そんな種族……」

 

 残念だがドラゴン系の種族はドラグニカとゼルド・ノーブルくらいしかいない。そっくりさん枠でもリザードマンとバジリスクとタツビトリくらいだ。

 

 世界最初のRPGなら竜生まれ(・・・・)が居たのだが、システムが違うのでいくら何でもそれはない。

 

「うーん、知らないですね」

「2,3日も近くに居座ってるんだよ。とりあえず会ってくれないか?」

 

「……依頼という事ですね?」

「は、何言ってるんだ?」

 

「お前んちのホムンクルスだろ? 話くらい聞きに行ってやれよ」みかねたボーマンが口を挟む。

「ボーマンは黙っててください」

「……女ってのはどうしてどいつもこいつも気が強いのかね」

 

 聞こえてるっての。

 

「場合によっては暴力も辞さないので、店を通してください。私がそいつをぶん殴って取っ捕まった時、経緯を文章にしたものがあるだけで違うでしょうに」

「そうかぁ……?」

「やらないなら行かないだけです」

 

 朝食を食べて歯を磨き終えると、アルファスと店主は渋々といった表情で話をつけており、依頼書をグッと突き出した。報酬は500R、新人冒険者への依頼並だ。

 

「はいはい。……どうにかすればいいんですね?」

「おう、お屋敷の前に死体ができたって困るからな」

「先に行ってますね」

「え?」

 

 時は金なり、もとい経験点なり。現在時刻は朝の6時半、ここで時間を使うのはあまりにも勿体ない。

 

 人ごみの中を歩いて3,40分掛かる距離でも、ダッシュで行けば5分足らずで着く。

 

 私の家の、屋敷の前に……そいつは居た。

 

 体色は黄色というより、ゴールドや黄土色の方が近い。そんな鱗の竜人が、屋敷が見える坂道の途中で体育座りをしている。顔はリザードマンのように丸くはなく、鱗や突起部でゴツゴツとしていた。

 

 そいつは革鎧の他に簡素な防具を身に着け、脇に大きな茶色のリュックサックを置いている。白い物がリュックサックの口からはみ出ているが、それがアルファスの言う"でっかい卵"だろう。

 

「あなたがウチの前を占拠している変人ですか」

「ん? これはこれは……」

「うお、でっか」

 

 ドラゴン丸出しの顔をこちらに向け、彼はすっと立ち上がる。

 

 私の2倍くらいはあるんじゃなかろうかという身長、見上げる角度がキツく、ぱっと見は威圧感があって強そうだが――――ああ、アレでしたか。

 

「始祖竜のパラディンですか」

「如何にも。……初見でよく分かりましたな。(それがし)、これまで冥族と間違われたり卵商人と間違われたりと、七難八苦を乗り越えここまでやってきた次第でありまして」

 

 パラディン。職業ではなく種族の名前だ。神が何らかの使命を背負わせ、地上に受肉させる存在。まさか始祖竜のパラディンがいるとは、正直私も驚きだ。

 

 始祖竜のパラディンはルールブックで全くフォローされていないし、そもそも始祖竜にそんなことをする力があるのが驚きだ。

 

 彼の強さはプリーストレベル8、ファイター7レンジャー4エンハンサー2。一流冒険者並の実力で、同レベル帯なら無難な構成だが攻撃能力は無さそうだ。始祖竜のパラディンにしてはしょっぺえなお前。

 

「それで、私に用があるとかないとか聞きましたが」

「おお! ではやはり、赤い髪のドラグニカで、10歳の?」

 

 アルセ、ア、あ……アルセウス君は私の特徴を一つ一つ指さし確認していく。

 

「…………一杯居そうですが、もっと他に特徴ないんですか」

「ええ、特別な存在であると……聞いたことがあったと思いますので」

「"あったと思います"ぅ?」

「失敬、(それがし)、大事な使命をですな……半分ほど忘れているのです」

「はぁ?」

 

 なんとも気の抜ける相手だ。

 

 使命を帯びて受肉させられたというのに、それを忘れているとは。

 

「しかし、赤髪の特別な10歳のドラグニカは貴殿で相違ございますまい!」

「まぁ、その修飾語(とくべつ)なら私ですね。じゃ、半分だけ覚えている使命ってのは?」

「それはですな、この卵を孵化させてほしいのです」

「……わたしゃインキュベーターか」

 

 僕と契約して卵を孵してよ!

 

 じゃない。

 

 私に生き物の面倒を見る時間は全く無い。ましてや、私の胸くらいまでの高さがある巨大な卵なぞ、絶対どこかで割る。

 

「別に私である必要はないでしょうに」

「でしょうな。ですが(それがし)の使命です」

 

 黄色い爬虫類の瞳がジッとこちらを見つめてくる。トカゲ系は表情変化に乏しいので、黙っていると勝手にシリアスな雰囲気になる。気がする。

 

「私には時間がありません。それの面倒を見ろといわれても無理です。まさか、温めろとでも?」

「……さぁ?」

「さぁ、って……」

「使命と共に送り出されただけで、詳しくは存じていないのです。貴殿なら分かるのでは?」

「んー……」

 

 これ、セージ判定ですよね?

 

 カラコロ、と賽が振られる。

 

『○孵化

 毎朝6時に孵化判定を行い、達成値の合計が???に達した時点で孵化する。

 判定には2d6にユウラン・アルシップスのライダー技能Lvと精神力ボーナスを足した値を用いる。

 孵化判定を行う場合、卵の半径5m以内にユウラン・アルシップスが存在しなければならない。』

 

 あ、分かるんだ。

 

「毎朝6時に近くに居ればいいだけですね。それで何の卵なんです?」

「……さぁ?」

「またか。何も聞かされてないじゃないですか」

「始祖の深謀遠慮は(それがし)に理解できるものではないのでしょう、不徳の致すところであります」

 

 理由を説明していないのかコイツが覚えてないのか、これはもう分からないな……。

 

 まぁ大体中身は予想つくでしょ。始祖竜、始祖竜のパラディン(竜人)、卵。

 

 これ絶対ドラゴンだろ。

 

「まぁ、世話をする必要も無さそうですし、孵すことは構いませんが」

「おお! それはよかった」

「ウチの、前から、どけ」

 

 かるーく威圧しておいて、"稲妻の鉄槌亭"に住んでることを伝えておく。彼は首をこくこくと縦に振り、卑怯な手を使ったと謝罪した。

 

 しばらくは同じ冒険者の宿に泊まるそうなので、多分これで問題解決だろう。ヨシ!

 

 卵を抱えてダッシュで宿に戻る途中、アルファスが追って来ていたので解決した旨を伝えて去り、店主にも伝えてセールクスへアイアムフライ!

 

 到着時刻は7時45分頃。セールクスの近隣ではよく遺跡が見つかるため、冒険者の宿はよく賑わっており、私が選んだところは従業員に可愛い子がいた。

 

 ただ、残念ながら配達やその他の依頼は無く、さっさとポート・リートへ。今度はシムロン行きのお手紙があったものの、時間が有り余っているのでテンシライへ直行し、ぶち転がせる冥族がいないかお聞きする。

 

「あ、ああ。南西でトロールやケンタウロスを見かけたらしい。何を企んでるのかは知らないが、見つけて倒してくれ。報酬は……」

「その程度の敵なら6000Rですね」

「……はい、6000Rです」

 

 アクマハンでの所業が伝わっているらしく、ここでは金級相当の待遇だそうだ。私は狩れれば何でもいい事は伝えているが、何か渋られている気はする。

 

 15時頃には敵を見つけて倒したので、18時にはシムロンへ帰宅。ちょっと走って手紙を届けたら今日の仕事は終わりだ。

 

 終わりなので、食事と3時間睡眠をとったら近場の湿地や森へ飛んでいき、朝の5時ごろまで狩りだ。

 

 狩りに限定する必要性はないが、夜中に何かを倒すなら、冥族領域へ飛んでいくよりは安全だ。

 

 効率を考えた場合、遺跡の場所を売っているような探し屋から遺跡の情報を得て、狩りの代わりとしてもいいとは思っているが、危険度を把握しかねるので悩みどころだ。

 

 続けてシムロンへ戻り、6時に朝食をとってまた仕事。

 

 意外にも早起きだった竜人氏は、朝起きて私を見るなり口をあんぐりと開けた。

 

「その鎧姿……まさか昨日の今日でお出かけに? まさか冒険などとは」

「その通り」

「深夜にも出かけておりましたな?」

「ええ」

「や、やはり!! 寝てないでしょうに、倒れてしまいます!」

「"特別"なので別に倒れませんよ。しっかり寝てますし」

「しかし心配ですぞ……そうか、(それがし)もついて行けばよいのですな!」

「邪魔」

 

 その日はセールクスとテンシライで依頼をこなしたが、その翌日は何もなかった。依頼も配達も、何も。

 

 なので、セールクスの冒険者の宿"紫陽花の楽園亭"にやってきたのだ。

 

 最近利用し始めた冒険者の宿で、従業員の子がかわいい場所だ。

 

 で、ここに来た理由は、以前に探し屋から遺跡や迷宮の情報を買わないかと誘われていたからだ。

 

 私を誘ったのはシャヴァルの女性だ。

 

 シャヴァルは褐色の肌をした3つ目3本腕の種族で、精神的にタフで器用な者が多い反面、筋力や魔法能力は低い。斥候や密偵、軽戦士の技能を身に着けている者が多く、軍でも冒険者でも頼りにされる反面、一度怒らせると手が付けられなくなる種族だ。

 

「あら、"炎の断頭台"じゃない。2回も顔を出すなんて珍しい」

「ダーシャに話があって、ね」

 

 彼女、ダーシャは薄紫のフェイスベールで顔を隠し妖艶な雰囲気を醸し出している人物で、細かい刺繍が施されたボレロを羽織り、ベリーダンスに用いられるような露出度の高いベラ風の衣装で飾られていた。

 

 平たく言うとアラビアンな踊り子と占い師を足して2で割った感じである。

 

「この前言っていた情報が欲しくなりまして」

「……それはまた急ねぇ」

「昨日の今日で申し訳ないのですが、都合してもらえますか?」

 

 ダーシャは私にチョチョイと手招きをすると、耳元で息を吹くように優しく囁く。

 

「それじゃあ、奥の部屋にいきましょうか」

「あっあっ、はぃ」

「うふ。そんなに硬くなっちゃって、初心なんだから」

 

 私は多分耳まで真っ赤になっているだろう。鏡で毎日美少女を見ているので、美少女耐性はそれなりに高いと自負しているが、美女耐性は無い。露出度が高くて妖艶なお姉さんだともっと効く。

 

 もっとも、誘惑されたことなんて今の1回くらいしかないんですけど。

 

 いやでもこれ、密室で時間が余ったらイケない遺跡探索が開始される可能性が、もしかしたらあるんじゃないか……?

 

 欲で頭がパーになったまま"紫陽花の楽園亭"の奥まった場所にある個室へ案内され、狭い室内で二人、向かい合う。

 

「こういうのって、もしかしてハジメテだったり?」

「そ、そうですね。いつかヤろうと思ってましたけど、今日になるとは……」

 

 探し屋らしく無臭であったが、妖しい魅力からは花のような香りがするものだ。私は美少女力に偏ったビルドなので、可憐さでは間違いなくナンバーワンだと思われるが、こういった化生じみた魅力からは程遠い。

 

「それで、どんな遺跡の情報が欲しいかしら?」

「……支払い能力があることは、先に明言しておきましょう」

 

 すん。

 

 ものの見事にクールダウンしたので、5000Rをとりあえず渡す。

 

「これで買える範囲で、防衛機構なんかが生きている遺跡の概要を教えて下さい」

「質と量、どっちがいい?」

「質と量、どっちもです」

「欲張りさんね」

 

 ダーシャは少年のようにはにかむと、3つの遺跡について彼女の所感を聞かせてくれた。

 

「一つ目、かなり古い遺跡よ。年代は魔法機器文明期の……かなり初期に近いと思うわ。随分前に見つかって、表層は漁られ尽くしているわ」

「表層ですか」

「ええ。表層は」

 

 彼女はニコリと笑って、袋に詰まったリーン貨幣の一部を自身の懐に分けた。

 

「二つ目。比較的新しめの遺跡だけれど、罠と魔法生物で危険ね。腕自慢が入ったこともあったけれど、彼が出た後に新しい魔法機器が配置されていたから、そこまで攻略はされていないはずよ」

 

 彼女は袋に詰まったリーン貨幣の一部を自身の懐に分けた。残りは1/3か1/4ほどだ。

 

「三つ目。最初ほどじゃないけれど、古い年代ね。私が少し見て回った程度で、漁られてはいないわ。2番目ほどじゃないけれど、中は危ないわ」

 

 彼女が全てのリーンを収めたので、私は追加で5000Rを出した。

 

「あら、せっかちね。それじゃあ場所は……」

「これは口止め料です。こっちが場所代」

 

 当初の3倍になった額には流石に驚きを隠せなかったようで、正気を疑うように目配せをした。

 

「危険な場所、いいですね。危ない遺跡があったらまた教えてください。報酬は弾みますから」

 

 遺跡の場所や現れたエネミーについて一通り聞きだした後、私は2番目に教えられた遺跡へ飛び立った。

 

 情報によれば、出てくるのは6~9レベルくらいの敵だ。ダーシャがスカウトレベル9の軽戦士レベル3だったので、危険というのもさもありなん。

 

 レベル10ともなれば、熟練の冒険者であったり要衝にいる一握りの実力者だ。そうホイホイと湧いてはこない。

 

 しかし、セールクスだってそれなりの都市だ。シムロンとポート・リートを繋ぐ最も重要な陸路の中間地点にあり、三獄頭の支配領域に近過ぎず遠すぎないちょうどよい位置にある。人口は万を超えるし、強者が生まれる余地は十分にある。

 

 1時間ちょっとも飛んでいると、ユウランはセールクス北東にある丘陵地帯の片隅で木々に埋もれた何かの建物を発見した。

 

 山奥の廃病院といった雰囲気を漂わせているが、その建物には窓も無ければ崩れている部分も無い。ツルツルとした材質不明素材でできており、2階はなさそうだ。入り口は透明な硬い扉で閉ざされており、内部は差し込む光が無い為か、薄暗い。

 

 入り口から伸びる廊下は左右に分かれており、廊下の左右に部屋があるシンプルな構造だ。

 

 右の廊下から調べ、部屋を一つ一つ確認しようとすると、机や椅子でできた魔法生物が2体現れた。ブレスで炙ってやると、近くにあった机がガタガタと動き出し、手足を生やして襲い掛かってきたので続く【ファイアボール】でまとめて処分した。

 

 340点と1640Rだ。

 

 それから数部屋調べたところで、地下へ続く扉のようなものを発見した。とはいえ、他に調べていないところは沢山あるので、後回しだ。

 

 右の廊下の一番奥、そこの部屋は一回り大きく、中にはオクトガダム(レベル7)が2体とウォーガダム(レベル9)が鎮座していた。

 

 以前は苦戦させられたが、最早格下に過ぎない。よしんばラッキーヒットがあったとしても致命傷にはならない。830点と12140Rゲットだ。もうほとんど元が取れてしまったので、ダーシャに申し訳ないくらいだ。

 

 他にも動く部屋や雷の球体、追加でオクトガダムを倒して、760点と6240Rだ。こうして1階部分を全て探し終えたが、罠らしい罠はどれも解除や回避が簡単だったし、レアなアイテムなんかは一つも無かった。

 

(部屋にしっかりと敵が配置されているあたり、まだ管理されているんですね。そいつ(・・・)が地下に居そうってことも)

 

 地下へ続く長い階段を下りた先は明かりが付いており、これまた長い廊下につながっていた。

 

 手近な扉に入ると、そこは何かのガラクタ置き場になっており、油や何かの骨、使いかけの道具が置いてあった。

 

 薄暗いのでさっさと出ようとも思ったが、運よく壁に掛けられたマスクが目に入った。賽が振られ――手に取ってみると、水中で呼吸ができるようになるマスクだった。緑色で、エラを思わせる装飾がある。"逆鱗の面頬"を取る気は一切無いが、要所要所で役に立つかもしれないのでお持ち帰りだ。

 

 他にも、魔法の研究室のような場所でポーションを見つけたり、換金できる物品を見つけたりした。

 

 途中でやけに大きな扉も発見したが、あまりにも怪しかったので最後に回すことに。

 

 白衣を着た女性の亡霊、バンシーや灰のアンデッドとも遭遇した。魔法機器文明期の遺跡に発生したということは、ここで死んだのだろうか。何にせよ、厄介なことが起きているという事は間違いない。

 

 しばらく中を探し続けて、例の怪しい部屋以外を見終わったが、アンデッドの他に怪物は居なかった。

 

 で、デカイ扉を開けて中に入ると、大きな部屋の中央に、巨大な人型の魔法機器が鎮座していた。高さ10mはあるかという威容で、見た目はリアル系ロボットだ。

 

 ロボの周辺には整備用のハンガーだったり、戦闘用の魔法機器があり、少し離れたところにあるコンピューター的な装置を一体のアンデッドが操っていた。

 

 そいつは扉の開閉音に気付いて振り返ると、まぶたの無い眼球でギロリと私の上から下までを舐めまわすように見つめてきた。

 

 おうコラ閲覧料とるぞ。

 

「し、シシシ侵入者だな!? ア!? 私の、ヒト族の希望を兵器を狙いにきた冥族だな? だな!?」

「何言ってんだこいつ」

「オレン将軍の軍の部隊に冥族の大部隊を倒してもらうまでに渡すまではヒトのために渡すものか!」

 

 狂気に染まった彼にはもうとっくに何者の言葉も届かない。

 

「起動せよ!! 冥族抹殺兵器ボトム!!」

 

 賽が振られる。

 

 機械の操作を終えた瞬間、置いてあったバイクへおもむろに搭乗したアンデッドの男をまず焼き殺した。

 

 しかし機械は起動した。

 

 ボトムとは別の戦闘用の魔法機器が飛び上がってこちらに急接近し、榴弾を炸裂させて機銃を放ってくるが、これはすべて回避。冥族抹殺兵器ボトムとやらも、光線を放ったり湾刀を振ったり地響きを起こすが、当たらないか痛手にならないかのどちらかだ。

 

 1分もすれば二つの魔法機器は無残にも破壊され、期待されていたであろう役目を果たさず沈黙した。

 

 1200点と57000Rだ! 私と比べて弱かったものの、レベル13の巨人兵とレベル11の戦闘用魔法機器だ。部品は高価だし、経験点は美味しいし、無限湧きする場所ないかなぁ。

 

 ともかく、これでファイターレベルが13に到達したので一旦の目標は達成だ。

 

 これからはプリーストレベルを上げることに専念できる。

 

 ウキウキで外に出ると、もうすっかり夜だ。6,7時間は時間を費やしていたので20時頃だろう。

 

 【フライ】で遠くに見えるシムロンの明かりを頼りに飛行していると、右手方向の地面にやけに明るい場所が見えた。

 

 もう5分もしないうちにシムロンだというのに、一体何の明かりだろうか。普段の夜間飛行では見かけないので、高度を落としてよくよく見てみると、私の実家の近くで火の手が上がっていた。

 

 目の分解能をあげて観察すると、異形の影――悪魔が道を走り、ヒトを襲い、我が家の門前でも戦闘が始まっていた。

 

 




どうして(現場猫)

タイトル、もっとキャッチ―な方が良い?

  • ちんちんはやめろ
  • 主人公の属性押し出せ
  • そのままでいろ
  • なろうみたく長くしろ
  • 副題付けろ
  • もっと中二病にするとかさぁ
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