盾の仲間は5年後の級長達   作:Simcard

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今回はエーデルガルト視点、最後少しだけクロード視点です


人を導く器

異世界とやらに来てから2日目。具体的な時間は分からないけど、まだ日が昇ってからそれ程時間は経っていないはず

 

出発するまでゴロゴロしていようかな…でも誰かに見られたら恥ずかしいし、それがクロードだと余計にまずいわね

 

昨日は武器屋を去った後宿をとった。部屋はディミトリとクロードが相部屋で、私を含めた3人は個別。併設している酒場で夕食をとった後、私達は酒を飲むために残ったマインを除いてさっさと部屋に戻って就寝。そして今に至っている

 

ナオフミが起きないことには動けない。だけど無理に起こす必要もないでしょう。本の1冊でもあれば良かったけど…

 

何気なく窓から外を覗いてみると、既に起きていたディミトリが軽装で槍の素振りをしていた。流石は騎士の国の王…なのかしら。私?朝からは流石に遠慮したいわね

 

やることは特にないが、いつでも動けるように着替える。自称女神曰く、この世界では私達は武器や服を仕舞う異空間みたいなものが使えるらしい。取り出すときは念じればすぐに現れる。重宝するからありがたいけど、どうやったらこんな便利なものが作れるのかしら

 

着替えが終わってからもう一度外を見ると、ディミトリはとっくにその場を去っていた。なら彼らの部屋に行きましょうか。いくら何でもクロードも起きているでしょう。まあ、寝ていたら寝ていたらで…1つ、ディミトリには聞きたいことがあるから良いんだけど

 

 

「ああ、起きていたんだな、エーデルガルト。そろそろ呼ぼうかと思っていたんだ」

 

扉を軽く叩いてから開けると、既に鎧を着けたディミトリが迎えてくれた。奥では同じく着替え終わっているクロードが外を眺めていたが、私に気付くとこちらによってきた

 

「よっ。朝から3人で顔を合わせるのは士官学校以来か?」

 

「…そう言えば、そうなのかしら」

 

「そうだな…別世界とはいえ、こうして3人、戦う事もなく話が出来ると思うと、感慨深いな」

 

セイロス聖教会を相手に戦争を仕掛けたのが5年半前。その波は王国や同盟にも広がり、結果として私達は敵対する事になった。それが今、同じ目的の為に、異なる世界出身ではあるが協力関係にある

 

…戦争中の帝国と闇に蠢く者達みたいに思えてきたわ。これ以上考えるのはやめましょう

 

さて、今日は確か草原の奥の森を抜けた先にあるラファン村というところに向かう段取りになっている。昨日見ていた地図だと正確な距離が掴めなかったし、そろそろ2人を起こして動き出した方がいいと思うけど

 

と、閉まっている扉の先で別の扉が思い切り開く音と、ナオフミらしき声が聞こえた。部屋から出て確認すると、昨日初めて会ったときよりも貧相な格好をしたナオフミがマインの部屋を思いっきり叩いていた

 

「あっ、エーデルガルト!俺の装備と支度金がなくなった!」

 

「何だと!?」

 

私の代わりにディミトリが驚く。いや、私も声に出してないだけで結構驚いている。まさかいきなり宿に盗賊が沸くとは。この国の治安はどうなっているのかしら

 

この騒ぎを察知してか、城の騎士達がこの宿に来て、まっすぐナオフミに向かっていく

 

「あ、あなた達は城の騎士だったよな?ちょっと話を聞いてくれないか!」

 

騎士達に気付いたナオフミが懇願する

 

だけどこの騎士達、表情が妙ね。ナオフミを心配しているどころか、怒りさえ持っているのではという風に見える

 

「盾の勇者だな!」

 

「そう、だけど」

 

「王様から貴様に召集命令が下った。仲間達とともにご同行願おう」

 

「召集命令? いや、それよりも俺枕荒らしに遭っちまったんだ!犯人を…」

 

「さあ、さっさと着いて来い!」

 

騎士達に腕を掴まれたナオフミは、連行と表現するのが1番適切に思える形で連れて行かれる。私とディミトリ、少し遅れてクロードがそれを追うと、宿の近くに停められた馬車に乗るよう促される

 

私達が乗ったのを確認すると、馬車は走り出した…

 

 

 

 

馬車で連れてこられたのはメルロマルク城だった。ナオフミだけを槍で拘束し、私達は謁見の間まで案内された

 

謁見の間には不機嫌なオルトクレイ王と大臣、そして剣、槍、弓の勇者とその仲間達がいた

 

「マ、マイン!」

 

集まった人の中にマインもいるわね。ナオフミを睨んでいるように見えるけど、この2人に一体何かあったのかしら

 

「な、なんだよ。その態度」

 

「本当に身に覚えが無いのか?」

 

「身に覚えってなんだよ…って、あー!」

 

マインをかばうように立つモトヤスに向かってナオフミが声を上げた。私はモトヤスをじっくり見てみるが、成程ね、ナオフミが昨日付けていたと思われる鎖帷子を身につけている。ナオフミのと断定は出来ないけど、おそらく彼が昨日買ったものでしょう

 

ナオフミとモトヤスのやりとりは続いているけど、私はそれをなんとなくしか聞いていなかった。これは、何か陰謀めいたものを感じるわね。帝国で、嫌になるほど見てきた私には、それを感じ取ることが出来た

 

「して、盾の勇者の罪状は?」

 

こちらを完全に無視して話が進んでいく

 

「うぐ…ひぐ…盾の勇者様はお酒に酔った勢いで突然、私の部屋に入ってきたかと思ったら無理やり押し倒してきて…『まだ夜は明けてねえぜ』と言って私に迫り、無理やり服を脱がそうとして…私、怖くなって……叫び声を上げながら命からがら部屋を出てモトヤス様に助けを求めたんです」

 

やっぱりそうね。これは、ナオフミを陥れるための策。考えれば、私達がいるのにわざわざ後からナオフミの仲間になる位なら、最初から彼の元に付くでしょうし、ナオフミを未だに『勇者様』と呼ぶのに、モトヤスに対しては既に名前で呼んでいる。

 

…気のせいかしら、私に向けられているわけではないけど、殺気を感じる。主は想像がつくからそっちは見ていないけど

 

「黙れ外道!」

 

オルトクレイの大声で思考の海から抜け出す。もはや話はおおよそでしか聞こうとしていないけど、ナオフミが直前に枕荒らしに遭ったことを進言していた、はず

 

「嫌がる我が国民に性行為を強要するとは許されざる蛮行、勇者でなければ即刻処刑物だ!」

 

「だから誤解だって言ってるじゃないですか! 俺はやってない!…そうか!お前! 支度金と装備が目当てで有らぬ罪を擦り付けたんだな!」

 

「はっ! 強姦魔が何を言ってやがる!」

 

ナオフミも同じ考えに至ったのか、モトヤスを再び糾弾する。当の本人は涼しい顔をして、罪人から女性を救い出した英雄のように振る舞っている

 

「異世界に来てまで仲間にそんな事をするなんてクズだな」

 

「そうですね。僕も同情の余地は無いと思います」

 

レンとイツキも同調する。どうやら最初からナオフミの話を聞くつもりはないようね…

 

「とにかく!貴様には…」

 

再び何か言おうとしたオルトクレイだったが、その言葉が途切れる。轟音でかき消されたといった方が正確かしら

 

私は音の方…ここに来てから初めて彼の方を向く。音の正体は1人の男が壁を叩き、見事なくぼみをつくったもの。そしてその男…ディミトリは腕を組むと鋭い目でオルトクレイや勇者達を睨んだ

 

「な…何を…」

 

「黙れ、外道が」

 

さっきナオフミに向けて放った言葉を、ディミトリはそのまま返す

 

「では聞こうか。ナオフミがその女に強姦を仕掛けた証拠はどこにある」

 

「それは私が…」

 

「貴様に話す許可はしていないぞ、マイン。それに俺が求めているのはいくらでも偽れる証言ではない。目に見て分かる証拠だ」

 

マインが口を挟むが、すぐに黙らされた。その様子を、ナオフミは…何を考えているかはいまいち分からないけど、見守っている

 

「まあそうだな。その証言通りなら、少なくとも抵抗した痕くらいはあるもんだと思うぜ。見えてる範囲ではそんなことなさそうだけどな」

 

今までずっと黙っていたクロードも同調し、それを聞いたマインが顔を歪める

 

「…じ、じゃあ、なんでマインは泣いているんだよ!」

 

「涙は恐怖でしか流れないか?悲哀、感動でも流れるだろう。それに、証言と同じく偽る事は容易だ」

 

「くっ…」

 

ことごとく反論を潰すディミトリ。折角だし、私も違う方向から攻めてみようかしら

 

「あら、もう反論出来ないのかしら。それにしても、貴方は何か盾の勇者に、恨みとまではいかなくても敵意を持っているように見えるけど…それを受け入れるどころかありもしない罪で裁こうとはね。随分と器の小さいこと。この国の終焉も案外すぐに来るかもしれないわね」

 

私の言葉を聞いたオルトクレイは少しの間唖然としていたが、徐々に肩が震えてきた。これは面倒なことになる前にさっさと撤退するが吉ね

 

「…もういいわ。所詮その程度ということね。ナオフミ、ディミトリ、クロード。行きましょう」

 

そう言って、私達は謁見の間から立ち去った

 

 

 

 

エーデルガルトもディミトリも、随分と怒っていたな。ま、エーデルガルトはともかく、ディミトリは似たような境遇っぽいし、そこら辺も関係しているのかね

 

おっと、折角だし、最後に忠告しておいてやるか。俺は一度振り向く。自分なりに威圧をかける。レンとイツキはオルトクレイ同様ポカンとしてるな。モトヤスは…何故かエーデルガルトに注意をしている。強姦するようなやつだぞって言っているようだが、冤罪なのはわかりきっているし、1000年の歴史を誇るアドラステアの女帝がその程度でなびくわけがない

 

「…あんたらは、恐ろしい奴らを敵に回した。その事だけでも、胸に刻んでおくんだな」

 

自分なりに威圧をかけてそう言ってから、3人の後を追った




自分が男だからか、女性の一人称視点って難しいですね
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