~前回のあらすじ
銭ゲバ猫に鉄指制裁。
明石との資金交渉が滞りなく済んだところで、今俺は新たな問題に直面している。
問題というか、厄介事というか。何が起きているのかというとだね。
「悪・即・斬!!」
「殺す気かぁ!?」
「ああ。死ね!」
「なっ…!?」
また新しく出来た部下に今度は殺されそうになっています。
なんでこうなったのか。簡単に説明するとだね。まあ、見ちゃったわけよ。パンツ。
ただこれだけは言わせてもらうよ!あれは事故!不慮の事故!!
信じられないって人のために詳細を語るとね?
「指揮官殿は剣術を習っていたのか?」
「まあできなくはないが、それがどうした?」
いつものように書類とにらめっこしていると新艦の高雄が剣術勝負をしたいと申し込みに来た。一応できなくはないよ。海軍に入隊した時に剣術とか銃の撃ち方とか習ったから。でも六式を覚えてからは体術一本の訓練ばかりしてきたからブランクがある。
それでまあ気分転換も兼ねていつの間にか建っていた道場で一本勝負となったんですよ。負けましたけどね。まさかいきなりこっちの模擬刀折ってくるなんて思わないじゃん。
でもこのまま負けたままってのも嫌だったから体術なら負けないと言ったらそれじゃあそれでもう一本となったのよ。模擬刀相手ではあったけれど、剣だの槍だの得物にしていたやつらとやりあっていたわけだからそこまで苦労するとも思っていなかったんだけれど。
「ふむ。指揮官殿もなかなかやりまするな」
「そいつはどうも」
指銃と嵐脚は無しのハンデ戦ではあったわけだけれどそこまで苦もなかった。だって高雄の攻撃めちゃくちゃ真っ直ぐなんだもん。紙絵で簡単にかわせるから楽だったのよ。あまりにも余裕だったからカウンターでデコピンしてやったらバカにされたとでも思ったのかそれまでの構えとは違う構えを取った。たぶんあれが高雄の本来の構えなんだろうな。スキが見当たらないもん。
「拙者を本気にさせたこと、誇りに思うがいい」
「はじめから本気でやれよ」
「う、うるさい!指揮官殿の実力を知りたかっただけだ!」
こっちはまだ本気になってもいないんだけれどな。さすがに指銃とか嵐脚を使ったらかわいそうだし。
「では…………参る!」
切っ先をこちらに向けたままで突進してきた。突進というより剃に近いスピードで一息に距離を詰めてきた。でもその体勢からだと次の攻撃が読めるんだよな。
「シィッ!」
やっぱり突きか。思った以上に伸びがある突きだけどこの程度ならかわすのは容易い。体を右へひらりとかわしてそのままカウンターと---
「甘い!」
「!!?」
躱したと思ったら横薙ぎに斬りつけてきた。咄嗟にブリッジで攻撃をかわすが危なかった。ちょっと油断し過ぎたか。
「その状態では満足にかわせまい。もらった!」
ブリッジ中で俺が動けないのをいいことに高雄は上段から思いっきり刀を振り下ろしてきた。でもまだまだだね。この程度で一本取られるほどやわな訓練は受けていないんだよ。
「よっと」
「え!?」
ブリッジからの倒立で難なく避け、そのまま無防備な横っ腹にカポエイラのように回し蹴りを入れる。
「くっ…!」
蹴りは当たらなかったがバランスを崩した高雄は尻餅をついた。まったく甘いのはどっち-------あ。
はい。ここで現在の状況を整理しましょう。俺は逆立ち中のため視線は低い。高雄は尻餅をついている。そして高雄のスカートは短い。もう皆さんわかったでしょう。
そして冒頭に戻るわけなのですが、いやーヤベーわ。完全に錯乱しているから手当たり次第に斬りまくってるのよ。おかげで道場のいたるところに斬り痕が残っているのよね。止めろって?今あいつ持ってんの真剣よ?鉄塊があるだろって?止めにいったらちょっと斬られたんだよ。嘘だと思いたいけど利かないんだからもう避けに徹するしかないだろ。
「悪即斬!悪即斬!」
「ちょっ!いい加減に落ち着けっての!」
「悪即斬!」
「俺が悪かったから、まずはその剣をしまえって!」
「悪即斬!」
「1+1は?」
「悪即斬!」
ダメだ!高雄はもはや悲しき悪即斬マシーンに変貌してしまっている!どうすりゃ止まるんだよ、このマシーンは!?
待てよ。そういえば高雄には妹がいたはず。あいつならなんとか止める術を知っているかも。そうと決まれば
「剃!」
逃げよう。暴走状態の高雄を自由にさせておくのは危険だが四の五の言っていられ----
「悪即斬!!」
「うそおおおおおっ!!?」
ちょっ、こちとら剃を使っているのに追いかけてくるんですが!?ここの子たち六式使えるんじゃないか!?それとも俺が未熟なだけか!?どっちにしろヤバい!振り切れない!
「あら?指揮官、どうかしたの?」
「愛宕~!!」
逃走中に偶然探していた人物、愛宕と遭遇した。助かった!!
「高雄を止めてくれないか!?」
「高雄ちゃん?」
「悪即斬!」
「あらー。これは骨が折れそうね」
骨折で済めば儲けもんだと思いますがね。斬られた身としては。
「はいはい。高雄ちゃん、落ち着いてね」
「悪即斬!悪即斬!」
「うん。うん」
「悪即斬、悪即斬」
「あらー、そうだったのねー」
なんで会話が成立してんねん。高雄『悪即斬』しか言ってねーじゃん。あれか。イントネーションとかアクセントとかで判断してんのか?だとしても全部同じにしか聞こえねーが。
「愛宕ー!!」
「あらあら。よしよし」
ようやく悪即斬以外の言葉を喋るようになったかと思ったら今度は泣き出したぞ。愛宕にあやされているがこれじゃあどっちがお姉ちゃんなのかわからんな。でもそんな無神経なこと言ったらまた斬られそうだから黙っていよう。
「落ち着いたわよ、指揮官」
泣き疲れたのか高雄は眠っている。いやー助かったわ、本当に。
「高雄ちゃんはまだまだ初心なんだからああいうことはしちゃメッ!ですよ?」
「悪気があったわけじゃないんだがゴメン」
「私じゃなくて高雄ちゃんに言ってあげてください」
そうだな。次に顔を合わせたらちゃんと謝っておこう。
「それと、もし見たくなったら私がいつでも見せてあげますからね?」
「だからわざとじゃねーっての!」
スカートの裾を摘まんでわざと中を見せようとするんじゃない。
「道場が使い物にならなくなっているんにゃけど何があったにゃ?」
後日、明石から道場の建て替えの請求に軽くめまいを覚えた。たぶん前回の恨みもプラスされているなこれ。
次回予告
「指揮官は本当に人なのか?」
「人…だと思います。普通じゃないだけ」