変化させられマスター(--;)【とある触手生物物語】   作:気まぐレニー

1 / 3
触手とキル姫の触れ合いを書きたくなりました。
よろしくお願いします。


変化させられマスター(--;)【とある触手生物物語】その①

 ……んん?

 マスターは物凄い悪夢を見てしまった時の、あのとても憂鬱な気分で目が覚めた。

 その悪夢は内容は全く覚えていないが、とても気分が悪い夢だったような気がする。

 

 頭がえらく重く体も凄いだるい。

 

 マスターはとりあえずもう起きようと動き出そうとしたが、いつもの体の感覚が全く違う事に気がついた。

 頭はすでに覚醒し始めているのに、他の色々な感覚器官が物凄い変なのだ。

 

 まず物の見えかたから違った。

 目で正面の物を見ると言うより、自分の全周囲の物が全て一度に見えている感じだ。

 初めての感覚でどこに焦点を合わせて良いか分からず、とても気持ちが悪い。

 

 そこでマスターは他の感覚はどうかと色々試してみた。

 

 匂いのほうは良く分からないが、味だけは物凄く良く分かる気がする。

 いま寝ているこの布団の味が体全体で感じられる。

 この敷き布団は寝汗のような塩っけのある風味がする。

 こんな事が何で分かるんだろう。

 いま布団を舐めている訳でもあるまいに。

 

 次に物音のほうはかなり敏感に分かる。

 遠くの物音まではっきり聞こえた。

 これもまた体全体で聞く感じだ。

 これは周りがうるさかったら頭が痛くなるくらいの高感度であった。

 

 そして最後に物を触った感じだが、これもとても良く分かった。

 布団の微小な凹凸が手に取るように詳細に分かる位だ。

 しかしこれも体全体が同じ感度で分かるような奇妙な感覚であった。

 

 頭の情報処理が追いつかないような優れた感覚器官を持っていると分かった。

 

 あ。

 でも、これ……。

 ……マズい……な。

 

 マスターは心の中でうめいた。

 

 この訳わからない状況は別として、どんどんと今のこの体の状態が悪くなっているのが分かってきたのだった。

 

 腹がかなり減っていて、とにかく物凄く寒いのだ。

 飢餓と低体温症と言う言葉が頭によぎり、死の単語すら頭にちらついてくる。

 

 だが頭をフルに働かしても今のこの状況から助かる術が全く思いつかなかった。

 体も動かないし声も出せない。

 

 キル姫のマスターをしていて色々な不思議を目にするが、さすがにこんな事は想像した事もなかった。

 ただ思いつくのなら、この前のクエストでアンノウンと判定された特殊な魔道士っぽい異族の攻撃を受けたのがいけなかったのだろう。

 たぶんそこで何か特殊な呪いでも受けたのだと推測出来る。

 

 だがまあ、もう後の祭りだ。

 

 だんだん視界が悪くなってきた。

 物がぼやけて見えるようになる。

 

 味覚も触覚もどんどん鈍くなっている。

 

 聴覚もやはりだんだんと聞こえなく……。

 

 その時、誰かが廊下を近づいてくる音が聞こえ、その誰かは自室のドアをノックしてきた。

 

 マスターは必死にその誰かに助けを求めた。

 声は出ないから思念でだった。

 そう、使った事のないテレパシーを使うかのようにである。

 

 その誰かはすぐに部屋に入ってきた。

 それもすごく慌てるようにであった。

 

 もしかして本当に俺の思考が届いているのか?

 マスターは一筋の光が見えた気がした。

 

 その者はベッドぎわに来ると恐ろしそうに呟いていた。

「あ、あの、マスターどこですか?……え?もしかして、あなたがマスター……なのですか?」

 

 声だけがぼんやり聞こえる。

 口調から察するに自分に仕えるキル姫なのだろう。

 だが自分の目はもう全く見えないので目の前の者が誰かは分からない。

 とりあえず思念で、そうだと伝えておく。

 

 彼女は泣き出しそうな声色だった。

「そんな!……どうしてそんな姿に……」

 

 自分はいったいどんな姿なのだろう。

 最後まで自分の姿は分からないままだった。

 

 とりあえずどうすれば助かるのか自分にも分からない。

 だがこのまま何もせずに死にたくはない。

 とにかく今の窮状を伝えるだけはしようと思った。

 

 腹が減って、寒い、今すぐにでも、死にそうだ

 

 彼女が必死になって助けようとしてくれているのが分かる。

「ええっ?でも、いったいどうすれば……」

 

 だが、こうしてる間にもどんどん自分の容体が悪化しているのがひしひしと感じられた。

 そしてついに、これはもう自分は助からないなと悟り始めた。

 

 マスターは目の前のキル姫に詫びるように念じた。

 

 すまない、何故こうなったか、俺にも、分からない。でも、最後に、誰かに、看取ってもらえて、良かった。

 

「そんな……事……。私っ、誰か呼んできますっ!」

 彼女は叫んでいた。

 

 マスターはもう生きる事を諦めていた。

 

 いや、もう、無理、そうだ。もう、あたま、すら、まわら、ない。

 ああ、さいご、に、手、を、ふれて、ほし、い。

 

 マスターは願った。

 最後にほんの少しの温もりが欲しかったのだ。

 

「……マスター!」

 彼女は泣きながらそっと手を触れてきた。

 

 自分の体に彼女の手が触れた感触が分かった。

 とても暖かった。

 

 ……っ!?

 

 その瞬間、彼女の手のひらが触れた所の表面の細胞だけが、一瞬で活性化したのを感じた。

 そして同時に失いつつあった思考も何とか取り戻した。

 

 なんだ!?

 急にまた考える事が出来る様になったぞ……。

 

 いきなり元のように思考が出来るようになっていた。

 まるで彼女から生きるエネルギーを少しだけ貰ったかのようだった。

 

 ……ふぅ。

 助かった、か。

 だけど思考が少し出来るだけで、体が死にかけている事に変わらないみたいだな。

 まだ何も見る事すら出来ないし、彼女の手のひらが触れている所以外は何も感じない。

 もちろん体を動かす事すら出来ない。

 

「……あの、マスター?」

 彼女はおずおずと訊ねてきた。

 

 マスターは思念で返事をする。

 

 あ。すまない。

 どうやらまだ生きていられるようだ。

 君のおかげだ。ありがとう。

 

「いえ、そんな!……でも良かったです……」

 彼女は嬉しくて泣いているようだ。

 

 さて、これからどうするか……?

 

 うわっっ!?

 

 マスターが悩んでいると、体にまた新たな衝撃が走った。

 体の別の一部分が暖まってきている。

 

 マスターはすぐピンときた。

 彼女がもう片方の手を差し伸べて体に触れてくれたのだと。

 

 全く見えなかった視界がぼんやりと輪郭を持ち始めた。

 目の前に女性らしき人影が見える。

 両手を差し出して触れながら励ましてくれているようだ。

 

「マスター、頑張って下さいっ!絶対に、絶対に生き延びて下さいっ!」

 

 マスターは彼女の前で死ぬ事は絶対出来ないなと固く思った。

 

「私が出来ることは何でもしますから」

 

 彼女は強い覚悟が感じられる声で言う。

 

 それを聞いたマスターは、ある方法を思い付いた。

 死にかけている自分の体で、彼女が触れてくれている部分は自然と活性化する。

 それならば、彼女の触れる面積を増やしてくれたならどうだろうか。

 自分では動けないから、彼女から直に寄り添ってきてくれるなら何とかなるかもしれない。

 たぶん直接肌を合わせないといけなそうだから、彼女にはかなり恥ずかしい思いをさせてしまうが……。

 

 マスターは言い淀みながら目の前の彼女に思い付いた方法を念じて伝えた。

 

「え!?裸になってですか?」

 

 彼女は驚いたような声をあげる。

 マスターは無理強いはしないと言おうとしたが、その前に彼女が口を開いてきた。

 恥ずかしげだが決意がこもった声であった。

 

「やります!やらせて下さい!……えと、マスターを体に塗りたくれば良いのですよね……」

 

 マスターは彼女のその言葉に疑問に思った。

 ん?

 体に塗りたくる……???

 どういう事だ?

 

 

 [続く]

 




さてこのキル姫は誰でしょうか。
(まだ決めかねている作者(笑))
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。