私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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第四話「金城鉄壁」

 

 20時15分、私たちは迷うことなくセールクスへ帰還する。

 

 ポーラを預けて市役所の会議室に入り、複数の軍人と方針について話し合う。私たちが視野狭窄に陥っていれば、指摘してもらわないといけない。

 

「セールクスがまだ襲撃を受けていない、喜ばしいことではありますが……」

「我々がすれ違うことはなかった。別の街を襲っている可能性はないだろうか」

 

 ニースが地図上の様々な街を指した。

 

「あり得はします、南東へ下れば、アクマハンでレッドドラゴンと合流できますし。

 ただ、それは彼らの戦略とは合わないと思うんですよね……陽動をする意味があるようには見えない」

 

 悩みどころだ。選択が非常に難しい。

 

 ブラウンドラゴンを探す方へ舵を切るのは、安牌だ。探せば出会える、のだが、そもそも奴の痕跡が追えない状況で、完全な徒労に終わる可能性がある。

 

 ここで先にレッドドラゴンを倒しに行くと、所要時間的にセールクスはほぼ確実に落ちるものの、アクマハン方面を比較的軽傷で済ませられる可能性がある。

 

 もちろん、どちらも発見できず、時間と労力を無駄に費やす羽目になることも考えられる。

 

「お二人に、この街に留まっていただくというのは?」

 

 軍人の一人が言った。私とニース以外はそれに同意するような顔をしている。

 

 これは、選択肢としては悪手に近いように思われる。

 

「ん? あぁ、伝わってませんでしたかね。

 周辺に居るであろうブラウンドラゴンは、数度の攻撃で街を完全に破壊し尽くすことができます。

 待てば、奴の先制攻撃で、街の何処かしらの範囲に居るヒトが必ず死にます。

 他のグレータードラゴンもいますし、待つ時間があるならアクマハン方面へ行きます」

 

 必ず街の一角が吹き飛ぶ、というのは衝撃だったようで、彼らは堂々と「それでよい」とは言えないようだった。

 

 被害を少なくでき、なおかつこちらから先制攻撃を仕掛けられる方法。そんな都合の良いものはない。

 

 やはり、探しに行く方がいい。

 

 何かしらの判定で賽を振れば、そのうち多分何かに気付くだろう。行き帰りで何にも気づけていない事に目を瞑れば、現状では最も積極的な方法だ。

 

 レッドドラゴンの方へ向かうのは、少々リスキーだ。

 

 シムロンとポート・リートの中間に存在するブラウンドラゴンを排除しない場合、広大な『側面』のどこかに居る脅威を気にしながら、レッドドラゴンと海上のドラゴンを相手にすることになる。

 

 2体以上で協調して攻め込まれることこそ、最も避けるべき事態だ。

 

 どのみち竜どもは攻め込んでくるので、奴らが永遠に隠れ続けることはない。

 

「ニース、やはり出ましょう。ポーラは預けてますし、こちらから探すしかない」

「……あぁ、足を止めてはならない、ということだろう」

 

 特に武装解除はしていなかったので、会議室に居る面々にはそのまま出ることを伝えた。

 

「では――――……?」

 

 部屋を出ようとしたところで、かたかた、と机上のペンや駒が揺れた。

 

「まずいぞッ! ユウラン!」

 

 震度1か2くらいか、などと思っていたが、ニースが鋭く警告した。

 

 その意味に気付いたのは――

 

 ドオオォォ……と、雷のような轟音と共に、隆起する岩石の影を見た。

 

 部屋の窓からいとも容易く見える景色だった。

 

 緊急事態であるがゆえに、街には篝火が焚かれ、一部の魔法機器が光を放っている。それらが何かに打ち上げられ、放物線を描いて消えるのが見えた。

 

「先手を打たれた……!」

 

 ブラウンドラゴンは既に街を二つ壊滅させている。

 

 そして、それは、六色同盟が私たちと同じように速攻で片を付けに来ているという事実を暗に指し示していた。

 

 急いで打って出ようとすると、ドアノブが勝手に捻られる。

 

「伝令ー! でんれーい!!」

 

 すると、一人の兵士が部屋に飛び込んで、息を切らせながら叫んだ。

 

「報告します! 街の北部に冥族の軍勢が出現しています! 数はおよそ250!」

「北部だとォ!?」軍の人間がざわめく。

「兵の配置が手薄な箇所に何故……」

 

 鏡があれば、私は自分のしかめっ面を拝めたことだろう。

 

 そういうことか、気付かなかった……!

 

 敵は『土の中』を進軍していた!

 

「地面を掘って迂回、ですね」

 

 敵は土属性のグレータードラゴンだ。容易く坑道を掘るような能力があったのだろう。

 

 地面の下を通れば、監視にも見つからないし、地上に痕跡は残らないし、我々にも見つからない。

 

 そんなんアリ?

 

 竜が土竜(もぐら)みたいな真似をするな!

 

「竜剣結界がある間は大物が来ない。彼女たちがグレータードラゴンを倒すまで耐えれば」

「いや、駄目だ! 竜剣結界は既に……」

 

 軍人の一人が窓の外を指さし、岩山の辺りにあった、と付け加えた。

 

 都市内のグレータードラゴンに、都市外の冥族軍。それらの同時攻撃だ。

 

 事ここに至っては、敵の打破だけが唯一の活路足りえる。

 

「ニース、行きましょう」

「ああ。皆、我々は行く。他は任せた」

 

 窓を開けて通りに飛び降り、岩山の方へ向かう。普通に考えれば、そこにグレータードラゴンは居る。

 

 だが、どうにも嫌な予感がする。

 

 敵は都市の要、竜剣結界ぶち抜き、シムロンへ王手を掛けようとしている。

 

 あとは、セールクスを他の街のように破壊してしまえば良い。それだけでヒト族は陸の中継地点を失い、苦境に立たされる。

 

 何故、それをしないのか。

 

 知ってか知らずか知らないが、ブラウンドラゴンは我々のことを出し抜いてみせた。どちらにせよ、賢く警戒心の強い相手だ。

 

 岩山の方へ駆けていく最中、街の様子に気を配れば、周辺の市民は何が起こっているのか分からないようだった。

 

 先程の隆起によって、竜剣結界とその上にあった建物は消し飛んだ。恐らくヒトごと。

 

 瓦礫がバラバラと降りしきった後の静寂に、市民は家から顔を出し、怪我人を介抱したり様子を見ていた。

 

 私たちが戦えば、そこを中心とした広範囲が消し飛ぶ可能性がある。さっさと逃げてもらわなければならない。

 

 私はすれ違った憲兵を呼び止めて市民を逃がすよう、ニースと共に言い含めた。

 

 私たちは彼らの上司でもなんでもないが、"運命と鋼鉄の戦士"の言うことだと分かると、すぐに従ってくれた。流石は桃太郎並みの生ける伝説、名誉名声が桁違いだ。

 

 装備を変えつつ岩山の目の前に辿り着くが、そこには誰もいなかった。もちろん、ブラウンドラゴンも。

 

「……馬鹿正直に待ち構えている訳ないですよね」

「あぁ、もしかしたら、敵はこのまま地下から破壊活動だけをするかもしれない。そうなれば、奴が作ったであろう坑道から挑むしかないか……」

 

 ……いや、一つだけブラウンドラゴンを誘き出す方法がある。

 

 高確率で釣れる方法だ。

 

「出てこい! "六色同盟"のブラウンドラゴン! 私、ユウラン・アルシップスか相手だ!」

 

 名乗り、だ。

 

 少なくとも、奴らは私を目的の一つにしている。逃走して仲間を呼ばれることが一番厄介だが、倒した二体の事を考えれば、戦いを挑んでくる確率は十分見込めるように思う。

 

「名乗りをあげて、奴らが来るだろうか?」

「恐らく──」

 

 ――来た。

 

 名乗りの直後、足元の石畳が僅かに揺れる。

 

 何か大きなものが動く気配がして――私たちは咄嗟に大きく飛び退いた。

 

 瞬間、地面を突き破って巨体が姿を現す。

 

 それはヒトよりも大きな瓦礫を振り落としながら地に降り立ち、雄大さを示した。

 

 昏い土色のグレータードラゴンには、奇妙なことに鱗が無かった。金のような光沢のある分厚い金属を身に纏っており、頭部は角ばって、目と牙だけが露出している。翼は骨のある輪郭部分にだけ金属を纏っており、皮膜部分には薄い金属膜が何枚か重なり合うように付いている。

 

 まるで、機械の竜のようにも見えるが、これは鎧だ。金属の鎧を纏っている。

 

『不幸中の幸いであるな』

 

 我々を見下ろすグレーターブラウンドラゴンは、竜語で奇妙なことを呟いた。

 

『……何が何ですって?』

『うぬらを一息に始末できなんだのが不幸であり、それが逃げず、ワシの下へ来たのが幸運よ』

『寄らないとアンタをぶっ殺せないもんでね、運が良かった』

『クッカッカッカ! 小さき身でよく吠えるわい』

 

「……」

 

 ニースは通訳も求めず、黙ったままだ。

 

 10メートルもないような至近に現れた強敵は、彼女に無駄話を許すほどの精神的猶予を与えていないようだ。

 

『墓くらい立ててやりますよ、名前は?』

『"陸崩茶竜(りくほうさりゅう)"、ディゼルガノルズ・ガグラバドン』

 

 会話の間に情報を抜く。

 

 賽が振られ、私は奴の情報を見た。

 

 24時間後に崩落するが地中を移動することができる能力。防護点を増す能力。刃物武器からのクリティカルを受けない能力。確率でスリップダメージが発生する毒のブレスに、土属性のブレス。ブレスの強化と遠距離武器の射程低下を付与しつつ、範囲内の敵に金属性武具の弱体化かスリップダメージを付与する能力。アイアンゴーレムの作製能力。

 

 

 そして、街を破壊し尽くした能力。

 

 

〇天破断崖/必中

自らを中心に「半径20m/無限体」の範囲で岩石を20m隆起させ、対象に「2d+72」点の物理ダメージを与える。

建造物に対しては防護点を無視して、ダメージの20倍の値を与える。

建造物および閉所内のキャラクターに対しては、ダメージの5倍の値を与える。

(略)

隆起後の地面を移動する場合は、目標値25の軽業判定に成功する必要がある。

軽業判定に失敗した場合、乱戦から離脱し、10m落下する。主動作で目標値24の登攀判定に成功しなければ戦闘に復帰できない。

既に隆起した場所は隆起せず、ダメージも発生しない。

 

 

 ……つまり、バフ込みだと、私は期待値で56点のダメージを受ける。これは私の体力の約45%に相当するが、ニースの場合は約33%に抑えられる。

 

 その場で殴り合う分には一発しか喰らうことは無いが、体力管理を怠れば一撃退場の危険がある大技だ。

 

 それと、天破断崖を室内で喰らえばダメージが5倍になるので、こいつが生きているだけで常に即死の可能性が付き纏うことになる。

 

 そう、地中を移動して誰にも見つからずに、都市内にいる相手を奇襲すれば、大抵の相手は殺せてしまう。

 

 ……ここで出会ったのは幸運だった。レッドドラゴンを先に倒しに行けば、痕跡は見つかっただろうが、セールクスは確実に滅び、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)を追って地中の洞窟を歩くことになっていた。

 

 こいつは決して逃がしてはいけない。この幸運を取り逃せば最後、常に死の危険がつきまとう。

 

 しかし、倒すのは容易ではない。"氷獄蒼竜"は防護点が20~25であったが、奴の防護点は30~35。私たちの物理攻撃が3割または7割近くカットされる上に、私もニースも斧と剣――つまり刃武器のため、ダメージが運よく跳ねる(クリティカルする)ことは無い。

 

 その上、毒のブレスを喰らえば、消耗品による抵抗強化を含めて40%ほどの確率で毒のスリップダメージが発生するし、耐久力(HP)は万緑翠竜や氷獄蒼竜と比べて一回り高い。

 

 結論。硬くて、タフで、瞬間火力が高く、スリップダメージを兼ね備える防御型のグレータードラゴンという評価になる。

 

 長期戦を覚悟しなければ。

 

「ニース、変換の酒(コンバージョンセイク)の効果を使うなら岩山を出す技に使いなさい、マナは消耗品から使って」

「心得た」

 

 私たちがごちゃごちゃと話して準備をしている十数秒間、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は何をするでもなく、ジッと私たちを見つめてきた。

 

 観察されているような、薄気味悪い感覚だ。さっさと攻撃すればいいものを、一体奴は何を考えているのだろうか。

 

 改めて考えれば、ここセールクスの破壊は中途半端だ。

 

 竜剣結界を破壊したのに、地下道で都市内に直接冥族軍を招き入れるわけでもない。目の前の敵に準備する時間を与え、飛ばず、目と鼻の先の石畳の上に居座っている。

 

『私に準備をさせて、随分余裕ですね』

『随分と、大きさを無視した入れ物を持っているなぁ?』

 

 ……流石に気付くか。

 

 判定のために被った大きなとんがり帽子をどこかに隠して、代わりの妖精魔法用の宝石を身に付けていたのだが、デカい帽子をサッと隠してたらそりゃバレる。

 

 まぁ、別にバレたって問題ない力ではある。密猟をしていた頃と比べて、暴力は凄まじく強くなっているのだから。

 

『それは創世の力か?』

 

 創世の力?

 

 なんじゃそりゃ。

 

 TRPGじゃなくて、創世?

 

 別に世界を作ってる訳じゃないけど、まぁ無限魔法とか無法なことやってるし、そういうパワーなのかも。

 

 情報を渡すのも癪なので無視すると、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は興味を失った。

 

『まぁよい、下らん。待つ必要も無い』

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)はノータイムで戦闘状態へ移行し――賽が振られない。

 

 錬金術の赤いジェムを砕き、反応速度を爆発的に向上させ、"先制"を確定で取る。

 

 姿勢を崩さず素早い足さばきで陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の足元に潜り込み、肺一杯に吸い込んだ空気を吐き出し――着火!

 

 各種練技と樹皮の守りの錬金術で能力を向上させながら、無言で【ブリンク】と【ファイアボール】を発動。炎ダメージでHPを着実に削る。

 

 炎に次ぐ炎、爆炎が竜の視界を遮るのも束の間、そこを突っ切って飛んだニースが竜の背に着地。強靭な脚力で尾部まで駆け――素早く引き返すと、2度の斬撃が鎧の間隙に裂傷を刻んだ。血が迸り、彼女の黒鉄の剣は血の赤でてらてらと鈍い光を反射する。

 

『グゥァア!』

 

 初撃で合計約1300あるHPのうち約300を削ったことになるが、これは《ファストアクション》による2回行動のお陰でしかない。

 

 その後は1ターンごとに150削れると考えても、最低7ターンは掛かる。ただ、これは回復を考えず、ブレスでニースを巻き込まない場合の効率でしかない。

 

 どのタイミングで"天破断崖"が放たれるのかは、常に気を遣う必要がある。だが、攻めを怠れば取り逃がす可能性すらある。

 

 先制の一撃は、確かに大きなダメージであった。だが、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)には欠片の動揺もない。

 

 背のニースを振り落とし、先端がハンマーのように膨らんだ尻尾で空間を薙ぎ払った。私の【ブリンク】で出た幻影が掻き消え、ニースが間一髪で避けたのも束の間、かの竜は両翼を大きく羽ばたかせて、鱗粉のようなものをばら撒いた。

 

『【重金属粒界】』

 

 粉のような金属が鎧や盾に纏わりつく。防具は重さを増し、不自然な凹凸が"受け"の感覚を鈍らせ(防護点が3点下が)る。

 

 その刹那、迫る竜の巨爪が私の鎧の表面を撫でた。受け流した筈の衝撃のいくらかは、粒子の凹凸が力の流れを崩したことにより肉体を走る。

 

「風属性二回で解除!!」

《じゃあ解除は無理だ!》

 

『クカッ――――!!』

 

 砂嵐を思わせるブレスが私とニースの間に着弾すると、微細で鋭利な粒子が全身に突き刺さる。

 

 ニースはHP的に8点しか喰らっていないので、鎧やバフでダメージの大半をカットできたようだが、私は抵抗に失敗し、少し吸い込んでしまった。喉と鼻、全身の細かな傷から血が滲む。

 

 HPで言えば81/141。対するニースは148/156。防御・回避性能の圧倒的な違いがここで現れた。

 

 私は――少々柔い。

 

 今までと同じように、グレータードラゴン──陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は、私に対して攻撃を集中してくるだろう。

 

「ユウランッ!!」

「攻撃に集中!」

 

 ポーション、練技、錬金術でHPは130まで回復。まだ余裕はある、まだ。

 

 敵の翼のHPを片方ゼロにさえすれば、命中力と回避力が下がって、こちらが与えるダメージは加速する。

 

 2ターン目、制御された【ファイアボール】が全身にチクチクとダメージを与え、ニースの全力の一撃が再び大きく刻まれた。翼のHPは半分を切る。

 

『ほう……』

 

 奴が感嘆のような声を洩らした。

 

 きっとここからだ、ここからが正念場だ。

 

『【ライトニングバインド】!』

 

 雷の(いまし)めが私たちに纏わりつき、微弱な電撃を放ちながら行動を制限する。

 

 ――まずい!

 

『グガァアアアア!』

 

 牙で、爪で、翼で、尻尾で、勢いよく私を攻め立てる。回避能力が落ちた身体で抵抗することは至難であり、ニースが私に向けられた攻撃の一部を剣で軌道を逸らそうと抵抗するが、地竜はそれらを全く意に介さない。

 

 ニースは<<かばう>>とか持ってないし、これは仕方ない。

 

 迫る攻撃、私の身体は受け流しの失敗という形で何度も揺さぶられる。

 

 だが、物理耐久はそこそこの水準だと自負している。ブレスの抵抗に失敗した先ほどよりもHPは高い。回復は十分間に合う。

 

『見た目通りの硬さではないのう』

『…………』

 

 余計なことを言って【パーフェクト・キャンセレーション】で永続バフを解除されては堪ったものではない。沈黙は銀……だっけ。

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)も何かを企んでいるのだろう。

 

 だが、こちらの準備も整った。

 

「片翼を落としますよ!」

「あぁ!」

 

 錬金術(【パラライズ】)で翼を痺れさせ、恐竜黒戦斧(ダイナペレクス)にマナを通す。火竜の血(【灼熱の咆哮Ⅲ・轟炎】)から力を引き出し、竜闘気で原初の闘争本能を解放(【竜想起:原始の猛り】)して更にパワーを引き出す。

 

「どりゃぁああああああ!!」

 

 雷の拘束を振り切り、懐に潜り込んで身体を駆け上がる。そのまま2メートルを超える巨大な戦斧を振り上げ――翼に思い切り叩きつける!

 

 バギャリと、分厚い金属装甲の下で、肉が潰れる音が確かに聞こえた。装甲を無視できるなら確実に片翼を機能停止に追い込める一撃(84ダメージ)だったが、残りはニースに任せてしまえばいい。

 

 すかさず飛翔したニースが翼諸共身体中を切り裂く(55ダメージ)と、片翼は力を失ったか(HPがゼロ)のように弱弱しい羽ばたきになる。

 

『流石に――――"氷獄蒼竜(ゼースィルカイダス)"を倒すだけのことはある!』

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は私たちを振り落として猛毒のブレスを炸裂させた。

 

 これに抵抗できなければ、続く一撃が命に届く。呼吸を止め、身体を蝕む量を最小限に抑えながら、生命力を一時的に増強する札(消耗品)で何とか毒に耐え忍ぶ。

 

『戯れてやろう!!』

 

 

 ――――天破断崖!

 

 

 震動を感じる暇もなかった。

 

 先が細い柱状の岩が、石畳を割いて天を突く。

 

 上昇する柱のあまりの速さに腹部を強打したが、咄嗟に空へ伸びる岩壁を掴んで同時に上昇する。掴み損ねていたら、急上昇する岩肌に削られて血だるまになっていたことだろう……普通の人間なら。

 

 それが陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)を中心とした半径20メートルの全てをかち上げた。砕かれた地面の残骸がボロボロと降り注ぎ、鎧にあたってカンコンと音を立てる。

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は大技を耐え抜いた我々に対して、さして動揺した様子は見せなかった。まるで、それが分かっていたかのようだった。

 

 私もニースも、頭一つ分しかないような岩の上に何とか立ち、バランスをとる。ニースは飛べるので問題はないだろうが、私は金属鎧を着用しているので重く、まともに移動することはできない(移動できないとは言っていない)。

 

「はっ、はっ――ユウラン!」

「無事ですよっと!」

 

 体力は確かに減ったが、我々を殺し切るほどではなかった。

 

 私は急いでポーションを飲み干し錬金術と練技で回復し竜回帰(【荘厳なる光輝Ⅱ・燐光】)で体力をさらに上乗せする。そして、滞空する陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)を牽制しながら、ニースにも【キュア・エクストリーム】を飛ばす。

 

 これで二人ともほぼ全快だ。

 

「うぉぉぉおおおおおお!!」

 

 ニースが咆哮と共に再度陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の巨体を真一文字に切り裂いた。

 

 少なくない血が流れ、ペース的にはあと2分程度あれば殺せると確信した。

 

 勝っている、ハズだ。

 

 優勢だ。

 

 魔法への抵抗やブレスのダメージでHPはブレるものの、ダメージレースには勝っている。

 

 重砂のブレスを掻い潜り、小さな足場の上を飛び回って尾や爪の攻撃を避け――これは現実とのすり合わせのために発生する行動なので移動には該当しない――反撃の機会を窺う。

 

 が。

 

『【ネメシス】』

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)を中心に雷のように分枝する光が放たれると、私たちは抵抗する術なく吹き飛ばされた。

 

 【ネメシス】はウィザードの第15階梯魔法で、半径30メートルに他者を寄せ付けない力場を発生させる。

 

 半径20メートル、高さ20メートルの柱の上でドンパチやっていた私たちは、30メートル先の空中に投げ出されるので、当然20メートル落下することになる。ニースは飛べるのでノーダメージだが、私は24点ダメージだ。

 

「あいた」

「大丈夫かっ!」

「それよか、ヤバいですよ……」

 

 移動してしまえば、天破断崖をもう一度打つことができる。

 

 攻撃が命に届き得る(上振れる)まで、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は戯れに賽を振れる。

 

 仕方がないので、少し近づいてブレス――はちょっとガス欠(ファンブル)――をしてから、ニースと私の体力をもう一度回復する。

 

「ここで待ちです、守りを固めましょう」

「ふっ、ふっ、ああ――【レジスト・ボム・土】」

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)が攻撃するとしたら、毒のブレスと天破断崖、もしくは天破断崖からの【ネメシス】――――

 

「ブレス!!」

 

 頭上で拡散した猛毒を可能な限り散らして侵食を防ぎ、劣悪な視界で唸る尾と翼の叩きつけを回避。

 

『どこまで耐えられる? いつまで致命を避けられる? まだあるのか? ワシに見せてみろ、力を! 天破断崖!!

 

 轟音。急速にせり上がる柱が天を突き刺した。範囲内の不運な建物が崩落し、舞い上がった瓦礫がばらばらと降り注ぐ。

 

 もちろん予測はできていたので、すぐに回復をするが、ニースの体力の減りがおかしい。今の彼女は物理攻撃なら30点までシャットアウトできるはずだが、それが機能していない。というか、変換の酒(コンバージョンセイク)の効果も使っていない。

 

「ニース!」

「ヘマを――がはっごぼッ!」

《防御し損ねた!》

 

 ウラエヌスの隙間から血が滴る。

 

 ニースが防御し損ねたということは、あぁ、疲労か。

 

 今回はプラス30点増で済んだ。それでも、HPをちょうど半分は持っていかれている。

 

 果たして、この疲労というものが、今後も30点のダメージ増で済むだろうか。

 

 保険として飲んでもらったはずの変換の酒(コンバージョンセイク)の効果も使用していない以上、正常な判断というものは期待できない。

 

「下がって! 【キュア・エクストリーム】!」

「まだッ! 私は生きている!!」

 

 牽制で振ったダイナペレクスが竜の胴体を傷つける。あと10回もやれば胴体部分は脅威ではなくなるが……そこまで戦えるかどうか。

 

 私に続いてニースも陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の身体を薙ぎ払うが――空振る。当たらなかったのではなく、目測を見誤って、攻撃そのものが失敗したように見える。

 

 私で言う所のファンブル(自動失敗)だが、恐らくはこれも疲労のせいだろう。

 

 一瞬、動作が止まる。

 

 私が呼びかけると彼女は我に返り、すぐそこまで迫っていた巨爪をウラエヌスの装甲で受け流す。首が頭ごと吹き飛ぶまで紙一重だ。

 

 私は狭い足場に振り下ろされた尾に鎧を掠めながら、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)のMPを確認する。

 

 天破断崖はMPを10だけ消費するので、打てるのはあと13回。耐えきれるか。

 

『【ネメシス】』

 

 分枝する光の力場に吹き飛ばされ、私たちは再度地上に落下。

 

 場が仕切り直され、【重金属粒界】の影響範囲から脱する。

 

「ニース、私が呼んだら来て」

「……っ!」

 

 この戦場の外を指差し、戦力外通告。

 

 彼女は今、事故死のリスクが高すぎる。

 

 幸いにも、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の翼はもう戦闘機動に耐えられないため、私の攻撃が十分命中する圏内だ。

 

 今なら、一人でも勝ち目がある。

 

「――――すまない!」

 

 彼女は体力回復の錬金術で私を回復し、戦場から高速で去る。

 

『味方に見捨てられるとはな!』

「言ってろ」

 

 勝つ見込みはある。

 

 ニースと共に片翼へ攻撃を集中させたお陰で、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の攻撃は十分避けられる程度にまで精度が下がった。

 

 私は少し前進し、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)を射程に収め――炎を噴く。

 

 この攻撃は、普通に考えれば届かない。

 

 20×20メートルの正方形の、対角線上に位置する私から、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)までの距離は28メートル近くある。そのため、射程25メートルのブレスで燃やすことはできない。

 

 私が"高さ"という法則をあからさまに無視しない限り。

 

 そう、真上から見たら、私たちは20メートルしか離れていないので、攻撃は届く。これが"高さ"を考えないという概念であり、敵との戦闘を簡略化するために私に適用された「ルール」だ。

 

 じゃあ1階でブレスを噴いたら100階の敵に届くのかって?

 

 常識的に考えて下さいよ、これは戦いを簡略化するためのルールなんですから、味方や一般人が居る上階や下階の範囲に意図せず効果が及んだりしないのは当然です。それに、常識的な範囲というものがあるでしょう。

 

 というわけで、地面を貫通(・・)して噴き上がる炎が全身の鱗を焼き、彼の竜は大きくのけぞった。

 

『グ……ッ!?』

 

 追撃の【ファイアボール】に(かぶり)を振って、こちらに真っすぐ飛び込んでくる。

 

『その力は何だ!? 見せてみろ! このワシに!』

 

 天破断崖!

 

 突き上がる大地の槍。

 

 三度(みたび)破壊が振り撒かれるが、変換の酒(コンバージョンセイク)でMPダメージに変換、HPを維持する。

 

「効きませんよッ!」

『グルルゥゥアアアッ!!』

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)が遮二無二暴れまわり、巨体で私を殺しに掛かるが、ダメージはほぼ無い。当たっても物理攻撃は7割遮断できる。

 

 そして再度【ネメシス】。

 

 私に何もさせないまま、天破断崖と【ネメシス】(吹き飛ばし)と落下によるループコンボで殺そうとしているのは明白だ。

 

 だが、肝心の【ネメシス】分のMPは後1回しか無い。ここをしのげば勝機は見える。

 

うおぉぉぉおおおおお(【灼熱の咆哮Ⅰ】)!!」

 

 炎のブレスと【ファイアボール】に焼かれ、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の翼が激しく焼け焦げる。

 

 飛ぶことはできる(HPゼロ)、というラインを大幅に越え、片翼の皮膜が弾け(HPマイナス)て血潮が噴き出した。陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は自身の翼に纏う金属装甲を支えきれなくなり、皮膜の破けた翼が根元からへし折れた。

 

『グ、ガァァァアアアアアア!!』

 

 単なる思い付きで、HPが0になっても炎で焼き続けたが、まさか欠損するとは。

 

 嬉しい誤算であることには間違いないが、岩山の竜は怒気と焦りを滾らせて飛び降りてくる。

 

『寄越せェ! 創世力さえあれば!!』

 

 なんだか分からないが、マジで私が創世力とやらを持っているらしい。知らんけど。

 

 そういうことらしいので、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)がなるべく逃げないように適当ぶっこいておく。

 

『奪ってみなさい! 私を殺して!』

『天破ァ!! 断崖ィ!! ――【ネメシス】!』

 

 岩で突き上げられ尻尾でぶっ叩かれて吹っ飛ばされて落ちる。

 

 合計88点ダメージ。

 

 素晴らしく強い。

 

 私は92点回復した。

 

 命中率がもう少し高かったら、こうは上手くいかなかった。ニースが居なければ、敵を殺す前に私が先に死んでいたのは間違いない。

 

『なぜ死なぬ! 斃れぬ!』

『ポーションと練技と錬金術と魔法ですよ、誰でも真似できます』

『そんな筈はないッ! 貴様の力は世の理を逸脱しているッ!』

『それが欲しかったんだろ? 来いよ、戯れてやる』

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は鼓膜が破れるかと思うくらいに絶叫し、最後の天破断崖を放つ。

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)からは、逃げてやろうとか、一回撤退しようとか、そういった及び腰な姿勢は一切感じられなかった。ただただ、私の中に眠っているらしい"創世力"を、恐ろしいほど貪欲な目で見つめている。

 

 執着心か、収集欲か、あるいは両方か。

 

 私から見れば自明の優勢であるが、彼にとってはそうではない。ヒト族を数値で見ることはできないし、私の恐ろしいまでの頑丈さに何かのカラクリがあると考えているのかもしれない。

 

 地面が隆起し、私たちは決戦のバトルフィールドに立つ。

 

 最早、どちらかの死がなければ、ここを去ることはまかりならぬ。

 

 私は命中率を上げるポーションを飲み干して、炎のブレスを主軸とした攻勢ではなく、恐竜黒戦斧(ダイナペレクス)による魔力撃の一撃を選んだ。

 

 陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の攻撃は、最早【キュア・エクストリーム】一回で事足りる程度の脅威でしかない。

 

 血風吹き荒れ、猛毒が充満する。

 

 魔力の篭った渾身の一撃を紙一重でかわされ、お返しに叩きつけられる爪や尻尾を弾き、皮膚に浸潤する毒のブレスに気合で抵抗する。

 

 恐竜黒戦斧(ダイナペレクス)で胴体を深々と切り裂いてやれば、今度は私の白磁のような首筋に牙を突き立ててきたが、これは皮膚を少し裂いただけに留まる。

 

 普通であれば皮膚ごと頭が吹き飛ぶところだろうが、この違和に気付いた陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)は悔しげに叫ぶ。

 

『ワシの目の前にッ……ある!! 間違いなくッ!』

 

 なおも果敢に抵抗する陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)であったが、再び炎のブレスと【ファイアボール】で――当たらなきゃ意味ないと思い直したのだ――攻め立て、身体中を焼き焦がす。

 

 全身の炭化した鱗や肉から血がどくどくと噴き出し、金属装甲の重みで潰れた骨肉から粘ついたリンパ液が垂れ、蒸発する。

 

 ヒト族には呼吸すら許されない高温と毒霧の中、一際強靭であったブラウンドラゴンは倒れ伏した。1000点と150点(ファンブル)

 

 およそ180秒にも及ぶ濃密な死闘が終わったが、まだ終わりではない。

 

 冥族軍が控えている。

 

 グレータードラゴンの討伐が何より優先されるものの、だからといって摘まめる経験点を放置するわけにもいかない。レベルがあと1高ければよかった、という技能が山ほどあるのだ。

 

 それに、120個あった3点魔晶石(使い切りMP3点)が52個まで減ってしまっている。

 

 ここは一つセールクスに恩を売って、何らかの代金を踏み倒したい。

 

「ユウラン!」

 

 どうしようかと思っていると、離れた建物の陰からニースが駆けて来る。

 

 兜の装甲がガシャガシャと畳まれ、素顔が露わになる。グレーの髪が汗ばんだ額や首筋に貼りつき、乱れていた。

 

 体力は回復しているようだが、気力というべきものがあまりないように見える。

 

 傷が治っても、失った血や集中力が即座に戻る訳ではない。

 

「すまない、君に……全てを任せてしまった」

《あぁ、生きててよかったぜ》

「はい、お気になさらず。次の火竜戦に備えて休んでください」

 

 ニースは少し伏し目がちに顔を逸らした。

 

「えっと、本当に気にしなくても大丈夫ですよ。翼を片方落とせて、相手もそこまで試行回数を稼げていませんでしたし、思っていたよりは楽に勝てました。本当に、翼さえどうにかできればまぁ……残りも普通に勝てるんじゃないですか?」

 

 両翼が揃っているだけで、命中と回避にプラス補正が入り、攻撃を当てることが難しくなってしまう。

 

 片翼のHPをゼロにすることさえできれば、あのグレータードラゴンどもの戦闘力は正直、大したことはないのではないか?

 

 もちろん、私たちを殺すための最善手は、初手【パーフェクト・キャンセレーション】である。防護点も多数の特技も消えてしまうので、それをやられるとかなり苦しい。あと2体で来ることも無理。

 

 ただ、それをできるか、という点が問題だ。攻撃の通りが悪いことに気付くのは、勝負の序盤を越した後。その時にMPが残っているかどうかは運だが、パフェキャンのような守りに入る選択肢は、まぁ彼らの性格上難しいのかもしれない。

 

「とにかく、冥族軍を潰してくるので休んでいてください。また市役所の会議室で会いましょう」

 

 話を強引に切り上げて、【フライ】でセールクスの北部に展開している冥族軍のもとへ飛ぶ。

 

 現在時刻はだいたい20時35分。

 

 やだ、セールクスに着いてから20分しか経ってない。

 

 現在時刻は20時45分。

 

 237体の冥族軍は壊滅した。

 

 まだ戦闘は始まっていなかったので、ちょっと城壁の兵士の人に断りを入れて、地下洞窟の出口で軍の統制を行っている最中の冥族を襲った。

 

 なし崩し的に冥族軍のセールクスへの攻撃が始まったが、経験点は5990点ほど稼げた。打ち漏らしも少々出たが、大物は全て仕留めた。

 

 セールクス市役所の会議室に戻ると、ブラウンドラゴンを倒したことで依頼達成扱いとなり1000点と1の能力値成長を得た。

 

 現在、使える経験点は8970点。

 

 消耗品の補充もあるので、報酬代わりの現物支給という形で、約5万Rほどの物資を融通してもらった。

 

 物資を集めてもらっている間に、ニースと会議をする。

 

「昼の時点では、アクマハン近郊にレッドドラゴンが確認されていました。ブラウンドラゴンの進撃の早さから考えるとアクマハンは既に墜ちているでしょう」

「……ああ、恐らくは」

 

「不幸中の幸いですが、敵は炎の使い手です。町に対する大規模な破壊はさぞ目立つでしょう」

 

 時間帯は夜。ブラウンドラゴンのようなデタラメな方法がない限り、町は燃えていると予想できる。

 

「考えるべきは、敵の周到さです。"三獄頭"を追い出して支配領域を乗っ取っていたことから、この侵攻計画はかなり念入りに練られていたと推測できます。ここまでは、大丈夫ですか?」

「ああ、異論はない。突発的な攻撃にしては、セールクスまでの到達が早すぎる」

 

氷獄蒼竜(ゼースィルカイダス)を倒した翌日の昼前には、万緑翠竜(ワークンフジャルガ)がテンシライに飛んできて、侵攻が各地で始まってました。事前に攻撃計画が練られていたと考えると、レッドドラゴンにどうやって攻めさせたい(・・・・・・)かを考えるのが正道でしょうね」

「レッドドラゴンを……攻めの駒として、六色同盟がどう使うか、ということか?」

 

「はい。ぶっちゃけ、戦力的には、どの竜をどこに配置しようが変わらないと思うんですけど……」

 

 パワープレイ、ごり押し、それだけで容易く人類の領域を削り取ることはできる。

 

 だが、陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)の侵攻は恐ろしく早く静かであった。風と火の竜が要衝の砦付近で騒ぎを起こしたのに対し、地の竜は小さな町を潰しておきながら、セールクスの被害は最小限であった(その時点でぶっ殺したせいかも知れないが)。加えて、冥族軍を連れていたことから、占領目的であった可能性は高い。

 

 それに、六色同盟が私の"創世力"とやらを目的にしている可能性も浮上してきた。

 

「風と火の竜は耳目を引き付ける役割があったのかと思います。であれば、レッドドラゴンはシムロンに直行するルートを取る可能性が比較的高い、そうは考えられません?」

「…………分からない、だが、ユウランが言うならそうなんだろう」

 

 なんだか投げやりだ。疲労も溜まっているようだし、頭が回っていないんだろう。

 

「ウラエヌスはどうですか」

《悪ぃ、軍略はさっぱりだ》

「私もですけど……」

 

 こいつは300年間何をやっていたんだ。

 

 ……いやまぁ、物だし、時間感覚的には長命種なのか?

 

 エルフみたいなもんだと考えれば、あまり成長が早い方ではないのだろう。

 

「まぁ、とりあえず、シムロンからアクマハンへの街道を南下して、海沿いの街を確認しましょう」

「あぁ……」

「ニースが疲れていることは理解しています。片翼を落とすか、私が合図するまでは戦ってください」

「死力を尽くそう」

「役割分担って奴なので、まぁ気にしないで下さい。私ってタフですから」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 現在時刻は21時45分。

 

 到着予定時刻は22時55分~23時20分頃だ。

 

 空を飛んでいる間に、経験点を消費して成長を済ませる。

 

 竜血法師(ドラゴンレゾナンス)技能をレベル7にして、竜回帰(レゾナンス)【灼熱の咆哮Ⅳ・陽炎】を取得。これは発動中、命中力+3と物理ダメージ+4の効果を適用し、戦闘中の自身の命中判定を1回だけ命中力+2にできる。

 

 それから、コンジャラー技能をレベル9にして、無限魔法で防御力を上げる。

 

 ついでに魔法機術(マギテック)技能を新たにレベル1で獲得し、これも無限魔法で命中力+1の補正を得る。ただ、これは装備枠を一つ圧迫するので、必要のない魔道具と取り換えた。

 

 攻撃能力に重きを置いたのは、当然次の敵が火竜であり、殴り合いにおいては防御に重点を置く必要性が今以上には無いと考えたからだ。

 

 いま、ニースは激しく消耗している。

 

 片翼さえ落とせれば、勝てるであろう相手だ。そのためにはニースの戦士としての技量が必要不可欠だが、彼女は疲労で、攻撃や回避、抵抗に支障をきたす場合がある。

 

 仲間を死なせず、敵を殺すには、やはり暴力が必要不可欠だ。

 

 私が恐竜黒戦斧(ダイナペレクス)を振る時は、武器の重さや重心によって精確な攻撃を見舞うことが阻害されてしまう。なので、威力と引き換えに命中力は低いのだが、今回の成長はそれを補う形となる。

 

 つまり、ニースが離脱した後、速やかにレッドドラゴンを倒すためだ。

 

 そうして飛んでいると、地平線の向こうに明かりが見えた。

 

 煌々と光り――――燃え盛る街の姿が浮かび上がる。

 

 街の真ん中にある大きな影が動いた。

 

 それは逆光でシルエットしか見えていないが、翼を広げ、こちらを見たような気がした。

 

 私の中の火竜の血が疼くような、不思議な感覚がした。

 

 心がざわめき、身体じゅうの体温が上がり――炎を纏っているかのように熱くなる、そんな偽りの感覚が迸った。

 

 間違いなく、あれは火竜(レッドドラゴン)

 

 私と同じ火を噴く竜だ。

 

 二つの火が交われば、生き残るのはより強い炎。

 

 近づけば近づくほど、火の半分を拒絶するこの身を焦がすように強く、彼の竜は輝き燃え盛っていた。

 

 




"陸崩茶竜(ディゼルガノルズ)"のステは活動報告へ。

 

ユウラン・アルシップス 冒険者レベル13 経験点254500+470

 HP122+19+30 MP181

 ファイター技能レベル13 ソーサラー技能レベル12 コンジャラー技能レベル9

 フェアリーテイマー技能レベル6 プリースト技能レベル13

 スカウト技能レベル9 レンジャー技能レベル9 セージ技能レベル5

 エンハンサー技能レベル7 アルケミスト技能レベル7 ドラゴンレゾナンス技能レベル7

 器用度33+6 敏捷度32+6 筋力35+6 生命力45+6 知力49+6 精神力50+6

 レベル取得:<<魔法拡大/数>> <<魔法拡大/すべて>> <<マルチアクション>> <<頑健>> <<足さばき>> <<魔力撃>> <<クリティカルキャスト>>

 魔法取得:<<武器習熟A/各種>> <<防具習熟A/非金属>> <<防具習熟A/金属>> <<防具習熟A/盾>> <<回避行動Ⅰ>> <<ターゲティング>> <<両手利き>> <<ブロッキング>> <<魔法収束>> <<鷹の目>> <<魔法制御>> <<MP軽減/各種>> <<武器習熟S/各種>> <<武器の達人>> <<命中強化Ⅱ>>

 脱法取得:<<必殺攻撃Ⅱ>> <<牽制攻撃Ⅱ>> <<全力攻撃Ⅱ>> <<薙ぎ払いⅡ>>
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