『セイクリッド』
十二星座から生まれた星の戦士。別に食いしん坊じゃない。
ただ、そこには蛇使い座や、双子座といった特殊な者もいるので、実際には十四人いる。
放課後・勇者部部室
私達の夏休みも終わって、二学期が始まりました。また忙しい学校生活の始まりです。
そして…
「これは……、私たちの端末……。どうしてこれが、ここに?風先輩」
「バーテックに生き残りがいて、戦いは延長戦に突入した…」
勇者としての戦いも再開する事になりました。
「戦いが…まだ…続く……」
「……!」
私がその言葉を言うとそれが合図だったようにレオニスが実体化した。最近あんまり話さなかったから心配だったけど、大丈夫そうで良かった。あ、東郷さんすごい睨んでる。
「本当…いつもいきなりで…ごめん」
「別に勇者様は悪くない。悪いのは芽を見逃した僕らさ」
ポルクスが当然のように話に入ってきた。まあ、ここ部室だからいいんだけどさ。
「そうだ。その償いを今度の戦いでさせてくれ」
カウストさんはいつも通りだね。
「ま、誰が悪いかはともかく、そいつ一体倒せばもう終わりでしょ。生き残りくらいどんと来いよ」
夏凛ちゃん頼もしー。
『勇者部五箇条 成せば大抵なんとかなる!』
樹ちゃんもやる気十分。私も負けないようにしないと。
「ありがとう…みんな。……しかし…なんというか…」
「何故か精霊が増えて、かなり賑やかですね」
風先輩と私はみんなの周りをふよふよ浮いている大量の精霊を見ながら言った。
「大赦が端末をアップデートしてくれたんだけど、ちょっとした百鬼夜行だわ…」
「もういっそ、文化祭これでいいんじゃないですか?」
「ダメだろ」「よくないわ」
「ですよねー」
東郷さんとアンタレスのツッコミが超スピードでやってきた。痛い。
「ショギョームジョー…」
「ギャー!あんたら、精霊の管理くらいちゃんとしなさいよ!」
夏凛ちゃんの精霊が私の精霊にかじられている。
「……済まないが……こっちも頼む」
死にかけみたいな声がアクベスから聞こえた。
「わー!市場の蟹みたーい!」
アクベスは大体の精霊に噛みつかれてた。本当に市場で見る黒いツブツブの付いた蟹みたい。
「あれは確かカニビルって言って…じゃなくて!全員端末に戻りなさい!」
風先輩の号令で精霊はみんなスマホに戻ってきた。
「くっ…、それにしても、私だけ新しい精霊がいないなんてどういうことなのよ…」
「……精霊が増えた人、増えていない人……。違いはやはり、満開にあるのかしら……」
『生き残りのバーテックスはいつ来るんだろう?ドキドキ』
樹ちゃんドキドキしてるの?そりゃまあ早くに来てくれる方が嬉しいけど。
「完璧勇者としての私の勘では、来週あたりが危ないわね」
おお、夏凛ちゃん自信満々。
「じゃあ俺は二週間後だ!」
カストルさん賭け事じゃないんだから。
「では私は今日だ」
スピカさんまで…。
「実は敵の襲来は気のせいだったりして」
「でも、神樹様が仰ってることなんですよね?」
神樹様が言ってる事なんだ。さすがに気のせいという事は無いだろう。
「あの諸葛孔明だって負け戦はあるのよ?弘法も筆の誤り。神樹様も予知のミスくらい…」
そんな言葉を遮って、樹海化警報が端末から鳴り響いた。
「あっ!」「げっ…」「グルル…」
「噂をすればって…奴かな」
「風が変なこと言うから、神樹様からの的確なツッコミね。これは…」
「あ、あんただって勘外してるじゃない」
「来てしまったからには…やるしかありません。これで…、本当の最後に!」
その言葉を最後に、私達は光に包まれた。
放課後?・樹海
「満開ゲージ……空っぽだ」
「この戦いで、一花咲かせてやるわ」
「敵さん来なすったぞ」
カウストさんの声で私達は意識をそっちに向けた。
「あれって…」
「…あの変質者みたいな奴、樹が倒さなかったっけ」
すごい勢いで小さいのがこっちに走ってくる。
「もともと二体いるのが特徴のバーテックスなのかもしれない」
「まるで双子、俺達みたいだな」
「あんな変態と一緒にしないで」
後ろで二人がヤイヤイしてるけど、そんな余裕は無い。どんどんこっちに来ている。
「私が行く!一番槍ぃ!」
「ぐらっしゃああああああ!!!!」
樹ちゃんが跳んで行くのを追い抜いて、レオニスがすごい速さで走っていく。
「よぉーーーし!私も負けてられない!友奈行きます!」
「先陣はアイツに任せて、こっちはこっちでやるわよ!」
「分かった!」
「きしゃあああああああああ!!!!!」
レオニスが奇声と共にバーテックスの脚をスパっといった。
「ハァアアアアアーーーーっ!」
私と夏凛ちゃんの攻撃もバーテックスに当たった。
「追撃します!」
東郷さん率いる遠距離チームがバーテックスの頭に攻撃を当てて、転ばせた。
「ナイス!封印の儀、行くわよ!」
「バーテックスーー!!大人しくしなさーい!」
さらに私のキックがクリーンヒット。これぐらいやれば…
「御霊が出た。アタシがやる!」
「とどめは私が!」
夏凛ちゃんが風先輩を無視して突っ込んでいった。
「夏凛!?やめなさい!部長命令よ!」
「私は助っ人で来ているの。だから、好きにやらせて…」
夏凛ちゃんが御霊に飛び込んで、攻撃を――
「ぐぎゃああああああああああああ!!!!!!」
「きゃあ!?」
当てられなかった。レオニスが夏凛ちゃんを蹴飛ばして、御霊に攻撃をしたからだ。
御霊は光と共に砕け散った。
「レオニス!アンタ何やったか分かってんの!?」
風先輩が着地したてのレオニスに突っ込んでいく。
「ぎが?……ぐるああああああああ!!」
「あっぶな!?」
レオニスは風先輩にも爪を振るい始めた。
「何やってんだあの馬鹿!」
「ぎゃあ!?」
アンタレスの投げた矛がレオニスの頭にぶつかっていい音を立てた。
「ぐるあ……ぐる……」
レオニスは変な鳴き声を出しながらふらついている。
「樹!コイツ縛っといて!」
「(コクコク)」
ワイヤーが甲冑に絡みついた頃、私達は光に包まれた。
夕方・???
「戻った……」
その言葉を言い終えるなり、東郷さんは銃をレオニスに向けた。
「あなた、どういうつもり?いきなり夏凛ちゃんを蹴飛ばすなんて」
「ふしゅぅ……ふしゅぅ……」
東郷さんの声にレオニスは応えない。それどころか東郷さんに爪を向けている。
「レオニス、やめて。どうして仲間同士で戦う必要があるの?」
「お前が何を思ってその爪を向けているかは知らんが、それ以上やってみろ。殺すぞ」
「お前はそんな奴じゃ無かった筈だ。何があった?」
「ぬぅ……」
三人の騎士が私と一緒に東郷さんの前に立った。
「ぐるらぁ…」
「ちょっと爪を収めてもらいたいかなー」
そんな落ち着いた少女の声が、私の隣にあった社の奥から聞こえた。
「みんな。あの子を止めてあげて」
「りょーかいっ!」「御意っ!」「承知っ!」
その声を合図に、六つの大小それぞれの影がこっちに飛び出してきた。
「ぐりらあああああ!!」
「大人しくしろっ!」
「そっち抑えろ!」
「こいつホントにレオニスかよ!?」
なんて賑やかな声がしたかと思うと、いつの間にかレオニスは大きな二つの甲冑に抑えられていた。
「とんだサプライズになっちゃったねー。みんなありがとー。その子は抑えておいてね」
「サプライズ…?っていうか、ここ何処!?」
「大橋だよー」
「…ホントね。あそこ」
東郷さんが指差した先には本当に瀬戸大橋があった。
「あのー…そろそろこっちに来てくれると嬉しいなぁ…」
「ご、ごめんなさい!」
私は声に従い、その方へ行った。そこには、四人の甲冑に囲まれてベッドの上で寝ている包帯にまみれた人の面影が無くなりかけている人が居た。
「ようやく呼び出しに成功したよ…。わっしー」
わっしー?誰の事だろうか?
「わっしー?十二星座に鷲は居ねぇぜ?」
アンタレスが冷やかすように言った。それは流石に知っている。そんな事よりも…
「それよりも何でこんな所にベッドがどーんと…」
「貴女が戦ってるのを感じて、ずっと…呼んでたんだよ」
「勇者様。知り合いにこんな奴はいたか?」
カウストが弓を引きながら言った。東郷さんは、ゆっくりと首を横に振った後、小さくこう言った。
「いいえ…初対面だわ…」
その言葉を聞いた四人の騎士の中の、比較的小さい人が、崩れ落ちた。
「嘘……でしょう?スミ様も…随分と悪い嘘をつくようになったのですね……?」
「……ごめんなさい。分からないの」
その言葉を聞いた刹那、甲冑は大粒の涙を流して泣き始めた。ただ、それが涙かどうかは分からないが。
包帯の人は、大きく溜息をついて、少し笑った。
「わっしーっていうのはね。私の大切なお友達の名前なんだ。いつもその子の事を考えていてね、つい口に出ちゃうんだよ。ごめんね」
「ソノコちゃん……」
彼女の隣に立っていた少し背の高くて細い甲冑が小さくそう呟いた。彼女の名前だろうか。
「ヘイバッドガール。アンタが俺達をここに呼んだのか?」
カウストが会話に割り込んで言った。
「そうだよ。その祠を使ってね」
彼女が向いた先には、私の見た社があった。これ祠だったのか。
「バーテックスとの戦いの後だったらその祠使って呼べると思ってね」
「……!」
バーテックスの存在を知っている。それだけでは飽き足らず、私達をここまで呼んでしまった。彼女は危険だと、心の何処かが言っていた。
「一応、貴女の先輩って事になるのかな。私、乃木園子っていうんだよ」
乃木ソノコ。あの甲冑が言っていたのは彼女の名前だったか。
「讃州中学二年、結城友奈です」
「東郷、美森です」
「友奈ちゃんに……美森ちゃん……か」
彼女はそう、小さく、どこか悲しそうに呟いた。
「先輩っていうのは…乃木さんも…」
「うん。私も勇者として戦ってたんだ。二人のお友達と、三人の騎士と一緒にえいえいおーってね。今はこんなになっちゃったけどね」
その言葉の後、彼女の隣に立っていた少し太い甲冑の拳が軋む音が聞こえた。
「ば、バーテックスが先輩をこんな酷い目に遭わせたんですか?」
そう、私がおそるおそる訊くと、彼女は笑って答えた。
「ああ、んーとね、敵じゃないよ。私これでもそこそこ強かったんだから」
そこまで話して、彼女は言葉を詰まらせた。
「えーっと…あ、そうだそうだ。友奈ちゃんは満開、したんだよね?わーっと咲いて、わーっと強くなるやつ」
「あ、はい。しました。わーって強くなりました」
「私も、しました」
「…そっか」
そう言った後、彼女は少し間を置いて、話を再開した。
「咲き誇った花は、その後どうなると思う?」
「そりゃあ咲いた後は……、っ!?」
アンタレスさんが何かを気にして言葉を止めた。
「そこの賢い人はもう気付いたみたいだね。満開の後に、“散華”という隠された機能があるんだよ」
「さん…げ。花が散る、の散華…」
「満開の後、体の何処かが不自由になった筈だよ」
その言葉を聞いた時、体の芯がとても冷たくなったのを感じた。
「え、それって…!」
「それが散華。神の力を振るった満開の代償。花一つ咲けば一つ散る。二つ咲けば二つ散る。その代わり、決して勇者は死ぬ事は無いんだよ」
「そんなの…それって…」
アンタレスが肩を震わせながら呟いた。
「でっ…でも、死なないなら、イイ事なんじゃないかな?」
「馬鹿野郎!お前は、お前は…!」
「やめろ」
「…っ!……分かってるさ、そんな事…!」
アンタレスは私の肩を掴んできたけど、アクベスの言葉で彼はあっさりと手を離した。
「…彼の思う通り、戦い続けてこうなっちゃったんだ。元からぼーっとするのが特技で良かったかなって。全然動けないのはキツイからね」
「痛むんですか?」
「痛みは無いよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けてこうなっちゃっただけ。敵はちゃんと撃退したよ」
その言葉を聞いた彼女の甲冑が、全員俯き、暗いオーラを出した。
「満開して、戦い続けた…」
「じゃあ、その体は、代償で…」
「うん」
彼女ははっきりと、そう私達の言葉を肯定した。その言葉が、私の体を冷たくさせた。
「ど、どうして…、どうして私達が…」
「何時の時代だって、神様み見初められて供物になったのは、無垢な少女だから。穢れ無き身だからこそ大いなる力を宿せる。その力の代償として、体の一部を神樹様に供物として捧げていく。それが勇者システム」
「私達が…供物?」
その言葉が合図だったように、アンタレスが足で地面を思いっきり蹴った。
「ふざけんじゃあねえよ!何が供物だ!何が神樹だ!結局カミなんてクソッたれしか居ねえんだ!」
「落ち着いてよ。話は最後まで聴くべきだよ?」
「できるか!どうしてお前はそこまで落ち着いていられるんだ!ああ!?」
乃木が抑制しようとしても、アンタレスの勢いは止まらない。
「仕方ないからだよ。バーテックスにはこうして対抗するしか生き残る道は無いんだから」
その言葉からは、彼女ののほほんとした雰囲気は無かった。
「………チッ!」
そう言って、彼はカードに戻り、東郷さんのポケットに入った。
「それじゃあ、私達は体の機能を失い続けて…」
「でも、十二体のバーテックスは倒したんだから、大丈夫だよ。東郷さん」
私は彼女の手を取り、そう言った。
「倒したのは凄いね。私達の時は、追い返すのが精一杯だったから…」
「そうなんですよ!もう戦わなくていい筈なんです!」
「………そうだといいね」
「そ、それで、失った部分はずっとこのままなんですか?」
「治りたいよね。私も治りたいよ。歩いて、友達を抱きしめに行きたいよ」
私は、その言葉に何も返す事が出来なかった。
「友奈ちゃん!」
私は東郷さんの声で我に返った。
周囲を見ると、神社でよく見る格好に仮面を足した人達が、大赦の人達が私達を取り囲んでいた。
「お前ら、何しに来た?」
ようやく少し太い甲冑が喋った。彼の手には、赤い光を発している輪っかが握られていた。彼だけではなく、他の甲冑も各々の得物を握っていた。
「彼女達を傷つけたら許さないよー」
その言葉で、大赦の人達は一斉に乃木を見た。
「私が呼んだ、大切なお客様だから。あれだけ言ったのに、会わせてくれないんだもん。だから自力で呼んじゃったよ」
その言葉が終わると、大赦の人は膝をつき、頭を下げた。
「私は、今や半分神様みたいなものだからね。崇められちゃってるんだ。安心してね。貴方達も、丁重に元の街に送ってもらえるから。と言っても、彼はどうか分からないけどね」
そう言って、乃木は二人の巨漢の甲冑に抑えられているレオニスを見た。
「でも、君達の意見も少しは聞いてもらえるかもしれないから言ってみたら?彼について」
彼、レオニスについて。夏凛ちゃんを蹴り飛ばした男。それでも…
「レオニスは私が引き取ります」
「友奈ちゃん!?何を言って…!」
大赦の人が一人、私の前に立って、礼をした。そして、二人の甲冑に何か合図をした。
二人はレオニスを押さえつけ、何処かへ連れ去ってしまった。
「あらあら。駄目だったみたいだね」
「彼に、酷い事はしないですよね?」
そう訊くと、大赦の人は頷き、立ち去っていった。
「さてと。二人もそろそろ帰らないとね。みんなが心配してるよ?」
「………二人共、俺の背中に乗ってくれ」
カウストが、静かにそう言った。
「…大丈夫?」
「ああ」
カウストは食い気味にそう言ったあと、東郷さんを後ろに乗せた。
「さあ、乗れ。お前もカードに戻れ」
その言葉で東郷さんのポケットにカードになったアクベスが滑り込んできた。
「行くぞ」
そう言った後、彼は少し後ろを見た。
「またな、戦友」
そう呟くと、彼は超スピードで道を走り出した。
TIPS
『他の騎士はいずこ』
彼らはかの勇者らと一緒に戦った。そして…