神の星と星の神   作:D・ヒナ

5 / 14
TIPS
『セイクリッド・アクベスのキャラ設定』
所謂、無言キャラ。全然、喋らない。
けれども、心は優しい。
上半身に対して、下半身が弱い。


ep5

某刻・某所

 

「…………」

白い天井、白い壁。そんな部屋の中で白い病院服を着た私は目を覚ました。

「っ…」

私は体を起こそうとしたが、謎の頭痛で動きを止められた。……あれ?

「……思い…、出せない…?」

壁の上に足を付けた直後からの記憶が霞がかかったように思い出せない。

思い出そうとすると、強烈な頭痛に襲われる。私はあの時、何をして、何を話したのだろうか?

「…考えても仕方ないわね」

私は、思い出す事を諦め、体を起こした。

「…あ」

「………」

体を起こし、周囲を見渡すと、そこにはアクベスが居た。…白い壁のせいですごく見づらい。

「…寝てる?」

「起きている」

うわっびっくりした。起きてたのか。

「…………乗るか?」

アクベスはそう言って、その大きな腕をベッドの前に持ってきた。えっこれに乗るの?確かにこの前、友奈ちゃんが乗ってたけど。

「…遠慮しておくわ。車椅子でいい」

「……………そうか…」

そう言って、彼は広げた車椅子を丁寧に私の前に押してきた。

「…ありがとう」

 

”・”

 

私は車椅子に乗り、部屋を出た。ちなみに私のポケットにはアクベスが居る。

「……東郷様、目を覚まされましたか」

ドアの前には大赦の人間が大勢居た。コイツらは迷惑になるだろうとか考えないのだろうか?

「…何の様ですか?」

「神樹の結界を破ろうとしたこの者をどうするか、東郷様の意見もお聞きしたく、参りました」

代表がそう言うと、鎖に繋がれたアンタレスが私の前に引っ張り出されてきた。

「神樹様はこの者を生かすよう仰せられました。しかし、芽は摘んでおいて損はありません。東郷様はどうお思いでしょうか?」

……自分達で決めてくれ、と言いそうになったが、それは抑えた。

「…アンタレス、あなたはどう思ってるの?」

「あ?」

「あなたは敵を打ち倒す為とはいえ、皆を守る結界を壊そうとしたのよ。…その事はどう思ってるの?」

「…別に、どうも思っちゃいねぇさ。俺は敵を狩る為にやった。それだけだ」

「…そう」

こんな事を言っていては、打ち首を宣告されても仕方ないな。

「……だけど、よ。お前は、覚悟を持って戦ってるっつぅ事が分かった。お前になら、着いて行ってもいい。」

「………」

「どうか、俺を、貴女の仲間にしてくれませんか?」

そう言って、アンタレスは膝をつき、頭を下げた。

コイツは何を言っているんだ?いきなり人の前に頭を下げて、何をしたいんだ?

「…おこと」

「待ってくれ」

私の返答は一つの声により遮られた。

「…どうしたの?カウスト」

廊下には、実体化したカウストが立っていた。

「ソイツは、本気で、心の底からそう思っている。お前になら、自分を預けてもいいと、思っている。」

「何を根拠に言っているの?」

「お前を大赦まで運んできたのは、他でもない。コイツだ。お前を大赦に引き渡した後、ソイツは大人しくお縄についたんだ。よっぽどお前のした事が心に響いたんだろうな」

カウストはそう言ってくれるけど、あそこでの記憶はさっぱりなのだ。きっと過去の私はとてもすごい事をしたのだろう。よくやった、過去の私。

「…ソイツ、今までお前達に頭を下げるどころか、敬語で話す事すらしなかっただろ?

…今のアンタレスは本気だ。本気で、お前になら着いて行けるって思っている。

どうか、アンタレスを信じてやってくれないか?」

カウストは、それだけ言って、カードに姿を変え、私の膝の上に乗った。

「…………」

私の前で、アンタレスはじっと頭を下げ、私の言葉を待っている。

「…彼はこのままでよいでしょう」

「分かりました。東郷様がそれで良いのならば、我々は何も言いません」

大赦の人間はそれだけ言うと、あっさりと鎖を解き、立ち去っていった。

「……ありがとう、ございます」

「敬語はやめて。体が痒くなる」

「…分かった」

「……私はまだ、あなたを信用した訳ではありません。

「………」

「しかし、否定している訳でもありません。今の私のあなたに対する評価は百でも一でも無いのです。そして、あなたに対する私の評価を変えるのは貴方自身です」

「……」

「精進なさい。………私も精進致しましょう、あなたが従うに値する勇者になる為に」

私はそれだけ言って、車椅子のタイヤを回す事に集中し始めた。

 

昼・病院前

 

「……完璧に、遅刻だわ…」

そこまで強くない日差しの下、私は汗を流しながら呟いた。

本来ならば、今日は部活動として市のマラソン大会のお手伝いをする筈だったのだ。

『大赦から連絡は届いている筈だ。…多分』

カウストが不安になる言葉を言ってくれた。畜生。

「…仕方ないわ。お医者様からも今日は安静にするように言われてるし、休ませて頂きましょう」

私は車椅子を会場の方向から自宅の方向に向け、タイヤを回した。

 

昼(先程よりは時間が経っている)・自宅

 

「…そういえば、今更なのだけれど…、貴方達はここの事をどれくらい知っているの?」

ベッドに腰掛けた私は何気なくそう訊いた。

「おおよその事は知っている。世界がウイルスに浸食された事、それを「シンジュサマ」という神が抑えている事。そして、そのシンジュサマの力であなた達が戦っているという事。

……それぐらいだ」

実体化したアンタレスが答えた。

「それについては何時、聞いたの?」

「ここに来た時、大赦に連れて行かれただろ?その時に、なんやかんやで聞かされた」

……大赦のセキュリティはどうなっているのかしら?

今はともかく、その時、素性も分からなかった相手に易々と情報を与えるなんて。

「…なぁ。勇者様はどう思うんだ?」

「……何を?」

「シンジュサマだよ。本当に、信用していいのか?その、『神』を」

そう私に尋ねる彼の声は、震えていた。

「…大丈夫よ。神樹様は、私達を守ってくれる。だから、私達も勇者として戦えるのよ」

「………そう…、か…」

 

 

夜・”

 

「東郷さん、体の方が大丈夫?」

友奈ちゃんが私を気遣ってくれる。これだけで私は明日も戦える。

「うん、大丈夫よ。ちょっと酷い頭痛がしただけ。…今日の大会休んじゃってごめんね」

「いいよ!…風先輩は結構怒ってたけど」

「あー…。今度、うどんを奢りましょう。それでなんとか…」

「さすがに、そこまで簡単に…、いや、ありえそう」

その後も、私達はお喋りを続け、気付けば時計の針は9を指していた。

「東郷さん、ごめんね。私もう寝なきゃ」

「ううん、私も話し過ぎちゃってごめんね。おやすみなさい」

「おやすみなさーい…」

そこで、電話が切れた。今日も友奈ちゃんの声が聞けた。これでなんとか寝れる。

「…おやすみなさい」

私は暗闇に話しかけ、瞼を閉じた。

 

 

某刻・某所

 

「例の星の騎士…、どう思います?」

暗闇で、お面を付けた男性は目の前に居るお面を付けた女性に訊いた。

「……信用は出来ませんね。彼らもまだ、御力で抑圧されているだけかもしれません」

「まぁ、それはそうなのですが…。彼らの力の事です」

「力…、ですか?しかし、勇者システムがある今、あれらはそこまで…」

「そうではありません。先刻の騎士…、アンタレスといいましたか。

彼の刃は神樹様の結界に弾かれていたのです。それはつまり…」

「まさか…!」

「はい。神樹様の敵である可能性がある、…という事です」




TIPS
『セイクリッド・アンタレスのキャラ設定』
セイクリッドの中ではトップクラスの実力の持ち主。
ただし、性格に難あり。自身より、何処かが優れていないと、その者を見下す癖がある。
その分、認めた者には忠実。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。