正義とは何か。自問したところで答えは出ない。『悪』を滅ぼすのが正義だとすれば、俺がしたことは。俺たちがしようとしていたことは果たして本当に『正義』だったのだろうか。
「指揮官。また考え事です?」
自室として与えられた部屋の片隅、書類で埋め尽くされた机に心底嫌な気分になって現実逃避をしていたところ、秘書を買って出てくれた俺よりも年下の女の子に気を使わせてしまっていた。
「いや、まだこっちの様式に慣れていないからな」
「早く慣れてください。書類も溜まる一方です。分からなければ綾波がお教えします」
今からおおよそ一週間ぐらい前になるだろうか。俺は今いるこの施設の近辺にある砂浜に意識を無くした状態でぶっ倒れていたところを救助されたらしい。
その後身元が不明であったことなどから色々と調書を取られたが、正直何が起きているのかすらわかっていなかった俺は恥ずかしながら軽くパニックになったことを覚えている。
海軍本部に勤めていたから世界中の海を回ったし、そこに住むいろんな人たちと交流したこともある。しかし、だ!
『ジューオー』なんて名前の国は初めて聞いた。その上この国に住む人間の頭には角が生えていたりケモ耳が生えていた。見た目がまんま動物なミンク族とかじゃない。犬や狐のような耳を生やしている。尻尾も生えてる者もいたから、
だって色々あって「海軍出身ならば艦隊の指揮官をしてみないかい?」と勧誘されて、施設を見学していたらいたもん。猫耳生やした赤毛の女の子が普通に海ん中に潜っていったところ見ちゃったもん。
悪魔の実の能力者なら海に入った瞬間に力が抜けてあっという間に溺れる。それがスーッと潜航していったのだからもうどうしようもないよ。
これである程度はわかったことがある。この世界。俺の知っている世界じゃない。どうゆうわけかわからんが海で遭難して全然違う世界に流れ着いてしまったようだ。流通しているお金の単位も違ったし。
とにかくだ。右も左もわからないのに海軍にいたというだけの理由で俺はこの国で指揮官をする羽目になってしまったわけだ。
「…ダメだ。俺に書類整理なんか合わん。海賊はいないのか?」
未だに見慣れぬ文字と格闘すること数分。ついに俺は音を上げた。元々一介の海兵から出世した身だから現場で指揮を執りたい。というよりもだ。
「ここ最近で海賊なんてものは自殺行為です」
この国には海賊がいない。なんてすばらしいことだろうか。まあいなくなった原因は海軍の力じゃないのだが。
『セイレーン』
俺を拾った大将の話によると鏡面海域にあらわれる正体不明の化け物らしい。いや、もうちょっと情報くれない?というよりもそんな化け物と戦わなくちゃいけないのか?
「指揮官が戦う必要はないです。綾波たちがセイレーンと戦います」
まあ頼もしい!こんな小さな女の子が化け物相手にどう敵うのかはわからないが、先ほどの大将曰く「KAN-SEN]
と呼ばれる女の子が唯一の対抗策らしい。あれ?俺いる?戦闘職だったけど、俺要りますか?
「それに戦う相手はセイレーンだけとは限らないのです」
そしてまあよくある話だが、セイレーンが出現し対抗策が確立したあたりで揉め事が発生。今後の方針を巡って異見が真っ二つに。この国も重要なポストを占めていたそうだが離反して新たな団体を設立。
「目の前に脅威が迫っているのに内輪もめとかそんな状況じゃないだろうに」
そこはその国その国で事情ってもんがあるのだろう。よそ者の俺が口出ししていい案件じゃない。
ぼやいていてもしょうがない。元の世界に帰りたくても帰り方がわからないんじゃどうしようもない。となれば今自分に出来ることをやっていくしかない。さて、それじゃあ艦隊の指揮を…………艦隊?
そういえば、俺の下にいるのって綾波って娘だけなんだがどうすればいいんだ?どこかでスカウトでもすればいいのか?
次回予告
「指揮官様~」
「こっち来るんじゃねー!」