変化させられマスター(--;)【とある触手生物物語】 作:気まぐレニー
ナーゲルはたまに生意気そうな事も言いますが、とても可愛い良い子です。
(//∇//)
あれ?今朝はマスターが来ないですね……。
ナーゲルリングは寮の自室の窓から中庭を眺めて思った。
いつもであればマスターはあの中庭の片隅で朝のコーヒーを一人静かに飲んでるはずなのに。
キル姫達からの信頼が厚く、いつもキル姫に囲まれていて大人気のマスターが気を休める事の出来る、その朝の優雅な一人の時間を見守るのがナーゲルリングの密かな楽しみだったのだ。
自分だけが知るマスターのその安らぐ姿。
でも寝坊、でしょうか……?
もう少し待てば来るかもしれませんね。
だが一向にマスターは現れない。
別にその場所で朝の一服をしなくても問題はないが、マスターがこの寮に泊まっている時はほとんど日課のようにする行動なので、あの場所に来ないのはどうしても気になってしまう。
もしかして調子が悪い、とかですかね?
ナーゲルリングはマスターの先日からの行動を思い出そうとした。
私達は2日前にクエストから一緒に戻ってきて、昨日のマスターは普通に学園で過ごしていた。
でもあの時のクエストでは、マスター自身が異族と接敵してしまうハプニングもあって、私はそれが少し気にはなっていたのだ。
何ともなかったと言ってはいたが、マスターは普通の人間なのは忘れてはいけない。
人間が異族と直に接触するのは全くもって良くない事なのだ。
少し胸騒ぎがする。
みんなにも相談したほうが良いかな?
でも朝のマスターの憩いのひとときがバレて、これからそれがなくなってしまったら……。
それにこの胸騒ぎは私の気にし過ぎかもしれない。
本当にただの寝坊か、もしくは何か朝の用事があった可能性もある。
うーん。
ううーん……。
ナーゲルリングは散々迷ったすえにマスターの部屋に行くだけ行ってみようと思った。
とりあえず軽くノックだけして反応を伺ってみるだけはしようと。
ナーゲルリングは寮の教員フロアに行き、マスターの部屋の前に到着した。
生徒フロアの廊下でも階段でも珍しく誰にも行き合わなかった。
そして教員フロアの廊下にも誰もいなくて、何故か周りがとても凄く静かだった。
……なんか不気味な静けさですね。
ナーゲルリングはそんな事を思いながら軽く扉をノックした。
(コンコン)
反応なしですか、とナーゲルリングが思ったその時に、突如頭の中に声が響いた。
゛助けてくれ!!゛
ナーゲルリングはハッとした。
こんなのは初めての経験だが、瞬時にこれはマスターの言葉だと理解する。
本能的にと言っても良い。
「マスター!?……入りますっ!」
ナーゲルリングはとにかく部屋の中に駆け込んだ。
マスターの部屋はカーテンが引かれて薄暗い。
ナーゲルリングは一目散に寝室へ向かった。
それはそこからマスターの気配、いわゆるバイブスが感じられたからだ。
寝室のベッドがこんもりと膨らんでいるのが見える。
ナーゲルリングはすぐにマスターはそこにいると見当をつけた。
ナーゲルリングはベッドに駆け寄った。
だが途中でその足が止まる。
ベッドにいたのはマスターではなかった。
そのベッドの中にいたのは、何と青く透き通ったスライムだったのだ。
モンスターが何故ここに?
「あ、あの、マスター。どこですか?」
ナーゲルリングはとりあえずベッドふきんに向かって尋ねずにはいられなかった。
マスターのバイブスがこの近辺から出てるのは確かなのだ。
だがそのスライムに近づくにつれて現実があらわになっていく。
確かにマスターのバイブスは目の前のスライムから発せられているのだった。
「……え?もしかして、あなたがマスター……なのですか?」
目の前の現実を受け入れるのに時間がかかってしまう。
だが目の前のスライムから改めてこちらに向けた思念を感じると、その疑念はどこかに吹き飛んでしまった。
゛そうだ。俺はマスターだ ゛
その瞬間、ナーゲルリングは目の前のスライムがマスターの変わり果てた姿だと確信出来た。
「そんな!……どうしてそんな姿に……」
ナーゲルリングは気が動転してもう泣きそうになった。
しかも、そのスライムの姿になってしまったマスターは、自分に窮状を申し出てきたのだ。
゛腹が減って寒い。今すぐにも死にそうだ ゛
ナーゲルリングはなかばパニックに陥っていた。
「ええっ!?いったいどうすれば……」
お腹が減った?
でもスライムのご飯って何を食べさせれば……?
それに寒いと言われても、今マスターはお布団に入っているのに。
ナーゲルリングがオロオロしているとマスターがまた頭の中に語りかけてきた。
゛すまない。何故こうなったか、俺にも分からない。でも、最後に誰かに看取って貰えて良かった ゛
もうマスターの言葉には生きる事への諦めが感じられる。
ナーゲルリングは自分一人ではもうどうしようもないと思って叫ぶように言う。
「そんな……事……。私っ、誰か呼んできますっ!」
だがすぐにマスターに留まるように請われてしまい、もうその言葉に従うしかなかった。
゛もう俺は無理そうだ。頭も回らない。最後に手を触れて欲しい ゛
マスターの力のないその言葉に従い、ナーゲルリングは涙を流しながらマスターの最後の願いを叶える事にした。
ナーゲルリングがスライムになったマスターの体に片手を伸ばす。
「……マスター!」
そして手の平が触れた。
!?
その瞬間スライムになったマスターの体が光り輝いたのが見えた。
自分の触れている所だけが鮮やかなブルーに発光している。
その手の平の感触も、くすぐったいようなムズムズピリピリするような刺激を感じて、それが何とも気持ちが良い。
マスターがずっと黙って何も言わないので、ナーゲルリングはそっと尋ねてみた。
「……あの、マスター?」
マスターがすぐ返事を返してくれた。
゛ああ、すまない。どうやらまだ生きていられるようだ。君のおかげだ。ありがとう ゛
ナーゲルリングはその言葉に心底安堵して返事をした。
涙が出て止まらなかった。
「いえ、そんな!……でも良かったです……」
マスターの言葉自体も、さっきとは変わって活力が感じられる。
何となくだが一番危ない時期は乗り越えたような気もしてきた。
ナーゲルリングは今自分が触っている箇所だけが、青く輝いているマスターの体をじっと見つめた。
もしかしたらこの発光に何か意味があるのかもしれない。
ナーゲルリングはそう考えて、おもいきってもう片方の手もマスターの体に触れてみた。
……っ!?
すると思った通り、もう片方の手で触れた所も同様に輝き出した。
この活力に溢れたような綺麗な青い輝き。
ナーゲルリングは思った。
もしかしたらこれは自分の生命力がマスターに流れ込んでいるのかもしれない。
それならば、これを続ければマスターを助ける事が出来るかも……。
微かな希望が見出せてナーゲルリングは胸が熱くなってきた。
「マスター、頑張って下さいっ!絶対に、絶対に生き延びて下さいっ!私が出来る事は何でもしますから」
ナーゲルリングはマスターに触れながら励まし続ける。
そして自分はあと何が出来るだろうと考えた。
私の生命力が流れ込んでいるなら触っているこの手は離せない。
でも、逆に触れる面積を増やせばどうなのだろう。
マスターのこの体を抱きしめる体勢になったなら、もっともっと生命力を分け与える事が出来そう。
もしくは私の体全身を使って……
あ。でもそれをするなら服をきたままでは無理そう。
……ああ。でもそれを自分から言い出すのは凄い恥ずかしいです……。
ナーゲルリングが悶々としながらその事を考えていると、まさに自分が考えていた事を突如マスターが提案してきた。
゛すまないが裸になってもっと直に触れて欲しい ゛
ナーゲルリングはマスターにそう言われてビックリしてしまった。
「え!?裸になってですか?」
そう表面上驚いたように返したものの、ナーゲルリングの心はすでに決まっていた。
「やります!やらせて下さい!……えと、マスターを体に塗りたくれば良いのですよね……」
もうナーゲルリングには自分の裸の肌の余すところなく、スライム状になったマスターを纏っている姿が脳裏に浮かんでいたのだった。
【その②へ続く】
ヒロインを決めずに見切り発車で書いたので、一応ここでちゃんとヒロインを書きたいと思いました。
次は何とかエロ度を高めようと思います(笑)。