私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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 ユウラン・アルシップス 冒険者レベル13 経験点181500+2580

 HP118+17 MP140

 ファイター技能レベル13 ソーサラー技能レベル12 コンジャラー技能レベル8

 フェアリーテイマー技能レベル6 プリースト技能レベル6

 スカウト技能レベル9 レンジャー技能レベル3 セージ技能レベル5

 エンハンサー技能レベル6 アルケミスト技能レベル6 ドラゴンレゾナンス技能レベル6

 器用度30+6 敏捷度30+6 筋力32+8 生命力41+6 知力42 精神力42

 レベル取得:<<魔法拡大/数>> <<魔法拡大/すべて>> <<マルチアクション>> <<頑健>> <<足さばき>> <<魔力撃>> <<クリティカルキャスト>>

 魔法取得:<<武器習熟A/各種>> <<防具習熟A/非金属>> <<防具習熟A/金属>> <<防具習熟A/盾>> <<回避行動Ⅰ>> <<ターゲティング>> <<両手利き>> <<ブロッキング>> <<魔法収束>> <<鷹の目>> <<魔法制御>> <<MP軽減/各種>> <<武器習熟S/各種>> <<武器の達人>> <<命中強化Ⅱ>>

 脱法取得:<<必殺攻撃Ⅱ>> <<牽制攻撃Ⅱ>> <<全力攻撃Ⅱ>> <<薙ぎ払いⅡ>>


第九話「冥都アルカンハイト」

 

 市長から報酬を受け取って7日が経過した。

 

 その間にシキブの祖父から報酬代わりのゴーレム代を貰い、実家に肉壁用のゴーレムを配置して父をしかめっ面にしたり、14回の配達に5回の依頼、遺跡探索で稼いだ23190点の経験点を使いプリースト技能をレベル11にした。

 

 空いた時間で実家によって母に髪の毛を好き放題弄られたり、妹たちと遊んで父と色々な話をした。

 

 目標達成まではあと18190点。

 

 ここ1週間のペースならあと5,6日で終わる。

 

 そう思っていた矢先のことだ。

 

 朝食を食べながら本日の依頼を確認していると、ホムンクルスの三人に持たせた電話専用の魔道具"通話のピアス"が鳴った。

 

 便利な魔道具であるが、戦闘中や隠密中に掛かってきたら困るので、余程のことが無い限り使用は控えるように言いつけてあったのだが、悪魔が暴れた昨日の今日に一体何が起こったというのか。

 

「こちらユウラン。どうしましたか?」

『いいですか、落ち着いて聞いてください』

「はぁ」

 

 通話しているのは唯一無事なガァマだった。

 

『お母様が急な高熱に侵され、今朝から意識がありません』

 

***

 

「熱病の治療はできました、病気の進行を1/3に遅らせる魔法も掛けなおしてます」

「ユウラン……」

 

 母リーネが眠るベッドの横で、ユウランと父のクラークが笑顔一つ見せずに向き合っていた。

 

「恐らく、病気に対する抵抗力が弱まっているのでしょう。この前、地下に長い間居たのもよくなかった」

「……そこまで、分かるものなのか。我が娘ながら、よくぞ立派に育ったと言えばいいのやら」

「私の【キュアディジーズ】で治らない以上、特殊な治療法をするしかありません」

 

 ユニコーンの角による病気の治療は15+2d6の達成値かつ8回限定で行われたが、私の場合は杖や装備による補正を合わせて28+2d6、消耗品の破壊を合わせれば更に+2されるし、MPがある限り使いたい放題だ。

 

 余程の難病や生まれ持った先天疾患でもない限りは十二分に快方へ向かわせるだけのパワーがあるし、【達成値に関係なく病気を治す魔法】も効果が見込めなかった。

 

 父の知っている魔法はそこまで多くないので、魔法の効き目がなかったで誤魔化した。病気を何でも治す魔法が効きませんでした、と言ってしまうのは忍びなかったし。

 

 以前にも述べたとは思うが、母の「病気」は肥満とそれに伴う疾病のような関係なのだろう。母が不自然に弱り死に向かうのは、何某かの正常な生命活動による不利益なのだ。

 

 恐らく、ガンのようなものなのだろう。

 

 医者じゃないので詳細は分からないが、健康な人間であってもガン細胞は生まれるし、健康な人間であれば免疫によって排除される。体が全く別の物に置き換わるのは病気なのか、それとも欠損なのか、神々はどうやってそれを判別しているのか、私には分からない。

 

 真相は定かではないが、重要なのは、神が起こせる単純な奇跡の範疇には無いということだ。

 

 しかし、物理的に存在する異変であるなら、特殊神聖魔法13階梯【コントロールボディ】によって取り除ける。その可能性を信じてがむしゃらに突き進むしかない。

 

「父さん、私はこれから更なる修行を積んで、母さんを治しうる魔法の習得に励みます」

「な、なんだと!?」

 

 クラークは二重に驚いた。一つは、まだリーネを治しうる可能性があることに。

 

 もう一つは、娘が更なる成長を遂げようとしていることに。

 

 困惑と期待とやるせなさが渦巻く胸中をユウランが知る由もなく、複雑な顔のままクラークは言葉を詰まらせた。

 

 商人らしくすぐに表面上の落ち着きを取り戻した彼は、更に闘い続けようとする娘を抱き締めた。

 

「生きて、生きて帰って来てくれ……!」

「もちろんです。開祖に誓いますよ」

 

 父に通話のピアスを渡し――危篤状態にならない限りは連絡しないように念を押して――家を去る。妹たちには寂しい思いをさせてしまっているが、大きな喪失を防ぐためなので致し方ない。

 

 "稲妻の鉄槌亭"に戻る前に、約20万Rほどを魔晶石――金で買える消耗品の外付けMP――やポーションなどに変えて買い物を済ませておく。買い物にまとまった時間を割けるのが、もしかしたら最後かもしれないので。

 

 宿の扉を開けると、ガァマだけがカウンターで待っていた。

 

 今朝、連絡があった際にあらかじめ来るようにいいつけておいた。私の足が速すぎるので、呼び出す時に時間差を考えないと待ちぼうける羽目になるからだ。

 

「お待ちしておりました、ユウラン様」

 

 今の言葉の通り、アルファス、ベータ、ガァマの三人は、良く話し合った結果として私の従者になることに決めた。前の主の生存が見込めないとか、恩義があるとか言っていた。どちらも本当の理由ではあったが、まだ隠している理由はあるように思えた。とはいえ、あまり関係の無い話だ。

 

「ガァマ、朝言ったようにあなたにも冒険者として働いてもらうことにしました。

 それで、あのドラゴンみたいなヒトとは話が付きましたか?」

 

「アルセリウスフィトラーダさんですね。明日以降、共に仕事をしても良いとの返事を頂きました」

「良し」

 

 今更レベル6や8の冒険者をとっ捕まえて何をしようとしているのかと言えば、配達依頼を代行させたり冒険に行かせるのだ。

 

「数日の間、あなたに私の依頼を肩代わりしてもらおうと思っています」

「依頼……といいますと?」

 

「配達の依頼です。シムロン、セールクス、ポート・リートの3か所間で小さな荷物を届けているんです。

 ほら、掲示板に紙が貼ってあるでしょう?」

 

「……異存はありません。しかし、何故?」

「それについては……私の部屋で話しましょう」

 

 ガァマを伴って宿の個室に入り、余人の耳が無いかを確認してから小声で話す。

 

 これは、私にとっても大きな決断だ。

 

「今から話すことは、あなたがホムンクルスであり、なおかつ私の従者になると言ってくれたから打ち明けようと決心したことです。

 まず第一に、この秘密を誰かに話すこと、伝えること、記録に残すことは禁じます。

 私自身が尋ねても決して話してはいけません」

 

「……かしこまりました」

 

 仰々しい語り口で前置きをすると、彼は体をこわばらせた。

 

 異常な速度で成長を続ける超人が抱える重たい秘密を聞かせようというのだ。ガァマの顔は少し強張っており、重圧を感じているようにも思えた。

 

「一言一句真実です。私は冒険者の宿で依頼を達成する度に、得点がもらえます」

 

 はて、何の話だろうか。この冒険者の宿はそんな制度をしいているのか。そんな疑問が去来しているような顔だ。

 

「その得点を使って、私は魔法を覚えたり戦士としての技量を高めることができます。

 冒険者として一廉の力を持っているのは、私のこの特異体質が原因です。

 あと18回ほど依頼をこなせば、恐らく母を救える筈です」

 

「…………まさ、いえ、なる……ほど」

 

 まさか、と主人を疑うような言葉を思わず口にしそうになるほど衝撃的だった。

 

 魔法を習得するためにマナの原理や呪文を覚える必要などなく、武器の振るい方を身に着けるために素振りをする必要もない。

 

 ただ空を飛んで荷物を届けるだけで力を手に入れられるなど誰が思うだろうか!

 

「時は一刻を争います。ガァマには使い魔のスキャットと共に配達の依頼をこなしてもらい、その間に私は別の依頼をこなす。言いたいことは分かりますね?」

 

「はっ。お任せ下さい」

 

 使い魔=ほとんど私なので、私の使い魔が手伝った依頼の経験点は私に入る、という理屈だ。上手くいくかは分からないが、試す価値はある。

 

 失敗したら失敗したで1000点分損をするが、成功した時のリターンは計り知れない。

 

「アルセリウス……さんに話をさせたのも、その一環です。もちろん、護衛はつけます。【インスタント・ゴーレム】」

 

 効果時間を5000兆倍にしたブラスウィングをパッと4体創る。1体あたり8300Rのカスタム仕様だが、野良冒険者を護衛に付けるよりは安上がりで信頼できる。

 

 ついでにゴーレムとガァマを魔法で強化し、能力を向上させておく。

 

 真鍮で創られた黄銅色の鳥共々魔法で強化されていくと、ガァマは溜息をもらした。

 

 ただの魔法一つとっても尋常ではない効果時間になっていることについては、念を押して注意する。

 

「このうちの2体を使い魔越しに遠隔操作します。冒険に出る時、これらを前衛に立たせなさい」

「承知いたしました」

 

「これから配達依頼の代行を任せる旨、冒険者の店主に伝えに行きます。顔合わせですね、本日中に終わらせるので、着いてきなさい」

「はい。移動手段はいかがしましょうか」

 

「【フライ】の魔法で済ませます。この数日は激務になりますが、何とか踏ん張って下さい」

「恐れながら、ユウラン様がお側に居ない時は【フライ】は使えないかと思われますが……」

「『私は』使い魔越しに魔法が使えます。これも、同じく秘密です」

 

 使い魔越しの魔法も「能力」による強引な解釈だ。本来は主を起点に距離を計算するのだが、「使い魔の視界で魔法を行使できます」と書いてあるのだからしょうがない。使い魔の視界=使い魔の目玉で、そこを起点に行使できると解釈した。

 

 階下の店主に配達依頼の有無を尋ね、ついでに明日以降はガァマが行う旨を伝える。

 

「おう、あんたも酷ぇ主に当たっちまったもんだな」

「ユウラン様は素晴らしい方です、主への侮辱はお止めください」

 

「……洗脳でもしたのか?」

「失敬な! 何でこんな好感度高いのかは知りませんが、私は外道ではありません」

 

「冗談だよ冗談。そうだ、緑竜石とやらの買取もあったぞ。あと買取金も尽きた」

「おっ、助かります。10個分の3500Rです」

 

 それからセールクス、ポート・リートと冒険者の宿で顔合わせを済ませた。ポート・リートからセールクスに向かう荷があったので、その依頼は使い魔とガァマに任せて私はシムロンへ向かう。ちょうど受けられる依頼が一件あったのだ。

 

 近所の農地に現れたイノシシたちをしばき倒して戻った頃には、使い魔越しにガァマの配達が終わり――私のように人ごみを無視してダッシュできないので時間が掛かる――無事に経験点が入ったことを確認できた。

 

 使い魔から【フライ】を行使してガァマを帰還させながら、私はテンシライの方面へ向かう。

 

 これより、単身で敵地に潜入して冥族を狩り殺す。合計1095点分の魔晶石を購入してあるし、余程の大物が連続して出てこない限り物資はもつ。

 

 夕日の空を翔けていると、ふと何かの気配を感じた。振り返れば、青から黒へ染まっていく東の空に、小さな点が一つ見えた。

 

 "運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"ことヘルメイラだ。

 

 まぁ、特に用事も無いので、当初の予定通りセールクス-テンシライ間の街道に降り立って、"三獄頭"が支配する森へ足を踏み入れる。

 

 冥族狩りだ。一心不乱に冥族を殺すのだ。歩いていればこれを殺し、遭遇すれば逃さず殺し、群れていれば焼き殺し、潜んでいれば引きずり出して殺す。

 

 冥族など生きていてもヒト族は喜ばない。

 

 神々の戦争の果てにヒト族や動植物から産み出されたのが冥族であり、哀れだとは思うが歴史的に不倶戴天の存在でもある。慈悲を掛けるにしては殺戮の歴史が積み重なり過ぎている。

 

 街道を逸れて、邪魔な下草をブレスで焼き払いながら、襲い掛かってくる植物の魔物も消し炭にする。370点。

 

 敵が弱いと戦利品も少額なので、それよりは時間を優先、泣く泣く無視する。

 

 しばらく進むと小川を見つけたので、それを辿ると池に出た。水深は1m前後はあるだろうか、深い緑色の水は底までの視線を遮り、独特の青臭さを放っている。

 

 池の外周は木の根が盛り上がっているばかりで、平らな地面は無い。

 

 対岸に獣道のような何かが通った跡があったので、そこを目指して木の根をえっちらおっちら超えて外周を回っていると、その獣道から何かがやって来た。

 

 大きな瞳に水に濡れた肌、瑞々しい肢体を隠すことも無く曝け出したのは――――フロッグマンだ。

 

 緑色のデカイ二足歩行カエルである。たまーにカエル型の悪魔を信仰していたりする冥族なので、遠慮はいらない。

 

 消音玉で金属鎧の音を最小限にしてから、滑らかな足さばきでそれに近づきアンブッシュ!

 

 石突から柄の上端まで2メートルはある巨大な戦斧にマナが込められ、水浴びのような事をしていたフロッグマンの頭上から股下までを一直線に切り裂いた。切断面が血煙と化して、吹っ飛んだ死体の半分が池の一角を赤黒く染める。

 

(おお、流石は黒炎に鍛えられしダイナペレクス。魔力撃だと70点は持っていきますか)

 

 "炎魔眼"討伐の報酬として下賜された漆黒の恐竜戦斧(ダイナペレクス)だ。めでたく使用条件を満たしたため、以前から実戦投入前の試し振りをしているのだが、打てば響くあまりの破壊力に惚れ惚れしてしまう。

 

 ブレスに換算して2回分のダメージともなれば、大抵の生物は一刀の下にひれ伏すことになる。

 

「……って、こいつ経験点少ないですね」

 

 公式に存在するフロッグマンのエネミーデータはレベル4からであるが、今回はレベル1相当の10点しか獲得できなかった。

 

 頭の中で賽が振られる――そうか、なるほど。戦士階級じゃないメスとか幼体にあたる存在か。

 

 つまり集落がある。

 

 冥族も生き物だ。当然だが繁殖する必要があるし、集落くらいはある。

 

 池から続く獣道に沿って走ると、水深の浅い水溜りがいくつも広がる広い沼地に辿り着いた。

 

 家らしきものは無かったが、銛で魚を獲っているフロッグマンや、武器を持った小さいのに指南をしている者がいる。

 

 そうか、もう夜か。

 

 太陽が沈んだから活動を始めたのか。

 

 私は嬉しくなって、ばしゃばしゃと水音を立てながら斧を担いだ。

 

 フロッグマンたちは独特なグァー!っという声を立てて慌ただしく動き始めた。小さいのと指南役が森に引っ込んでいき、漁をしていた者が銛を持って軽快に駆け寄ってくる。

 

「普通の個体ですね! 死ね!」

『ゲコァ!』『ゲゲー!』『グァ!』

 

 スポポポンと首を刎ねて120点。沼を横断して小さいフロッグマンたちが逃げた先へ向かう。水の跡を辿れば、どうやら洞窟に逃げ込んだようだった。

 

 私が着いたころにはちょうどフロッグマンがわらわらと出てきたので、片っ端から魔力撃で薙ぎ払っていく。血潮が一度二度三度と地面を汚すと、蛙の雑兵たちは二の太刀を喰らうことも無く死んでいった。400点。

 

 地下洞窟へ潜っていくと、ジメジメとした湿気が鼻に入ってきた。

 

 罠すらない洞窟内部を見て回ったが、当然金目のものなどなく、やがてフロッグマンたちの精鋭たちが立ち塞がった。精鋭と言っても6~8レベルが6体と先ほどの4レベルが6体だ。650点。

 

 さらに奥へ進むと、下半身がタコで上半身がヒトの女性でできた巨大な怪物――スキュラ(11レベル4部位)スケルトンの重装歩兵(レベル7)が4体、フロッグマンの指導者的立場にあるリーダー(レベル12)と隷下の最精鋭(レベル10)2体が待ち構えていた。

 

『貴様ァ! 我らの聖域を荒らして楽に死ねると思うな!』

『腸を裂いて踊り食いしてくれる!』

「……」

 

 街道からすぐに赴ける位置にこれほど危険な集団が居るとは思ってもいなかった。水気が無かったためにわざわざ街道へ出てこなかっただけなのだろうが、あまりにも危険である。1040点と12500R。

 

 ゴーレムで塞いだ出口から逃げ出そうとしている者はまだ居ないようで、私は広い洞窟を歩き回って30~40体ほどのフロッグマンを焼き殺し、380点を手に入れた。レベルが無いような者もいたし、ファンブルでの50点も含まれている。

 

 金目のものが無いどころか、何かの古びた骨が転がってる有様。南無南無と手を合わせて、フロッグマンの死体は念入りに焼いておく。

 

 隠し扉や他の冥族との連絡通路なんかがないかをチェックしてから、野良冥族に利用されそうなものはゴーレムに破壊させておく。

 

 ゴーレムを仕舞って洞窟を出ようとすると、出口から注ぐ微かな月光を遮る人影があった。

 

「……ヘルメイラさん? どうしましたか、こんな所で」

『君に用があったのだが、振り切られてしまってな』

 

「それでわざわざこんな所まで? キッショ……

 

 男がこの美少女の尻を追い掛け回していたと思うと怖気が走る。

 

「で、何の用です?」

『……頼む』

 

《おうよ! 突然悪ぃなスケベな嬢ちゃん》

「誰だ」

《おぉ……怖……》

 

 ヘルメイラのくぐもっている中性的な声ではなく、ハウリングがかった粗野な男の声だ。

 

 鎧姿は一つしかないが――周囲にもヒトの気配は無い。

 

《ここだよ、ここココ。目の前に居るだろう?》

「……インテリジェンスな道具ですか」

 

《共通語喋ってんのによく分かったなぁ! そうともさ、流石の洞察力だ》

『インテリジェンス・アーマーのウラエヌスだ。中身は――――』

 

 ヘルメイラが兜に手を掛けると、装甲がガシャガシャと畳まれながら鎧の内部へ収納され、素顔が露となった。

 

「只のヒトだ。本名はニース・ヘルメイラ」

ついてない(・・・・・)から安心しろよな!》

 

 肩口で切り揃えられたグレーの髪にサファイアをはめ込んだような瞳。美少年とも美少女ともいえる耽美な顔。

 

 鎧姿との高低差のギャップエネルギーで脳みそが少し灼ける。

 

 男装が似合いそうな長身の甲冑女子の突然の登場に、思わず止まっていた呼吸を再開し、大きく息を吸いこんだ。

 

「お、男だと思ってた……」

「そうか。歴代の"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"は性別が定かではない者も多いと聞く、今代は女だと覚えてくれていい」

 

 この絶世の美少女ユウランちゃんを心配して様子を見に来てくれるなんて何と心優しい女性だろう!

 

 掌に仕込んだモーターがくるくると回転した。

 

「ゴホン! それで、話を戻しましょうか」

《ああ。お前さん、前世の記憶はあるか?》

「ありませんが……何故?」

 

《話は300年前の"青の落日"に遡る。この地方に氾濫した冥族の王たちの手によって、ヒトの社会インフラは壊滅的打撃を受けた》

「ああはい、"青の落日"の一般的事実ですね」

 

 ルルブにもそう書いてる。

 

《で、冥王どもの侵攻に抵抗した一人の偉大なエルフが居た》

 

「そいつが私じゃないかって?」

《そうだ。名前はポーラ・シムロン。確かな情報筋から、あの女が今の時代に生まれ変わったって話を聞いたわけだ》

 

「…………【リーンカーネション】の魔法は即座の転生なので、300年越しは無理があるのでは?」

《増々あいつの言いそうなこって。だがな、俺たちの恩人で先導者で戦友でもある奴を探すのに、理屈が必要か?》

 

「……ウラエヌスのはこういう事情だ。私の方は特にない」

 

 通常とは異なる仕様の転生…………私か? 私なのか?

 

 前世があるという確信だけ抱えていたが、私を中心に据えた出来事だけを見ると候補がそれしかない。とはいえ、私がポーラ・シムロンだと断言できないのも確かである。

 

「そうでしたか。まぁ、何か思い出したら言いますよ。じゃ、私は用事があるので」

「待て。この洞窟で何を?」

 

 脇を通り抜けて去ろうとすると、ニースが呼び止める。

 

 声色には感情がこもっておらず、機械を相手にしているかのようだ。

 

「何って……冥族ぶっ殺してたんですよ」

「冥族狩りか?」

「ええ、ちょいと奥の方まで」

 

「同行しよう」

「えぇ……」

 

 心なしかニースの表情は険があるように思える。表情が動かないので何とも言い難いが、少しばかり圧力を感じた。

 

「まぁ、あなたが私に遅れを取ることはないでしょうし、別にいいですが、お金にもなりませんし適当に切り上げますよ?」

「構わない。我は冥族を狩りし者、君と共に戦えるなら更なる脅威を打ち倒せる筈だ」

「期待でっか……」

 

 人間的には信頼できるヒトだと思われるので、共に冥族領地で好き勝手することになった。仮に突然襲われても、彼女のビルドでは私とのダメージレースには勝てない、という事も含めての承諾だ。

 

 沼地を抜けて更に奥へと進むと獣道を見つけたので、地面を注視しつつ足跡を探す。

 

 ニースは暗視を持たないので、光源を持って歩いているが、これはこれで目立つので良い。光源を見てやって来る冥族がいれば稼げる。

 

「あ、足跡ですねぇ! 次に見つけた冥族は尋問しましょうか」

「……何故だ?」

「強い奴の居場所を教えてもらうんですよ」

 

 足跡の先は、少しだけ拓けた土地だった。粗末なテントがいくつかと、火が消えたばかりの焚火の痕跡がある。

 

 金属鎧をガチャガチャ鳴らしながら歩くと流石に住人も気付いたようで、人化能力を持つレッサーバルトルスやシャットマンが嬉々として襲い掛かってきた。

 

 220点を稼いだ後、運よく死んでない奴を縛り上げてから回復する。

 

 強い奴と戦いたい、みたいなことをペラペラしゃべると、だったら奥に行けという事だけを述べて後は黙った。ので、始末して更に奥を目指す。

 

 しばらく歩いていると、昔に多数の冥族が移動したかのような痕跡――道らしき場所に出た。地面は他と比べてもよく踏み固められており、へし折れた木が何本も道なりに続いている。巨人でも通ったのだろうか。

 

 道は左右に分かれているが、時間が経っていることもあって具体的な事柄は推測できない。

 

「ま、どっちに行ったって判断材料も無いですし、五分五分ですかね」

「いや、我々から見て左へ征く方がいいだろう」

「何故です?」

「方角的には南東、奥の方だろう」

「あぁ……失念してました」

 

 3,4時間ほど森の道を歩くと、街に着いた。

 

 街と言っても、魔法機器文明期の建物を利用した廃墟がほとんどだ。魔法機器文明期は今の混沌とした時代より進んでいる文明ではあったが、石造りやレンガ造りの建物が大半だ。魔法機器という素晴らしい技術はあったが、コンクリート製の民家を建てられるほど素晴らしい時代ではなかった。

 

 例えるなら、素人の考える1800年代後半といった具合だろう。

 

 その壊れた街の跡地はほとんどが森に呑まれており、そうではない部分を冥族たちは占拠していた。

 

 小さな川に架けられたアーチ状の石橋を越えると、ケチな顔つきをした冥族が3体現れた。弱そうなトロールとシャットマン、それにゴブリンだ。

 

『へ、へへ、メスの逃亡奴隷と弱そうな鎧だぁ……』

 

 トロールが涎をボトボトと垂らしながら無遠慮に近寄ってくる。2m50cmほどと標準より少し小さくレベルも低いので、未成熟な個体だろう。

 

『オマエどっから来たんだよ、エェ!?』

『そうだそうだ! 食いもんおいてけ!』

 

「……彼らには私の戦斧が見えないようですね」

「冥族はどいつもこのようなものだ」

 

 80点。悲鳴を上げる間もなく血煙と化した。

 

 障害を排除し、更に街へ近づくと血の匂いに惹かれたのか建物の亀裂から冥族が顔を出した。とはいえ、単独だと美味しい獲物を逃したくはないようで、不用心に近づいてくる。

 

 そんなサイクルを3回は繰り返した後、道に散らばる死体と我々の光源を見たオーガが叫んだ。

 

『襲撃者だ!』

『なんだと!?』

『腕がなるぜ!』

『一番のりだぁ!』

 

 ドドド……と地鳴りのような足音と共に冥族が殺到してきた。脇道から、建物の陰から、血に飢えた者どもが黒い列をなしてやってくる。

 

 第一波を2度のブレスと【ファイアボール】で焼き尽くし、第二波第三波を二人とゴーレムで完封する。並の冒険者では対処できない波濤のような勢いだったが、流水のような回避と巧みな剣術によってほとんど無傷で殲滅した。

 

 後から来て怖気づいたコボルトが逃げ出そうとすると、何かにぶつかって転倒した。それは赤のゼルド・ノーブル――レッド・ナイトだ。恐らくはこの廃墟の街の支配者であろう。

 

 彼は激昂のままにコボルトを斬り捨て、竜化の叫びと共に兵隊ともども襲い掛かって来る!

 

「――ま、いまさらレッド・ナイト(レベル6~7)なんて物の数に入らないんですけど」

 

 1160点。だいたい40体位だ。

 

 ゼルド・ノーブルはブラウン・バロン(レベル10~11)イエロー・バイカウント(レベル12~13)と、現れてくれたら楽に倒せるような奴が揃っているが、グリーン・グラッフ(レベル17~18)になると怪しくなってくる。

 

 元三獄頭の支配領域の大きさ的には、千の冥族を率いると言われるグリーン・グラッフ級の敵が3,4体居てもおかしくはないのだが、三獄頭の一体がレベル15程度の炎魔眼だった時点でお察しだろう。

 

 冥族を掃討したので、私たちはここでひと眠りすることにした。

 

「じゃあ3時間ずつですね。交代で見張りをしましょう。この寝具を貸しますので、3時間で回復できますよ」

 

《何を言ってるんだお前は》

「……正気か?」

 

「聖なる揺り籠の魔法でもいいですけど……」

「そういう話ではない」

 

 え?

 

 冒険者って魔道具とか魔法で3時間だけ睡眠をとって最高効率で動く生き物じゃないんですか?

 

 という冗談はさておき、ここ2か月近くはそれでやり通しているという事を念押しして無理やり納得させた。

 

「私はこのやり方でやってきたんです。文句があるなら別行動しましょう」

「いや、分かった。君は危なっかしくて見ていられない」

「……そうですかね? ま、それじゃあお先にどうぞ」

 

 計6時間の休息をとったものの、新しい冥族がやって来ることはなかった。

 

*

 

 朝日が廃墟の街を駆け抜けた。

 

 その頃にはもう二人は出発しており、ろくに整備もされていない道を歩いていた。

 

 空を飛ぶと道を見失うし、人口密集地だとすぐに見つかってしまう。目的はあくまで経験点稼ぎであって、無茶無謀を通して自殺することではない。

 

「そういえば、ヒトの奴隷とかいませんでしたね」

「……いてほしかったのか?」

 

「いえ、邪魔なだけですので別に。冥族領地に居る限りは、現地民なんて信用できませんからね」

《そりゃ同感だ。歴代の一人も現地のヒト族に毒を盛られて死に掛けちまったからなぁ》

 

 こうした土地では雫のブレスレットといった水を確保できる魔道具の重要性は高い。私も一個しか持っていなかったのでその点は不安を抱いていたが、ニースは頻繁に襲撃を行っているらしく準備は万全であった。

 

 早歩きで道なりに2時間も進めば、昨夜に見かけた廃墟の街とは比較にならないほど大きな街に着いた。

 

 周辺は草木が刈られており、遠目で見た時よりもずっと見晴らしがよかった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……これなら飛んできても良かったですね」

「経験上、推奨はしない」

「そりゃどうも」

 

 そこは城下町と城をそれぞれ囲む二重の防壁によって守られているように見えた。

 

 5メートル近いコンクリート風の壁がずらりと都市を囲んでいるが、城門は開かれているし、蔦は生え放題だし、なんなら城壁に穴すら空いており、あまり手入れされていないことが伺える。

 

「魔法機器文明期の城下町をまるごと奪われたんですかね」

「ああ。冥族領地の奥は"青の落日"で奪われたヒトの都市が多い」

《創造は下手糞だが、ありもの(・・・・)を使うのはヒト並だからなァ》

 

 歩を進める私にニースは問いかける。

 

「あの都市に入って、何をするつもりだ?」

 

「私が満足するまで冥族を狩ります」

「……人命救助は考えないと」

 

「レジスタンス的な組織があるならまだしも、ほぼ単独でやろうとは思いません。あくまで修行の一環です」

《聞いたか? 修行で冥族の都市に潜り込む馬鹿だ! アヒャヒャヒャ!》

 

「ひと暴れしますよ。ニースも《影走り》の技能を修めているようですし、離脱はご自由にどうぞ」

「要するに行き当たりばったりか」

 

 行き当たりばったりで異存は無いようだ。まぁ、高レベル冒険者なら高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応できるので、問題ないだろう。

 

 夜行性の冥族らしく、朝の都市周辺で動いている影は全てヒト族だ。彼らは痩せこけた体に首輪を付けて、粗末な畑のようなものを手入れしている。首輪を観察すると――賽が振られる。

 

 奴隷の首輪には魔法が掛かっており、都市から離れたり主人が合言葉を唱えると電撃が発生する仕組みだ。

 

 種族的な問題のために、ろくな生産活動に従事できない冥族にとって、ヒト族の奴隷は貴重な労働力兼非常食兼財産なのだ。そう易々と逃げられるようにはなっていないようで、首輪はそのために必要だ。

 

 奴隷ですらない宙ぶらりんの立場なヒト――浮民(ふみん)もいるが、彼らの立場は奴隷よりも低い。所有物では無いからだ。首輪こそないものの、見通しの良い都市周辺で栄養状態の良くない浮民が無事逃げおおせるのは不可能だし、冥族に何をやられても誰も文句は言わない。

 

 そういうわけで、律儀に都市を守っているような門番すらいない城門を通り抜けると、想定通りの退廃的な光景が目に入った。

 

 歩いているのはヒト族の奴隷が大半で、首輪を付けていない者は目につかないが、フードを被って人目を忍ぶように移動する者もいる。大通りの道端には痩せこけた若いシャットマンや弱ったコボルトがギラギラとした眼で通行人や商店を眺めている。門番はいないが、ヒト族が逃げ出せば彼らが追いかけて捕食するのだろう。

 

 堂々と盗みを働こうとしたゴブリンが殺されると、その死肉を仲間だった者たちが素早く持ち去り分配を巡って殺し合っている。諍いが起こると奴隷たちは巻き込まれないようにそそくさとその場を離れ、勝者が出るかより強い冥族が場を収めるまで悲鳴が絶えることはない。

 

 冥族社会は力こそが正義。

 

 それを体現するかのような餓鬼修羅畜生の世界だ。

 

 この冥都はレンガや石の建物が並べられており、かつては華やかな街であったことが伺えるものの、それらは全て赤黒い染みと植物の蔦と簡易冥族語の文字だけで装飾されている。"青の落日"から300年、冥族はそこにいたヒト族だけでなく、文化や子孫に至るまで凌辱し尽くしていた。かつては美しかったであろう建物から汚物の臭いが漂ってくると、少しもったいない気持ちになる。

 

 私は最も近い場所に居たシャットマンへ接近し、戦斧の薙ぎ払いとマナを制御した【ファイアボール】で目につく冥族を殺した。120点。

 

 弱い冥族しかいなかったので、悲鳴を上げることもできず消し炭になった。

 

 首輪が付いた奴隷のヒト族たちは、焦点の合わない目でこちらを見たが、殺されると思ったのか悲鳴を押し殺してどこかへ逃げていった。【ファイアボール】に巻き込まれないようマナを制御していたとはいえ、無言で突然殺戮を始める奴に近寄らないのは当然だ。

 

「……派手にやるな」

「どんどん行きますよ」

 

 殺し合いが珍しくもないので、数体の冥族を殺した程度では大した騒ぎにもならない。

 

 何食わぬ顔で大通りを進むと、建物の陰にもたれかかっていたバルトルスが声を掛けてきた。人化能力を持つ冥族であるが、本来の姿である緑色の鱗じみた皮膚をもつ巨体を惜しげもなく披露している。身長は3メートル近く、牙を剥きだしにして角ばった顔をしわくちゃにした。恐らく笑っている。

 

「オマエ、堕ちた冒険者か? 名誉冥族でもねえし首輪もねえが、見どころはある。死にたくなけりゃこのオレ様の配下に――」

 

 バルトルスは「ルールブック」によるとレベル7相当で、魔法も使える強力な冥族だ。

 

 私に声を掛けたソイツは真っ二つになった上半身で地面に抱擁しており、目を見開いて死んだ。70点。

 

『に、ニゲロォォォオオオオ!!』

『イカレやろーだぁ!』

 

 冥族社会におけるレベル7は、例えるなら武士だ。権力はあるし、ゴブリンやコボルトやグレムリンのような下級の冥族はひれ伏していう事を聞く。

 

 それを突然ぶっ殺したもんだから、流石に冥族たちも異変というか異常者に気付いた。ヒト族はヒト族同士、冥族は冥族同士で固まって逃亡し始め、近くにいたゴブリンやコボルトが建物に逃げ込んだのを見かけたので、壁貫通ブレスでもう一棟先の建物ごと焼き殺す。60点。

 

 死体以外に引火して黒い煙がもうもうと上がると、段々と街が騒がしくなってきた。殺害が珍しくない街だが、冥族には冥族の社会と秩序がある。無差別に奴隷を殺すような奴は居ないし、冥族の財産じゃない浮民だからといって好き放題に狩る者は食料調達の観点から暗殺される。

 

 あとついでに、経験点が溜まったのでプリースト技能をレベル12に上げる。

 

 残りは10460点だ。

 

「……アルシップス、そのブレスはヒトを巻き込む可能性がある」

「ユウランで構いません。余裕があるうちは配慮しましょう」

 

 それからは腕自慢のオーガたちやさらに上位のオーガが騒ぎを聞きつけて笑いながら襲い掛かってきたり、グレムリンやメデューサといった魔法使いの一部隊が建物から一斉に攻撃しようとしたり、騒ぎはどんどん広がっていく。750点。

 

 大通りにいれば大物がやって来るだろうが、先に頭を潰すと小物が散らばって逃げてしまいかねない。冥族の人口の大半を占めるのがゴブリンやコボルトといった下級冥族なので、経験点を稼ぐなら、敵の統率を維持しつつ小さいものを沢山刈り取る必要がある。

 

「少し煙たいので脇道に逸れましょう。小粒の冥族も逃げてしまいましたし」

「……ああ」

 

 今日の私は確殺コーデ。

 

 戦闘のたびに先制判定を繰り返しているので、《ファストアクション》による2回行動で冥族のハートを鷲掴み。

 

 生半可な敵だとニースが動く必要すらなくハートキャッチ。

 

 思わず目を奪われた冥族は地面と熱いキッスを交わしてしまうこと間違いなしだ。

 

 路地裏の方は大通りと違って静かだった。建物が音を吸収しているのか、それとも元から陰気な場所であったのか。二人で歩いているだけで、漫画に出てくるチンピラの如く因縁をつけて攻撃してくるのでかなり入れ食い状態だ。380点。

 

 闇市のような場所に到着すると、用心棒のヒルジャイアントと闇市を仕切るゼルド・ノーブル、シャットマンの部隊を滅ぼした。570点。

 

 その次はマシナルエイプの縄張りに到着した。魔法機器文明期に立てられた直方体の施設で、見張りを倒して侵入すると、次々に下級冥族の兵隊が現れた。200点。

 

 中は魔法機器の研究や実験をしていたのだろう。地下壕も張り巡らされており、上から下まで探索するのが面倒な軍事施設のようであった。トラップの銃弾を見事に回避して潜り抜け、スナイパーエイプ(レベル9)率いる機械化猿の部隊を計2つ倒し、最終的には親玉のジェネラルテイルエイプ(レベル11)を倒した。

 

 多部位のマシナルエイプ系統が50体近く居たのと、オクトガダムを始めとする魔法機器を撃破したので、経験点は6860点と凄まじい値になった。かつての雪辱を果たしたとも言える。

 

「こいつらは少し骨が折れましたね。ま、罠が本体みたいな感じでしたが」

「ふぅ……しかし、朝から戦い詰めで疲れないのか?」

「特には。なんです、まだ100体も倒してないじゃないですか」

 

《……おいニース、こいつに付き合うのはやめておけ。ポーラ・シムロンと同じ超人の類だ》

 

 ウラエヌスが警句を飛ばすが効果は無かった。

 

 ニースは声を弾ませる。兜のせいで表情が見えないものの、私でさえ彼女の喜びを感じられた。

 

「まるで100体斬りを済ませたかのような物言いだな」

「この前、炎魔眼の軍勢を300近く倒してるので、済ませてると言えば済ませてますね」

 

「私も負けていられないな。総数で勝っている自信はあるが、一度にとなると200にすら届きそうにない」

「へぇ。何年くらい"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"をやってるんです?」

 

「8年だ。君ほどの年頃から剣を取った」

《お前さん、今代を無茶で殺すなよ》

 

 ドスの利いた声でウラエヌスが凄む。

 

 それもそうだろう、"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"は300年で45代目になるほどの超短スパンで代替わりしており、1代あたり平均6.6年しか就いていない、あまりに儚い戦士だ。

 

 短命なのか、全盛のうちに引退するのかは不明だ。

 

 私はその秘密を暴き立てようとは思わないし、今代の美少女可愛い"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"をみすみす見殺しにするようなことは許さない。

 

「さっきの戦闘でも全く傷ついてないじゃないですか、大丈夫ですよ」

「ああ、ユウランの強さはウラエヌスも見ただろう」

《だから心配してんだよなぁ!》

 

 神経質になっているインテリジェンス・アーマーの言葉を流して、早めの昼食をとったところで再び街に繰り出す。

 

 城下町の冥族は3~10体の小勢力がいくつも点在しており、先のジェネラルテイルエイプたちのような巨大集団は見かけない。280点。

 

 ショッピング感覚で裏路地を歩いていたが、既に噂が回っているのかとんと見かけなくなった。

 

 しかし、経験点の方はもう十分溜まった。ジェネラルテイルエイプの一団を全滅させたのが大きく、ガァマが配達を達成したのと合わせて、目標達成まであと220点だ。人口密集地を叩いて砕くのが、経験点獲得手段として呆れるほど有効なのは間違いない。

 

「いませんねぇ」

「大通りの方へ戻るか、そちらの方が目につく建物も多いだろう」

 

「ですね。奴隷市場とか牧場とか神殿を襲撃して、城は時間があればやりましょう」

「根こそぎか、いいだろう」

《若ぇのに常人離れしやがって……》

 

「もし、そこの……そこのぉかた……」

 

 襲撃の会話を楽しんでいると、路地の物陰からボソボソと呼びかける声が聞こえた。

 

「誰ですか」

「よければこちらへ、神の隣へ……」

 

 みすぼらしい格好の老人だった。痩せこけ、目は落ちくぼみ、声はしゃがれている。彼は呼びかけるだけ呼びかけて、狭い道の奥へ引っ込んでしまった。

 

「行きましょう」

「現地民を信用できないと言ったのは、君の筈だが」

 

「あの老人、首輪がありませんでした。それにアレは信者(・・)の言葉です」

「信者? 混沌の側の神か?」

「いえ、『神の隣』という言葉を使うのはンアの信者だけです。始祖側の神ですよ」

 

 私が隠れる者の神ンアの聖印を見せると、ニースは納得した。

 

「信者の声を見過ごせないわけか」

「ええ、プリーストとしての力を剥奪されるわけにもいきませんし」

 

 老人の後を追って狭い道を通り、崩れた壁から建物の中に入って、隠された入り口からロープで地下へ潜る。

 

 そこはトンネルだった。岩や土の地面には淡い光を放つコケが繁茂しており、暗視を持たずとも視界が確保できる。

 

 老人に続いて、我々がロープを下り終えると、鎧と槍を装備した男が二人駆け寄ってきた。

 

「司祭さま! そちらの者たちは一体……?」

「なに、家族よ……われらと同じ、一つの民じゃ」

 

 私が聖印を見せると合点がいったようだ。

 

 司祭と呼ばれた老人に案内されて、更にトンネルの中を歩く。暗視のあるドワーフやシャヴァルに加え、沢山のヒトが働いている。キノコや白い野菜が主食なのか、枝分かれしたトンネルの一つはそうした作物の栽培に使われている。

 

「奴隷は居ないようですね、司祭殿」

「えぇ、ええ……人狩りや浮民狩りを逃れ、この隠されし町へ集まったのです」

 

「人口はどの程度ですか?」

「120人ほどですじゃ」

 

「用があるなら手短にお願いしますよ。【マナサーチ】を使える者がいれば、私の発見は難しくありません」

「ではちょうどですな……こちらが秘匿の神の神殿に」

 

 それは神殿とは名ばかりの家であった。

 

 土で創られた屋根と壁があるだけの家で、扉は無くついたてのようなもので視線を遮っているだけだ。道中で見かけた全ての民家と同じである。

 

「【キャンプハウス】ですか」

「知っているのか、ユウラン」

 

「ええ、第10階梯のンアの特殊神聖魔法です。土や石でこういった簡素な家を建てられます」

「ささ、秘密の話は内で致しましょう」

 

 司祭の話を要約すると、冥都の領主が何かしそうなのでレジスタンスの一員を助けて、である。

 

「処刑が今夜行われるのか」

「我ら隠されし町の民は、浮民の反冥族組織と連携をとり、冥族への内偵をしております。城の者から、今夜に"催し物"があるという知らせを受けましたため……」

 

「要はハッキリしていないわけですね」

「冥族どもの"催し物"なら処刑や狩猟(・・)の解禁などが考えられるな」

 

「狩猟? ああ、浮民狩りですか。どちらにしろレジスタンスの一員を監獄から回収する必要がありますね」

「どうか、お力を貸していただきたく……」

 

 司祭は骨ばった体を曲げて頭を下げる。

 

「行き場を失った者に手を貸すのは神官として当然です。しかし、こちらの戦士には報酬が必要でしょう」

「いや、私は別に……」

「それでは……これを」

 

 司祭が取り出したのは、硬貨の詰まった袋だ。経済が存在しており、冥族に貨幣の鋳造能力が存在しない以上、R(リーン)でやり取りするのは当然の帰結である。

 

「3000Rですか」

「お出しできる……限界です」

「私が追加で支払いましょう。これで13000R、受け取ってくれますね?」

「……承知した。必ず連れ帰ると約束しよう」

 

 私的にはあと500点稼げれば撤収していいのだが、どう考えても今日中には終わる見込みなので、その後に備えて経験点を稼ぐことは重要であった。

 

 しかし、依頼のためには、まず情報収集だ。

 

 知らない都市なのだから、知ってる情報をきっちり聞き出さなければならない。冒険者の基本だ。

 

「出かける前に、いくつかお聞きしましょう」

 




ユウラン「……美少女じゃん緊張してきた」
ニース「???」


ンアの特殊神聖魔法
レベル2【サウンドグッド】MP3/対象1体/射程10m/効果時間1時間/抵抗消滅
バード技能を用いる行使判定+2。演奏の行使判定+2。
対象は歌や演奏が上手くなる。

レベル4【ワーカー】MP7/対象半径3mの空間, 5体/射程10m/効果時間8時間
一般技能のレベル+2。
対象は特定の仕事に対する理解を獲得するか、仕事に習熟する。
術者は効果対象へ別々の一般技能のレベルを加算することができる。
効果時間が終了した後、効果によって一時的に加算された一般技能の成長あるいは習得が早くなる(GMが判断します)。

レベル7【ガイド】MP6/対象1体/射程50m/効果時間6時間/抵抗任意
対象は頭に思い浮かべた目的地までの方角が分かる。
ただし、術者が知らない場所へは案内できない。

レベル10【キャンプハウス】MP5/半径10mの空間/射程10m/効果時間一瞬
木の枝や土、石などの材料を使い、屋根と壁がある簡易的な家を建てる。
1世帯が暮らすのに十分な広さですが、雨風が防げる程度であり、長期間住むのには適していません。
材質に関わらず家はHP45、防護点5として扱い、HPが0以下になった時、完全に破壊されます。

レベル13【コントロールボディ】MP20/対象1体/射程接触/効果時間永続/抵抗消滅
この魔法の行使には30分を要する。
術者は対象の肉体を自由自在に操作できる。
対象の顔や体形、声色を変えた場合、本人かどうかを見分けるためには、変化の度合いに応じたペナルティ修正が入る(GMが判断します)。
ただし、種族は変更できない。
肉体の操作によって先天的な不具や欠損した身体部位を回復できますが、肉体の変化が本人の体積を超える場合、代償として回復する箇所と同じ重さの身体部位を使用する必要がある。
使用する身体部位は対象の家族のものでなければならない。
代償として対象以外の身体部位を用いる場合、代償を支払う者の人数×20のMPを追加で消費し、魔法を行使する間、代償を支払う者は術の効果対象と接触していなければならない。

タイトル、もっとキャッチ―な方が良い?

  • ちんちんはやめろ
  • 主人公の属性押し出せ
  • そのままでいろ
  • なろうみたく長くしろ
  • 副題付けろ
  • もっと中二病にするとかさぁ
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