正義を背負いし者   作:corin7121

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前回のあらすじ

悪即斬!


第七話

 昨日のドタバタ劇にて一つ判明したことがある。

 

 ここの子たちのポテンシャルの高さだ。剃とほぼ同等のスピードを出すことができることが分かったのだ。ということは上手くいけば六式とまではいかなくても脚力を鍛えれば可能な四式までは習得できるんじゃないか。そう思ったのだ。

 

 前に九山大将に六式を習得させるのは無理と言っておきながら案外行けそうな感じがしたのだ。まあ今回はテストケースということでまずはウチで試してみることにする。

 

「というわけで、まずは剃を覚えてほしいんだが」

 

「出来ますよ?」

 

「簡単だな」

 

 俺が教えるまでもなく、綾波と江風はやりやがった。まああのレベルの縮地が出来るなら剃ができて当たり前かもしれないが。しかしだ。

 

「それでどれくらい動けるんだ?」

 

 見た感じ二人の『なんちゃって剃』は直線のみ。つまり真っ直ぐにしか移動できていない。それに動ける距離が短い。せめてそれの五倍は動けるようになってもらわないと剃とは言えない。

 

「何かコツとかありますか?」

 

「コツ……か」

 

 無くはないんだけれど、なんていうかね。

 

「コツというよりも大事なのは初速かな」

 

 剃は言ってしまえば0の状態からどれだけトップスピードに乗せられるかがカギでもある。後は勢いに乗れればある程度は形になる。つまりどういうことかというと。

 

「なるほど。『溜め』か」

 

「まあ、そういうこった。今のはわかりやすくするためにわざとゆっくり目にやったができそうか?」

 

 江風は理解してくれてみたいだが、剃には予備動作が要る。動き出す直前に数回足踏みをして勢いを乗せる必要がある。達人クラスともなれば予備動作も僅かだったり、そもそも一歩目から剃に入れたりできるけど初心者にそんな無茶は要求できない。

 

「ふっふっふ。集合時間にちょっと遅れてしまったでござるが、それならば某の出番でござる!」

 

 シュタッとどこからともなく駆逐艦の暁が空から降ってきた。っていうかお前集合時間一時間以上遅刻しておいてちょっとはないぞ?

 

 しかし自信満々なのは良いがそう簡単に剃ができるものか。

 

「こんな感じでござろう!?」

 

 ヒュンという風切り音と共に暁が瞬間移動していた。さて、判定に移るとしよう。

 

「悪くはないが、ちょっと力み過ぎだな」

 

 軽くビビったけど出来ていたよ、この子。まだまだ粗削りではあったけど剃にはなっていた。思った以上に学習能力高いな。

 

「な……!」

 

「悔しい…です!」

 

 まさか暁にあっという間に剃をマスターされて、二人とも悔しがっているみたいだ。まあ彼女たちの場合は先に縮地が出来ていたからそれを崩すとなると調子もおかしくなってしまうのも無理はないか。

 

「おやおや?綾波殿も江風殿も()()()()の移動ができないのでござるか?」

 

 煽るんじゃないよ。綾波も江風も女の子がしたらいけない顔になってんじゃねーか。暁に先を越されたのが悔しいのはわかるが、六式はこっからが難しいんだぞ?

 

「それじゃあ暁は次のステップに移るか」

 

「某、忍びに不可能は無いでござる!」

 

「綾波は前に見たことがあると思うが『月歩』っていう技でな」

 

 暁の目の前で軽くデモンストレーションをしてみた。月歩は剃ができないと使えないからね。

 

「そ……空を飛んでいるでござる!!?」

 

 初めて見たらまあそんな反応になるよね。人が自由に空を移動しているんだもん。

 

「指揮官は本当に人なのか?」

 

「人…だと思います。普通じゃないだけ」

 

 いやいやいや。俺は普通の人間ですよ?この程度で人間じゃないとか言っていると全員が化け物ですよ?

 

「牛乳で骨折が治るのは指揮官ぐらいです」

 

「え!?治らないの!?」

 

 過去に数回折ったことがあるけどその度に牛乳を飲みまくって回復していたんだけれどそれが普通じゃないのか!?

 

「それじゃあ骨折したらどうやって治すんだよ」

 

「普通は患部を固定してしばらくは安静だな」

 

 ウソやん。そんなんで治るわけないやん。治ったところでまた折れるぞ?

 

「指揮官は今までどれだけのケガをしたのです?」

 

 あ~、そうだな~。入隊前だと狐に足を食われたり、狐に肋を折られたり、爪に引っかかれたり。

 

「指揮官が赤城さんを見て逃げた理由がなんとなくわかったかもしれないです」

 

 海軍に入ってからも大ケガの連続だったけれどな。

 

「例えば?」

 

「相手は海賊だからな。剣で斬られたこともあるし、鉄砲を食らったこともある。死にかけたことなんかいっぱいあったぞ?」

 

 本当によく生き残れたと思うよ。

 

「指揮官は不死身か?」

 

 江風の気持ちもわからんでもないが、俺は不死身じゃない。偶然死ななかっただけで死んでもおかしくはないケガを負ったことなんてたくさんあった。

 

 そう簡単に死ねない理由もあったことだし。

 

「なるほど。女でござるな?」

 

「んなわけあるか!!」

 

 大人げなく怒鳴ってしまったが、それだけは絶対にない。あいつの為とかありえないにも程がある。殺しても死なないような奴だったんだぞ。

 

「それじゃあ何だったんです?」

 

「それはだな」

 

 そう言って俺はいつも羽織っているコートを見せた。コートにはでかでかと『正義』の二文字。

 

正義(これ)のため………かな」

 

「正義…ですか?」

 

「ユニオンの奴らが好みそうなコートだな」

 

 ユニオンがどういう連中なのかは知らないが海軍に籍を置く身である以上正義の信念の下に戦ってきたからな。

 

「ただ、その正義ってやつも今の俺の中じゃ大分揺らいでいるが」

 

「何かあったのですか?」

 

 さてどう話したものかねぇ。

 

「俺がこっちに厄介になる前、つまり前に俺がいた世界での話になるんだが」




次回予告


 オハラの舞台裏。なのでKAN-SENは一人も出ません。前後編の予定なので暫くは綾波達はお休みです。あしからず。
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