ミッドチルダ、クラナガン。
管理世界の中心ではあるが、犯罪率は高い都市。
そんな都市に、一人の底辺層の青年がいた。年齢は十七歳。
名前はローラン。嘘つけ、絶対底辺じゃないだろお前。
「・・・これくらい造作もないなっと」
警棒を持った彼の周りには彼以上に大柄な男たちが倒れていた。
レジアスの死後、クラナガンの再開発地区の問題はさらに悪化した。
こうした事態に対し、地上本部が取った手段は、現地民に協力を仰ぐことであった。
ローランはこうしたバイトで生計を立てていた。
「さて、後はこいつらを局に引き渡せば仕事終了だ。悪く思うなよ」
相手は犯罪者とはいえ、生活するために仕方なく手を汚していたのだ。
再開発地区出身のローランにはそれがよくわかる。だが、
「それはそれで、これはこれだからな」
全てはこの一言に尽きる。
誰もがどうしようもない事情を抱えて生きているのだ。
それをいちいち気にしていたら、おかしくなってしまう。
だからこそ、彼はこれを口癖にしている。
「・・・四人か。よく一人で対処できたな」
「おっと、局員様。まあ危ないところでしたよ」
ローランからの連絡を受けて、局員が現場に到着した。
「・・・ふん、まあいい。報酬を楽しみに待っておけ」
「ありがとうございます、局員様」
局員は犯罪者たちをバインドで拘束すると、すぐさま去ってしまった。
勇猛果敢な管理局員といえど、あまり再開発地区には長居したくないようだ。
「・・・まったく、これじゃあどっちが治安維持に貢献しているのかわからないな」
彼はそう呟くと、再開発地区の薄暗い路地を再び歩き始めた。
再開発地区から見える地上本部は灰色の墓碑のようであった。
JS事件以降、ミッドチルダは表面的には落ち着いていた。
しかし、
常に
これに対して地上本部が取った手段は
底辺の人間が犯罪者を捕まえればそれでよし。もし失敗しても、底辺の人間が死ぬだけだ。
レジアスだったらこんな手段を取らなかったであろう。むしろ、止めようとしたはずだ。
良くも悪くも、地上本部からは彼が保っていた厳格さが消えてしまったのだ。
だが、ローランにとってはどうでもいいことだった。
報酬は意外と良く、再開発地区外に遊びに行くことも可能になったからだ。
幼少期に地区外を訪れたことは何度かあるが、孤児院を訪れたぐらいだった。
彼の祖母が、孫が将来必ずお世話になるであろう場所の下見に連れて行ったのだ。
「あの二人、元気にしているかなあ」
ローランはその時友人になった少女たちのことを思い出す。
その時、どこからか叫び声が聞こえた。
「・・・また稼がせてもらいますか」
ローランは叫び声がした方向に走っていった。こうして再開発地区の夜は過ぎていく。
そして、その様子をビルの屋上から見ていたものがいた。
「・・・あれがローランですか。確かに強そうですね」
彼の日常が慌ただしいものになるのはそう遠くないだろう。