正義を背負いし者   作:corin7121

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前回のあらすじ

夕立、指銃修得ならず。


第十三話

 艦隊の指揮を執るようになったことで以前に比べて作戦とか戦略ってのを練ることが増えた。昔は上からの命令に従って海賊をぶっ飛ばしたりしていれば良かったが、今はここにいる娘達の命を預かる身だ。そうそう変な作戦を立案して戦死させたとあってはならないわけで。

 

「………………」

 

「………………」

 

 眉間にしわを寄せて考えること数分。

 

「参りました」

 

「あらあら」

 

 神通に白旗を上げざるを得なかった。

 

 なんというか強すぎでしょこの人。さっきから将棋を挑んでは負けを繰り返しているわけだが、どう足掻いても勝てやしない。気が付けばもう手の打ちようがない程に押し込まれている。飛車角落としてもらってこれは俺が弱すぎるんだろうか?

 

「そうではないと思いますよ?例えばこの局面ですが---」

 

「ああ。確かにちょっと焦りすぎたか」

 

 俺が悪手を打ったところまで駒を戻して解説してくれているがこの時の駒の配置とかよく覚えているな。

 

「ですが、筋は悪くないと思いますよ?加賀さんとならイイ勝負ができると思います」

 

「加賀も将棋ができるのか?」

 

 あいつ脳筋なところがあるからこの手のゲームは苦手だと思うんだが。

 

「重桜の者であればそれなりに打てると思います。それに加賀さんのお師匠さんはとても強い方でした」

 

「へー」

 

 いずれここで会うことになったら一手御教授願いたいものだな。

 

「まだ時間はありますが、もう一局打ちますか?」

 

「そうだな。……あ!」

 

「どうかしましたか?」

 

「どうせならちょっとルール変えてみないか?」

 

 まともに打ったら負けるんだし、それならいっその事ルールを捻じ曲げてやろう。まあそれほど変なルール変更じゃないと思うんだが。

 

「内容によりますが、どのように変更するので?」

 

「それはだな----」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしゃおらああああ!!」

 

「これは……一本取られましたね」

 

 通算何十敗目かもわからないが!取った!勝ったよ!神通に!!あの()()に!!

 

 持ち時間互いになし。三秒以内に次の手を打つ変則ルールだったけど、直感でガンガン攻めに攻めたら王手までいけたのだ。

 

「ハンデ込みではありましたが、まさかあの局面から逆転を許してしまうとは。私も温くなったものです」

 

 まあ、サシの勝負じゃないけどそれでも勝てたんだよ。俺もやればできるんじゃん!

 

「そうですね。では負けたままというのも()()なので今度はハンデ無しで打ち直しましょう」

 

「…………イヤだ

 

 だって勝ち逃げしたいもん。まともに打ったら負けるの必至なんだから。

 

「…………」

 

「…………」

 

 あのー神通さん?固まった笑顔のまま圧をかけてくるのを止めてくれませんか?言っちゃなんですが怖いよ。発情した赤城や大鳳よりおっかないって相当ヤバいよ。

 

「…………」

 

「…………わかったよ。多少の手加減は」

 

「本気で参ります」

 

 あ、ダメだこりゃ。瞬殺される未来しか見えねえわ。見聞色の覇気極めた覚えないのに神通に向かって頭を垂れる画しか視えないわ、これ。

 

 結果はまあ………察せ。

 

 

 

 

 

「え!?神通さんに将棋で勝ったって本当です!!?」

 

「偶然な。まあその直後に盛大な逆襲をされたが」

 

 綾波の月歩の訓練を見ながら、昨日神通と将棋をしたことを話したらみんなから驚かれた。聞くに神通は重桜でも五本の指に入るレベルの棋士らしい。それを破ったとなれば驚くのも無理はないかもしれない。ただそこには手加減やルール変更っていうズルがあってのものだったりするんだが。

 

「神通曰く、俺はあれこれと考えるよりも直感で打つ方が強いらしい」

 

 あいつみたいに何十手も先を予測できないが、なんとなくここを狙われると危ないとかここを攻めたらやりやすそうといった大雑把ではあるものの本能的なやり方が俺には合っているらしい。

 

 まあ確かに昔っからそんな感じではあったよ。作戦練るの全部イナリに任せていたし。どうせ俺には大局を見る広い視野なんて持ち合わせていませんよ。

 

「そんなに拗ねなくてもいいと思います」

 

「拗ねてないよ。それにしても苦戦しているな」

 

 綾波に限らず暁たちも月歩の練習をしているけれど、未だに体得できた者は一人もいない。前にコツは教えたんだけれどあまり役には立たなかったようだ。

 

「そうだな。そういえばこんな話があるんだが」

 

「また指揮官の黒歴史です?」

 

「違うよ。俺が六式の訓練していた時に師匠から聞いた話だ」

 

 師匠曰く、その昔とある船乗りがある島に流れ着いたそうだ。その島にはバケモノ共が居てな。昼夜問わずにその船乗りに襲い掛かったそうだ。三日三晩逃げ回り、断崖に追い詰められたその船乗りは助かりたい一心から崖から身を投げたそうだ。

 

「そしてその船乗りは空を飛んだそうだ」

 

「崖から転落して昇天しただけじゃないですか?」

 

「うん。俺もそう言った」

 

 即行の作り話にしては雑過ぎる。でもまあこの状況には納得できてしまう部分もあったりするんだよ。

 

「実際俺が月歩を習得した時はイナリに120時間は追い掛け回されたからな」

 

「五日間も……。何をしたんです?」

 

「何も」

 

 思い当たる節は一切ない。ただただイナリがヤベー表情で追いかけてきたからとにかく覚えたての剃で逃げまくった。でもイナリの方が身体能力は高いからあっという間に追いつかれるわけよ。捕まる度に機転を利かせて脱出の脱走を繰り返して地上じゃダメだ。そうだ。空に逃げよう。って思って必死で空を駆けたらいつの間にか月歩が出来るようになっていた。

 

「それで、どうすれば綾波は月歩が出来るようになるです?」

 

「そうだな。例えば――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、綾波は神通に将棋で負けたことを呷りまくって神通をブチギレさせることに成功。その結果、見事月歩を習得するに至った。

 

 ただしその余波で俺もボコボコにされたとだけ付け加えておく。




次回予告

「指揮官の貞操を思えば今はあそこには近づかないことをおススメします」
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