神の星と星の神   作:D・ヒナ

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TIPS
『セイクリッドの現世への適応率』
一応、端末だとか乗り物だとかには慣れた。
けど、やっぱりその他に関してはやっぱり疎い。流行とか。


ep6

放課後・勇者部部室

 

「「はぁ~ぁ……」」

犬吠崎姉妹が同時に溜息をついた。わーお姉妹らしさ全開。

「ゴクッ…。で?人が折角来てやってるのに、何でこの姉妹は溜息なんてついてる訳?」

私は咀嚼していた煮干しを飲みこみ、目の前に居る友奈&東郷コンビに二人について訊いた。

「風先輩は、学園祭の出し物が演劇に決まっから、その台本書くのに詰まってて…」

「樹ちゃんは、今度の音楽に試験が歌唱だから、それが不安で占いを繰り返しているみたい」

二人が息を揃えて答える。まるで夫婦ね…。

「なーんだ。姉妹揃って、そんな下らない事で悩んでんのね」

「うっさい。さっきから横でボリボリと煮干しなんか食べて。これから夏凛の事はニボッシーって呼ぶ!」

「ゆるキャラみたいなあだ名付けるな!」

何がニボッシーだ。馬鹿にしてんのか。

『ニボッシー…、いい名じゃないか。よくお前の事を表現している』

「馬鹿にしてんの!?」

スピカまで同調し始めた。何ソレ!?私が何時でも煮干し食ってるみたいじゃない!

「はぁ~~…、また……死神のカード。何度も何度もやってるのに、その度に…」

ついに樹が机に突っ伏した。…まさかこのカード、甲冑共じゃないでしょうね?

『まぁまぁ!元気出して!そーいうのは気の持ちようだよ!』

「…ありがと」

「そうよ。それに樹は音痴ってワケじゃないから、人前で歌うのに緊張するってだけでしょ?」

『ほほーう!それはイイ事を聞いた!ならば歌ってくれ!俺へのラブソングをっ!』

「うるさいわね、カードのまま破くわよ?」

姉妹&兄弟が喧しく話し合っている。本当に仲良いわね、アイツら。

「あはは……。でも、歌うのは良いと思う。【習うより慣れろ】…だよ!」

えっ?

 

 

放課後(ちょっと時間が経った)・カラオケ

 

「さっ、樹。ここなら誰も聞いてないから、思いっきり練習しなさい」

「え…、み、みんないるよぉ~…」

風は楽しそうに言ったけど、樹はすごく暗く返した。当たり前だ、人前で歌えないのだから。

しかも、どーしてこんな大所帯でボックスに居るのよ!

「樹ちゃん。良い音楽は全てアルファ波で説明がつくの。だからまず、歌声でアルファ波を出す特訓よ」

「そうなんですか!」

「んなワケないでしょ!」

東郷はマジメなのかふざけてるのか分からない時があるから怖い。

「……じゃぁ、樹!早速歌うわよっ!」

そう言って風は選曲のボタンを押した。えーっと…、早春賦?

「…………」

あーあ、膝ガチガチの腕プルプル。この時点でかなり不安。

 

・・・

 

「う~ん…。やっぱりちょっと硬いかな」

風が率直な感想を言った。いや、もう。硬い通り越してグニャングニャン。

「誰かに見られていると思ったら、それだけで…」

「重症ね」

「まぁまぁ、とにかく今日は練習練習!好きな歌をバンバン歌って、慣れるのが一番!」

「は、はい。みなさんを付き合わせてスミマセン。私…、できるだけ頑張ります」

「アルファ波よ。アルファ波」

「…アルファ波から離れなさいよ」

どうしてコイツはマジメ顔で言えるの…?

 

・・・・・・

 

その後も私達は歌いに歌った。

まぁ、歌ったのは五人だけなんだけどね。騎士共はほぼほぼ無言。

どうしてか訊いてみたら…「ここの流行歌にはまだ疎い」…だって。まぁ、それは仕方ない。

「…友奈!良かったわよ!」

「ありがとうございます!」

…次は、私の番ね。

「……!」

風が懐から端末を取り出した。……やけにじっと見るわね。

「……ごめん。アタシちょっとトイレ」

…これは、アレね。

 

・・・

 

”・トイレinカラオケ

 

私は歌を歌い終え、トイレにずっとこもっている風を見に行った。

……居た。さっきとは大違い。すっごい暗い顔してる。

「大赦から連絡?…私には何も言ってこないのに。まぁ、それでも内容は想像つくけどね」

「バーテックスは残り七体。出現周期が読めない以上、……最悪の事態を…想定しろってさ」

「……仲間の死を恐れてるあんたは、統率役には向いてない。私ならもっと上手くやれる」

「これはアタシの役目で、アタシの理由なのよ。後輩は黙って先輩の背中を見てなさい」

「………フン」

『『……………』』

チッ。面倒だ。硬いのはアンタの方じゃない。

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

夜・犬吠崎家

 

「~~♪」

風呂場から、樹の歌声が聞こえる。…やっぱり上手いじゃない。

『やっぱり、一人で歌うと上手いじゃないか!』

「うぇっ!?聞いてたの!?ひどい…、ブクブクブク…」

ポルクスの野郎、普段は協力的とはいえ、私より先に妹の歌を聞かなかった?許さん。

…ひとまず、樹はしっかりと褒めてやろう。

「そーよ!樹はやれば出来る子なんだから!」

風呂の扉をオープン!わぁ、しっかり入浴中。

「お姉ちゃんまで…、ゴボゴボゴボ…」

樹、ちょっと潜って誤魔化してる。かわいい。

「そーだ。お前は自分が思っている以上にずっとすごい奴なんだ!自信を持て!」

「………。何アンタは樹の裸を見ようとしてんのよっ!」

「あべっ!?」

…持ってて良かった。百均フライパン。コイツはこれがボコボコになるまでシバかなければ。

「……明日のテスト、大丈夫かな~…」

 

 

 

 

 

 

翌日・お昼休み・勇者部部室

 

 

「こ、この怪しげな薬品は一体……」

東郷が目の前に並べられたこのサプリの山を見て呟いた。…いや、この量はおかしい。

「薬品じゃなくて、喉に良い食べ物とサプリよ。樹の歌のテスト、6時間目だって聞いたから」

「えっ、私のために…?」

「肺に良いマグネシウム、リンゴ酢。血行にビタミン。喉の筋肉はコエンザイムでオリーブオイ…」

「夏凛ちゃん、良いとこあるぅ!」

「最後まで言わせなさいよ!まぁいいわ。さぁ樹、これ全種類飲んでみて。グイッと」

は?この量を樹に?遂に狂ったか。

「え、全種類…?」

「それはいくらなんでも多過ぎじゃ…。全種類なんて、さすがの夏凛でも無理でしょ~?」

「いいわ、お手本を見せてあげる。全サプリをオリーブオイルとリンゴ酢で飲ぉおおーーむ!」

…わぁ、すっごい。全部飲んじゃった。しかも油イッキ飲み。

「…………」

『お、おい。夏凛。大丈夫か?』

「……そんなわけだから、樹…頑張るのよ。私はちょっと用事を思い出した……」

それだけ言って、夏凛は部室から出て行った。あんなのに付き合わされるスピカも大変ね。

「そりゃ、油イッキ飲みしたらそうなるわ。樹は真似するんじゃないわよ」

「うん…。でも、せっかくだから、いくつかは…。……コクッ。ん、ん…、あ~、あ~」

「どう?何か調子は変わった?」

「分かりません…」

「サプリメントで、そんなに劇的に変わったら世話ないって。それより、リラックスして」

「そうそう。はい、音楽の教科書。もうすぐ、お昼休みが終わるわ」

「頑張ってね、樹ちゃん。きっと、何とかなるよ!」

「ありがとうございます…」

そこで、私達は別れた。

…ニボッシー、どうせなら今度、スケベ癖が抜けるサプリとか持ってこないかしら?

 

 

 

夕方・犬吠崎家

 

 

結果からいうと、樹のテストは満足のいくものだったらしい。

その事は、風の噂からも、ポルクスの言葉からも、樹の表情からも明らかだった。

「…………」

「……!」

けど、家に帰って来るなり、樹は部屋に閉じこもり、ポルクスと何かを話し合っている。

喧嘩しているとか、そういう訳ではないようだが、少し不安だ。様子を見に行こう。

「樹、入るわよ」

「入るぞー!」

私は樹の部屋の扉を叩き、中に居るであろう樹に声を掛ける。っていうか、カストル。お前は樹を見たいだけだろうが。…それはさておき、私は部屋の扉を開けた。

「帰ってくるなり部屋に閉じこもって…。いったい、どうしちゃったの?」

「あ…」

樹は私が部屋に入ってくるのを見た後、複雑な表情で机に置いてあるノートパソコンを見た。

「ん…。あのね、お姉ちゃん……。………ありがとう」

「なに、急に…」

「この家のこととか…、勇者部のこととか…、お姉ちゃんにばっかり、大変なことさせて」

「そんなの…。アタシなりに理由があるからね」

「理由…って?」

「なんだっていいんだよ。どんな理由でも。それで頑張れるならさ」

「どんな…理由でも……」

「けど……ごめんね、樹」

「え、なんで…謝るの?」

「樹を…勇者なんて大変なことに巻き込んじゃったから」

「ちょっと前、子猫を引き取りに行った時の事、覚えてる?あの時、あのお家の子……」

「泣いてたよね…すごく。子猫をどこへもあげたくない。自分が面倒見るからって…」

「樹を勇者部に入れろって大赦に命令された時、アタシも……やめてって言えば良かった。あの家の子みたいに、泣いてでも…。そしたら…もしかしたら樹は勇者にならずに…」

「なに言ってるの、お姉ちゃん!お姉ちゃんは…間違ってないよ」

「でも…」

「それに私、嬉しいんだ。守られるだけじゃなくて、お姉ちゃんと…みんなと一緒に戦えることが」

「あと、私ね…、やりたいことができたよ」

おぉうすごい方向転換。

「やりたいこと?将来の夢でもできたってこと?」

「実は彼女、か…」

「言っちゃ駄目ー!」

「ぐげばっ」

わー樹、いつの間にそんな物騒なパンチを覚えたのかしら?

「……まだ、秘密。恥ずかしいもん。でも…いつか、教えるね」

「おいおい三人共随分と仲が良いじゃあねぇかー!どうして俺とは仲良くしてくれないんだい?」

カストルが慣れ慣れしく肩を組みながら訊いてきた。分かり切ってるだろうが。

「うっさい。アンタは余罪が多すぎるのよ!」

「俺はそこまで悪い事してないよなぁ?な、二人共」

「二人のプライベートにズカズカ入り込む奴が何言ってやがる」

「……気持ち悪いです」

「ごぶぇっ!」

……樹にここまで言わせるなんて何しでかしたのよコイツ。にしてもポルクスも口悪いわね。

「へっへっへ~。そこまで言われるともっとやりたくなっちゃうなー…」

「来ないで兄さん。斬るよ?」

「やってやろうじゃねえかコラ。久しぶりに一稽古つけるか?」

あれ?これなんかマズイ流れ?

「行くよっ!」

「よっしゃあ!」

暴れようとすんな!こんな狭い部屋で!……と、言おうとしたが、その声は端末のアラームに掻き消された。

「「……樹海化警報…!」」

「おっ、ようやく例の樹海化か…。役に立ってやろうぜ、ポルクス」

「分かった。足引っ張らないでよ、兄さん」

すごい。すっごく頼もしい。

「さ、行くわよ。樹」

「うん。お姉ちゃん」

私達は、光に包まれた。




TIPS
『セイクリッドの得物』
原作通りです。知らない人は調べて♡(他人任せ)
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