『セイクリッド・ダバラン』
人情に厚い良い奴。戦闘力はそこそこ。ジャーキーの匂いがする。
得物は自身が生み出した赤く発光する光輪。よく切れる。
同日・放課後・何処かの大赦の施設
「グルルゥ……グルルァ………」
この鎖はとても硬い。いくらもがいても、唸っても私を離そうとしない。
「おい」
すぐ隣で私を見ていた『セイクリッド・ダバラン』が私に向けてそう言った。
「抜け出そうだなんて考えるなよ。俺は仲間に刃を向けるなんて事はしたくねぇんだ」
「………ギギギガァ………」
相変わらず仲間想いの奴だ。だが、その言葉が今は嫌だった。そんな事を言うなら私をここから逃がせばいいんだ。
「まぁ、これは僕も同意見かなぁ。今の君はいつもの君じゃない。何を焦ってるんだい?」
ダバランの後ろで壁に寄り掛かっていた『セイクリッド・シェラタン』がふてぶてしく言った。黙れ。私にはやらねばならぬ事があるのだ。
ウィーン!ウィーン!
私の思考を遮って警報が鳴り響いた。
「何事だ!?」
「緊急事態よ!勇者ちゃんが暴走しちゃったみたい!」
ダバランの問いに扉を扉を突き破って入ってきた『セイクリッド・グレディ』が答えた。
「そうか。で、俺達はどうすればいい?」
「このままレオニスの監視を続行。あっちにはレスカとエスカの二人が行ってくれるみたい」
「あの二人が行ってくれるなら安心だ……と、思いたいな」
「そうね……」
「グルルルルルァ…」
何をそんなに悩む必要がある。その不安を消したいのならば自ら赴き助ければよいのだ。
「ギギガ……グググ……」
どうにかしてその事を伝えられないだろうか?
「グググッガガガァ……」
フゥーム……。
「ギギギギギギギギ……」
そうだ。こうすればいいのだ。
「グララアアアアアアア!!」
「おい!?何やってる!」
「まずいよ!セイクリッド印の拘束具が破られた!」
自らが行い、示せばいいのだ。
「シャアアアアア!!」
「追うぞ!」
「りょーかい!」「分かった!」
思い通り、彼らは私を追ってここを出た。
夕方・大きな橋の前
「ぐる?……が!」
外に出て、辺りを見渡し索敵する。すると面白い事にすぐ傍で勇者様と勇者様が戦っていた。
「フシュアアアア……」
脚に力を込めて、劣勢な方の勇者を見る。
「キシャアアアアアアアッッ!!!」
私は劣勢な赤い勇者の前に立ち、優勢な紫の勇者の剣を爪で受け止めた。
「ちいっ!?」
「フグルルルルル………フグルルルルルァ………」
そのまま、爪を押し上げ、剣を跳ね返した。その直後、何かが私の前に飛び込んできた。
「待たせたなっ!ソノコ殿の命により馳せ参じた。セイクリッド・エスカだ」
「同じく、セイクリッド・レスカだ。ここは我々に任せてくれ」
エスカとレスカが攻撃ついでに勇者達に自己紹介をした。
「テメェらぁ…、よくもやってくれたなぁ…」
胸部の装備の傷をさすりながら紫の勇者は私達を睨んだ。
「逃げるわよ!」
後ろから赤い勇者の声が聞こえた。これで心置きなく戦える。
「行ったか…。うっし!いっちょやってやるか!」
「承知!」
「グルリラァッ!」
ああ。いっちょやるとも。ただし、一番槍は私だ。
「来やがれ!傷のお返しをたっぷりとしてやるよ!」
紫の勇者が剣をこちらに向かって振るう。だが、遅い。
「なっ!」「フッ」
スライディングで剣を躱し、その勢いのまま勇者の腿を爪で切る。が、そこもしっかりと鎧があり肉に傷は付けられなかった。
「ウルァアアア!」「フゥウアアア!」
「がっ!?」
二つの巨漢の爪と剣が甲冑を大きく切って勇者を大きく仰け反らせた。甲冑の欠片が少し落ちた。
「テメェら一度ならず二度までもぉ…」
「一気にトドメだ」
「承知!」
「グルァ!」
待てと叫ぼうとした。勇者様を殺してはいけないという事では無い。奴の実力を侮るなという事を叫びたかった。
ガキン!と音がした。だがそれは甲冑が砕ける音では無かった。
「なっ!?」「ぬ!?」
「ヘッ!」
奴の“精霊”が奴の身を守ったのだ。
「喰らいなぁ!」
「あがっ!」「ぐぅ!」
奴の剣が二人を薙ぎ払い、腹部を砕き上半身と下半身を別れさせた。
「キシャアアア!!」
まずい。獣としての本能が叫んでいた。この雰囲気には何か覚えがあった。
「おせぇよ!」
「ガァ!」
奴はレスカの下半身をこちらに投げ、足止めをした。
「そんじゃ、頂きまーす!」
「がぁ…」
奴がエスカの二つの体に手を突っ込んだかと思うと、彼の体は粒子となり奴に吸収された。
「貴様…まさかとは思ったが、ヴェルズか…」
「気付くのが遅いんだよ。脳筋」
「かっ!」
レスカの上半身もエスカと同じく吸収された。
「いいねいいねぇ!この力が高ぶる感覚!これだよぉ!」
勇者はそう叫び、笑った。
「貴様ぁあああああ!!」
「おっと」
唐突にダバランが突っ込んできて、赤い光輪を勇者に振るったが、それは容易く防がれた。
「レスカとエスカの仇!取らせてもらうぞ!」
「暑苦しいんだよ、失せろ!」
ダバランは再度光輪を振るったが、簡単に避けられた。攻撃を回避した勇者は剣の平らな面でダバランを吹っ飛ばした。
「突っ込みすぎなんだよ馬鹿!」
「そこで私達の出番、でしょ!?」
シェラタンの光線銃とグレディの杖から放たれた光弾が勇者の体を覆った。土煙がもうもうと立ち込めている。
「………得物を下げるなよ」
「分かってるって」
二人はそこに得物を向けたまま動かない。あの煙の中で何が起こっているか分からないからあの中に突っ込むのは得策では無い。私も勇者の動向を見よう。
「クヒヒ…」
「!」
奴の笑い声が中から聞こえた。生きていたか。
「全く。つまんねぇ事してくれるよなぁ!?馬鹿正直にこっちに突っ込んでくればよかったのによぉ!?」
そう言って右手で掴んだダバランを見せつけつつ笑った。
「お前…」
「ん?」
「ブッ殺す!」
そう叫び、シェラタンは光線銃のトリガーを引きまくった。が、光弾は全く別の方向へ飛んでいった。
「クソエイムだな!お前」
「それはどうかな」
その言葉を合図に光弾は曲がり、勇者目掛けて飛んで行った。
「ぐあっ!?」
勇者はふらつき、酔っ払いのようにフラフラしている。
「よっし!」
「なんちゃってぇ!ハズレだよ!」
ガッツポーズをとったシェラタンに見せつけるように全ての光弾を受け止めたであろう精霊を見せつけた。
「ウーン…。同士討ちを期待したんだけどなぁ…。なりそうにないし殺しとくか」
「!?止めろ!」「!」
奴はダバランをおもむろに持ち上げ、掲げた。二人は光弾を放ち、私は走った。だが、爪や弾が奴の手を弾く前に奴の手はダバランの兜を握り潰した。彼の体も例に倣って、吸収された。
「うーん。この牛のうま味!最高だな!」
「テメェエエエエエエ!!!」
「待ってシェラタン!ここは引くべきよ!」
「離せ!アイツは殺す!殺さなきゃ駄目だ!」
シェラタンはグレディに抑え込まれ、そのまま元来た方へ跳んでいった。
「………あとはお前だけだが、どうする?」
この状況。不利も不利だ。大人しく帰らさせて頂こう。そう思い、私は方向転換して脚に力を込めた。
「………賢い選択をしろ」
跳んでいる途中、そんな言葉が聞こえたが、私は無視した。
TIPS
『それぞれの陣営』
勇者陣営
結城友奈 精神面が不安定な為戦闘不能
東郷美森 何事も無く、戦闘可能
犬吠埼風 ヴェルズに取り込まれ、ヴェルズ陣営を生み出す。
犬吠埼樹 腹部に重症を負い、瀕死の状態に。戦闘不能。
三好夏凛 不安定な面が見られるが、まだ変身出来る。戦闘可能。
乃木園子 戦えない事は無いが、やはり厳しい。戦闘態勢の維持は困難。
セイクリッド陣営
ダバラン・スピカ・レスカ・エスカ・ポルクス ヴェルズに取り込まれ戦闘不能。
その他の騎士 目立った問題は無く、戦闘可能
ヴェルズ陣営
ヴェルズ・カストル 全ての元凶。僅かに残っていたヴェルズの原子がエクシーズチェンジ等の要因で覚醒、犬吠埼風や上記のセイクリッドを取り込み、戦闘力を増強させている。
ヴェルズ・オキザリス 闇堕ち風先輩。全体的に紫。勇者装束が鎧になっている。
兜は無い。得物も変わっていない。めちゃ強い。