私のキャラクターシートにはおちんちんが足りない   作:傘花ぐちちく

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はい、まんまです
これがやりたかった


第三話「運命と鋼鉄の戦士」

 

 30分程掛けて体力(HP)魔力(MP)の回復を済ませ、死体と機械から換金できそうなものを探す。

 

 幸いにも、ユウランがブレスで死体を焼いたため、アンデッド化について心配する必要はない。

 

「こんなゴブリンが持ってる武器、本当に持って帰るの……?」

「鉄ですし溶かせば使えるんじゃないんですかね。なんにせよ、金にする人がいるので持ち帰ります」

 

 レミは煤と血肉に汚れたナイフをつまみ上げ、布の切れ端で少し拭いてから小袋に入れる。

 

 売れそうなものを詰め終わるとユウランはジャラジャラと小袋を揺らし、機械の部品や魔法の刻まれた弾丸などを合わせて605Rの収益になると勘定した。

 

 得られた経験点は倒した敵の分だけで140点。

 

(同格相手はリスクの割にリターンが少ない。もう少し私が強ければカモにできるんですが……)

 

 今の敵を7セット倒すだけで依頼一回弱分の経験点が手に入るが、そのような危険を冒すくらいなら簡単な依頼を一つ受けたほうが良い。格上と死闘を演じるなど、ソロでは愚の骨頂。格下を沢山殺戮するほうが効率はいい。

 

「さて……」

 

 臀部の埃をはたき落としながら意識を切り替える。

 

 剥ぎ取ったら、次は探索だ。

 

 敵を排除したので、今までよりも大胆に動ける筈だと推測を立てた。いま居る大部屋までの道中で通過した部屋――つまり後背の探索よりも、現在地の探索を優先することにした。

 

「そうはいってもねぇ……この魔法機械が入っていたっぽい場所しか無いんじゃない?」

「コレばかりは魔法機器文明の知識がないといけないでしょう。この機械を弄れば……」

 

 ソルトとガダムの両魔法機器が入っていたであろう格納庫が左右の壁に3つずつ空いているが、肝心の中身は破壊された2体しかいない。他の格納庫は冥族たちのトイレや寝床になっており、レミはそちらを見るや鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 

 ユウランが指し示した機械は、その生活感あふれるスペースの丁度真横にあった。

 

「このATMみたいな機械が……あー、まぁ、とにかくこの機械で色々操作できるみたいです」

「色々って?」

「説明すると長くなるので省きますが、この部屋にある魔法機器を遠隔で操作して……きた! ビンゴですね!」

 

 「ビンゴ……?」と怪訝な顔をするレミを脇に、格納庫横の小さな扉からカチャリと錠の開く音がした。

 

 警戒の後に立ち入ると、小部屋に繋がっていた。

 

 人が三人も入ればやや窮屈な程の狭さだ。というのも、そこには人が一人転がって(・・・・)いた。

 

「あっ……!」

「南無」

 

 ミイラの首をメイスで潰してから、部屋の中を物色する。

 

「これはIDカードですかね? あとはメモに……うーん、劣化が激しいですね」

「ねぇ、なんて書いてあるの?」

「こっちのカードは……うんにゃら研究所所長ですね、肝心なところが読めません」

「じゃあそっちの方は?」

「こっちの手記は……『私も長くな、生き埋めになっ、電源と空調をンって、娘と、研究は破棄し、開拓神の加護ぞあらん』」

「何言ってるの?」

「読めるところだけを読みました」

 

 大した情報はありません、と手記を机において他を漁るが、目立った収穫はなし。

 

 探索を切り上げて、見落としてきた部屋の方へ戻る。

 

 2、3部屋はあったが、収穫はなし。

 

 しかし、最後のひと部屋にはあった。

 

「これは……」

「外への穴?」

「…………でしょうね。奴らはここから入り込んだ?」

 

 部屋の入り口の真正面の壁に空いた大きな穴。そこは真っ暗な洞窟へ繋がっており、迂闊に踏み入れば戻っては来られない予感がする。

 

 微かにだが風が吹き込んでいるので、外へ繋がっているとは推測できる。

 

 もっとも、この穴から外を目指すのは至難だろう。本格的な地下探索の準備をする必要があるし、ほとんどソロではやってられない。

 

 ジッと辺りを観察していたユウランは、後ろに下がりつつ呟いた。

 

「……これ以上の調査は危険ですね、引き上げましょう」

「えっ、どうして?」

 

 静かにするようジェスチャーをして、有無を言わさず、音を立てないように部屋を立ち去る。

 

 ズンズンと遺跡から出て一息つくと、戸惑うレミに事情を話しながら、リスティル市への道を急ぐ。

 

「あそこは冥族の"巣"です。色々と疑問はあるでしょうが、さっさと逃げないと追われた時に後悔しますよ」

「え、ちょっ、何の冥族!?」

「マシナルエイプ、魔法機術(マギテック)で銃撃してくるので鎧でダメージを軽減できません。一体ならともかく、複数体に囲んで棒で殴ら(リンチさ)れたら死にます。追手が来ないことを祈って下さい」

 

 それから二人は何も言わずに足を動かした。

 

 追ってきているのかも定かではない、幻の敵から逃げるために。

 

 しかし、長時間に及ぶ遺跡探索と戦闘による精神的疲労からか、レミはもう息も絶え絶え。歩くペースが明らかに落ちていた。

 

「……背負います。落ちないように捕まって下さい」

「え、ちょっ!?」

 

 武器防具に戦利品を合わせれば、ユウランが背負う重さはゆうに100kgを越えるだろう。

 

 しかし、彼女の特異性からそれらは全て無視される。

 

 約10秒で70mを走り続ける(・・・)速さは異常なものと言って差し支えないだろう。

 

 が、所詮はヒトの速度。二本足で出せる程度のスピード。

 

 馬や機械とは土台が異なる。

 

 魔法機器文明期に作られた"バイク"ならば易々と追いつけるし、ユウランももちろんそれを想定していた。

 

 足跡の付かない硬めの路に変わった辺りで脇にそれ、道なき道を進んでいく。とはいえ轍はできる。草木をかき分ければ音も立つし、丘から見下ろせば居場所もすぐに分かる。

 

 ユウランが振り返れば、遠い路に黒い点が見える。

 

「……急ぎます」

 

 速度は変わらないが、レミを背負う力を強める。

 

 地理に明るければ村の方へ寄ったかもしれないが、慣れない土地で脇に逸れれば路を見失うのは道理だった。

 

 時折、頭上から水袋やドライフルーツが提供されるので英気を養う。振り返れば追跡者の影は無かったが、事態が動いたのは夜になって日を跨いでからだ。

 

 寝息を立てるレミを背負ったユウランであったが、風のささやきに混じって魔法機器の駆動音が聞こえてくる。

 

 それは遠ざかることなく、近づいてきている。

 

「起きなさい、敵です」

「……ん、敵?」

「避けがたい、恐らくバイク――機械の乗り物に乗ってます、やりたくありませんが出たとこ勝負でいきますよ」

「私はどうしたら……」

「下がっていなさい、できれば見つからないように静かに、遠くへ」

 

 ユウランが時速に換算して24kmであるのに対し、バイクは40から50kmは余裕で出している。今から目立たないように隠れるとなると、虱潰しに捜索された場合すぐに見つかる可能性は高い。

 

 なので、わざと目立つように、レミとは反対方向へ歩く。2,3分もすれば魔法機器の主が姿を表した。

 

 背中が湾曲した猿のような見た目をしているが、肉体の一部が義眼や義手といった機械に置換されている。背中からは機械の両腕が生えており、生きているかのように滑らかに動く。

 

 マシナルエイプだ。それが二体、小さめのバイクに乗ってユウランたちの行方を探している。

 

 彼らが踏み倒された下草の跡を見つけると、不意に風が吹いた。

 

 揺れる草原がヒト族と冥族の、両者の視線を繋いだ。

 

 赤い信号弾が上空へ打ち出され、マシナルエイプたちはバイクを駆り猛然と迫り来る。

 

 ユウランも竜化を済ませてメイスを構え、二種のエンハンサー技能によって身体強化、敵に向かって走る。

 

 先手を取ったのは彼女だ。

 

 衝突の危険をものともせずに振り下ろした一撃はマシナルエイプの肩を強烈に打った。バイクに激突することなく交叉し、二体は彼女に向き直る。

 

 打たれた方は痛みも衝撃もまるで感じないかのように無表情のまま、機械の両腕に持った二丁の銃で魔法の弾丸を打ち出す。

 

 計四発の弾丸が迫るも、一発が当たったのみで他は回避せしめた。

 

(よし! 出だしはいい、ここからが本番!)

 

 ユウランは大きく息を吸い、炎のブレスでまとめて二体を――不発。

 

 喉に何かが詰まったような、戦闘における致命的失敗(ファンブル)を冒して、不発になった。

 

「ぐっ……!」

 

 そのまま無詠唱で【ブラスト】の魔法を発動、魔法に抵抗されたものの、肩を撃ってきた方にさらなる衝撃を与えた。そちらはあと一歩で倒せるだろう。

 

 敵の反撃を生き延びることができれば。

 

 二体はバイク同士が激突しない程度の距離まで接近、彼女を掠めるような体当たりを敢行しつつ銃弾を放つ。

 

 バン、バン!

 

 体を捻って回避するものの、二発の魔法的エネルギーがユウランに流れ込む。

 

(っ! 危ない、もう一発喰らっていたら死んでました)

 

 危ないが、生き残った。

 

 背筋に寒いものを感じつつ、ユウランは再び炎のブレスを吐き出す。すでに傷ついていた方は絶命し、バイクから転がり落ちた。

 

 もう一方に追撃は加えず、【アースヒール】の魔法で大地から力を組み上げて体力を回復する。

 

(これで一発即死圏内は抜けました。あとは避けるだけ……!)

 

 最後の対峙。マシナルエイプは表情を変えずに弾丸を放ち、ユウランはそれを――見事に回避した。

 

 メイスと【ブラスト】で始末し、戦いは終わった。

 

「はぁ、はぁ……勝った……」

 

 彼女はリュックサックを放棄して無限収納布袋に二台のバイクを詰め込みたい欲求に駆られたが、ぐっと我慢する。冥族が使ったこの"ミニバイク"は買えば3000Rはする代物で、二つ纏めて売れば一台分くらいにはなっただろう。

 

 普通の街のライダーギルドに寄れば、バイクを簡単に持ち運びするための道具が売っているが無いものは無い。

 

 場所を覚えておき、伝えるだけ伝えてミーリーンたち自警団に回収してもらうのが一番だ。

 

 それから【コールピクシー】でノッカーを呼び出し、【ヒールウォーター】でHP回復効果のある水をコップに注がせる。体力を全快させて還すと、レミを呼びつつ思案する。

 

 剥ぎ取りは時間がかかるのでやらないが、報告のため義眼を乱暴に抜き出す。壊れてしまっているので、大した価値は無い。

 

 経験点はマシナルエイプと機械腕の二部位×50点で計200点も貰えた。

 

(多部位マジお得ですね……強くなったらこういう巣を潰して回るのもいいかも)

 

 レミを再び背負い、同じように強行軍を続ける。

 

 しばらくすると、また同じ様な駆動音が聞こえる。

 

 今度はもっと速い。

 

 本隊か。

 

 先の激突が前触れでしか無いことは、戦いの前に打ち上げられた信号弾から容易に推察できる。

 

 数が増えるか質が上がるか、あるいは両方か。

 

 叶って欲しくない事というのは大抵の場合悪い方を引き連れてやってくるのである。

 

 マシナルエイプの戦士階級――テイルエイプ二体が先程と同じ斥候を二体連れてやって来た。テイルエイプとマシナルエイプの違いは機械製の尾部であるが、「データ」的にはテイルエイプの方が2レベル高く、部位も一つ増えている。

 

 まともに戦って勝てる見込みは無い。

 

 ユウランが先に気づけたのは運だが、見つかるのは時間の問題だ。

 

「……いいですか、私が囮になります。その間に洞窟か、深めの穴でもいいですので探して隠れて下さい」

「でも、そしたら――」

 

 ユウランはレミの肩を掴み、軽く叩いてから押した。

 

 彼女はその決意に水を差すことはできず、去っていった。

 

(……勝機があると言えばあります。かなり綱渡りな上に、相手の行動次第で後がなくなるような策ですが)

 

(【マナ・アブソーブ】、【スペルエンハンス】)

 

 ユウランの放つ魔法の光で、敵にとうとう見つかる。

 

 彼女の頭の中で賽が振られる。先手は取った。

 

(距離100(・・)倍、数4倍拡大【スリープ】!)

 

 ユウランの【スリープ】はバイクに跨っていた冥族の魔法への抵抗に負けず、精神に作用して眠りに就かせた。

 

 100mほど先に居た4体はバイクから滑り落ち、寝息を立て始めた。

 

 戦闘終了である。

 

「か、勝った……」

 

 さて、当然のことながら、【スリープ】の魔法は10mの射程しかなく消費MPも5と現段階では多い。距離や対象の数を増やせば増やすほど、その分のMPが掛かり、今回の場合であれば400倍――実に2000ものMPが必要になってくる。必要最低限に絞っても40倍の160である。

 

 ヒト族の身で道具もなしにこれだけのバカでかいMP消費を担うのはほぼ不可能であるが、これはクソみたいな「ルール」解釈によってひねり出された反則的手法によって成し遂げられた。

 

 問題のインチキのタネは【マナ・アブソーブ】にある。この魔法はMPを消費する際に「消費MPを倍にする」代わり、HPが回復する。

 

 つまり、常人の解釈であれば2000のところ4000のMPが必要になるわけだが、消費MPを"倍"にしたのである。

 

 元の魔法の、2倍。

 

 つまりMPが2000必要なところを10で済ませたのである。

 

 ドラゴンソードTRPGの新たなシリーズでは訂正されているが、ユウランが適応している「ルールブック」の範疇では文章が訂正されていない。訂正されていない版を採用しているのだから当然の話であるが。

 

 ユウランのこの"データ"の異能における特異な点は、二パターンの解釈ができる文章があれば都合の良い方を採用できることだ。故に反則的(・・・)手法なのである。実際のTRPGでこのようなゴネ方をすると間違いなく友人を無くすであろう。

 

(ぶっつけ本番で使えなかったら死んでましたけど……まったく冷や冷やしました。それに、レミさんには見せられませんしね。ともかくこれで620点は美味しいですね)

 

 今回は運が味方をした形になる。

 

 先に敵を発見できており、なおかつ射線が通っており、魔法も3回までは同じことができた。試行回数を稼ぐための

 

 先の遭遇では至近にまで迫っての戦闘であったため、【マナ・アブソーブ】を発動する機会がなかった――というより意味が無かった――ので、今回初めて使うことになる。

 

 とはいえ、無限に拡大できるのは、魔法の効果対象の数と効果時間、射程だけなので、無限に攻撃力を高めたりはできない。

 

 ユウランは素早く「とどめ」と死体の損壊を済ませ、大声でレミを呼び――

 

 ――ズドン!!

 

『助太刀は必要か?』

「は、え、あい?」

 

 空から巨大な猛禽が――否、黒い甲冑の騎士が降ってきた。

 

 背丈は2mに近く、声はくぐもっており中性的。兜は猛禽の嘴を思わせるような鍔が特徴的で、大きな肩甲が二枚重ねられたせいで首が見えない。マントのせいでシルエットが膨らんでいるため、ユウランは巨大な梟だと思い肝を冷やした。

 

「戦闘自体は、ええ、終わっています」

『そうか。信号弾が見えたものでな、このあたりを少し飛んでいた』

「飛ぶ? はぁ、まぁ、えーっと、どちら様で?」

『私は"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"、その45代目だ』

「……?」

 

 こんな公式NPC居たかなぁ、と思うと頭の中で賽が振られる。

 

 "運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"は約300年前から冥族狩りを続けている、梟に似た鎧の戦士である。代替わりがされているものの、事実かどうかは誰も知らない。

 

 国家や特定の集団には属しておらず、ただ冥族を根絶やしにすることをのみ目的にしている。

 

 多くの詩が作られており、冒険者になった切っ掛けがそれであった者も少なくない。

 

 その名声は随一。

 

 君主の名を知らない人物はいるかもしれないが、この称号の者を知らない人物はほとんど居ない。桃太郎のようなものだ。

 

「……超有名人じゃないですか」

「――ユウラン! ユウラン無事!?」

 

 息せき切って現れたのはレミ。

 

『……これ以上は居ないな?』

「ええ、いません」

「……? その人、は?」

『わざわざバイクに乗ってまで追ってきた冥族がいる以上、君たちを護衛しよう。事情は道中で聞くが、目的地は?』

「リスティルまで、助かります」

『奇遇だ、同じだよ』

 

 当惑するレミを尻目に、一台のバイクを押しながら再び道中を急ぐ。

 

 長い道中、その沈黙に耐えかねたレミは眠ってしまった。

 

『しかし君たち、子供だけか?』

「成人済みです」

 

 半分嘘だが、ユウランは答えた。

 

「彼女はレミ、リスティルの自警団見習いですね。依頼で遺跡調査に赴いていました。あなたは何故リスティルに?」

『ああ、リスティル北部で冥族の軍勢が発見されたと連絡があって、首都から飛んできた、君も冒険者なら招集の連絡が来るだろう』

「……なるほど」

 

 リスティル以北には目立って大きな都市は無い。防衛能力もそれなりだろう。

 

(戻ったらすぐに支度をしないといけませんね)

 

 次なる戦いの予感に心を踊らせながら、帰路についた。以後は襲撃もなく、無事にリスティルまでたどり着くことができた。行きに三日かけた行程は二日半ほどにまで縮まり、夕方ごろにはミーリーンの待つ若葉の羽毛亭に到着した。

 

「戻りました、ミーリーンさん」

「あら、早かったネ。今代(こんだい)さんもいらっしゃい」

 

 カウンターに腰を落ち着け、差し出された果実水(有料)を飲み干す。少しやつれた様子のレミを見て、エルフの店主は視線で説明を促した。

 

 ユウランは遺跡での戦い、冥族の侵入と巣の痕跡、そして追跡を受けて撃退したことを伝える。

 

「だから今代さんが護衛したのネ」

『遅れてすまないが、こちらも無視はできまい』

「そーね……帰って早々だけど、ユウランちゃんに依頼があったら受ける?」

「ええ、ものにもよりますがね」

 

 レミはもううんざりしたような顔だ。

 

 話を聞く前に、まず報酬の精算を済ませる。遺跡での剥ぎ取りとバイクの買い取りで2105R、報酬が2500R、情報により追加で2000Rだ。レミが剥ぎ取りやバイクの分を固辞したので、合計で6605Rになる。お金をしまい、素早く技能の獲得を済ませる。

 

 経験点は錬金術師の技能に注ぎ、防御力上昇と敵の回避率低下の技を会得する。

 

 消耗品の補給について考えながら、ミーリーンの方へ向き直る。

 

「それで、依頼とは?」

 

 ミーリーンの話はやはり、北部で侵攻を始めた冥族についてだ。

 

「リスティルから歩いて三日ほどの都市で、二日前に冥族の軍勢が確認されたノ。昨日にはココからの援軍が出発してますネ。敵本隊の到着は今日の夜……今頃デス」

 

 

【挿絵表示】

 

 

『私は詳細を聞いている。すぐにでも出発したいが……ユウラン君のような魔法戦士には是非来てもらいたい』

「ええ、断るつもりは毛頭ありません。前衛としての能力はあまり優れていませんがね。消耗品の補充だけでもしたいのですが……」

 

 ユウランの経験点稼ぎのスタイルは弱い者いじめが基本である。自分よりも弱い冥族を沢山殺し、依頼を山ほど受けて荒稼ぎする。激しく消耗する戦いはあらかじめ避ける方針なのだ。

 

 なので、今回の逃亡劇のようなギリギリの――ゲームであればよくあるような――戦いは全くもって想定されていない。

 

 資金不足も原因の一端であるが、流石に無警戒が過ぎた。

 

「それなら、お店にちょっとだけ在庫があるワ。手持ちの分で良ければ売りますヨ」

「では、3点魔晶石を10個と植物原素のBランクを30個、アルケミーキットに剛力の腕輪を」

「……うーん、あったカシラ?」

 

 パタパタと奥に引っ込むミーリーンを見送る。待ち時間の間に不要な荷物は全て自室に放り込み、身軽になってから4800Rを出しておく。

 

「……ねぇユウラン。まさかそれ全部使うの?」

「そうですよ?」

 

 30Rあればそこそこの暮らしを一日できるし、質素倹約に努めれば生活費を一日10Rにまで抑えることもできる。

 

 その何倍もの額をあっさりと一回の買い物で消費する行為はレミにとって異様に映った。

 

 とはいえ冒険者とはこういうものである。

 

 それから、表に出てきたミーリーンに物資を不足なく提供してもらい準備は完了。

 

 報酬はユウランの場合3500Rが基本になり、撃破数や活躍に応じて追加されるという。概ね相場通りの価格であり、彼女もそれに納得した。

 

『では、往くとしよう』

「……一応聞きますけど、今から歩いて行く気ですか?」

『まさか、最初に言っただろう? 飛んできたと』

 

 外に出るや、抵抗する間もなくユウランは抱えられ、宙に浮き、凄まじい速度で空を飛び始めた。時速にしておよそ60km、今代曰く一時間と十分程度で着くという。

 

「まさか、個人で空を飛べる魔法機械だったなんて驚きですね」

『その割には反応が薄いような……』

「暴れたほうが良かったですか?」

『いや……ん? ……なんでもない』

 

 お互い無駄口を叩かない人間なようで、会話もなくあっという間に目的地付近に辿り着く。

 

『見えた。篝火だ、冥族の姿が見えるか? 私は敵陣に斬り込むが……』

「敵の全容も見えませんので、門の上にでも降ろして下さい、上からちまちま魔法でも打っておきます」

『む、君なら前線でも戦えると思うが……』

「馬鹿言わないで下さい。連携できない未熟者が居たってタコ殴りにされるのがオチです」

 

 やがてユウランの目にもはっきりと自陣営の姿が見えるくらい距離が近づく。

 

 障害物で隘路を形成した門の前に盾と槍を構えた兵士が詰まっており、押し寄せる冥族を押し留めていた。シャットマンやゴブリンなんかの冥族がその壁を突破しようと得物をガンガンと突き出し、叫びを上げる。門の内側には冒険者たちが控えているが、街に被害が出るのも時間の問題だ。

 

 門扉の上では弓兵や魔術師、冒険者が遠距離攻撃を仕掛けているが、空を飛べる冥族シューラ――ヘビの様な細長い胴体に鉤爪のついた足とコウモリの様な翼を持つ――の攻撃によって乱戦状態になっている。

 

『突っ込む。不意を取られるなよ』

 

 その言葉の後にはもう敵は眼前。

 

 弓兵を襲っている2体のシューラの真後ろに――ダメージを受けない程度の高さから――投下された。

 

 頭の中で賽が振られる。

 

 不意をつけたため、無条件で一行動が可能に――ユウランは手番を消費せずに発動できる自己強化「練技」で回避力と防御力を高めると、植物原素の錬金術"パラライズ"で片方のシューラに麻痺をもたらす。

 

 ここで敵はやっとユウランの存在に気づいたが、まだ彼女の"手番"だ。竜化し、メイスを胴体に叩き込んだ。

 

「距離を取りなさい! こいつらは私が引き受ける!」

「クソ! ニンゲンメ!」

「ありがとう!」

 

 続く手番で樹皮の硬さをもたらす"バークメイル"の錬金術で自己強化を済ませると、メイスの追撃で片方を始末する。

 

 残ったシューラは最後の抵抗とばかりに爪や牙で攻撃を仕掛けるが、ほとんどダメージにはならず殴り殺された。

 

(2レベルの雑魚でしたが、"データ的"には少し強化されてましたね。こういうのも居るんですか……経験点的には不味いので当たりたくないですが)

 

 門の上に侵入した冥族の数は少なく、5レベルの冥族も居たが、ユウランが前衛に立ち、他の兵士の援護を受けることでこれも難なく撃破。140点の収穫となった。

 

 空の脅威を一掃したことで門前の支援ができるようになったが――

 

『勝鬨を上げろッ!!』

 

 ――既に勝負は付いていた。

 

 "運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"の足元には両断された死体が数多転がっており、逃走しようとしたであろう冥族も残らず千切れ飛んでいる。

 

(60体は居たはず……こっちは15ラウンド掛かったから、1ラウンド平均で4体始末した? やはり高レベル戦士は凄まじい)

 

 門での戦闘が終わると、ユウランと"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"は指揮官の下へ訪れた。

 

『遅くなってすまないが、要請に基づいて助太刀に来た。冥族はこれで全てだろうか』

 

 仮設テントに乗り込んで開口一番、今代は自己紹介もなく言い放った。

 

「んおっ、おお! ありがたい! 名高き"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"にまた会えるとは」

『そうか。それで、敵は?』

「先の襲撃――威力偵察でしょう、こちらの斥候の見立てでは1/3程を割いている見込みですな」

「だいぶ削れましたね」

 

 ユウランが口を挟むと、指揮官のエルフ男性は周囲をキョロキョロと見回してから視線を下ろした。

 

「どうも、この人に連れられてきた援軍です。リスティルからの第一号ですが、行軍速度の違いから他は通常通りの時間で着くと思われます」

「あ、ああ……レプラコーンか?」

『彼女は優秀な魔法戦士だ。腕前は十分ある』

 

 ヒトの半分ほどの背丈で姿を消せる種族――レプラコーン――だと思われている。しかし、魔法が使えるとなると目に見えて評価が変わった。

 

「それはありがたい! 女性用の休める場所に案内しよう、それと魔晶石の支給があるので時間がある時に行ってみてくれ」

 

 ユウランは礼を述べてから、"運命(さだめ)鋼鉄(はがね)の戦士"を残してテントを去った。

 

 支給は魔晶石5点が2個、およそ1000Rになる。ユウランは第6階梯の魔法を使えるため、希少性はそれなりだ。

 

 割り当てられた部屋で、ユウランは休む間もなく準備に取り掛かる。

 

 冥族の脅威はまだ去っていないが、次の攻撃までには時間が空くと予想してのことだ。

 

 ユウランは【ファミリア】の呪文で蛙と契約を済ませ、外付けMPを確保。契約を遅らせたのは、単純に3系統の魔法が使えると知られたくなかったからだが、この期に及んではそうも言っていられない。

 

 夜も深くなったところで――バフの時間に入る。

 

 【マナ・アブソーブ】で消費MP倍化を済ませると、【バイタリティ】【スペルエンハンス】【プロテクション】【カウンターマジック】と強化呪文を自身に掛けた。倍率は時間を5000兆倍にまで拡大。実質無限である。

 

 それから就寝に入った。

 

 《烙印》が多く粗暴で力こそ全て――そういった考えの者が多い冥族にしては、積極的な姿勢を見せなかった。

 

 その理由が判明するのは、次の日になってからだ。

 




鎧の戦士だって……?
さぞ屈強な男に違いない(確信)

メインキャラが男なわけねぇだろバーーカ!!

タイトル、もっとキャッチ―な方が良い?

  • ちんちんはやめろ
  • 主人公の属性押し出せ
  • そのままでいろ
  • なろうみたく長くしろ
  • 副題付けろ
  • もっと中二病にするとかさぁ
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