起きたら『グルド』になったので、取り敢えず歯を磨く事から始めようと思う 作:ヘルメット助教授
カリン様から去り際に『仙豆』を貰い、バイオレットを頼みますと言った俺はカリン塔を降りた
帰りは1人なので、落下しながらとなる
登りに5日かけた塔のてっぺんからの紐なしバンジーは、僅か数分で地面に到達した
生きていたのかと、ボラとウパが俺を見ると寄ってくる
彼等に、塔の頂きに仙人は確かに居たが生憎、修行を受けられるのは連れの彼女だけで、俺は失格だと言う
ボラは短く、そうかとだけ言うとカリン塔を見上げる
仙人は居た、代々に渡り自分達がこの地を守ってきた意味があった。それを知れただけでもボラは満足だろう
そこから俺は聖地カリンを離れ、絶海の孤島を見付けるとカプセルから宇宙船を出し、そこに居を構える
俺用に作られた部屋、そのベッドに横になり天井を見上げながら、 カリン様の言葉を反芻する
どれもが的を射た言葉で、反論の余地なし
浅ましい、反省も反復もない、欲と邪念にまみれた心で何を掴む、巨悪の下で働く者
散々に凹まされたが、何処かヒントになりそうな事も言っていたな
俺は俺のやり方で強くなれ、少なくともここには俺を鍛えるようなモノは無い、と
超聖水の秘密は知っているから、俺にその修行は意味がない
ならばと超神水を欲したのだが、どうもカリン様はそれすら必要ないと言いたいのか?
分からん…
その後にバイオレットが暴走したが、落ち着いた頃にまたカリン様に、度肝を抜く事を言われた
『お主のその体には、別の者の魂が宿っとるようじゃな』
どっきんですよ
バイオレットがカリン様を抱き上げながら、なんの事?と不思議がっていた
『誰かの物語をなぞるのも良いが、いっそ別の世界にも目を向けて、それを参考にするのも面白いと思うがの~
視野の狭い男じゃ』
にゃほほと笑っていたカリン様
誰かの物語をなぞる。追いかけるだけが全てじゃないって事か?
…確かにドラゴンボールが連載していた、あの時代には他にも…
成る程、そういう事だったか
俺には俺の強みがある、それはサイヤ人にもフリーザの一族にも無い、アニメや漫画の知識だ
悟空のした事をまるっきり真似するんじゃなく、あくまで参考にする程度で良かったのか
そうとなれば、さっそく色々とやってみよう
重力部屋に籠り、動くだけでも修行にはなるからな!
「……よっしゃ」
俺は初心に帰るべく、久しぶりにあのクソ熱いサウナスーツと矯正インナー、マスクを着けると1階に降りて修行を開始するのであった
「うぐぅ……」
20倍の重力の中で、俺は子供時代のヒーロー達の中から使えそうな技を次々と真似してみる
とは言っても、大体はグルドには扱えないモノばかり
某アフリカで密猟者と戦うパン一のムキムキな人は、アニマルパワーを力の根源にしてるから参考にならず
屁の突っ張りは何とかってマスクマンの殺人技は、俺の体格的に合わない
リクームならイケそうな気がするが…
他にはどうだ?
バスケット漫画、駄目だ
世紀末で秘孔を突く漫画、駄目だ
花を咲かせる天使、駄目だ
たこ焼き好きな魔法使い、駄目だ
……競馬、駄目なのねー
伊達にあの世は見てない、反り混みの入った探偵の技は真似は出来たが、これだと単発の『どどん波』みたい
それなら同じ作品で、サウザーブレードみたいなエネルギー・ソードを持つ、悪運の強いアイツならどうだ?
こう…気を、剣状にしてだな
『ブォン』
出来たよ
うっひょーー!
まるでどっかの、星の戦争でチャンバラする剣みたいな効果音がするぅぅぅ!
『アバ○ストラッシュ!(真似)』
『ブラッデ○ースクライド!(真似)』
『ゆ゛る゛さ゛ん゛』
嬉しさのあまりそのエネルギー・ソードをブンブンと振り回して最後に、もう全部アイツ1人でいいんじゃないか?ってヒーローの決めポーズ
『一欠』をした
「はぁはぁはぁ…」
決まった……
なに?アラフォーのオッサンがポーズを決めるのは恥かしくないのかって?
忘れたのか?俺はギニュー特戦隊のグルドだぞ?
フリーザ様も固まる、あのスペシャルファイティングポーズをやる特戦隊の隊員だぞ?
ポーズが恥ずかしくって特戦隊が務まるかっての
まぁ本格的にスペシャルファイティングポーズはやった事ないけど、地球での修行が終わったら、やることになるんだろうなぁ……
ま、いっか
その時はその時、だいたい俺は今の戦闘力が幾つかを知らないし、あとどれだけの期間この地球にいられるのか
『ピーーッ!
メッセージヲ、受信シマシタ』
メッセージ?
なんのこっちゃと思いつつも気になる俺は、ひとまず重力を戻して修行を中断、メッセージを確認する為に2階の制御室へ上がる
メインの液晶画面には確かに、一件のメッセージが受信されていた
送り主がどうやって、メッセージを?と思ったが
どうやら元々の俺の宇宙ポッドに内蔵されていたメッセージの受信システムが、博士の手で丸ごとこの宇宙船に付けられていたらしい
まぁ、そんな事はさておき
どれとメッセージを見てみれば、送り主は『ザーボン』とあった
は?ザーボン?
恐る恐るとメッセージを開封してみると、その内容とは
「…ラディッツを今後の連絡要員として地球に派遣した…、好きにこき使え
それと奴には補充用のサプリメントと最新のトレーニング雑誌にファッション雑誌を持たせたので有効に使うこと
因みにラディッツは計算だと、あと数時間で地球に到着する!?」
聞いてないぞ!
なんでラディッツ!?
あいつベジータやナッパと一緒に、あちこちで地上げをしてるんじゃないのか!?
いやそれよりも、あと数時間で来るって……どこにだよ!?
「くそっ、気は?気は感じられるのか!?」
俺は急いで宇宙船の外に出ると、空を見上げ、地球に迫る大きな気はないか探る
「………………」
意識を地球の外へ向け続け、そして
「み、見つけた!
だが、くそっ!落ちる場所が最悪じゃねぇか!」
せっかく見つけたラディッツのポッドは、明らかに俺がいる孤島には着陸しない軌道をしていた
急いで俺は宇宙船をカプセルに戻して懐にしまうと、『西の都』へと全力で飛翔する
速っ!俺の全力、速っ!
スーツやインナーを着ての亀仙人の修行、気のコントロールを身に付けた俺の全力の飛行速度は、凄まじい程に強化されていた
いつもバイオレットに合わせていたので知らなかったが、こんなに速く飛べる事に自分自身で驚いていると、すぐにラディッツが着陸するであろうポイント、西の都の端に到達
そこから再び、ラディッツのポッドの軌道を探り、最終的な着陸地点を割り出した俺はブリーフ博士の家の庭に着陸した
「あら?おかえりグルドちゃん」
「ママさん…、先日はご馳走さまになりましたッス」
庭では博士の奥さん、ブルママさん(勝手に命名)が洗濯物を干していたので、俺は挨拶をした
「あらグルドちゃん、バイオレットちゃんは?もしかして破局しちゃった~?」
「…違いますよ、バイオレットは俺とは別の修行を…って、違う!」
俺はのんびり屋のママさんとの会話を切って、空の彼方を見ると
ポツン光る赤い星が、青空にあった
「なにかしら~、あの赤い星
……なんだか、次第に大きくなっているわね~不思議だわ~」
「ママさん、今からアレがこの家に落ちてくるんス
俺が何とか受け止めてみますけど、念のため博士と一緒に家から避難して下さい」
「ぬ?呼んだか?」
ブリーフ博士がひょいと現れる
ママさんは夫である博士に、今から流れ星が家に遊びに来るんですって、と呑気な事を言うと博士も、では願い事でもしようかと言う
「う~んと、ブルマちゃんとヤムチャさんが無事に結婚して、可愛い子供が沢山産まれますように……あと出来ればブルマの弟か妹も欲しいかな~……キャッ♥️」
「ほっほっほ、しょうがない妻だの~
それに孫か~、ワシは男の子と女の子の2人が良いの~」
き、緊張感が無い夫婦だな!
「もう!本当にヤバいんスって!
早く避難を……うわっ!もう来やがった!」
赤く燃えるフリーザ軍の宇宙ポッドが、肉眼で見える程に迫っている
あれが落ちたら衝撃で博士達の命と家は、いとも簡単に吹き飛ぶだろう
散々に世話になった人に、そんな末路をさせてたまるかよ!
「ぬんっ!」
俺は両手をポッドに向け、サイコキネシスで捕獲すると速度を徐々に落としていく
「あら~?流れ星が…」
「なにやら、酷く見慣れた宇宙船になってしもうたの~」
赤色彗星が白いポッドになり、残念がる夫婦は放っておき、俺はラディッツが乗っているポッドを庭に降ろす
『プシュー…』
ポッドが開き、中から黒い長髪のサイヤ人『ラディッツ』が出てきた
「…ここが地球か…」
第一印象は、若く、そして傷だらけ
原作のラディッツは既に大人だったが、このラディッツは
『ピピピッ……』
「む?スカウターに危険信号…?
い…12000!?
き、貴様何者だ!?
いや…その見た目は、しかし奴にしては…」
「あららグルドちゃん、貴方のお友達?」
「グルド……だと?
おい、そこの女!コイツは本当にグルドか!?」
「そうよ~、ダイエットしたから見た目が変わっちゃったのよね~グルドちゃんは」
ナイスですママさん、面倒な紹介を省いてくれて
「そう言う訳だラディッツ」
「……俺の名前を知ると言う事は、グルドで間違いないのだな?」
「ああ」
「…そうか…それならば…」
そう言うとラディッツは、おっかない顔で俺を睨んでくる
ん?
なんか怒ってないか?コイツ
「おいラディッツ、ザーボンからの届け物をまずは預かろう、話はそれからにしようや」
「……ちっ!ほらよ!」
ラディッツは己のポッドに入れてあったアタッシュケースを、憎々しげに投げて寄越す
やっぱり変だ
ラディッツって自分より強い奴にはペコペコし、弱い奴には意気がるイメージしか無いんだが…
「…どれどれ…」
まあいいやとケースを開ければ、成る程
メッセージにあった通り、いつも使っているサプリメントと、お世話になってるトレーニング雑誌、そしてドドン!とザーボンが雑誌のトップを飾るファッション雑誌が入っていた
…おいおいザーボンさん、あんたまさか紙面のトップを飾ったのを自慢したいだけなんじゃ…
「あらあらあら、どなたかしらこの男前の方~♥️
ねぇ、この方もグルドちゃんのお知り合い?」
「え?はぁ……まぁ」
「んまぁ!?」
ザーボンが載った雑誌に気付いたママさんが俺に、そこんところ詳しくと迫る
めったに開かれないママさんの両目が、くわっ!と開眼しちゃってますよ
実に凄い食い付きのママさんだが、この反応から察するにブルマの面食いな部分は母譲りかもな…
あ~あ、博士は呆れて家に入っちゃったよ
これは願い事は叶いそうもないね
「おい!荷物は渡した、次は地球滞在期間を伝えるぞ!」
「はいはい期間ね、いつまでだ?」
「今からあと2年だが、移動する時間を考えると1年しかないからな!」
「1年……か」
あと1年しか地球に居られないのか……バイオレット、君はどうしたい?
フリーザ軍の事を話してもRR軍に街を壊された君だ、きっと俺を見損なうだろう
嫌われるのを分かってて、教えに行くのは気が引ける
しかし、何も言わずに地球を立ち去るのはなぁ
「用件は済んだ…今度は俺の番だ」
青アザが残る顔で、不敵な笑みを浮かべる
「ラディッツ、お前なんか変だぞ?
傷だらけだし、そんな好戦的な性格だったか、お前?」
「うるさい!覚悟しろ!」
『ドォ!』
いきなりマジかコイツ!
止まれ!
息を止め、無音の世界になると俺は、近くに居たママさんを避難させるべく担ぎ上げ、家のソファーに座らせる
時間を止めてのサイコキネシスはエネルギーの消耗が激しいので、奥さんのムチムチな体に触れたのは不可抗力だからな!
……御詫びを兼ねて目の前のテーブルに、気になっているザーボンの雑誌を置いておくので、それで勘弁してね、奥さん
実に良い触り心地だったぞ!
……さてと、コイツどうしようか?
俺は空中で俺を殴ろうとしたまま停止する、元凶ラディッツを見る
時間停止を解除した後に動けなくして、話を聞いてみるか
「ぷはぁ」
『スカッ!』
「なにぃ!?」
「きぇぇぇぇぇ!」
振りかざした拳が空を切り、俺はすかさず金縛りでラディッツの動きを止めた
「ぎ、ぐがっ!くそぅ!
動け、動きやがれ!」
じたばたと抗うラディッツに、俺は近づく
「さてと、これで話をしてくれるかなラディッツ?」
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
「いきなり殴りかかるとか、お前らしくないぞ?
それとも俺が居ない間に、フリーザ軍で何かあったのか?」
「何か、あったのか、だとぉ?
貴様だ、全部……貴様のせいだ!」
ラディッツは怒気を孕んだ口調で話してくれた
「……」
「分かったか……!?
俺がこんな傷を負ったのも、命乞いなぞする事になったのも、ナッパに殺されそうになったのも、全部……全部貴様のせいだ!」
……酷いな、そりゃ責任転嫁をする気持ちにもなる
ラディッツ自身にも落ち度はあるが、今回は主に地球に修行をしに来た俺が悪い
「うおっ!?」
俺は金縛りを解くとラディッツに、付いてこいと言って西の都から飛び立つ
ここに来る前の、あの孤島にラディッツを連れて戻ってきた
「こんな所に連れて来やがって、つまり俺をここで殺す気か?」
「なに?殺す?」
「俺は貴様の連絡要員として、惑星フリーザから派遣された
しかし俺は貴様の命を狙い、失敗した
裏切り者は殺される運命なのは知ってる、さっさと殺れ!」
「……」
「どうした!?なにをしてやがる!」
何をそんな、1人で盛り合上がってるのやら
「そうじゃない、ここに来たのは街に被害を出したくないからだ」
「何、被害だと?」
「ラディッツ、俺を気の済むまで殴れ
それで、お前の受けた苦しみをチャラにしてくれるか?」
言って俺は、ダランと腕を下げて無抵抗の構えをとる
「何を……ふん、そうか、そう言う事なら遠慮はせんぞ!」
一瞬だけラディッツは躊躇うが、すぐに拳や蹴りが俺の肉体に刺さる
サイヤ人の格闘センスと、長年戦場を渡り歩いて実戦慣れしたラディッツの攻撃は
わざと戦闘力を落とした俺に、しっかりと通じている
「はははははっ!」
「ぐっ!あがっ、んぎ!」
「格上を一方的に殴るのは気分が良いぜ!
そら、そら、そら!
どうした!もの足りないか!?
なら……食らえ!
『ダブルサンデー!』」
両手から放たれるエネルギー波が俺に直撃し、微かな浮遊感の後、地面で体が削られる
朦朧とする視界で仰向けになってると、上空からラディッツが勢いよく飛来し、膝を鳩尾に入れた瞬間
俺の意識はそこで途絶えた
「おい、起きろ」
「ん、んんんっ」
吐き捨てるような言葉で、意識が浮上すると目の前には
「…ラディッツ、俺を殺さんのか…?」
「けっ、腰抜けの命なぞ欲しくはない
それに久しぶりに全力で暴れたから、少しは気分も晴れたしよ」
腕を組み、プイッとそっぽを向いた状態のラディッツはそう言う
「そっか、許してくれてサンキューな
じゃあ飯にするか、腹減ったろ?」
「ふん……」
サイヤ人は戦闘に特化している分、その燃費は全種族の中でも最悪かもしれん
つまり
『ぐぎゅるるるるる』
「……」
「……飯が食える所に今から連れてけ
そしたら、今回の一件は水に流してやる」
「ふふっ、分かったよ」
「…1つ聞かせろ」
「何だ?」
「この星の有り様は何だ?
俺の知る限り、この星にはサイヤ人の赤ん坊が侵略目的で送り込まれている筈だが?」
お前の弟、カカロットの事か
「そのサイヤ人の赤ん坊、というか子供には会ったぞ
同じ尻尾をして、満月には大猿になってたから、ソイツで間違いない
ただし、戦闘は好きなようだが性格はサイヤ人に全く似てなく、明るくて優しい子供になって、この星の住人と仲良くやってるよ」
「何だと!?
カカロットめ……命令を忘れ、星の住人と仲良くしているなど…… 」
「ショックを受けてるようだが、俺としては好都合よ」
「……なに?」
「俺はこの星が気に入っててな、そのカカロットが星を壊さなくて逆に感謝してる位だ
それに2年後、もしもフリーザ様に認められたら、その褒美として地球を頂くつもりだしな」
「……」
「結果としてフリーザ軍の所有地になるなら、文句はあるまい?
それに管理するのはフリーザ軍の精鋭、ギニュー特戦隊だ」
「……」
「カカロットとやらが気になるか?」
「黙れ、産まれてすぐ星に送られる最下級戦士なぞ、知ったことではない!」
『ぐぎゅるるるるる』
しまらないなぁ…
俺はラディッツを連れ、またまた西の都の博士の家に行く
ラディッツに飯を食わせる目的と、奴が持ってるスカウターを博士に改造して貰う為である
家には高校から帰っていたブルマも居たのだが、俺を見るなり母娘で雑誌のザーボンさんを指差し、この良い男を紹介しなさいと激しく詰め寄られたのであった
ラディッツの技『ダブルサンデー』ですが、投稿する最後まで名前を呼ぶか否かを悩みましたが、作者の独断と偏見で呼ばせてみました
千葉氏のボイスで脳内再生余裕ッス
他の漫画やらを出すのはマナー違反かなぁと思いつつ、子供の頃を思い出してノリノリで書きました。オッサンなのに
ありがとうございました!