大戦中の世界と地球が繋がった件…………は?聞いていないんですけど?   作:秋津守丸九

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第一話

ドンッ!ドゥン!ドォンッ!

 

ここでの日常である砲撃の音が今日はいつにも増して激しい。そろそろ攻撃の時期なのだろうか?

 

「ふぅ、書き終えた。」

 

そんな声が聞こえた。横を見ればヴァレリーが支給品の葉書に鉛筆で手紙を書き終えた様だった。

 

「おい、ヴァレリー。革命指導委員殿に見つかったらどうするつもりなんだ。」

 

「大丈夫だよ。委員殿がこんな最前線まで来るはず無いもの。しかも、ここは最前線も最前線。泥濘んだ泥の中こんな所に来ないに決まってるよ。」

 

ヴァレリーの反論はもっともだった。

 

「……まぁ、それもそうか。じゃあ、見せてくれても良いよな。」

 

「嫌だよ……。って、勝手に取って読むなって!!」

 

俺はヴァレリーの手紙を分捕ると、読み始めた。

 

拝啓、お母さん。

僕は今、泥の中にいます。毎日、泥の塹壕の中です。塹壕の中は思っているものとは全然違うところでした。最悪の敵は何だと思いますか?帝国主義者?ファシスト?いいえ、違います。雨です。何日も、何週間も濡れて泥濘んだ粘土の上で蹲り、敵の砲弾の中暮らすのは想像もつかない事でしょう。厚いブーツを履いていますが、冷たい泥のせいで足はまるで氷の様になっています。足の指はもう何本か動かなくなりました。だけれども、僕は同志委員長と祖国の為に粉骨砕身努力しています。昨日は敵の兵士を11人も殺しました。僕をの事を誇りに思ってお母さんも弾薬生産を頑張って下さい。愛しています。

愛しの息子ヴァレリー・ユジャノフより。

PS.僕たち労農人民革命隊は順調に勝ち進んでいますから、心配しないで下さい。それと、最近同志ヴィクトル分隊長の補佐役に任命されました。

 

「プフッ。……すまん。笑っちまった。許してくれ。」

 

ヴァレリーは俺の手から手紙を奪い返すと顔を赤くして恥ずかしがっていた。

 

「うん。まぁ、許してあげるよ。」

 

これだから、ヴァレリーは悪戯しがいがあるってもんだ。他の兵士だとこうはいかない。

 

「にしてもヴァレリー、ウソを書くのは良くないぞ。例えば革命隊が進撃しているって事とかな。あと、お前11人はサバを読み過ぎだ。お前は多くても3人さ。」

 

「そうでもしなきゃ委員殿に検閲されて全部手紙が送れなくなっちゃうじゃないか。」

 

「そいつでも、怪しいがな。っと。」

 

伝令が来て攻勢が開始される事を伝えてきた。

 

「レナートは伝令に行け!他の奴らは銃の用意!イヴァン!機関銃の準備は良いな!?よろしい!!ならばお前ら!!着剣!!突撃準備!!」

 

先程まで響いていた砲撃音がピタリと止まる。

 

 

「攻撃開始!!!!!!前へ進め!!!!!!」

 

 

準備砲撃が終わり、突撃ラッパの音と革命指導委員の声が響く。

 

「突撃〜!!」

 

「「「「「「「「「урааааааааааааааааааааааааааааааааааа!!」」」」」」」」」

 

着剣した銃を持ちながら、突撃する。背後からは小隊の重機関銃とイヴァンの持っている軽機関銃の弾が援護する。前方には敵の銃口が並ぶ。斉射。俺達を殺そうとする鉛玉が一斉に迫ってくる。避ける。近くの奴が殺られた。相手はボルトを操作して順次打ってくる。先行していたヴァレリーから血が吹き出す。顔に血が掛かる。拭いながら更に前進する。哀しむ暇など無い。

 

チィンッ!!

 

ヘルメットに弾が掠める。敵の重機関銃と目があった。伏せる。背中を弾幕が通り抜ける。後ろの分隊員が肉片になった。まだ早いが、俺の持っている短機関銃の弾をバラ撒く。これで相手への牽制にはなった。突撃。敵までの距離は半分を切った。しかし、相手の弾幕もそれ以上に激しくなる。多くの戦友が肉片になる。そして、ここら辺から下がろうとする奴らが現れる。でも、それは駄目だ。

 

バアンッ!!

 

内務人民委員部の督戦隊に撃ち殺される。

 

「前進だ!!前進しろ!!撤退する者は撃ち殺すぞ!!」

 

革命指導委員の怒声が聞こえる。

手榴弾をベルトから引っ張りピンを抜く。相手に向かって投げる。相手の陣地での爆発。この間に更に距離を詰める。おっと、こちらに投げられた敵の手榴弾を投げ返す。敵は銃の撃ち方だけで、手榴弾の信管設定を知らないらしい。一度捕虜で実験したかいがあるってものだ。敵陣地での爆発。塹壕まであと少し。頭を出している敵を撃ち殺す。塹壕に入って、敵が慌てている間に刺殺す。短機関銃を撃つ。敵が死ぬ。スコップで襲いかかってくる敵にはヘルメットを投げつけて怯んだところを刺殺す。撃ち尽くした銃のマガジンを新しい物に変える。

襲いかかってきた敵を銃床で殴り殺す。撃たれる。撃ってきた方向に向かって短機関銃を乱射する。痛みを堪えながら逃走する敵を追う。士官達が見えた。敵の士官は貴重だ。殺さねば。一心不乱に追いかけて乱射する。反撃で撃たれる。急に息苦しくなる。敵の士官が拳銃を構えながら逃げ出した。力を振り絞って士官達に追いつく。引き金を引くが撃てない。弾切れだ。敵の士官達が拳銃を撃ってくる。血のせいで制限された視界で相手を捉える。士官達の中に特別な軍服の奴がいる。獲物はそいつだ。他のやつは切り捨てる。殺す。獲物に辿り着いた。相手は奇声を上げながら拳銃を乱射してくる。身体に弾が当たる音がする。興奮しているせいか、不思議と痛みは感じない。銃剣で相手を刺しながら押し倒す。奇声を上げながら、刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す。刺して俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を醒ます。ここは……知らない天井だ。身体が動かない。目を必死に動かす。何か情報になる物は……あった。カレンダーは俺が知っている日付よりも一週間後を示している。

 

コツコツコツコツ

 

誰かが近づいて来ている。誰だ?そいつが覗き込んできた。驚いている。医者だろうか?何かを言っているようだがハッキリと聞こえない。誰かを読んでいるのか?誰か別の奴が来た。服から見て……革命隊のお偉いさんだ。何かを言っている。聞こえにくい。医者がお偉いさんに何かを言っている。凄い。粛清が怖くないのだろうか?

 

「聞こえるかね?!今、大声で喋っているのだが!」

 

「この様な……格好で申し訳……ありませんが……聞こえ……ます。」

 

「分かった!君にはその英雄的行為と敵の第二皇太子殺害という素晴らしい戦績から栄光勲章と共産主義革命委員会人民英雄の称号が授与される!おめでとう!同志ヴィクトル!君は英雄だ!」

 

理解するのに時間がかかる。共産主義革命委員会人民英雄……それは共産主義革命委員会での最高の栄誉称号にして、最優等の栄誉等級だ……。そして……共産主義革命委員会の委員になる事ができる……。…………これまでの努力が遂に……遂に……遂に……結果となったのだ!!!!

 

「……同志ヴィクトル!大丈夫か?!」

 

「はい。いいえ。私が……人民英雄に……なるなど……感極まって……しまいました。同志軍団長殿。」

 

「そうか、ならば宜しい。一週間後、君の勲章授与式が委員会本部ビル大会堂にてある。君にはそれに出席してもらうので、そのつもりで。では、君の安全と幸福を祈っているよ。ああ、あと伝え忘れていたが君に辞令だ。私が推薦しておいたよ。これを修了したあとの話になるのだが……まぁ、先に言っておこう。昇任おめでとう。同志ヴィクトル大隊革命指導委員。」

 

その言葉を聞いて、俺は安堵感、否、達成感からか気を失うように眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21年前、俺は自分の前世の記憶を思い出し、人格が前世と融合するのに気がついた。まぁ、当時は3歳だったから人格と言う様な物はなかったような気がする。農民の子として生まれた俺は運良く生き延びることが出来ていた。だけど、当時の状況は厳しかった。飢餓にもよく苦しんだし、親父が両手両足無くして帰って来たときは驚いた。だから、俺は生きる為には何でもした。幼馴染の家族を委員に売った、餓死した人間の肉でも何でも食べた、弱った人間を殺してその肉を売った、幼馴染の女の子をペドリョナ野郎に売り渡した、勉強を教えてくれた聖職者を密告した。だけれども、それは俺が生きる為だ。しょうがない事だ。そして、俺は遂に、委員の仲間入りだ。唯一人間的な暮らしができる階級である共産主義革命委員会委員。それになる為に俺は頑張ってきたのだ!!落ちてなるものか、委員になったのだ、蹴落として共産貴族になってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共産主義革命委員会本部並びに行政執行部及びその周辺部からなる一連の地区、略して本部地区………それは共産主義革命委員会の首都。昔は大層な名前がつけられていたそうだが、そんな事はどうでもいい。今はここにある物は中央に聳え立つペンタゴンをも上回る広さを持つ人民の館とソビエト宮殿を足して2で割らない様な姿の共産主義革命委員会本部ビルとそれを取り囲むようなスターリン様式の高層ビル群つまり、その他の人民委員部のビルや豪華な公共施設、大量の革命記念品そして、見渡す限りの10階建てフルシチョフカだ。本部ビルの階段を登りながら決意する。俺はこれから委員としての一歩を踏み出すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てはつつが無く進行した。大会堂の直径160m高さ100mの大きさに驚いたものの全ては完璧に進行した。最後には、革命メンバーの生き残りとも言われる共産主義革命委員会委員長とのツーショットも撮った。委員長には期待しているとも言われた。金星章と委員長勲章がある限り、そうそう粛清される事も無いだろう。これで安泰…………そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が順調に出世して連隊革命指導将校になった頃だった。ある時、妙な噂を聞いた。対帝国前線の帝国軍が少なくなっていると言うのだ。ありえない。そう思った。帝国に新たな敵が生まれない限りそんな事はあり得ないのだ。帝国と企業連合の癒着具合からして企業連合が帝国を裏切る事はまず無いし、残りの共和国と神国は同盟して帝国と我々との戦争をしている。この三つ巴の世界大戦において新たな国など生まれる訳ないのだ。しかし、噂を皆が信じきり敵を過小評価などしてはならない。そんな頭はないだろうが、もしかしたら帝国の作戦かもしれないのだ。噂を話したりする事を革命指導委員命令で禁止させた。…………しかし、それは本当だった。なぜ気が付かなかったので有ろうか?否、これは普通気づくはずが無いのだ。

初めは本部に置いて、変な異国人の噂を聞いた時だった。その異国人は変な言葉を喋ると聞いた。それに興味を持ったのがいけなかった。その異国人に会いに行ってしまったのが駄目だったのだ。変な異国人に合う為にコネと権力を総動員した。俺はその異国人が閉じ込められているという収容所に来ていた。

その収容所の中でもマシな部屋に彼らは閉じ込められていた。神国人や帝国奴隷風の者達と同志人民風の者達だった。ガラス越しに見ていたが、彼らの話す言葉に少し聞き覚えがあった。……そして、気づいた。気づかなければ良かったことに。彼らは前世の世界の国家の人間だった。正確に言えば、日本と中国とロシア。どうするべきか迷った。殺すか?生かすか?幸いにも私は英語と日本語がまだなんとか喋れる。これで彼らと交渉して……そして………。俺は決めた。こいつ等を使って更にいい身分になる様にしようと。

私は看守に金を握らせた。すると、彼は黙って私を部屋の中に通してくれた。

 

以下英語

 

「俺……ンンッ私は共産主義革命委員会委員……あー共産党の党員にして人民革命隊連隊革命指導将校……あー赤軍の大佐兼政治将校だ。君達は日本国と中華人民共和国、ロシア連邦の外交官又は軍人という事であっているかね?」

 

彼らは驚いた様に目を見開いたあと、何やらグループに別れて話しだした。結局の所、彼らは日本、中国、ロシアの外交使節で、護衛の軍人を連れてきていた。英語を何故喋れるとかの事を聞いてきたが、それには答えなかった。

 

「さて、どうでもいい事は置いておいて、君達は我が共産主義革命委員会と外交を結びに来たのだろう?さて、まずはこちらの質問に答えて欲しい。なに、たったの2つだ。それだけさ。では、1つ目。君たちは私を通しての外交を認めるかどうかだ。因みに、英語を喋れるのは私だけだからこれを君たちが認めないとそもそも、君たちは外交が出来ない。そして、2つ目。どうやってここに来た!??さあ、答えて貰おうか。」

 

最終的に彼らは2つの事を了承した。が、

 

「ウソはいけないことだと学校で習わなかったのか?」

 

彼らはウソをついた。日本使節団の言っていることから考えるに、ここにはオホーツク海から何らかのルートでもって来ているはずだ。しかし、彼らは呪術的方法で来ていると、嘘をついた。彼らが武装解除されていることは分かっているからマカロフの様な委員会正式採用拳銃を彼らに向ける。まぁ、彼らには撃たんがね。発射する直前、彼らに向けていた銃口を扉の向こうで聞き耳を立てていた看守に向かって発射した。扉の向こうで人の倒れる音がする。

 

「まぁ、一回は許しましょう。これから、よろしくお願いしますよ。各国大使様。」

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